9話 姫が二人、王子は一人
マリアは集まりが終わった事を聞かされ、レオナルドを探し回っていた。
どこにいるのかしら、私の王子様!そう思うと足取は軽い、重たいドレスが嘘のようだ。
せっかくの話し合いだったのに……彼の父親が倒れたせいで台無しだわ。ほんっとタイミングぐらい考えなさいよね!!
でもなんだか、彼怒っていた気がするけれど……まぁ気のせいよね。
ここで父親が倒れた事を心配して傷ついた彼を支えるわたし、シチュエーションとしては最高ねこう思えば運がいいわ。
ニヤついた口元を押さえる、こんな顔したらせっかくのマリアの可愛い顔が台無しじゃない!
笑うなら綺麗にしておかないとね。
遠くで聞き間違えるはずのない、彼の声が聞こえる。
(テキトーに歩いていたはずなのに、やっぱり私って運がいい〜〜)
角を曲がれば、目的の彼に辿り着く――しかし何か余計なものも目に入った。
黒く艶めく波のような髪、キツそうな顔立ちだが目を鮮烈に奪う美しさと豊満な体型…特に胸は自分との厚みの差に思わず比べてしまう。
華奢で愛らしい自分とは、当てつけのように真逆の女が親しげにレオナルドと話していた。
(誰よこの女!!)
「レオナルド王子、緊急な会合があったとお聞きしておりますわ…私、心配で」
「マリア殿…ご心配ありがとうございます」
「ミネルヴァ彼女はマリア・ガーランド殿、隣国の姫君だ」
潤んだ瞳で訴えかけるも、レオナルドはマリアから興味をすぐに外しミネルヴァに視線を注ぐ。
(えっ今マリアより、その女を優先した??そんなわけ無いわよね?)
「初めまして、ミネルヴァ・アクアリアと申しますアクアリア王国の姫です。アルカディアとは同盟を機に外交官として滞在しておりますわ」
「まぁ私ったら挨拶しなくてごめんなさい!丁寧にありがとうございます」
(外交…つまりこれが例の?ふーん、けど随分とイメージが違うわね…姫って事は人魚姫って事でしょうけど言われてるような愛らしい容姿では無いし、まあここまできたら“主役”は用済み。お見合いをして、そのまま国を支援する話でもすれば予定通り事が進むはず…)
「それであの…お見合いの話は――」
「マリア殿、その話はしばらくはできません」
なんで!!どうして断るの!!…婚約者はいないと聞いているわ、何が気に食わないっていうの――
「なっ何故でしょうか、わざわざこちらからまいったんですよ」
マリアは泣きそうな顔で頬を赤らめた。
ひたすら練習した顔だ男たちにはいつだって効果抜群の……はずだった――
送られたのは呆れたような、面倒と言わんばかりの顔だった。
「わからないのですか…王が倒れたのです、俺には責務があります」
「私、いえマリアなら力になれます、そのためにもお話を!!」
「マリア殿……俺は、自分の父が倒れて自分の結婚を考えられるほど無情ではありません。あなたの国が如何に大国であったとしてもです――」
太陽のように暖かな色なのに瞳は冷え切った感情ばかりが伝わる、――強い拒絶を感じた、いやそんなはずはないきっと彼は疲れているんだ。
そうまだ助けるというフラグが足りないからだ、そうすれば運命は私に帰結するはず。
「行こうミネルヴァ、公務として君に話さないと行けない事がまだある」
「えっでも……」
「ほら――」
戸惑うミネルヴァを気にせずレオナルドは彼女の手を彼は握る。
(は???)
被害ができず心のなかでマリアは、怒りが立ち込めた。
彼女に優しげな暖かな視線を送り、レオナルドは自ら手を引いていく。
公務と言っていたが本当に?――そんな疑問がマリアの中にひしめいた。
ミネルヴァと呼ばれたあの女は、どこか私を気にしてかチラリと振り向いていた――それすら私には怒りの材料でしかない。
遠くなっていく背中は曲がり角を進み、私の眼前からすっかりと消えてしまう。
「お前ねっ……マリアからあの人を奪ったのは!!」
マリアが悪いんじゃない、あの女がきっと王子を誘惑したのよ。あの下品なあの体を使って…そうに決まっている。
同盟なんて変な話が出来ているのだって全部あいつのせいだ、じゃなかったら私が選ばれなくて、こんな惨めな思いするはずがないんだから――
「見てなさい、お前のことを地獄に叩き落としてやるんだから」




