16話 人魚の行方を追って
トレントは聞き回っていたが何も情報は得られることなく、疲弊していた。
止め処なく現れる女性の誘いを断るのも中々に困っていた。
「アンリエッタいねぇなぁ…こんだけ探して居ないんだだったら…此処に居る可能性は低いな」
「ミネルヴァをも帰ってこないし」
「トレント!!此処にいたのかい」
レオナルドはトレントを呼び止めた。
「おっレオナルド…親父さんとの会話は終わったのかい?」
「まぁね」
「アンリエッタ殿は見つかったのかい?」
「それが居ないんだ――ミネルヴァも帰ってこないし」
レオナルドは時計を見上げる、時刻を確認すると顔をしかめた。
「もう余裕に半刻は経ってるね…俺たちの見せ場は終わっているし二人を探しに行こう」
「おう分かった」
そう二人は会場の外へと駆け出した。
レオナルドは明かりがついた方へと歩を進める、キョロキョロと見渡すが人影があるはずもない。
「女性が暗がりに進むとは思えないからね、自室か明るい廊下のどちらかだろうね」
「なら手分けして探すか?」
レオナルドはその言葉に首を横に振る。
「……いや君では王宮を彷徨うだけだろう、一旦行動を共にしよう」
明るい廊下を二人は練り歩く、しかしあからさまに人がおらず何か…不穏な感覚が押し寄せた。
ふとトレントは足元を見る――すると何かアクセサリーの飾りらしき物が落ちていることに気がつく。
「なんだコレ?」
「ん?」
つられてレオナルドが見ると、真珠のピアスが落ちていることが気がつく。
とても大きいそれは、とても見覚えがある物だ。
そう…ミネルヴァが毎日つけていた、大粒のピアスだ――
「なんでミネルヴァのピアスがこんな所に」
「あっ思い出した!!これアンリエッタのだ!!」
同時に声を上げ二人は顔を見合わせた――彼女達に何かがあった事を確信したレオナルドは考え出す。
「一体誰が…、賊でも入ったのか!?」
そうトレントが言うがレオナルドは再び首を横に振る。
「流石に家の王宮はそんなに警備はずさんじゃないよ、人魚をさらうにしても姫君じゃリスクが高すぎる」
「それにミネルヴァがそのまま攫われるとは思いがたい…彼女は水を操る力があるはずだ」
そうレオナルドは花瓶を見る、中には水が入っている。人を脅かすなら使っているはずだ。
「えっそうなの!?」
「なんだい?知らなかったのかい」
「それは置いておいて…彼女をさらう城内で怪しい人物はいったい…」
「そういえば自分、聞き回っていた時に聞いたぜ――“王妃様を見かけないって”」
そう聞いたレオナルドは駆け出した――トレントは彼を追う。
レオナルドは王妃の所有する空間へと足を進める、彼女の個人で所有する複数の私室が存在している。
その近くには他とは衣服が違う衛兵が二人、扉の前に構えたいた。
「通してくれ母に用がある」
「レオナルド様、ここは通せません」
「おいおい王子様の言うこと聞けないのかよ」
「悪いが我々は、ジェルメーヌ様の故郷から来た私兵だアルカディアの兵ではない」
その言葉にトレントは、イラつきを見せる。
「どうすんだよ〜殴って言うこと聞かせるかぁ」
「はぁ…暴力は良くないよ」
「じゃあどうするんだよ!!」
レオナルドは手を挙げる、トレントはその仕草に後ろに下がる。
なにか策があるのかと思いレオナルドの後ろに行く。
「緊急事態だからね…」
はぁと溜め息をつくとレオナルドは目を閉じる。
「レオナルド様此処に居続けても――」
「“俺の目を見て”」
輝く瞳に射抜かれた片方は、目を白黒させる。
その光にもう一人も異変を感じてかレオナルドに近づくが――
「そいつの事止めといて、俺達行くから」
そう肩にポンっと触れると、ハッとした衛兵は満面の笑顔で敬礼する。
「はい!!レオナルド様」
「ちょっと待て!?ジェルメーヌ様の命令だぞ――」
「黙れ!!」
ゴッと鈍い音がした。
片方が殴ったのだ――理解できない衛兵は何とか宥めようとするも、まるで話を聞いていない。
馬乗りになり、レオナルドの邪魔をする外敵と見なしてか彼は相方を殴り続けていた。
レオナルドは、それを――冷たい瞳で見つめていた。
「行くよ」
「何処が平和的なんだお前」
「というか何だ!?その力は思ってたより度が過ぎてるぞ!!」
「まぁいいじゃない」
そうレオナルドは、走り出した――おい待てよ!とトレントは再び彼の背を追いかけた。
(自分の探してた原因は間違いなくコイツだけど――思ってたよりバケモンだぞ)
トレントは冷や汗を額に浮かべる、目の前におう人物の全貌が掴めずにいた。
「レオナルド様!?」
「何故此処に!!」
「ちょっと、どいてね」
そう瞳を合わせ微笑むと彼女達は、一斉に去っていく正に魔法だ――その光景にトレントは眉を潜めるしかなかった。
しかし入ろうとした部屋の扉が開かない、鍵が施錠されていた。
レオナルドはドンっと扉を叩いた――
「開かない!?ここまで来て」
「まーまー、どきな」
レオナルドが後ろに下がるとトレントは走り出すように軽快に足を振り上げる。
「さーて、よいしょー!!」
トレントが勢いよく蹴り上げるとバキィッと木の扉がひしゃげ、吹っ飛んだ。
レオナルドはその光景に目を点にした、何故なら人の体躯からは想像もつかない力だからだ。
「はっ…?」
「人間とは力が違うからな!!」
「…お前も十分度が過ぎてるよ」
そうレオナルドは呟くのだった。
二人は開けた扉の先を見据え、部屋へと入った――




