21話 真実を追う者
「神が最近眠りから覚め、嵐を呼んだんだ神が乱心なされたって大騒ぎだったんだぜ」
「儀式も毎年行われたし理由が何だと大騒ぎ…自分はその原因を探りに来たってわけ」
「えっ…それって」
最近来た嵐なんて一つしかない…
あの時のものが、海神が起こしたものだっていうの?
「あぁ、そう調べたからな…察しの通り嵐が起きた日は王子の生誕祭だろ?」
「海の神はレオナルドに反応して嵐を呼んだんだ――」
「でもそんな…確信があるの?」
「ある――あいつ太陽神の力を持ってるだろ、海神様はそれを犬猿の太陽神だと誤認したんだよ…だから荒ぶったんだ」
「魔法を使われなくたって自分ですら認知できた力だ…そもそも制御できてないだろ?」
「本人じゃないから私は分からないけれど、知識が無いのは確かね」
レオナルドの魔法について察しが良いわね……というか、私以外の前で使ったのかしら?
そもそも魔法なら私より彼のほうが詳しい、未だに神との交信を続けている国だ。
歌と舞を捧げるだけの私達とは話が違うわ。
「あの嵐の日、何かしら海で力を使ったとか何かしたはずだ」
覚えがあるわね…というか私に使ったやつじゃない!!
本当にトラブルメーカーじゃないあの男、今まで降りかかった問題の全てがレオナルドが原因じゃない。
……後で文句を言ってやろうかしら。
「成る程ね…」
「それにあいつ、多分…混ざってる」
「混ざってる?」
「詳しく調べんと分からないけどな、最初は神の影響受けてるんだろう事は確実だ」
「それってどういう事?」
いまいちトレントの話はよく分からない、神の力のような物を持っているのが確かだが…
何故混ざっていると表現になるのか、いまいちピンと来ない。
「はぁ…あいつ人間にしては能力の度が過ぎてんだよ、瞳を合わせるだけで人に言う事聞かせるなんて――自分ら人外からしても御伽噺だ」
「それこそ神業だ――」
確かに――
魅了の力にしてもそうだけど、エーデルに無理やり言う事を一次的とはいえ聞かせていた。
もし…それが何かしらの公の場なら、政治的に絶大な影響を及ぼしかねない。
本人に悪用する意思がないことが救いだけど。
「レオナルドに神の血そのものが身体に宿っているか、神に取り憑かれているか……色々可能性はあるけど一つ言えることは」
「今の所は神の力で、あいつ自身が蝕まれているって事――しかも一部の人間や神ですら、誤認されるくらいには存在に影響が出ている」
「誤認ねぇ……?そこがよく分からないわ、神の力を持っているなら、そうじゃないの?」
「んーなんと言ったらいいかな」
トレントは少し考え込むと、何か思いついたのか話し始める。
「剣を持って強い人間が居たとして、それは剣と人だろ?魔法と人間だったとしてそれは魔法と人であるべきなんだよ――」
「けどあいつの状況はな、自分の力じゃない神の力が本人の一部として判定に入ってんの」
「“レオナルド”が“レオナルド”だとは思われない、それって怖い事だと思わねぇ?」
そこまで聞いて私はようやく理解をした。
剣士がいたとして…愛用の剣を見て、剣士そのものだとは思わない。
普通は剣士の“剣”だと認識する。
逆もそう、剣士を見ても彼は“剣”だなんて認識することはない。
なら、レオナルドは?少なくともジェルメーヌは――
「つまり――神の力を持った人間として認知されるのではなく……神そのものと誤認されている現状があるってことね!!」
「そういう事、まぁ人間の誤認だけなら気にしねぇよ」
「……自分らの神が嵐を呼ぼなきゃな」
そう苦い顔を浮かべた。
トレントが何故急に訪れたのかようやく分かった。
(スニオンは私達なんかよりずっと長く神を崇拝してきた種族だ、それこそ神の乱心があれば真っ先に影響が出る……何としても影響を探る必要があったのね)
「まぁ話が長くなったけどな、つまりは犬猿の神によく似た人間との恋を海神様は祝福しないだろうよ」
「だから自分を選ばないかミネルヴァ――海に帰ろう」
そう彼は手を差し出す。
海の浅瀬の様な美しい髪の色が、日差しを浴びて鮮やかに彩られていた。
正直彼を選ばない理由がない――
レオナルドは人間で、犬猿の神と縁がある人物。
彼の周りではトラブルが続いて、妹すらその手にかかった…今や王宮では一大事で大騒ぎ。
認められるかも分からない関係……
トレントは同じ神を崇拝する種族同士で、第2皇子…将来はかなりいい領地を任される筈だ。
もし私と彼との婚姻が決まれば、スニオン帝国との関係は良好を築けるだろう。
きっと私たちの婚姻は国を超えて祝福される、けれど――
「ごめんなさい…、あなたの手は取れないわ」
「それは、あいつが好きだからか?」
「いいえ、もし貴方と婚姻を交わせば貴方のお父様はきっと、私と貴方の関係を思って…人間との交流を良しとしないでしょう」
「それは、そうだろうな」
私には立場がある、レオナルドが好きにしろトレントを選ぶにしても問題がある。
人間の王国との同盟を守ること――それが私が姫としておった役割だ。
恋はその二の次だ――
「私はここに外交として来たの、それを放棄することも今更ほかの姉妹にやらせるにしても荷が重いのよ」
「姫としての矜持を持たせてちょうだい」
王子を殺す私怨で来たけれど、今は違う――国の繁栄を願ってここに居る。
レオナルドの事が放っておけない…そう言われればその通りだけど。
「それを言われちゃな、女としてじゃなくて姫として選ぶんなら仕方がねぇ……」
「でも自分は助けてやれないぞ」
「邪魔もしないでしょ、だって私の事好きなんでしょ?」
「お前なぁ〜」
そう告げると彼は、呆れたように私を見ると何処か寂しそうに優しげに微笑んだ。
彼が本当に私を思っている事が伝わって、胸が痛む――
「……やっぱそういう所も、好きだぜ」
そうトレントは呟くような言葉に私は、何も答えられなかった。
「てことは、まぁアルカディアとの外交は辞めないって事な?」
「やめるにしたって…段階があるわよ、でも…レオナルドの問題は私が外交をやめた所でどうにかなるわけ?」
「いやー……ならないだろうな、若い世代はともかくご意見番の御老人達がうるせーと思う」
「下手に言うと過激化しそうだから上手くやるさ」
私達は人気のない廊下でそんな話にふけっていると、足音がした。
何だかとても聞き慣れたそんな音なような気がした、くるりとミネルヴァは音の方に振り返る。
「お二人さん焼けるね」
それは、レオナルドだった。
「もう戻って平気なの?」
「あぁ、父が指揮を取れるようになったからね…俺の役目は終わりだ代理に指揮を取ったにすぎないからね」
どうやら国王の気が戻って来たらしいわね、良かったわ……。
レオナルドがすぐに指揮したからでしょうけど、王宮が今どんな状態なのか私達も測りかねるわ。
トレントは私の前に立ちレオナルドに対峙する。
「これからの自分の身の振り方についてだよ王子様――」
「なら是非お聞かせ願いたいね、トレント皇子」




