7話 議論の行く末
「貴方の回答は自国の発展ばかりで、我が国の事に対する配慮を感じません」
そうランデール卿の言葉をは、私達のリスクを余りにも無視したものばかりだ。華やかな物に惑わされてはならない。
「聞いておけば失礼ですぞミネルヴァ姫!!」
「失礼?ランデール卿の言葉を一つ一つ取り上げさせて頂きますわ」
ミネルヴァがそう言葉を吐き捨てると、それ以上は貴族達は食いつかなかった。
話を始めると言わんばかりに指を立て、分かりやすいジェスチャーを添えるとランデール卿はじっとその発言を待っていた。
「一つ目、まず最初にレオナルド王子が触れた、環境への配慮への回答がありませんわ。我々は海に住まう住人です生活圏に諸に影響が出ます、土木工事を行なって生き物が死に絶えた場所なんていくらでもあります」
「二つ目、海域について…見える海全てがアルカディアのものとでも?我々が住む地域に介入するなら、わが国王との対談なしに決めるのは余りに配慮にかけます」
「三つ目、人魚の生態を分からずにアルカディアの労働力として扱うことです、陸付近で暮らすうえでの健康面や労働環境に対する話が一切ない…理解を深める考えは素晴らしいですが、我々側が人に合わせる負担が大きすぎますわ」
その三つの発言を聞くと、周りの貴族達の反応は少しずつ変わっていく。
ミネルヴァのはっきりとした意見と理由に、女だからと見くびっていた彼らは圧倒されていた。
怪訝な意見を述べるものもいるが、今一度考えを再考必要があると思ったものは身近なものと意見を小声で交わしていた。
「確かに…海に住むなら人魚達が諸に影響が出る、断りなしには出来まい」
「もう少し人魚側からの寄り添いがあっても……」
「いや既に、海域をきり開き物資や資源の提供がある……アルカディアからの支援の方が不足している、そんな事を言えば交易を打ち切られる」
「港が出来ればそれは補填が出来る」
「しかし海に過度な手をいれるのは、そもそも宗教的にご法度ですぞ」
貴族達はそれぞれミネルヴァの言葉に対してコソコソと意見を言い合う。
様々な意見が交差する中ミネルヴァは心臓がバクバクしながらも、自分の意見を述べる。
(私の言葉にこの国への大した影響はない、けれど重鎮たちに今一度同盟としてのあり方は考えさせられる…国同士の契約は彼らは無視できない)
正直、怖いし今すぐにでも逃げ出したい……緊張で手には汗が滲み必死に顔を維持している。
こんな時は自分の容姿はありがたい、少し睨めば威圧感満載で貴族達は怯んでくれている……ほんの少し、いえ大分悲しい気がするけれど今は気にして居られない。
ランデール卿…確かにアルカディアにとって、発展をもたらすかも知れない。
けれど彼の政策にアクアリアの摩耗は計算に入っていない…そう発言から察せられた。
もし気にしているなら、私達のデメリットやメリットを明確にする筈だ、しかし彼からはそんな発言は出なかった。
「アルカディアの国王並び王子は、私が歩けるようになるまで公の場は避けて、暮らしのサポートに徹してくださいました…貴方の発言にはそれらが一切伺えません」
「ですので貴方が国王になる事は、“不安”としか言えませんわ」
ランデールは眉を寄せ、威圧感満載の顔を私に向ける。優男なレオナルドよりも、はるかしっかりとした体格で雄々しい彼の顔は恐れを抱かせる。
こんな所でひるんじゃダメ――そう自分を鼓舞する。
「…ミネルヴァ姫、それはすまない事を言った…」
(…思ったより簡単に食い下がるわね)
予想外にあっさりと話が終わったため、私は気が抜けてしまう。
もっと言い争うことを覚悟していた。
「しかしアルカディアを思ってなんだ、この国を一番に考えている…それで疎かにしてしまって申し訳ない。ミネルヴァ姫が不安になるのは仕方がない」
「……そう言って頂けるならこちらも引き下がりますわ、決まってもない内容でずっと詰めるのは此方としても本意ではありません」
アルカディアの抱える問題は私には口出しはできない、ひとまず王位継承の話や港の開拓の話は流れた…レオナルドの助け舟を出せるのはここまでだ。
(別にレオナルドのためじゃなくて…自分と祖国ためだけどね)
レオナルドはパンっと意識を集めるように手を叩く。
今まで成りを潜めていたが、変わった空気の中で次の事を考えていたようだ。
「取り敢えず、新しい事業等は今はなしだ…どちらが王になるかもね。今決めるべきは、父が行ったアクアリアとの外交維持と大国ガーランドとの同盟等の是非だ」
「ランデール卿もそれでいいかい?」
「……確かに今の現状を保つ事が優先ですな」
そうしてようやくまともな議論が始まった、あんなにも争っていたのが嘘のように意見交換が行われる。
少しピリついた空気は残るものの、おおよそ揉めることなく会議は終結した。
現状のアルカディアを動かす事は望ましくない、方針を変えるにしても王位継承者が確定してから。
今はアルカディアの現状が崩れないように守る事が、先決と大体の方針はそうなった。
(にしても…王位継承で揉めるなんてね、レオナルド大丈夫かしら)
レオナルドの話では、王位継承は2年後に正式に行われるはずだった――穏便にレオナルドに引き継ぐ前に、こんな事になるなんて。
これではレオナルドと国王の計画が台無しだろう……
(正統な血を引く唯一の子息レオナルドか、年の功を持ち野心家な王弟ランデール…どちらを支持するか国の者は悩ましいでしょうね)
様々な権力や都合の前に私は、これからの未来に焦燥感を覚えるのだった。




