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司馬懿ちゃんをオトそうとしたら男装百合ハーレム!?  作者: 寝留ひびき


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第03話「赤壁は祈りから」

 我が名は鳳蓮。転生してからやがて十八の歳になっていた。憧れのボクっ子男装も身に馴染み、軍師兼武将になるべく道を突き進む。龐統と師弟関係となり知恵も技術も磨いたボクの初陣《ういじん》は、まさかの赤壁であった。

 三国志では、火計により敵の曹操軍が大敗する天下分け目の戦いともいえる。

 そんな重要な戦になぜ呼ばれたのか。師匠は元々鳳雛との二つ名がある。そしてボクと合わせて『銀翼の二鳳』という噂が広まったらしい。お互い銀髪だからね。

 そして、劉備軍の人不足から龐統と共々に呼ばれる事になってしまった。目の前には赤壁の大将となる、諸葛亮。かの三国志随一の天才軍師として、有名な孔明の字《あざな》を持つ者である。

 艶やかな長い黒髪、グラマラスであろう体型を隠す白い軍師服。そして、男装が似合うクールな所作。白い羽の扇を置く。

「お久しぶりですね、龐統。その後はいかがですか?」

「いやはや、面白い弟子を迎えられて世はかくも面白き事かと感動しておった所じゃ。こちらが、弟子であり神子《みこ》の鳳蓮である」

「面白い弟子ですか。羨ましいモノですね」

 諸葛亮はその立場もあるのに、慇懃《いんぎん》すぎる丁寧っぷりだ。しかし、弟子と紹介された時、その優しい黒目が少し、濁った気がした。

「ボクの名は鳳蓮、字《あざな》は、成人の折り龐統様より子鳳《しほう》と名付けをいただきました。ゆくゆくは貴女様のような軍師を目指しておりますゆえ、諸葛亮先生と呼ばせていただければ幸いでございます。以後、お見知り置きを」

「それは我が身に余る褒め言葉ですね……今後ともよろしくお願いします 」

 丁寧すぎる……。この時代の武将は偉そうなのが多かったから、感覚が狂うな……。

「時に、神子とのお話を伺いましたが。たとえば、"風向きを変える"などという妖術は使えるのでしょうか? 出来るのであれば、"お願い"したい所ですが」

「ふふ、そんな妖術なぞ無い事くらい、諸葛亮先生ならばご存じでしょう?」

「ふむ、妖術が無いとおっしゃいますか」

「祈祷や妖術で風は起こせません。しかし、風向きが変わる転換点を見極めるくらいは、たやすい事でございます」

「その通りでもありますね」

 おっと、ニンマリと笑い自慢げに言ってしまった。もう少し神子として続ければ良かった。

「ぼ、ボクの本職は治癒の神子としての才覚でございます。傷口、病、治してご覧に見せましょう」

「それは頼もしい。では、風向きを変える祈祷の後、戦いで傷を負った兵の治癒を頼むとしますね。よろしくお願いいたします」

「お、お任せあれ」

 自分を売りたいがばかりに安請け合いし過ぎただろうか……。しかしそこに、龐統がボクの肩を抱いて、諸葛亮にアピールする。少年のように小さい腕だ。

「我が龐統の自慢の弟子じゃこの子は」

「ちょ、痛いですよ師匠」

「なぁに、自慢したくてな。諸葛亮よ。我が弟子が活躍の際には、我れ龐統の意見も重用していただきたいのぅ」

「もちろんです。龐統はかねてよりの知人ですからね」

 とそんなやりとりの中、ボクは気づいてしまう。

 かなり歴史を変えてしまった……! この先の展開が読めなくなったらどうしよう……!

 でも、これだけ好条件が揃っていれば、あの司馬懿ちゃんと戦場で直接相まみえる確率も跳ね上がるはず……!

 ともかく、初陣たる火計の成功を祈るばかりであった。見せかけばかりの祈祷ではなく、ただ素直な気持ちで。


*


 そして赤壁の戦いが始まった。とは言ってもほとんど準備で小競《こぜ》り合い程度だ。燃えやすいように敵軍の船同士が繋がれた策も聞くし、間違いなく動き出している。火計のあとが本当の戦いなのだろう。

 戦略は話されなかったが、風を起こして欲しい日にちを聞いて、ボクは、祭壇《さいたん》にて祈祷《きとう》ごっこをする。ボクは、周りの兵にはこう囁《ささや》いておく。

「詳しい予定は話せませんが、風は必ずや起こします」

「あれが銀翼の二鳳の片割れ……」

「奇才の鳳雛、その弟子は神子の子鳳《しほう》と聞くわよ」

「どんな奇術を学んだのだろう」

 女兵《おんなへい》たちが口々に話す。簡単な傷の治療も見て回ったお陰で噂は上々。

 そう、祈祷とは、それっぽく見せて、兵を畏《おそ》れさせるだけでも大成功なのだ。敵に伝わればなお良し。

 桃の果実酒を傍《かたわ》らに、ボクは祈祷の舞を踊り続ける。日本式のイメージを交えつつ、軍議ばかりで鈍った体を動かす。創作ダンスというやつだ。いや違うか。

 しかし、慣れてくると踊るだけでも退屈。ボクは前世でかじった作曲理論を元に、伴奏の一音を伸びやかに歌うだけの、歌の舞へとアレンジしていった。コード進行なぞ前世の歌のテンプレだ。

「ほう……美しいモノだな」

 そこに現れたるは、濃い茶髪のセミロングの男装の麗人……薔薇

のように棘と憂いを感じさせる美形……!

「貴女は……!」

 切れ長の目、どんな時も相手の底を計ろうとする油断ならない視線。きりりとした眉毛は、常に深い覚悟を背負っているように見えた。

「美周瑜《びしゅうゆ》様……ではございませんか……!?」

「ほう。貴女のような麗人にまで私の名が知れているとは。鼻が高いというモノだ」

 今は劉備軍の同盟、後の敵……。孫呉《そんご》軍の知才、周瑜その人であった!

 演義上の設定に違《たが》わぬ美人……いや女になってるけど。

 その男性的美しさを残したまま、しかし間違いなく骨格などが男装の麗人であった。

「ボクの名は鳳蓮、字《あざな》は子鳳《しほう》と言います。以後お見知りおきを」

「ふむ。時に、かのような美麗なる舞に、そして聞いた事の無い歌……時として調律からは外れているはずなのに、心地よく感じる。どこでそのような技術を学んだのだ?」

「は、はは……祈祷にて授《さず》かった才覚でございます。ボクは神子《みこ》。たまに天より旋律《せんりつ》が降りてくるモノでございます」

「ふっ、戯《たわむ》れか?」

「……どう捉《とら》えていただいても結構」

 言葉につまる。嘘だと見破られている……? 

「名乗りが遅れたな。我は孫呉《そんご》の大都督《だいととく》、周瑜《しゅうゆ》である。君が、劉備軍に新たに仕えたという酒屋の神子であるな?」

「そ、そうでございます」

 ひぇ~! 改めて肩書きが重い! 両陣営が近いからって、呉全軍の最高指令官がこんな所に覗きに来るなよぉ~っ!

「それで、"祈祷"は上手くいきそうなのか?」

「もちろん。それが神子たるボクに与えられた使命でありますので」

「使命……か」

 そこで彼女は深く思索する様子。ボクを試すような目つきでもある。

「そなた、使命はなんだと考える? 世の平定か? それとも蜀漢の復興か?」

 ……周瑜は後の敵だ。変な神子とて警戒されているのだろう。返事次第ですぐ敵になる可能性もある。聞かれた通りの、『蜀漢の復興』を思わすような下手な事は言えない。

「世の平定でございます。祈祷であろうと、奇策であろうと、それは人民の為を想って行うモノ。そして、歌の力、は絶大。異国の者から赤子まで、その素晴らしさに歓喜し涙を流す、これを安寧《あんねい》の世の礎《いしずえ》と考えております」

 無理に蜀漢の話から遠ざけた。だがそれが功を奏したのか、彼女は美しい表情を破顔するかのように、感極まる様子だった。

「おお、分かるぞっ! 音楽こそ偉大……! 世の平定には必要不可欠なモノである! 君の理想は筋が通っている! ああ、この私も常々と考えておったのだ……! まったく、雅《みやび》を解さぬ奇人の元に君という才覚を置いておくには勿体ない! 諸葛亮を捨て我が元に来るがよい! 我が妻と共に愛でてやろう!」

「は、離してくださいませっ!」

 まさかの求婚であった! お互いに男装女子とはいえ、お互いに妊娠させる能力もある。つまり、押し切られた方が雌落ちである……ぐっ、負けるものかぁっ!

 こんな所で雌落ちしたら、雌落ち癖がついてしまう! いざ司馬懿ちゃんの前でタチの雄みが出せなくなるっ! ボクは司馬懿ちゃんをネコの雌落ちさせるのが目標なんだっ!

「くぅぅ……! このような人材を隠し持っていたとは、諸葛亮もただ者ではないな……。妻はあきらめよう。しかし、弟子であればどうだ! 毎夜、音楽を奏ながら二人、同衾《どうきん》の友として夜を明かそうではないかっ!」

「それは弟子ではなく側室と変わりませんよねっ! ボクには心に決めた人が居るのです!」

 手を両手で包まれながら言う彼女。ぐぅぅ顔が真っ赤で熱い……。まさかこんな口説き文句があろうとは……。

「我が弟子を誑《たらし》し込まないでいただきたいのぅ」

 そこへ、ボクの本当の師匠、龐統が現れた。諸葛亮の時とは打って変わって、随分と不機嫌そうである。

「む、その風貌《ふうぼう》。鳳雛と噂の龐統か。この鳳蓮が弟子だと? ぬぅ、なんとけしからんっ!」

「けしからんっ!? 何がですか!?」

「ならば鳳蓮、我が第二の弟子となるがよい! なぁに、龐統との合間に我が元に秘密裏に通うだけでよいのだ!」

「それ、完全に浮気ですよねっ! 浮気弟子ですよっ!」

 こんなに叫んだ事があっただろうか。龐統は苦虫《にがむし》を噛み締めたような顔で、ボクの手から周瑜を払う。

「そうじゃ。我が弟子に浮気なぞという不埒《ふらち》な事はさせられぬよ。他を当たるがよい」

「ぬぅぅう! 龐統……! このような才覚、他と居ない事を知りおきながら……。おのれ諸葛亮、おのれ龐統……今に見ておれっ! 代わりに鳳蓮が口付けたこの酒をもらっていってやる! んっ、なんだ桃の香しい酒は……! ともかく今に見ておれっ!」

 なんて、まるで司馬懿が諸葛亮を憎むような捨て台詞で、周瑜は祭壇から立ち去ったのだった。

 悪くないな……今の高慢さ……。

「ふんっ、鳳蓮も鳳蓮じゃ。あんな不埒な女狐《めぎつね》に誑《たぶら》かされおって」

「誑かされてなんていませんよっ! あれ、龐統様、なんかスねてます?」

「そ、そんなわけあるかぁ!」

 なんて、少年のような彼女の声が祭壇に響きわたるのであった。

 初陣で祈ってるだけなのに、なんでこう事件が起こるんだ……。諸葛亮先生の祈祷の方がマシだったのでは……。


ついに念願の美周郎こと周瑜が登場です!

もはやメインヒロイン感……汗


三國○双でも初めて使った美人(男)だったので、このたび男装女子百合キャラに出来てとても良かったです……!


8~9話の荊州編、10話の街亭編もまた良い出来です……! お付き合いいただければと思います!

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