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人魚姫の“姉”に転生したので、妹の悲劇を防ぐため王子を殺すはずが執着されました  作者: 目々ノミーコ
1章

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5話 苦悩は数しれず

 ミネルヴァは、杖を付きながら歩く練習を繰り返す。

 今日は雨なこともあって、レオナルドが気を利かせダンスホールを貸してくれた。


 危ないと止められたが、パーティーを口実に言いくるめた。

 幸い船で祝う事もあり、広い場所が空いていてとても助かる。

 入り口から端まで杖を使って、よろめきながらも歩く事に成功した。

 

「ミネルヴァ様、凄いです!」

 そう言ったのはメイドの一人であるマリーがパチパチと手を鳴らす。


「ありがとう、…でもまだ杖無しでは難しいわ」


「いえいえこの調子ならダンスだって覚えられちゃいますよ!」


 素敵なんだろうな〜とマリーは手を合わせ、思いふける。

 確かに自分が着なくても、沢山の装飾や豪華な衣装を眺めるのはいつだって女の子の夢よね。


「そういえば今日ほかの皆さんは?」


「船の内装を整えるために、マチルダさんは城外に」

「ほかの二人は、ミネルヴァ様のパーティーのお洋服や装飾を探しています」


 成る程ね…私が来たことで支度が増えたのね。

 確かに事前に用意するにしても、サイズが分からなければ用意できないものね。


「助かるわ」

 感謝を述べたあと、疲れからかふぅと息をつく。

 

「お水と休憩できる椅子を用意します!」

「私ったら忘れていました」


「いいのよ待ってるわね」


 ドタバタと彼女は駆けていく姿を眺める。

 (きっといつもの事なんでしょうね…)

 そうマチルダに怒られるメイド達を考えて、クスっと笑ってしまう。


 ――本題に戻りましょう。


 私の目的は、妹の悲劇と死を回避する事。

 正直王子を殺さない方法も、考えていないわけではない。


 一つ、出会わなければいい。

 外交をしている国で会わないのは至難の技…現実的ではないわ。


 二つ、魔女と取引させない。

 妹がいつ城から抜け出すか分からない、これも不確定が過ぎる。


 三つ、王子を殺す。

 これが一番確実…、そもそも物語でも殺す事で彼女は海の世界に帰れるはずだった。


 そして新しい選択肢……


 四つ、王子が既に結ばれている。

 既に恋仲の相手がいれば、さすがの妹も諦めるだろう…


 エーデルがレオナルドと仲睦まじければよかったんだけど…思考が詰まる。

 

 レオナルドは、エーデルを良くは思っていないだろう。

 そう思うのは、婚約者がいるのにも関わらず、私との距離が近いからだ。

 もしそうでないならとんだ浮気ものだ。


 四の方法…これが望ましくない以上、王子を殺すしかない。

 その方法は――


 ガチャっ、その音はミネルヴァの思考に待ったをかけた。


「マリー、もう帰って――」

 その言葉を言いかけたが、そこには不敵に笑うエーデルがいた。


「……これはエーデル嬢、ごきげんよう」


 ミネルヴァは、杖で体を支えながら反対側の手でスカートの裾を持つ。

 エーデルは、上から下まで私を観察すると扇子を口に当てる。

  

「ようやく挨拶ができるようになったのね」


「はいお見苦しいお姿を見せました」


 一体、何をしに来たのだろうか…

 あいも変わらず、使用人を引き連れ威圧感を放っている。

 

 あれ以来彼女には会っていない、予想のつかない人物に体が強張るのを感じる。


「ほんとよねぇ、陸でまともに歩けもしないんだもの」

「声を上げないのが大変でしたわぁ」


 (嫌味な人ね…)

 (確かに恥ずかしい姿だったのは認めるけれど)

 砂の上でさらした醜態に悔しさが思い出される。


「あぁそれから、いくら待ってもあのメイドは来なくってよ」


「っ――」


(わたくし)貴方にお話があって、お帰り頂いたの」


 手にはマリーが持ってくるはずだった水のはいったグラスを持っていた。

 よく見ると彼女の取り巻きの使用人が水差しを持っていた。


 おそらく仕事を引き継ぐなど言って彼女を退けたのだろう……


「お話とは?」


 なるべく刺激しないように穏便に終わらせないと、そう思っていると不機嫌そうにエーデルは私を睨みつける……


「レオナルド様に色目を使うのやめてくださる??」


「――は?」


 一体なんの話?

 困惑するミネルヴァをよそに言葉を続ける。


「あんなに近くでベタベタとぉ…」


「あれは、歩く練習を手伝ってくれただけで下心なんか――」


「黙りなさい!!」


 ビクッと大きな声に体が思わず萎縮する。

 

「私は国母となるために育てられた公爵令嬢」

「片や貴女は、深海から来た半魚の存在っ!!釣り合うと思っているのぉ!!?」


 エーデルは感情のまま、グラスを振り上げ水がかかる。びちゃりとスカートは濡れ冷たさが身体へと伝わってくる。

 ポタリ――水滴が皮膚に滴った。


 パキパキと皮膚が変わる感覚が伝わる、足元を見ると私の脚には鱗が浮かび始めていた。


「ッ――!?」


「あんら〜」

  

 エーデルはにまぁと歪んだ笑顔を浮かべた。


「私に水差しを渡してくださる?」


 その言葉に何をされるか想像したミネルヴァは、必死に手を伸ばす。


「待って――それだけはっ!!」


 懇願は虚しく、広いダンスホールに響いた。

 ビシャアッ

 水が身体にまとわりついていく――カランっと杖が倒れた。

 そしてビタンっと、地面に打ち付ける音が響いた。

 

 濡れたドレスから伸びていたのは魚の尾だった。


「――バケモノめ」


「何でこんな事を…」


「何でですって…?」


「レオナルド様が貴女に笑ったわぁ」

 

(……それだけで?)

 あまりにも単純な動機にミネルヴァは呆気にとられる。しかし言葉は続いた。

 

「両の腕で(かか)えられて、腰を()かれ、そんなの――大罪にっ決まってるじゃない!!」


 肩を上下しながらエーデルは怒りを顕にする。

 

「私が、

 私だけがっ、

 独り占めにする事を許されてるのよぉおおお!!」


 (一体何が、――彼女をこうするの?)

 理解できない強い執着を目の当たりにし、ミネルヴァは言葉を失っていた。

 逃げる手段もなく思考ばかり巡る。


「あの方が女に会うなんて許せなかった…」

「だから最初から――海に送り返すつもりでしたの」


 静かに語る声と、何をされるか分からない状況に震える、――魔法使えば乗り切れるかもしれない。

 けれど外交として訪れたのに問題は起こせない。


 (どうすれば、いいの――)


「困ります」

 

「どいてくれないか」


 この声って――

 期待しちゃいけない、そう心を押し殺そうとするも上手くいかない。

 

「お待ちください――、」


 ドンッと扉を無理やり空け、レオナルドがやってきた――私の姿を見た彼は驚いた顔をする。


「これは……、」

「エーデルっ!!」

 それは彼らしくない怒気を含んだ声だった。

日間(4/18)の26位ありがとうございます!!

とてもびっくりしています、これからも頑張ります。

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