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司馬懿ちゃんをオトそうとしたら男装百合ハーレム!?  作者: 寝留ひびき


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第11話「馬謖を助けるは司馬懿のため!」

最終回まで書けたので、また再開します!

「ひぃっ!」

「馬謖《ばしょく》を……斬るのですか……!」

 街亭《がいてい》の戦いの辛勝の後、我々の行いが軍議にかけられる事となった。馬謖の今にも涙がこぼれそうな悲鳴を聞きながら、悲しそうに……しかし覚悟を決めた顔で諸葛亮は言う。

「はい。我が愛弟子《まなでし》という肩書きに甘んじて、鳳蓮《ほうれん》殿と魏延《ぎえん》殿を窮地《きゅうち》に立たせました。特に、わたしの命令に違反した上で、です。かろうじて守りきったから良いものの、少しの差で負けとなってもおかしくない戦いでした。そしてそれは、馬謖に手柄を立てて欲しいと重用《ちょうよう》した事も、死の直前である曹操《そうそう》自らが勇み出るとは考えていなかった事も、わたしの失策でもあります。わたしが責任を持って、我が義に従って、馬謖を処罰します」

 ボクは変えられなかった歴史に焦り始める。しかし、ボクが正す前に馬謖が口を開いてしまった。

「せ、せんせぇい! お、お待ちください! 僕は兵法に則《のっと》り……」

「馬謖! まだ言い訳するのですかっ!」

 張り詰めた空気が余計に冷たく凍った。それはいつも優しく丁寧なはずの、かつてない諸葛亮の怒鳴り声であった。女の人の声でも凄みのある迫力で、つい涙が出そうになる……。

「軍の義に背き、そして言い訳をして人の義にも背く。貴女という才を高く買いすぎたわたしの大きな過ちです。馬謖、貴女はせめて、わたしの手で、首を切り落とします」

 震える声。それは諸葛亮最大限の自分への戒めのようにも思えた。馬謖はガタガタと歯を鳴らすばかりで何も言えないようだ。

 "軍の義"にも、そして言い訳がましく"人の義"にも背いた罪は重たい。なぜなら、人の義に背く人間は、何度だって背く可能性があるのだから。倫理観というのは、大人になってからなかなか変えられるモノじゃない。このボクがそうであるように……。

 だからボクは、ボクの欲望のまま馬謖を助ける。諸葛亮が弟子が欲しいがあまりに采配《さいはい》を間違っただけで、馬謖なりの才能は間違いなくある。

 ボクはバンと机を叩く。あえての威圧だ。

 ここで歴史を変えねば……! この蜀の安寧も、司馬懿ちゃんとの蜜月の日々もなくなってしまうのだから……!

「先生! 確かに処罰せねば軍そのものの義にはなり得ないでしょう……! しかし、劉備将軍への義としては!? 結果的に助かったというのに、この蜀の国を支えようと奮起《ふんき》する仲間を命令違反で斬るのは、劉備将軍への義に反する行いではないでしょうか!?」

 我らの総大将たる劉備がまだまだ存命だからできる言い訳だ。わざとボクは劉備を見る。

「鳳蓮の言う通りだよ諸葛亮。命令違反でそなたの愛弟子を斬《き》るというのは、可哀想《かわいそう》ではないか。義というのは、人を愛する故《ゆえ》のモノであり、軍や法の為のモノではない。馬謖は他の才覚に秀でている。許してやって欲しい」

 劉備がしっとりと言う。この口調の雰囲気は、ボクが口を挟まずとも止める予定だったみたいだ。優しいのに、確実に止める覚悟を感じる。

「……わかりました。わたしを、国を任せられる丞相《じょうしょう》の座から格下げにし、馬謖を軍師副官の地位に格下げとします。馬謖はしばらく、わたしの元で再勉強するように」

「はい……はいっ! 諸葛亮せんせいっ!」

 馬謖の罪は、劉備の一声で許される事となった。途中まで歴史通りに運んでしまったこの局面は、今後の命運をかける転換点にも思えた。

 このあとに訪れる五丈原の戦いの孔明の死は有名だが、それは諸葛亮が人材不足に悩み過労が続いたからだ。今、猛将たる関羽、張飛ら。軍師たる我々。そして劉備将軍が居る中でなら、諸葛亮は過労で死ぬこともなく、五丈原の後まで戦えるであろう。

 しかし、ボクは脳裏に閃きが浮かぶ……。まるで電気が走るようだ。

「諸葛亮先生。馬謖を、ボクに預けてはいただけないでしょうか?」

「馬謖を? わたしではなく、鳳蓮殿が弟子に取りたいという話でしょうか?」

 ほんの少しむっとした面持ちをした諸葛亮だが、ボクは手を振り否定する。

「いえ、我が師匠、龐統《ほうとう》を思えばボクは未熟者ゆえ、弟子を取るつもりは毛頭ございません。しかし、馬謖は大の読書家であり勉学に熱い娘です。必ずや、内政にて大活躍する事でしょう。それこそ、紙の上で兵を語れないなら、数字を語っていただけばよいのです」

 それはボクのチート技術研究には必須の能力なのだ。

 一方でボクの言葉に感動した様子の馬謖。アピールし過ぎたか。

「ほ、ほうれぇん……。アンタってやつは……僕をそこまでぇ……」

「わっ、抱きつかないでください馬謖さんっ!」

 あんなにツンツンしていたメスガキキャラが、助けた後からデレデレだ。張りがいがなくなってしまって、少しつまらなくもある。

 ボクはこの機会を逃さず、馬謖に色々な技術協力をお願いする事となる。奇才家龐統とも一緒に。


*


 歴史では勝ち目の薄い北伐。しかし、辛勝とて第一次北伐は成功、劉備存命の中で劉一族の血筋による漢王室復興という大義から、兵士のやる気は下がる事なく満ちあふれていた。

 それだけでない。ボクの技術革新により、戦争の困りごと、食べ物たる兵糧《ひょうろう》まで溢れているのだ。しかし、まだまだ策は足りない。あの諸葛亮でさえ警戒した司馬懿ちゃんを完膚《かんぷ》無きまでに叩きのめすには……。

「という訳で、遠距離暗号技術の実用化、文字教育の指導要綱、輸送機械と攻城兵器の研究、これらを同時並行すべく、馬謖さんには研究をまとめる管理者となっていただきたいのです。きっと貴女のお得意のお仕事ですよぉ?」

「ど、どれだけ僕にやらせんのよ……! 僕を高く買いかぶり過ぎじゃないの……?」

「あら、兵法と計算の天才たる貴女なら余裕だと思いましたが? それとも、『無理』でしたか?」

「む、無理じゃないわっ! この馬謖様がやってやろーじゃないのっ! この僕がアンタをワッと言わせてあげるんだからねっ!」

 ああ、なんて張りがいのあるツンデレ……。やはりはこうでなくてはな……!

「つまらんのぉ」

「何を言ってんるんですか師匠。奇才家たる貴女も、ボクと一緒に実用化の案と、諸葛亮先生への報告まとめ作業があるんですよ? 師匠にも手伝ってもらわないと困りますからね?」

 ボクが言い切ると、いつものニヒルで怪しい笑みを浮かべる。銀のパーマをくるくると指で回す。

「この老いぼれにまだまだ仕事が残ってるとは安心したわい。ヒヒヒ」

「何言ってるですか師匠。ボクよりずっと年下じゃないかというくらい肌がつやっつやではありませんか。見た目は少年ですよっ。成人女性なのに」

「これはお主が面白いモノばかりもってきてくれるからじゃ。お主の若さを吸ってる証拠よ」

「なんですかそれは……ボクから吸わないでください」

「ニシシ……一生かけて骨の髄《ずい》まで吸い取ってやるわい……」

「怖すぎます……」

 まるで吸血鬼みたいだ。まだピッチピチのボクがこのショタ風軍師に若さ吸われてるのだろうか。


*


 歴史が大きく変わり、ボクが司馬懿ちゃんと戦うタイミングが訪れない中。

 しかし、間違いない直感がある。五丈原には……絶対にいる……!

 その司馬懿ちゃんを出し抜く為には研究と開発の準備をしつつ、何度も北伐の辛勝と成功を繰り返し。

 そうこうしている間に、我々は諸葛亮としての本来の最期の舞台となる、五丈原の戦いに差し掛かろうとしていた。

 ああ、念願の……! 五丈原……! ついにこのような天命……!

 その舞台は『死せる孔明、生ける仲達を走らす』の故事で有名な五丈原だ。諸葛亮が死んだ後も、司馬懿は諸葛亮が残した策によって翻弄されるという五丈原。武将も技術も揃い、こちらの対策はバッチリのはず。なのに……。

「えっ!? 諸葛亮先生の体調がっ!?」

「この前までピンピンしてたじゃろうっ!?」

「そうなのよぉ~。食も細くて顔色が悪くなるばかり……。会議に出る余裕なくて、いつも手紙で指示を仰ぐのが当たり前になっちゃった……。どうしよ~鳳蓮~、龐統さん~」

「だ、大丈夫ですよ馬謖さん。貴女も居るし、ボクらも居る……」

 と言うボクの声も震えたままで、馬謖の不安そうな目はそのままだった。

 こんな大事な局面で、歴史を変えられないだなんて……! 劉備軍の死亡イベントをみんな避けてきたのに、なんで諸葛亮先生だけが……!

「ともかく、諸葛亮先生の指示を仰ぎながら、ボクが司馬懿に打ち勝つしかない……」

「大丈夫なのぉ……? 司馬懿の策謀は諸葛亮せんせいを上回らずとも劣らないって評価よぉ?」

 そう、ボクの居ない所で諸葛亮と司馬懿はすでに対決していた。悔しいが、後から知った時は震えたくらいだ……。

 いつだかの周瑜の言うとおり、ボクは時として阿呆の子扱いされるやらかしタイプでもある。司馬懿ちゃんの相手は務まらないかもしれない。しかし……。

 下準備をしっかり整え、司馬懿ちゃんをこのボクの手で……屈服させる!

「いつまでも諸葛亮先生に甘えてばかりではいけません。どちらにせよ、ボクらが頼りがいある事を証明しなければ!」

 ボクが意気込んで拳を握ると、馬謖は頷く。

「そうよね……! 諸葛亮せんせいの悲願は、劉備将軍の元、漢王室復興だもん! 僕らがそれを叶えなくちゃなんなのよって話!」

「そうです! 諸葛亮先生が安心して養生できるよう、ボクらが劉備将軍の天下を叶えてあげましょう!」

 だが、そんなボクらの決意とは裏腹に、龐統はその銀の天パをうねうねと指で遊ばせる。

「ふむ、いつも疑問なんじゃがのぉ、鳳蓮よ。お主、劉備将軍への義なぞ持ち合わせてはおらんじゃろ」

「何を言いますか、持ってますよ」

「本当かのぉ。お主の瞳の奥は、別なモノを捉えているように思えるが」

 確かに、自分の欲望の為という歪んだ形ではあるけれど。しかし、それも師匠にはお見通しみたいだ。

「師匠の言う通り、ボクの願いは平和であって、安寧《あんねい》の世を築かれる方なら誰でも良いという事は否定しません。しかし、それを今、他の国に任せられますか? 魏の国に? 呉の国に? その他に? ボクは任せられないと考えています。その中で一人、義に厚く民の平和を願う劉備将軍の元だからこそ、ボクの希望も託せるという訳です」

「なるほどの……静かながら、確かな炎じゃ……」

 師匠はその少年みたいなかわいい目で、ボクの目をみつめる。

「ぼ、僕だって! そのくらいの情熱持ってるわよっ! ほらっ! 司馬懿に打ち勝って劉備将軍の天下を叶える為には次は何をすればいいの!? ほ、鳳蓮には借りを返さなくちゃだし、僕、頑張るっ!」

 と、馬謖はやる気に満ちあふれていた。ふむふむ、油断ならない子ではあったけれど、そのやる気や良し。

「よしっ! まずは準備してきた兵糧ポコポコ輸送大作戦だっ!」


男装百合って、セリフが男性のままだと脳内声も男性ボイスになってしまいがちですね……。

アニメみたいにデザインがあって声が無いと難しい……。


一方で、馬謖は大きくキャラ変更したので百合っぽくなって良かったです。

他の子たちも、口調の大幅変更を検討しなくてはなりませんね。

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