24話 同郷との別れ
職人に頼み首紐がちぎれたを修復しペンダントで何とか人の姿に戻ることができた。
壊れているか心配だったけれど…魔法の効果は金具部分の大きな飾りが壊れなければ良いらしい。
日が立ち妹の体力が回復した為、トレントとアンリエッタは海に帰る日程を立て今日はその日だ――
「何だかあっという間だったわね…」
「色々な事がありましたがお姉様に会えて本当に、本当に良かったです」
「私も会えて嬉しかったわ、これを期にお転婆は少し控えるのよ」
「うっ!がっ頑張ります」
照りつける太陽のした私達はレオナルドと始めて出会ったあの浜辺に来ていた。
兵は遠目だがちらほら見える、この海岸の入り口は誰も立ち入らせないほど厳重に警備しているとレオナルドから聞いた。
彼らの為に海に持ち込める宝石等の土産を用意された、海の装飾は限られているからきっと喜ぶでしょう。
「いやぁ〜意外と陸楽しかったな」
「それなら良かったよ」
「私も少し寂しくなるわ」
そうトレントに二人で言葉を送る、私の言葉を聞くと彼は困り笑顔で私を見る。
「よく言うぜ〜、そんだけ二人で楽しそうにしてて」
「ははは、そうだね」
「そうだねじゃねーよ!!」
「大丈夫俺が幸せにする安心して帰るといい」
「ふざけんな婚約はまだだろ!諦めねーからな!!」
軽く言い合いをする彼らを楽しげに見守ると、アンリエッタはその様子にアワアワと困惑していた。
「喧嘩ですかね?大丈夫でしょうか…」
「あれはあれで仲いいから気にしなくて良いのよ」
「そうなんですか!?私にはそうは見えないのですが……」
「男の子って難しいわよねぇ」
意外と小競り合いしている方が仲が良かったりするし本当に不思議だ。
私の話題を振ってただ話したいだけじゃないのかしら?
「お姉様、少しいいですか」
少し思い悩むようにアンリエッタはトーンが低い声で呼びかける。
「どうしたの?」
「少しレオナルド様と二人で話したいんです」
「別に私の許可なんて取らなくていいわよ」
「だって…」
「いえ、そうですね」
何かを言おうとしていたが何かをぐっと堪えるようにしたあと、アンリエッタは笑顔で答えた。
その様子に…まぁ流石にこの子にはバレバレよね。
私をレオナルドの事をどう思っているか――
「それでは行ってきます」
「ええ行ってらっしゃい」
そう彼女は、可愛らしい足取りでレオナルドの元へ向かっていく。
「――良かったのか」
「案外乗り換えるかもしれないぜ?」
「そうなったら貴方と結婚してあげるわよ」
「ええっマジ!!」
「正しお父様を説得できたらね」
「あっ…ハイ」
しょげる顔のトレントが可笑しくて私は、思わず笑ってしまう。
そう笑うとトレントは少しムッとして「何だよ〜!!」と怒られてしまう。
そんなやり取りをしながら私達は二人を見守る事にした。
「レオナルド様!!少しお話いいですか」
「うん?いいよ少し歩こうか」
「はっはい」
レオナルドとアンリエッタは海岸を歩く、サラサラとさざなみたちが揺れ心地のよい水音を耳に届ける。
天候も良く太陽の光で水面がキラキラと反射し、広大な海を光で彩っていた。
アンリエッタは見慣れない、陸からみた海の新たな美しさに感嘆の声を漏らす。
何をとっても彼女には新鮮で美しい景色が織り成されていた。
二人から声も聞こえない場所に来たところでアンリエッタは、深呼吸をし覚悟を決めた――
「ねぇレオナルド様、私…あなたが好きです」
青く鮮やかな美しい瞳でアンリエッタは訴えかける、あなたの事が好きだ恋をしていると――レオナルドは眉尻を下げ笑った。
「ありがとう…そしてごめんね――心に決めた人がいるんだ」
「そう…ですよね……」
「分かってました、あなたの視線の先にはずっとお姉様がいるって」
明らかに落胆した声でアンリエッタは、出会った日の事を思い出す。
「姉を見つめるあなたの目はいつだって情熱的で、何処か大人気なくて、そして必死だった――私に向ける優しい顔とは全然違った」
「それは…恥ずかしい行動だね」
思ったよりも幼稚な行動にレオナルドは、至らなさで羞恥心を覚える。
アンリエッタはその様子に涙ぐんだ瞳で見上げた。
「私は――それが羨ましかったです」
「、……」
レオナルドは言葉を無くしアンリエッタをただ見つめる事しか出来ない。
「もし…出会ったのが最初が私だったら、私に恋をしてくれましたか?」
「……それは違うよ、人魚だから好きになったんじゃない」
「ミネルヴァだから好きなんだ。何気ない仕草や素直じゃない所とかね――」
「じゃあ…仕方ないですね!お姉様は素敵な方ですから!!」
そう涙を自ら拭い、彼女は海を見つめる。
まるで慈しむような…何処か諦めたような顔を浮かべる。
「私が陸に来ることはもう無いでしょう…わがままを言ったあげく命の危険に晒されました、自衛出来てない証拠です……何かあっても外交は他のお姉様に一任されるでしょう」
「だからもう会えないかも知れないので最後にこれだけ――楽しい陸での生活をありがとうございました」
「お姉様とは幸せになってくださいね」
柔らかに彼女はくるりとレオナルドほうにスカートを広げながら振り向く。
そして彼女はそう誰よりも可憐で愛らしい顔で、レオナルドに姉との幸せを願った。
「うん、頑張るよ」
「でも結婚式には来てほしいな」
「まぁ!気が早いですよ」
そうクスクスと笑いながらレオナルドとアンリエッタ二人の元に戻ってきた。
戻ってくると二人は海を見つめていた――そろそろ来るであろう海の迎えを待ち構えていたのだ。
「あら思ったより早かったわね」
「そうかな?」
「おぉ来たみたいだぜ」
トレントの声に私達は海を見るとバシャバシャと水面を叩くような音が複数なる。
よく見れば水面から魚の尾ひれのようなものが見える、人魚達だ――
「お久しぶりです、ミネルヴァ様アンリエッタ様」
「ええ久しぶり皆」
「今日はアンリエッタ様のみと聞いておりますが、ミネルヴァ様は何時お戻りに?」
「トレント皇子とアンリエッタが戻った時、陛下と話すはずよその判断を待つわ」
「分かりました」
話し終わるとミネルヴァはアンリエッタを抱きしめる。
「元気でね…次の再会を楽しみにしているわ」
「私もです!!お別れは寂しいですが…国に帰って私も“姫”として今一度在り方を考えてみます」
「成長できる機会をありがとうございました」
「自分は、帰ってスニオンでやる事終わったらまた来ると思う…そん時はよろしくな」
「ええ分かったわトレント――、それじゃ二人共元気でね」
そう二人は海へと向かっていく、先に海に入ったのはアンリエッタだった。
彼女の姿は、水に触れ魔法の効果が溶けていく。
来ていたドレスは泡となり本来の姿を顕になる、桃色の鱗が足を彩りパシャンと海の中へと沈む時に、彼女の鰭が海面に踊るように沈む。
トレントは海にはいると顔になかった、鱗が現れ青みがかった肌が顕になる。
人らしい血色は私達には無いが擬態能力だったようだ、海にはいるとまさに二人は水を得た魚の様に生き生きとして見えた。
「海の隣人達来てくれてありがとう、また会いましょう」
そうレオナルドが言葉を言うとトレントはニカッと笑い大きく手を振る。
「それじゃあな!!案外陸も楽しかったぜ」
彼らは海に沈んでいく――お別れの演出なのか、彼らはギリギリまで海面を泳ぎ去っていった。
次第に静かになる海に寂しさを覚えたが、私にはまだやるべきことがある。
「さぁ戻ろうか城へ、お手をどうぞ」
「ええ」
レオナルドの手を取り、私は歩く。
この先に苦難があるのは勿論分かっている、それでも二人で歩いて行こうと前向きな気持ちで海を背にした。
これにて2章完結となります!
1章に比べて展開も多く長くなりましたが、ここまで読んでくださった方ありがとうございます、次回から3章になります。




