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人魚姫の“姉”に転生したので、妹の悲劇を防ぐため王子を殺すはずが執着されました  作者: 目々ノミーコ
1章

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8話 輝くオムファタール

 頭がぐちゃぐちゃとし、意識が一瞬途切れた。

 明らかな異常な状況にミネルヴァはレオナルドを睨みつけた。


 あの時、気のせいだと思っていた。

 しかし違った、そもそも疑うべきだったのだ。

 人魚に魔法が伝わる様に――人間にも魔法が使える可能性を!!


「貴方今何をしようとしたの!!」

 エーデルがあの時急に大人しくなったのも、この力なのだろう…

 彼はキョトンとした顔を浮かべ、びっくりしているようだった。


「……効いていない?」

「――こんな事初めてだ」


 私を見つめる目が爛々と輝いていた、その瞳は力強く何処か不気味さを帯びていた。


「答えになっていないわ!!」


 私は感情的に言葉を言い放つ。

 物語にない事ばかりで収集がつかない――もしかしてこれが物語の裏側?


「……それは言えない」


「なんですって!?故意に私に何かをしたのなら国際的な問題よ!!」


 そう近寄り彼の胸ぐらを掴む、すると彼は視線を逸らした後私と再び目を合わせる。


「分かった――船を降りたら教えるよ」

「そろそろ花火が上がる」


「そうやって、煙に巻くつもりね…」


「問い詰めてもいいけど、今この状況で不利になるのはどっちか考えたほうが良い」


 今ここに誰か来れば、王位継承であるレオナルドに不躾にも抗議する王女ミネルヴァという風に見られる。

 真相を言ったとしても、レオナルドが有利なように話を変えられるだろう。


「分かったわ…」


 私は引き下げることにした。 

 (きっとこれが最後の会話ね)

 真実がどうであれ、この海の上で彼は死ぬ。

 だって私が殺すんだから――



 

 私達二人は船外に出ると外は暗く、先ほどより風が強くなり波の揺れが強くなっていた。

 観客たちは酔いが回り泥酔しているものもいた。


「さっきより揺れているね」

 

「ええ、沖から遠いから仕方ないわ」


 レオナルドの問に、私は軽く返事をする。

 なぜ揺れているのか私は分かっている。

 これから盛大な花火が上がる――その後この船は嵐に見舞われる。

 船は真っ二つにわれ沈没し王子は船から落ちる、それを人魚姫が助けるのだ。

 

 だから私は船が壊れる前に、嵐に乗じて王子を殺すつもりだ――。

 それに今回は国の人魚達もいる、きっと船の人は少なかれ助かるだろう。


 (まぁ船がどうなるかは分からないわね……)


「王子!探してましたよ!!」


「暫く休憩していたんだ」


「そろそろお時間です、暗くて花火がよく映えるでしょう」


「そうだね、そしたら頼むよ」


 その言葉を聞くと、水夫たちは準備を始める。

 暫くするとドンッと大きな音が響く、空には火花が打ち上がり広がった。

 音に惹かれ皆、空を見上げ歓声が上がってゆく。


 思わず私も見ると、海では見られない鮮やかな光が空を照らしていた。


「きれい……」

 長らく深海にいて忘れていた輝きに瞳を奪われる。

 船縁(ふなべり)をつかみ乗り出すように見る。


「こらこら危ないよ」

 彼はいつもの調子に戻る。

 私の元へと駆け寄ると、私に優しい言葉を投げかける。


 私は油断してた。

 いや、考えてもみなかった――


 重たいものがぶつかるような、鈍いドンッ――という音がした。

 私は、ふと花火から横目にレオナルドを見た。

 彼は目を見開き船外へと投げ出される。

 

「…っ、エー、デル」


 豪奢のドレスに身にまとったエーデルは、満面の笑顔で笑う。


「最初からこうするつもりでしたのレオナルド様――」

「これで、誰のものにもなりませんわねぇ」


「っレオナルド!!」


 海に落ちてはいけない!!そう思ったら身体が動いていた。

 咄嗟に手を掴むが――足の力が入らないっ

 この足じゃ長くは持たない、重さに耐えられず海に落ちそうになる。

 このままじゃ――


「離すんだミネルヴァ!!君まで落ちてしまう」


「いやよっ誰が言う事聞くもんですかっ!!」


「だけどっ…」

 レオナルドは言葉を詰まらせる、到底ミネルヴァの握力では持ち上げる事が出来ないからだ。

 ましてや片手は縁をつかんだ状態だ、片手で一回り以上大きい男性を持ち上げるのは不可能に近い…


 ミネルヴァは考える。


 (ここで彼が海に落ちれば妹が救ってしまう――それだけはダメ!!)

 

 もしかしたら今も見ているかも知れない…船の中で殺さなければ意味ない!!

 どうすれば…エーデルのせいで妹が死ぬ未来なんて許せない――!!

 なら…


「分かったわ離すわ――」


 レオナルドは寂しそうな笑顔を浮かべる。


「最後に俺は…」


「――最後って何かしら」

 レオナルドの言葉を言い終える前に私は船の縁を掴んでいた力を抜く。

 彼の体重に引っ張られる様に私も海へと落ちていく。

 目を見開きレオナルドは私を見る。


 バシャンっと私達は海へと落ちた――ぶくぶくと口から息が溢れる。


 私は一つ言葉をつぶやく

『海流の導きがあらん事を――』

 水のなかで邪魔なドレスが泡となって消えていき、かわりに魚の足が戻ってくる。

 

 私はレオナルドを抱え、水を裂くように船に向かって泳ぐ。

 波に逆らい鋭く突き進むと、海から跳ね上がった――飛び散る無数の水滴は光を乱反射しミネルヴァを彩った。

 両の腕で王子を抱える姿は幻想的だ―― 

 

 その人知を超えた動きと美しさは、船から見上げていた人々の目を奪った。


「いつもとは逆ね」


 そうレオナルドに勝ち誇るように微笑むと彼を船へと投げ入れた。


 その顔にレオナルドは胸が高鳴った、届くことのない手を伸ばし空を切った。

 燃え上がる歓声を背に船へと落ちていく――


「花火の空に舞い上がる人魚!」

「凄いなんてパフォーマンスなの!!」


 多くの人は、レオナルドを気にせず人魚に夢中で目を追うように海の下を見る。



 

 レオナルドが落ちた周辺の人々は動揺する。

 

「ケホッコホッ」 

「…思ったより痛くないな」

 

 レオナルドの視線には、泡のように塊となった水滴たちがクッションのように弾力を持っていた。

 まじまじと見つめると、すぐに溶けるように海水へと戻っていく…


「これが人魚の力か…」


 そう呟くとガヤガヤと人集りができ始める。 


「王子!?いったい何ごとですかな!!」

 

「もしやパフォーマンスで何か事故でも…」


 演目と思っている人々は、レオナルドが殺されかけたとは考えもしていないようだ。


「まぁ…そんな所かな、今日はお祝いだあんまり騒がないでくれると嬉しい」


 シーッと指を口元に当てレオナルドは困り笑顔を浮かべる。

 その言葉に周辺の人々は顔を見合わせ、質問をやめる。やがて彼らをかき分け、マチルダが血相を変えてやってくる。

 

「何処に行っていたのかと思いました!!王子大丈夫ですか!?」


「マチルダ…すまない」


「何事ですかまさか…ミネルヴァ様に」


「違うよ彼女は助けてくれたんだ」


 そう心配するマチルダに告げると、レオナルドは立ち上がる。


「マチルダ命令だ、すぐに船の軌道を変え王宮に帰還する」



 

 バシャンっと飛び上がったミネルヴァは船首(せんしゅ)へと打ち上がる。


「私の余興は楽しんで頂けましたか?」


 わああと拍手が巻き起こる。

 喝采と好奇の目に晒される、彼らはミネルヴァをじっと舐め回すように見る。

 

 そんな彼らをかき分けレオナルドがやってくる、その手には大きな布があった。

 彼らの目を遮るように布を広げる――


「ありがとうミネルヴァ」


「…外交の王子がパーティーで死んだりしたら私の立場がないわ」


 本当にどの口が言っているのかしら…殺そうとしてたのに助けるなんて……

 とりあえず王子を助けるのが妹ではなくなればいい。

 あのまま落ちれば結末は同じだっただろう。


「今から船は港へと帰る」


 これから無事帰れるのかしら?

 それとも……不安がよぎる、けれど未来は変えないといけない。

 私はこの先来るであろう嵐を考え、心がざわついた。

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