23話 暴かれた悪行
城につくと兵達が私達を出迎える既に時間は深夜に迫っていたが、城内はガヤガヤとしていた。
レオナルドや私の帰還が遅く、捜索が出されていたようだった。
「レオナルド様お帰りになられてよかったです!!」
「心配かけたね、皆に見つかったと連絡しておくれ」
「それから頼まれていた捜索からこれが…」
封蝋の押された書簡だろうか?既に空けられているが中身がそのまま入っているようだ。
レオナルドは中身を確認すると、直ぐに戻した。
「…成る程ね」
「それ何?」
「直ぐにわかるさ」
「ランデール卿は何処にいる?」
「レオナルド様より早くに帰ってきましたよ」
「それじゃあ後日会いにいこうかな、いい加減この争いを終わらせないと」
レオナルドと共にランデール卿の元へと向かう、進む事に心臓が跳ね上がる。
ランデール卿の部屋に近づくと彼の声らしき怒鳴り声が響いていた。
「あれがまだ見つかって居ないだと!?あれだけ時間があっただろう!!」
「王子の近衛達がずっと王妃ジェルメーヌ様の部屋を張っていたのです…」
「何だと!?あいつはずっと王宮を離れていたではないか――まさかっ」
何かランデールはじ一つの事実に気がつくと、キィと開く扉の方へと振り向く。
「何かに気がついたのかな叔父上」
「レオナルドっ、私は入る許可などしていない出ていけ!!」
怒気のはらんだ声で私達に言葉を吐きつける、しかしレオナルドは怯むどころか部屋へと足を進める。
その部屋には他の貴族達もいた、恐らくはランデールの取り巻きだろう…情報でも共有していたのかしら?
よく見ると最奥にはマリアがいた。
レオナルドのその後続き部屋にはいると、言う事を聞かないレオナルドに苛立ちギリッと彼は歯を食いしばる。
「ランデール卿、貴方にお話があって来たんです。帰るわけには行かない」
「なにぃ?お前のエーデル嬢の一件の弁明はまだ出ていないだろう!!」
「貴方の憶測によるものでしょうそれは?証拠はありません」
「その女とつるんで居る事が証拠だ!?そいつはアルカディアの発展を邪魔する悪女だ、魔性に騙されているのだよレオナルド!!」
「そうよレオナルド様、人魚の国がアルカディアの未来を奪っているですよ」
ランデールの言葉に便乗するようにマリアも私を嘲笑する。
(あの人達…あれだけの事をしておいて言い逃れ出来ると思っているのかしら…マリアはともかくランデール卿に逃げ道何てあるとは思えない)
「……聞いておけば」
レオナルドは感情的な言葉を吐きかけるが怒りを抑え、ランデール卿に向き直る。
「――俺がここに来たのは、貴方のした犯行を突き詰める為だ」
「何の話だ?」
「アクアリアの六番目の姫、アンリエッタ・アクアリアの誘拐事件についてだ」
予想もつかない事件の話に、ミネルヴァはランデール卿を思わず凝視する。
(えっ――なんで今その話が…もしかしてランデールが関わっていると言うの?)
「あの事件はジェルメーヌ王妃の単独犯と話がついたはずだ、身内の失態を更に私に擦り付けるつもりかな?節操がなくなったものだなレオナルド」
「レオナルド様そうですよ、騙されるばかりか…叔父上を追い込むなんて」
「そのように世迷言を吐くなら、ランデール卿に王位を譲りなさい王など務まらない」
ランデール卿の言葉に続き取り巻き貴族達は、数でレオナルドを責め立てる。
しかしレオナルドの顔は恐ろしいほど冷たく、その表情は微動だにしない。
無言の圧を感じたのかどんどんと彼らの声は小さくなる。
「ジェルメーヌ王妃の書斎を調べたのですよ、そこで一つの書簡を見つけました」
「その内容は、アンリエッタの身柄を別のものへと引き渡すかわりに、調査時アリバイを作ると確約する内容でした――そしてその宛名には…ランデール卿貴方の名前が書かれていたんですよ」
「そしてジェルメーヌ王妃とやり取りしていた書簡は他にも見つかっています、貴方は俺の母と取引していたのは紛れもない事実だ」
ランデール卿とジェルメーヌは繋がっていた――あろう事かあのまま妹が見つからなければ…
「まさか人魚を売り飛ばそうとしてたのは最近じゃなくて、舞踏会のあの時からってこと!?しかも私の妹を…その時からアクアリアとの同盟を台無しにしようとしていたのね」
これは由々しき事態だ、何故ならランデール卿は自分の意志で王の努力を台無しにし…アクアリアとの信頼関係を破綻させようとしていた。
尚且つその責務を国王と王子に背負わせようとしていた、国の顔の面子を潰す行為…間違いなく反逆行為だ。
アクアリアとの外交が何の利益もないならともかく、一定の利益を得たうえでの行動…それはランデール卿の私情に他ならない。
「妹の人魚は売り飛ばし行方知れず…そして王妃の事が暴かれなければ、姉は死ぬか王妃の晩餐を断った不敬な者として王国から追放される」
「そしてその責任は現国王である父上と俺に伸し掛かる、そしてあなたは王の座を得ようと陰謀を企んだ!!」
「抜かせ…ジェルメーヌ王妃の書簡があったとして、お前が内容を書き換えた可能性がある!!私がアクアリアの姫を排除しようとした証拠は断固たるものではない」
「そうですよレオナルドさん…ランデール卿がはめられたのかもしれません!」
マリアはランデールの肩をもち、あくまでハメられたのではないかと主張する大国の姫の言葉に貴族達も大きく頷く。
まだ抵抗しようと言うの?
往生際がなんて悪いのかしら…レオナルドがここまで来たってことはきっと何か策があるのでしょうけど。
もしこれ以上の証拠がなかったら水掛け論になるわ。
……十分すぎる証拠だと思うけど、彼の権力を使えば長引きそうな案件ではある。
「なら…証言をしてもらおうか、叔父上あなたがアクアリアを排除しようとした事を」
「いったい誰を呼ぶのかね?死んだジェルメーヌ王妃にか無理な話だ」
「いいえ――貴女がよく知る人物ですよ、連れてこい」
兵士はその言葉を聞くと、打ち合わせをしていたのか外に向かおうとするがもう一度振り向きおずおずとレオナルドの顔を見る。
「本当にいいんですか?待機はさせていますが…」
「勿論――」
「……分かりました」
兵士達は駆けていき、しばらくの間沈黙が訪れる。
そうしてコツコツと控えめなヒールの音とカシャカシャ擦れる鎧の音と共に彼女はやってきた。
その姿には覚えがある――それは、
「エーデル!?」
思わず叫ぶ、以前とは違い地味な服装に身を包んだ彼女は憎たらしげに私を見ると、以前と変わらない様子で品のある挨拶を披露する。
「レオナルド様の命により――証言しに参りました。エーデル・マルシャン元侯爵令嬢ですわ!!お久しぶりですランデール卿」
そう優雅に語り口調で挨拶をするのだった、それはあの時と変わらないふてぶてしい令嬢としての姿があった。




