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人魚姫の“姉”に転生したので、妹の悲劇を防ぐため王子を殺すはずが執着されました  作者: 目々ノミーコ
3章

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22話 混沌と狂乱

 レオナルドの登場に客たちはヒソヒソと話し出す、何かの演出?それともこれは危機的状況なのかと――、危機感あるものは逃げ出そうと扉を開こうとするもすでに外から施錠され逃げられなかった。


 レオナルドは周りを気にすることなく、ミネルヴァのいるステージへと向かう。


「ランデール卿、俺の連れを返してもらおうか」


「どうやってここにっ!!」


「そんなのどうでもいいじゃないですか」


 いつも通りの余裕な笑顔にランデール卿はペースを崩されているようだ。

 ミネルヴァはその様子を眺めていた。

 

 でも、一人で大丈夫なのかしら…

 そんな不安な気持ちを胸に今は眺めるしかない。


「お前の金など無効に決まっている!?お前の使う金は何処の金だと思っている」


「……一応俺の私財なんだけどな」


 レオナルドは、はぁ…とため息交じりにランデール卿に言うが、ランデールはダンッと杖でステージの床を叩く。


「いいや違う!!

 それは王太子の金だ、国の金だ、王となる私の資産だ!!お前のものではない」


「つくづく欲深いね、貴方の違法な闇オークションに隠された用途の施設運営…この事実が議会提出されれば貴方はもう終わりだ」


「何も終わってなんか居ない!!何を勝ったつもりでいる――観客全てがお前の敵だレオナルド、ここにいる誰もがお前に王になることなど望んでいない!!」

「お前達こいつを捕らえるんだ、こいつさえ居なければ国は私達の楽園だ…同じ敵を倒そうじゃないか!」


 その言葉に立ち上がるものもいた、レオナルドはくるりと彼らのほうに視線を向けると敵意の眼差しで彼を見ていた。


 (このままじゃレオナルドが!!)


「レオナルド――貴方だけでも逃げて!?」


「逃げないよ君を助けに来たんだもの」


 私の叫びをものともせず彼は私に背を向けたまま観客席を見下ろしていた。今にも飛び付かんと観客達は次々に立ち上がらうとしていた。


「今なら皆、俺を見てるよね」


 まさか、あれを使う気なの!?


「ちょっとレオナルドそれは流石に、――」


 ぶくぶくと音を立てながら私は水槽を叩くしかし間に合わなかったようだ。


「“輝けるもの(ポイボス)”」


 部屋全体が一瞬眩い光に包まれたような気がした、ランデールは自分のマントで目を覆い私は手でその眩さから目を覆う。


「まぁなんて素敵な王子なの」


「輝いて見える!」


「レオナルド様ばんざーい!!」


 観客たちは一斉に笑い出し、レオナルドに賛美を綴り始める歌を歌い踊るものまでいた。

 その様は異様で狂気的にすら見える。


(レオナルドの能力すごい力だとは思ってたけど……流石にこれはやりすぎなんじゃないの!?)


「クソっ魅了の力を使ったな――そんなに人魚の事が大切か……なら」


 ランデールはミネルヴァの入った水槽に力いっぱい体当たりをすると、水槽がグラつき台から倒れていく。水の重みで傾いたそれは留め処なく勢いづいて地面へと迫った――


「はっ嘘でしょ!?」


 バリンッとガラスの音がなったと同時にバシャーンッと水が勢いよく飛び出た。

 それに思わずレオナルドは焦ったように駆け寄る。


「ミネルヴァ!!大丈夫かい」


「……レオナルドなんであんな事したの!!」


「助けるにはああするしかなかった」


「そうかも知れないけど、貴方の魔法は解き方も分からない危険な力じゃない!!」


「彼奴等がどうなったっていいよ、君の安全が第一だっ――」


 バチンッとミネルヴァはレオナルド頰を叩く、――許せなかった。

 確かに彼にとって私を傷つける敵だったとしても、その無情な発言は目に余る。


「何をするんだい!?」


「レオナルド!!正気を奪って言う事聞かせといてそれはあんまりよ…軽蔑するわ」


「君がいなくてどれだけ心配したと思ってるんだ!?そしたらこんな状況で…」


「それは……心配してくれてありがとう、でも時と場合を考えて。今回は良かったけど…周りに一般人がいた場合巻き添えだったのよ」


 その言葉に状況を理解したのかレオナルドは、頭を抱える。 

 

「俺が悪かったよ……どうかしてた」


「貴方に悪意がなかったのは分かってる…でも、……その力を私利私欲絶対に使わないで」


「分かった…もうよほどのことがない限り使わない」


 彼はすごく落ち着いたというより落ち込んでいる。

 助けてもらった事は感謝しないといけないけど、……思わず叩いてしまったわ。


 しばらくして、城の兵士達がやってきて私は人の姿に戻ることが出来た。

 馬車に乗り込みレオナルドと共に城に帰還する、空気はとても重かった。


 長い沈黙の中私は一つの疑問を尋ねる。


「そういえば、ランデール卿とマリアは?」


「既に逃げた後だったよ、把握してない隠し道があったらしい」


 なるほど…逃げた所でランデール卿はもう言い逃れが出来ないだろう。


「魔法はどれぐらい使ったの?」


「……君と出会ってからは、5回ぐらいかな思えば使う度に感情が抑えられなくなっているような気がするよ」


「それって副作用って事?」


「分からない……でも、元々一部の神官達はこの魔法を知っていてあまり使うなとは言われてたんだ。元は神の力…人には過ぎたるものだってね」


「じゃあなんでそんなに使ったの!!」


「君のために決まってるだろ――俺はともかく少なくとも君は生死の危機だった」


 レオナルドは悲しげな顔で私を見つめる、当たり前だと言わんばかりに。

 レオナルドは私の命をそれだけ重く見ていたのだ――


 (私の軽率な行動でレオナルドに負担をかけてしまった、これ以上魔法を使わせない様にしないと)


「自分の為に使ったのは、いや…あれだって陛下の為だった。母の魔法を解く術を探す為のね、俺は断じて私欲でこの力を使った事はないよ」


「感情的になってごめんなさい…私も安全にもっと気を配るわ」


「そうしてくれると嬉しい」


 なんだか二人でどっと疲れて馬車に揺られる、城に帰っても大忙しなのだろうと私は頭を悩ませる。

 レオナルドの魔法の事は気になるが取り敢えず疲れた。

 長い長いお出かけだったわ――目を瞑り今日の出来事を思い出すように振り返るのだった。

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