19話 舞台の裏側
マリアと邂逅した私は、思わず二人で固まる。言いたくはないが、私達は犬猿の仲といっても相違はない。
正しく現在お互いの立場を巡っている――
「偶然ですわねマリアさん」
「もしかしてストーカーしてたんじゃ無いでしょうね!?」
よくも憚らずに、転生前の言葉を使えるわね…それとも私と周りで切り替えてるのかしら。
「まさか…、私の外出は正式なアルカディアへの申請のうえで行われています。調べれば何処に行くかの予定地が事前に提出済みでしてよ」
「逆に貴女はどうなのかしら?」
「――っ、私はランデール卿と共での外出よ、何の問題もないの」
「それを言うなら私はレオナルドが同伴のうえよ」
頭を抱える。ランデール卿が書類の申請をしていないなら明らかに贔屓していると丸わかりじゃない。
私が人魚じゃないなら他国で待遇差があるというならそもそも揉める議題だなんともひどい話だ。
「はぁ!?あんたレオナルドさんをこき使ってんじゃないわよ」
「…違うわよレオナルドからのお誘いよ、だいたい私は公務として参ってるわ」
「下品な体で誘惑したんでしょ!?あーあイヤらしい!!」
「……その発想が下品だと思うのだけど、だいたいその誘いに乗ったレオナルドも下品にならないそれ?」
「うっ!?そんなわけないわ――彼は素敵な王子様なんだから!!」
支離滅裂な言動に嫌気が差す、彼女がレオナルドに執着しているのは分かるが…彼を貶める発言は辞めたらいいのに。
十中八九ほかの人に私の事をこんな風に言いふらしているでしょうね……
「それにあんた呑気ね!?貴女がいない間に貴女の噂できっと持ちきりよ〜あんたの居場所なんてなくなるんだから」
「それが貴女のお決まりの貴女の手段だものね」
「……なんの話」
明らかに目を泳がせる、彼女は私が素行をレオナルドと共に調べているのを知らない。
自分の事を何故知っていると言わんばかりに焦っているのが伝わる。
「知ってるわよ貴女が今までどんな風に生きてきたか――どうやって人を貶める辱めたか」
「私に泥棒なんてよく言えたわよね…貴女は泥棒どころか優しさも貴女の悲劇も偽りだらけのハリボテの姫じゃない!!」
マリアは駆け寄ると手に持ってる扇子をたたみそれで振りかぶった――ベシッと音ともに私の頬に痛みが生じる。
彼女は扇子で私を殴りつけたのだ、痛みが頬に広がる。しかしそんな事はどうでもいい――こんな女に揺るがされるなんて私のプライドが許せない。
マリアは強く睨みつけるがミネルヴァの意志のこもった強い目は増すばかりで強く強くマリアを見つめる。
その鋭い視線に怯みマリアは一歩後退りする。
「お話がすみましたらそれで結構では――」
立ち去ろうとする時彼女は私の長い髪を掴み、ギチっと引っ張る。
思わず痛みで声が漏れる。
「何するのよっ」
「出て来なさい貴方達、こいつを“裏”に連れて行って――」
すると化粧室の壁がくるりと周り、ゾロゾロと燕尾服の男達が現れる。隠し扉があったようだ――肌の色は多様で皆お面をつけていた、異国の集団であることが見て取れる。
「ちょっと何こんな所で問題を起こす気」
「問題?バレなきゃ問題じゃないのよ!」
私を取り囲んだ男達は、私の手首を無理やり掴み抱え込もうとする。布のような物で口を塞ごうとしていた、ヤバいこのままだと攫われる――
何か使えるもの、何か…花瓶が目に入る水が入ってるはずだ。
(海水以外の扱いはした事ないけど仕方ないわ――)
バッとミネルヴァは男達の隙間から手を伸ばすと、球体の水が花瓶から浮かび上がる。
「来て!!」
勢いよく水を男達にぶつけると、突然の感触に彼らは驚く。とわいえこの力は本当に水を操る程度でアニメのように水で体を貫いたりそんな威力は無い。
「ちょっと何よその力!?原作に無いことばっかりするんじゃないわよ」
「そんな事言うならあなただってそうでしょ!!隣国の姫から会いに来るなんて本来無いんだから」
その水滴が私に少し当たるが、力が緩んだ隙に私は部屋の外へと駆け出した――早くレオナルドの元に行かないと!!
「そうはさせないわっ」
マリアは勢いよくミネルヴァのドレスを踏みつける、勢いづいた体は制御を失い勢いよく地面に倒れる。床にこすれた皮膚が摩擦を生み独特な痛みを齎した。
それでもミネルヴァは逃げ出そうと力を振り絞るも、燕尾服の男達に押さえつけられる。
「離しなさいよ!?この――」
「ちょっと黙らせてちょうだい」
「はいマリア様」
猿轡をしようとするもミネルヴァは相手の手に噛みつかんばかりで、言う事を聞く素振りがまったくない。
すると一人の男がミネルヴァの首を強く叩いた、ミネルヴァは脳の震えた――視界が次第にブラックアウトし意識が遠のいていく。
首がカクリと落ちると同時に意識を失った。
「予定より早まってしまったけど、最高の舞台にご招待よミネルヴァ・アクアリア」
ミネルヴァを抱えマリア達は、隠し扉へと姿を消した。残ったのは水に濡れた絨毯と、水のない花瓶を残し彼女達はこの部屋から消え去ってしまった。




