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人魚姫の“姉”に転生したので、妹の悲劇を防ぐため王子を殺すはずが執着されました  作者: 目々ノミーコ
1章

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3話 王宮に連れられて

 王城に行くと使用人たちが待ち構えていた。

 

「「おかえりなさいませレオナルド様、人魚の姫様」」


「ただいま皆、さて衣装部屋に行こうか」


 挨拶は早々に終えた彼は、周りを気にせずまっすぐと何処かに向かう。

 おそらくは衣装部屋だろう。

 その後ろには何人かの兵に変わり使用人たちがついてくる。


「彼女に相応しい服を用意したいんだ…あっ動きにくいのはだめだよ」

「彼女はまだ陸に慣れていないんだ」


 この男…いやレオナルドは配慮にも欠けていないらしい。外交に来た私に対してとても丁寧だ。

 流石は王位継承者って所かしら…

 

「承知致しました」

 

 そうメイドは返事をすると彼の後ろをついてくる。

 メイド達が扉を開くと彼は、色とりどりの服が揃う部屋で私を椅子に座らされた。

 

「それじゃみんな頼んだよ、後でまた会おう」


 そう立ち去っていくとメイド達は、レオナルドへのお辞儀をやめ口を開いた。


「レオナルド様、相変わらず素敵だわ」


「相変わらず優しいし、何よりあの甘い顔」


「私もあんな風に抱えられてみたいな〜」


 どうやら王子の認識改める必要があるわ。

 彼は……女たらしね。

 モテると言うやつだ、妹もそして彼に惹かれてしまう。

 無自覚なのか意図的なのかが知りたい所だけど…


「こらあなた達私語を慎みなさい、姫様今お召し物を用意します」


 若いメイド達のまとめ役である年配のメイドにそう言われる。


「ありがとうございます」


 彼女の言葉に思い直したのか彼女達はテキパキと仕事を始める。

 私はその様子をぼうっと眺めながら、これからの事を考えた。

 とりあえず歩けない事には話にならないわ…王子を殺すにしても失敗してしまう可能性が高い。

 逃亡はもちろんとして隠蔽も難しくなる。


「髪を乾かしますね」

 しかし考え事をしているミネルヴァには聞こえなかった。

 触られて初めて、彼女達が自分の長い髪を拭いていることに気がつく。

 気にしている暇はない、まだまだ考えないと――


 私が王子の暗殺を真っ先に考えたのは、妹が王子に恋するきっかけとなる出会い――イベントを邪魔するためだ。

 それか出会い自体きっかけになる海に行かなければいい、しかし外交等をしなければならない彼が海に行かないのは無理に等しいだろう。


 しかし今回婚約者の存在が浮上した。

 出会っている時点で婚約者がいるなら、

 

 (妹は恋に落ちるのかしら…)

 

 それこそあのシーンで隣に並んでさえいれば結末は違うかもしれない!

 でもレオナルドはエーデルを好きなのかしら……あの女を?

 いやこれは私の私情が挟まってるわね。


「姫様、大変でしょうが立っていただけますか?我々が支えますので」


「分かったわ」


 メイド達に支えられながら私は服を着せられ髪を整えられていく。

 ドレッサーの前に座らされ、まじまじと自分の顔を見つめる。

 

 妹とは似ても似つかないのよね私…真っ黒なウェーブのかかった髪に深海の緑の瞳。

 どちらかと言うと魔女と形容するほうがしっくりくる。

 

 そんなミネルヴァの心中とは裏腹に、見違えた姿に使用人達は呆気にとられていた。


「?……どうかしましたか」


「しっ失礼しました」

 顔を赤らめメイドの一人が顔をそらす。

 不思議な方ね今の容姿はさほど人とは変わらないと思うのだけど…やっぱり何処か魚なのかしら。

 

 コンコンっとノックの音が響く。


「終わったかい?」


「ええ終わりましたよ、レオナルド様」


 ガチャリと扉を開くと見違えたミネルヴァの姿にレオナルドは目を奪われる。

 彼女の深い緑に彼は見入った。


「驚いた…人魚とは美しい生き物だとは聞いていたけれどこれ程とはね」

「成る程深海に姿を隠してしまったのも頷ける」


「お戯れはよしてくださいお世辞では外交にはならなくてよ」


「これは手厳しい」


 そうヘラヘラとレオナルドは笑う。

 使用人達はそんな辛口を叩くのがよほど珍しかったのかミネルヴァをジロジロ見ている。


 (言い過ぎたかしら…)


 ひそひそとメイド達はミネルヴァに聞こえないように話す。 

「レオナルド様にあんな冷たい方初めてみました」

「私も…」

「だいたいの女性があのフェイスに溶かされるのに」


「んんっ」

 とメイド長が声を出すと彼女達は背筋を伸ばし再び私語を慎んだ。


「今のままでは生活に困難だろう」


「そうですわね…歩く練習をさせていただけたらと思います」


「そうこなくっちゃじゃあ行こう!!」


 そう言うと彼はまた私を抱える。

 

「何でまた抱えるんですか!!」


「君は姫君だそんじょそこらの兵に持たせるのもあんまりだろう?」


 確かに…、身分社会がどのようなものか自国アクアリアでも十分に体感している。


「王子と姫なら釣り合ってるだろ?」

「それじゃ行こうか」

 

 そうやって泣かせたの女はどれだけいるんだこいつ、それで妹も…そう思うと悔しさがこみ上げる。

 自分が飛躍しているのは分かっている…けれど私は知っている物語のあの救いようのない悲劇を――


 そうやって抱えた彼が私を連れてきたのは、意外な場所だった。


「芝生のお庭…?」

「おや、芝生を知ってるんだね」


 つい前世の記憶で喋ってしまった、これはいけない。

「てっきりダンスホールかと思ったのですが」

 と話を切り替える。


「石のタイルが敷き詰められた場所で、転んだら痛いだろう?」

「何より怪我をしてしまう」

 

 ふと出た彼の優しさに心が揺れた。

 騙されているのかもしれない、

(誰かを思わないのにこんな言葉出るのかしら…)

 そう、ゆっくりと私を地面におろし立たせてくれる。腰に手を回し、倒れない様に私に寄り添った。


「さぁお手をどうぞ」


 ダンスでも強請(ねだ)るように彼は片手を私に差し出した。

 その手を取り私は歩く練習を始めた…

 一人で出来るのかと不安が無かったわけではない、こうなったらとことん利用してやる。


「ゆ、ゆっくりだからね」


 そう一歩一歩、大地を踏みしめる。

 こんなにも歩くのが大変だなんて思わなかった…浮力のある世界に慣れすぎていたからか力がすぐに抜ける。

 しばらく歩いて行くと足を前に出す違和感が消え始める。


「いい調子だね」


「まだまだよこんなんじゃ生活できないわっ!」


 支えがなければ立ってられないのは一目瞭然だ、そんな事実に悔しさをミネルヴァは募らせる。


「じゃあ僕が歩けるようになるまで抱えるさ」


「…ならもっと歩けるようにならないとね」

 

 冷たい反応にレオナルドは首を傾げる。

 こんな男頼らなくても良いようにならなくっちゃ。


「腰から手を離して下さらない」


「支えがなくて大丈夫かい?」


「ええ」

 ここさえ何とか慣れれば壁伝いなら何とか歩けるかもしれない…これはせめて最低条件だ。

 そっと彼はゆっくりと手を放す立っては居られる事が分る。

 重力に耐えながら、震える足で歩を進める。

 数歩の事だ、が歩けた事に心が躍る。


「ねぇ、ほら歩けたわよ!!」


 満面の笑顔をミネルヴァは浮かべる。

 しかし目をそらした事で力が抜け、その身体は傾いていく。

 するりとレオナルドの手から滑っていく。


「えっ!!?」

 (しまった!――このままじゃ)


「っ危ない!!」

 

 重心を保てない身体は体勢も取れず地面へと近づく。

 ギュッと目を瞑ると来るはずの痛みが無い事に驚く。

 ちらりと目を開くと、私はレオナルドを下敷きにしていた。


「間に合ってよかったよ」


「なんで…」


「そりゃ女の子が怪我しちゃいけないだろ」


「……今日はやめにするわ貴方にも悪いし」


 確かに妹の為にこの男は邪魔だ、けれど何も苦しめたい訳でも嫌がらせをしたい訳でもない。

 王子様がこんな地面で倒れるなんて考えてもいないはずだ、泥で汚れた彼の服を見て私は罪悪感を覚えた。

 殺すつもりの彼に…何してるのかしら私。


「そうだねそろそろ君の部屋の支度が整っている事だろう」

 

「感謝するわ」

 短く言葉を終わらせるミネルヴァの様子にレオナルドは落ち込んでいるのを感じてかニッコリと笑った。

 

「また明日頑張ろう」


「えっ……」


「お姫様抱っこも捨てがたいけどね、一緒に並んで歩いて見たいんだ」

「手伝ってくれないかな」

  

「ふふっ、なにそれ」

 思わず笑ってしまう。

 これは彼なりの気遣いなのだろう、私に恥をかかせない。

 (優しい…)

 (でも本当に?)

 疑問が埋め尽くされるが、忘れていた事に気が付き私は声をあげた。


「そういえば名乗ってなかったわね、私はミネルヴァ・アクアリアっていうの」


「随分と遅い自己紹介だね」


「しっ仕方ないじゃないあんな状況だったんだから」


 状況を思い出し顔を赤らめるミネルヴァに対してクスッと彼は笑う。


「恥じらいはあるようで安心したよ」


「なんですって!」

 

 軽い言い合い。そこには身分も立場さえなかった、二人で無邪気に言葉を交わしていた。

 

 その姿を城の中で忌々しそうにエーデルが見ていた。

(わたくし)の婚約者と随分楽しそうじゃない……魚女」

そう窓越しにミネルヴァに爪を立てた。

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