16話 現地調査
ミネルヴァは市場の調査と言う名目でレオナルドとデートする事になり、それを聞いたメイド達はキャーッと声を上げて衣装を選び出していた。
彼女達が様々なものを用意してくれて、歩きやすいものが選ばれた。
小花が散った普段より可愛らしい柄で、パニエのようなものをドレスの下に仕込んでボリュームをだしていた。
レオナルドもお出かけスタイルでいつもよりもラフな格好をしている。
「今日のドレスも素敵だね!踊れないのが残念だよ」
「全く…今日は仕事の体じゃなかったかしら?」
「そうだね、ほら行こう」
そう手を差し伸べられると、自然にミネルヴァは手にとった。もう2人には、慣れた動作だった。
馬車に乗り込みカタカタと揺れる道を感じながら街へと向かう、ずっと城の生活だったがようやく街を知ることができる。
海の中は開放感はあったが代わり映えのない景色ばかりだったが、街に近づく事に変わる景色は見慣れないものでワクワクした。
「さあついたよ――昼は、ここで|市場を見て回ろう」
「すごい人集りね」
「まぁ食べ物なんかがほとんどだからね、新鮮なうちに皆仕入れたいのさ。今日は天気が良いからね皆買い込みに来たんだろうね」
通りには人がごった返しワイワイと賑わっている。楽しげに人々が行き交い、買い物を皆笑顔でしてた…これを見るだけでアルカディアどれだけ豊かなのか感じられた。
目を輝かせるミネルヴァにレオナルドは、楽しげに微笑み愛おしそうにその様子を眺めた。
「じゃあ見にいこう!」
「ええ」
二人で周りを見て歩くと、屋台の様々なご飯や並ぶ大量の果実。美しい食器や丁寧に織られた布など様々なものが並んでいた。
王宮には違う華やかさに気分が上がる、こんな所に来れるなんて夢にも思わなかった。
じっと気になる食べ物に目を奪われる、スパイスを塗り込んだ鶏串のようなものらしくじっくりと焼き上げられていた。城では出ることがない香ばしく刺激のつよい香りに思わず見つめてしまう。
「気になるかい?」
「ええ、あんまり嗅いだことのない香りだったから」
「じゃあ食べてみよう!!」
「えっ!」
こんな下町のものレオナルド食べるの疑問よりも先に、レオナルドは買いに行ってしまった。
「二つ貰えないかな?」
「はいよ二つねって…王子!?久々に見ましたよ〜」
「最近忙しかったからね、繁盛してる?」
「もっちろんですよ!!そこのべっぴんさんはどなたで」
「他国のお姫様だ、この国を知りたいんだって」
「そりゃいいせっかくなんで、タダで持っていてください!」
「それは悪いよ」
「いーや!王子がいるおかげで繁盛してんだ!!」
問答を繰り返しているうちに、「王子?」「王子が来てるのか!!」と人集りができ始める。
わらわらとレオナルドの周りに人集りができ始める。
「王子ひっさびさじゃないですか!!」
「商人の法外な仕入れ料金を暴いてくださりありがとうございます!!そのおかげで今市場を保てています」
「前の孤児院の工事…本当に感謝の極みですわ、行く場のない子供たちがどれほど助かったか…」
「治安維持のために兵の巡回も増やしてくれて夜も安心して歩けるようになりました」
フレンドリーに彼らはレオナルドに話しかける、不敬ではないのかと思うも彼はニコニコと嬉しそうにその光景を眺めている。
「皆が喜んでくれて良かったよ、でも何でも出来るわけじゃないからね」
「もっちろんですよ!!」
彼って…、こんなにも愛された王子だったのね。
照りつける太陽が彼をより輝かせているように感じる。
ランデール卿が強行できないわけだわ、彼が継がないだけできっとこの街の人々は暴動を起こすだろう。
人々はキラキラと輝く羨望の眼差しで、希望に満ちた声でレオナルドを囃し立てる。
皆が彼を、王子を愛している――
何だか…隣にいるのに遠くに行ってしまったようだわ。
「皆話してくれるのは嬉しいたけど、今日は市場の調子をみて回らないといけないんだ」
「それにもっと彼女にここの事を知って欲しいからね」
「それはそれは悪い事をしてしまいました!?」
「いいんだ皆楽しそうで良かったよ」
街の様子に彼は満足したのか柔らかい笑顔で辺りを見渡す。
「それじゃあ王子デート頑張ってくださいね」
「うん!」
「ちょっと公務でしょ!!」
そう私が突っ込むと皆は、ニヤニヤとからかう様な目線で私達を眺めていた。
何だかんだ受け入れられている事にホッとするが…人では無いと知った時どう思うのだろうか…と一抹の不安を覚える。
「どうしたんだい」
「何でもないわ」
そう彼から受け取った鶏串を頬張った――すると食べたことのないスパイスの刺激と香草の香りが鼻から抜ける。
ガツンッとくる暴力的な味のインパクトはあっさりと私の味覚を虜にした。
噛むと溢れる肉汁が濃い味付けとよく絡み、中毒性のある美味しさを生み出していた。
決して上品な城では得られない味わいだ、丁寧に暮らしてきたせいなのか余りにも感動してしまう。
「美味しいよね、ここの串」
「すごい刺激的な味ね…驚いたけど嫌いじゃないわ」
そうして二人で団欒しながら街を巡り様々な物に出会った。
新鮮なフルーツを売る青果店、今年の気候と豊作な果実を教えて貰った。
市場の隙間で弾き語りをする旅芸人、何処かの独特な音楽が耳心地よくパフォーマンスも目を見張るものがある。
この二つは知識や興味どれをとっても面白かった。
最後にとよったのは酒屋だ、ワインが立ち並び次の宴会の酒を値踏みしていたようだ。
レオナルドは少し話を聞きたいと、店主と話し込んでいた。
私は少し暇を持て余し、後ろを振り向くと少し変わったアクセサリー屋さんがある事に気がつく。
それは流木に装飾をあしらったとても変わったものだった――
「お嬢さん見てくかい?」
「ええ」
「綺麗だろ?でもそれだけじゃないお守りも兼ねているんだ」
「お守り?」
「流木は長い時を駆けて風化しながら、旅をしながら小さくなって陸にやってくるんだ。だからねどんなに苦しくても必ず何かは残り、長く苦しい人生や未来が訪れてもを守ってくれると思われているんだ。要は挑戦を応援するものだよ」
「何だか思ったより、辛いこと前提のお守りなのね…」
「そりゃそうだ!良いことだけ見たいならこんな木じゃなくて金細工の方がよっぽどいい、海の広大さに憧れたり旅の勇気を欲しい人がのこれを買うのさ」
「……何だか、寂しいけどちょっと素敵ね」
「これいただけるかしら?」
「まいど!でも赤い宝石でいいのかい?君ならきっと緑のほうが似合うと思うけどね」
「この色がいいの!」
赤い宝石がはめられたアクセサリー、きっと水の中で木がくちても石が残ってくれる。
もし海に帰ったとしても、それが残るだけで私には御の字だ。
きっと寂しいけれどレオナルドの事を覚えてられる、そんな気がするから。
「戻ったよミネルヴァ!」
「んっ?何か買ったのかい」
「そうよ、でも秘密」
「えー!知りたかったな」
私は小さなつつみ紙をそっと服に忍ばせふふっと笑うと、レオナルドは何か気になるようで少し不服そうにしていた。
私が断固として教えないと分かると、レオナルドは気分を切り替えたのか目線を前に向ける。
「それじゃあ、次に向かおうか」
「次はどこに?」
「海辺の教会さ!」
それって――
ミネルヴァは思考を巡らせた、その単語には覚えがあったからだ。
間違いない、この世界で出るその場所は…隣国の姫マリア・ガーランドがい修道女として身を置いていた場所だ。




