4話 隣国とのお見合い
次の日レオナルドは、ミネルヴァの機嫌を損ねてしまった…忙しかったとはいえ連絡が遅れてしまい彼女を怒らせてしまった。
何とか甘い物で機嫌は取ったけど、しばらく根に持たれそうだ。
(お見合いが嫌というより、連絡がないところに怒るのが彼女らしいけどね、エーデルなら発狂でもしていそうだ……)
「まぁ、さっさとすまそうかな」
姫を出向かえるために整えられた部屋へと足を踏み出す。ゆっくり話せるように机と椅子のあるプライベートな空間に案内された。
今回は本当にお見合い為だけに参るらしいが……、あの国の姫なら俺以外にも相手には困らなそうだけどな。
(大国ガーランドのその姫か…お父様的には此方と結婚して欲しいだろうな――)
まぁ父の真意はどうであれ、取り敢えず体裁は保とう…国同士の仲違いは面倒がすぎる。
「レオナルド来たか」
「ええ、……今日は叔父様が来るとの事ですが、王位継承の一件はどうなさるのですか?」
「発表は来年にしようと思っている、大国ガーランドもお前が王位継承をすると確信すれば、今回の見合いを引かなくなるだろう故に言わぬ」
「よろしいのですか?俺としては都合が良いですが……」
それは自分にとっては叶った状況だ…
(予想外だ、母の為に人魚と外交したような彼が自分の事ではなく…俺を優先するなんて)
政治に対しての口出しも殆どさせなかったのに、父の手伝いはしていたがアクアリアの交易などは殆ど父が行なっていた。
だから俺はミネルヴァが知っている事でも知らない事があったぐらいだ……
「レオナルド、お前には我慢をさせた……次はお前の治世になるのだ一つぐらい自由があっても良いと思っている」
「陛下…」
「そろそろ人が来るであろう?いつもの顔に戻しなさい」
(俺が普段している笑顔の顔作りもバレバレか……案外分かられていて不甲斐ないな、――でも俺の事をちゃんと見ていたって気がして嬉しいと思ってしまうな)
いくつもの足音が外で鳴る、鎧の擦れる音…
開かれた扉の先には一人の女性と赤毛の男性が見える。
その男にレオナルドはピクリと眉を動かした。
(中々来ないと思っていたが…迎えに出ていたのか)
「おお、ランデール迎えに行ってたのか」
「甥の晴れあるお見合いだ、丁寧にするのは当然だろう?兄さん」
……こんな社交の場ですら兄呼びか、俺ですら陛下呼びを徹底しているのに。
俺はこの人があまり好きじゃない、ランデール・アルカディア……俺の叔父にして第二王位継承者――
「ご招待ありがとうございます」
叔父の後ろから彼女は挨拶をする為に前に出る、淡い薔薇色の髪に爽やかな青い瞳はみずみずしく澄んでいた。
ほぉー、とお父様も感嘆の声を漏らす。
まるで春の妖精のような軽やかなその所作と容姿に目を奪われていた。
そしてその姿には見覚えがある。
「確か……修道院にいた子じゃないか君は」
「実は忍んで修道女をしたいのです、民の暮らしがわかるようにと――姫として会うのは初めましてですわねレオナルド王子」
「改めましてマリア・ガーランドと申します、西の大国ガーランドから参りました」
(本来とは違うけど王子との対面――魔女にああは言ったけれど……王子の容姿の好みは間違いなく私!しかも民草の身分で暮らしてたなんて、最高の演出でしょう?)
「ええ、見違えました!」
心の中でマリアはほくそ笑む、王子の心を掴んでいると手応えを感じたからだ。
(近くで見ると一層イケメンだわ〜惚れ惚れしちゃう――さぁ、惚れなさいレオナルド・アルカディア!!)
「では早速お話でもいたしましょう!」
そう手を重ね合わせ顔の横に持ってきて可愛らしいく、自分を演出する。
彼女の仕草は駒鳥の足どりのようで、小動物のような愛らしさを思わせる。
席に座るとニコニコと完璧な美少女を装った。
続いてレオナルドの叔父であるランデールも籍につく。
「アルカディアは、海が豊かで資源に富んでいると聞いております。こちらの修道院に訪れた時も、大変美しい海辺の景色を記憶しております」
「そうですね有難いことに港を利用したいと言ってくださる方が多いですね、まぁ頼まれる数が多すぎてかなり制限していますが」
そう軽くレオナルドが説明するとマリアは少し不思議そうな顔をした。
「そういえば…気になったのですが航路や利用する国をかなり制限してると聞きます、不法侵入や資源の無断搾取を心配なさるのは分かるのですが……市場だってありますのに、何故此処まで制限なさるのですか?」
「それは人魚の国があるからですよ、マリア姫」
「叔父上!!陛下が発言してないことを――」
レオナルドは国の事情を叔父が勝手に話したことに苛立ちを覚えた。
(あんまりにも好き勝手言われては、国王の権威が損なわれる――わざとなら本当に質が悪い)
「良いレオナルド…」
「見合いもあるが、マリア姫は国同士の繋がり作りも含め来たのだろう、言うのが早まっただけだ気にしない」
「はい」
父親の言葉にギュッと言葉を押し込める、その様子をマリアはオロオロした様子で眺めていた。
「我が国の…いやこの付近の海にはね未だに伝説で語り継がれる人魚が住んでいるんですお聞きした事はあるのでは無いでしょうか?」
国王ハリソンは、そうマリアに問いかけた。
「ええアルカディアは、人魚と同盟を結んだと眉唾なお話は聞いておりますが……」
「それは真実なのです、我々は人魚と同盟しています」
(一体どういう事――人魚と同盟?そんなの物語にはないわ、寧ろ人魚姫は怪物である事を隠していたじゃない!?)
「おっ驚きました!どうしてそれが港の利用制限に関わるのでしょうか」
「この海の特に港付近に人魚達は住み着いています、故に我々だけの海ではないと昔からされています」
(はぁ〜まぁ人魚と同盟した挙句に気を使ってるのね、レオナルドさんったら突き合わされて可哀想!!……だったら)
手でマリアはニヤ付きを隠しながらレオナルドを潤んだ瞳で見つめた――
「人魚にそんな脅しや制限を捺せられておるのですか…!?お労しいです!!」
「そういうわけでは……」
国王は否定しようとするもマリアは止め処なく喋り続ける。
「気を使わなくて結構でしてよ!!我が国が同盟した暁には、そんな事言わせないように致します…ですので――」
マリアは嬉々として言葉を綴るが最後の言葉を言う前にレオナルドは、発言すると言わんばかりに手を挙げると話し出した。
「それは我が同盟国アクアリアに対する宣戦布告ですか、マリア・ガーランド殿」
レオナルドはあくまで笑顔で言い放つが、その声には圧が宿っていた。
マリアのその発言が余りにも攻撃的に見えたからだ。
確かに大国であれば強い影響を与えられるのは当然だが……当国がやったアクアリアに対する謝罪が、何の意味もなくなってしまう。
それを差し置いても、耳心地の悪い言葉だった――
「この話は、――」その先の言葉をレオナルドが言おうと瞬間バタンッと何かが倒れる音がした。
レオナルドは音がするほうを見るとヒュッと息を飲んだ、何故なら視線の先には椅子から転げ苦しむアルカディアの国王の姿があったからだ。
「へ、陛下!?」
その様子に驚くマリアと、驚ききつつもほくそ笑むランデールの姿があった――




