18話 歌劇と美が集う道
しばらく進んでいくと市場とは異なる景色が現れる、そびえ立つ建物は豪華絢爛で華美な装いの者たちが行き交う。
美しくも誇張された主張の表現の数々は芸術といった方が正しく、何処か別の世界を眺めいるように感じる。
ここはもしかして、本で読んでいた時に出てきた…アルカディアの中でもっとも華やかなで混沌を極めた歓楽街。
リラの通り道だ――
「本で読んだけど実物は凄いわね…」
「娼婦なんかも居るからね皆目立とうと必死さ、彼女達の華やかさがこの街を維持していると言っても過言ではないけどね…ここは管理が甘くてねまだ違法な店も多い、綺麗な側を被った悪党貴族達の巣窟さ」
「結構言うわね」
「そりゃそうだよ俺が来るのだって、そいつらに圧をかけるためだからね…」
遠い目で建物を眺めていると、レオナルドは私の手を引き劇場に向かう。
そこでは美しい舞台と彩られた歌姫のポスターが貼られていた、レオナルドの顔をみるなりフロントの男がやってくる。
「王子!何用ですか〜王子ももしかして麗しの歌姫レベッカの公演に来たのですか〜」
「“王子も”って事は叔父様が来たのかな?」
「そっそれは王子でもお客様のことは言えませんよ〜」
何だかバレバレなフロントマンね、来てるってその反応だけで分かってしまうわ…でも彼はなんでこんな所に出入りしているのかしら?
そういえば人魚達が働ける場でも芸や観光とか言ってたわね…彼がこういう芸能を嗜む趣味があるなら納得だけど。
「今日は彼女と観劇にきたんだ、言い値を払う上の席をお願いするよ」
「ええ、畏まりました〜」
そうルンルンと裏にいき私達は上の席へと通された、本来は歓談できそうな広さだがレオナルドの為に一角が貸し切り状態になっているようだ。
「叔父さんが来てるから来たの?」
「うんまあね、何だかきな臭く感じてね…」
「居るようには思えないけど」
キョロキョロと上や下を見下ろすも、ランデール卿らしき人物は見当たらない。分厚いカーテンが舞台を覆い隠しているだけだ。
「かなり頻繁に出入りしているそうだけど……それにここらは失踪事件が多い」
「劇を見てしてみて分かるものでは無いと思うけどね」
「そうね…」
陰謀渦巻く渦中とは思えなほど華やかで賑やかな世界、城に戻ればどんな目で見られるか分からない。
そういえばレオナルドは、注意を向けたいって言っていたけど…だからこんなに派手に色んな所に赴いているのかしら。
「公演までまだ時間はあるかしら?」
「うんそうだね、アナウンスもまだだしね」
「お化粧直しをしたいの、動き回ったから気になって…」
「あぁそれは大事だね待ってるから行っておいで、会場から出たら入れなくなれるからダメだからね」
「ええ」
部屋をでてガヤガヤとした音が遠ざかる。
近くにいる人を見つけ手洗いの場所を聞くために近寄る。
「手洗いは何処かしら」
「あちらに用意されています、お好きにお使いください」
見慣れない場所を歩くと会っていても、何だか落ち着かないわ…わざとらしく派手な赤い床も関係しているかも知れない。
アルカディア王家はどちらかと言うと白く清潔なイメージで、あちらになれると華美なものは少し品を損ねて見えた。
(といっても大衆も金さえ払えば見れるような場所でみたいだし……上流階級のみってわけじゃなさそうだものね、とわいえ商人や市民とは言え無さそうな人々だろうけどね)
目的の場所を見つけ、きいっと扉を開く。
ふうっと息をつく人が多い所を巡った為か流石に疲れた。
小さなカバンにしまわれた、口紅等を取り出すいつもはメイド達にしてもらうが今日はいない為簡易的なものだけ持ってやってきた。
「やっぱり少し色が落ちてるわね」
食べたりしたためしかたがない、気になる所だけ直せばかなり最初に近い形に戻る。
元々顔が濃いため、そこまで化粧していないのもあるが…海だと出来ないからやっぱり楽しいわね。
手直しが終わる頃にキイっと音がし別の客が入って来ることが分かる。
くるりと振り向く――その顔をみて思わず驚いた。
「なんであんたがここに!?」
先に声を上げたのは私ではなく、マリアだった。




