24話 罪人の証言
「謀反人を呼んでどうしたいのかねレオナルド?」
「謀反人?あなたはエーデルを俺がハメたのだと言ったではありませんか」
「それはっ…」
彼女が来ることは予想外だったのだろう、彼は自身の発言で墓穴を掘っている。
しかしなんで彼女が…
「私が証言に参ったのはランデール卿との会話についてでございますわぁ」
「会話とな?」
「いったい何の話だ関係あるのかね…」
「だいたい犯罪者を呼ぶとは…」
貴族達のグチグチした言葉にエーデルは目を細めると、口を大きく開く。
「――お黙り!!」
そうつんざくような声を放つ、ビリビリとした感覚が体に這い回る。これにおびえて動けなくなった事を思い出す。
「私の会話を遮るとはいい度胸ね〜三下貴族。あなた達の発言など謀反人の私にすら劣ることを自覚なさぁい」
「なっ!?」
「黙れと言ったのがまだ分かないの?」
その迫力に気圧されたのか、貴族達は言葉が出せなくなっていた…一応国母になるはずだった彼女の気迫は恐ろしいものだ。
エーデルは向き直ると私の顔を憎たらしげに見ると口を開く。
「この女…いいえ、ミネルヴァ・アクアリア殿あなたは陸で始めて出会う人間としてお会いしたわよね?」
「ええ?そうね…」
彼女は私の手を掴むと高らかに手を掲げる。
「皆さん聞きまして!王族より貴族である私が王族と対面するおかしいとは思わなくって!?」
「ミネルヴァ様は一国の姫!どう考えたって不釣り合い」
その言葉に取り巻きたちも確かに…と言葉をつらねる、疑問は膨れ上がり彼らは謎に目が離せないのかエーデルの言葉を待つ。
ランデールは顔色を悪くし汗を滲ませている。
「エーデルやめろ――」
しかしエーデルは止まらない。
「何故、私が人魚の姫の来る場所を知っていたのか!
何故人魚が、レオナルド様と相対するのを阻止しようとしたか!
何故、必要以上に敵視したか――答えは簡単ですわ!!」
私を無理やり掴んだまま、くるりと演劇のように彼女はビシッとランデールを指さす。
倒れそうになるも、演出めいたこの動作に皆は夢中で言葉を出せなくなっていた。
「ランデール卿、敬愛する貴方から私はミネルヴァ・アクアリアの来る日時を私は聞かされ、人魚は害ある存在だとほのめかされたのです!!――それすなわち彼女ミネルヴァ・アクアリアが来てから貴方は人魚を排除しようとしていた最たる証拠ですわぁ!!」
「お前の発言にどれほど価値があるエーデル!!お前は侯爵令嬢ではない…ただの犯罪者何だぞ」
「あら…それはなくってよランデール卿、だってマルシャン家は貴方とのビジネスパートナー…我が家に行けばいくらでも貴方の資料は出ましてよ、そちらの提供はすでに済んでおりますのよ。私の発言はともかくそちらの信憑性は確か…そもそも私がミネルヴァ・アクアリアを助ける義理がありませんわ、こんな魚女…レオナルド様の身の上が危なくないなら罵っていますわ」
エーデルの言葉にランデールは、ぐっと声を漏らす。
そして相変わらず酷いわねこの女…
しかしまぁ確実な物的証拠だ…よく思いついたものだ。
レオナルド…しばらくいないと思っていたけどもしかしてエーデルと結託していたって事?
ちらりと顔を見ると冷やかなレオナルドに寒気を覚える。
恐ろしい男だわ……
「お前が何故、発言を協力する!?何故、私ではなくレオナルドを取るのだ!?マルシャン家の未来を取るなら…」
「何を仰っているの?」
「ランデール卿…貴方が王になろうとした事は聞いているわ、そんなの許せるわけないでしょお?――身の程を知りなさいよ、あんたなんて妾腹の分際で!!」
「いくら王族の高貴な血って言ったて下賤なのよぉ……、だいだい侯爵家の私の血にすら劣る分際で…だから私のマルシャン家に取り入っていたくせに」
汚いと言わんばかりの目線にランデールは、腹を立てエーデルの元にやってきて杖を振り上げる。
「貴様ぁああああ」
「ひっ――」
「危ない!!」
エーデルに振り被られた杖を、私は思わず庇う――彼女を庇う理由なんてない筈だ…しかし身体が動いていた。
杖の当たった所がびきりと痛む、どうやら当たりどころが悪かったのだろう――
「あっ貴女…なんで」
「知らないわよ動いてたの」
レオナルドの窮地を救ったのが彼女でとても居ても立ってもいられなかった。
彼女に借りを作ったようで悔しかったのだ――
「叔父上を拘束しろ!!」
レオナルドの言葉により、ランデール卿は拘束され地面へと叩きつけられる。
武器を奪えと、兵達は叫び杖を奪われる。
「認めんぞレオナルド――お前のようなバケモノがこの国を統べるなど!?」
「それが本音かい叔父上」
「あぁそうだ。人の気持ちを無理やり捻じ曲げ好意を植え付ける…何故おかしいと思わない、何故祝福だと持て囃す!!
お前は異常だ、
異物だ、
怪物だ!?」
次々とレオナルドに罵倒をランデールは繰り出す、体裁などまるで無く守る必要も無いと言わんばかりに。
本音と対面したレオナルドは静かにその言葉を聞いた。
「お前の異常性を分からない民や国の為に私は――人を導く人にならんとしたのだ!?」
「よく言うわね!!国益をビジネスでしか測れないくせに」
そうランデール卿に私は叫んだ。
聞いておけば…レオナルドの能力ばかり批判している、彼は政治においてその力は使っていない。
「何だとこの魚女!!」
こいつまで、その言い方を…
「貴方は思い通りに国を動かそうとばっかり…あれが気に食わない、自分の方が偉いばっかりじゃない!!レオナルドは違ったわ――彼は民に寄り添いより良い暮らしをさせてあげたいと一生懸命だった、自分の為じゃなくて民の為に国を作ろうとしていたどちらが王の器か明白だわ」
ミネルヴァの言葉にランデールは返す言葉もなく地面に押し付けられる、恨めしそうに目線だけこちらに依然として向けていた。
「貴方が本当に崇高なら神は貴方に微笑んだでしょう――けれど貴方は太陽に選ばれなかったこの国ではそれが全てですよ」
「本当に王として相応しいなら父上が継ぐ前に貴方の頭には王冠があったでしょうよ…そしてあなたは一つ勘違いをしている」
「何?」
「父上は最後まで俺を王にするか悩んでいた…継がせようと決めたのは此処最近の話だ。だから…俺はずっと王太子と名乗らせて貰えなかったんですから」
「そんなはずは…――嘘だ、嘘だ、うそだあぁあああ」
「愚かですね…叔父上。貴方は自ら王になる道の歩みを外したのです、陛下をいえ…貴方の兄を貶めようとした時からね」




