14話 喜劇の後はハプニング
薄暗い部屋で一人佇む人物がいた――その人物はじっと魚を見下ろしていた。
板の上には生きた魚が乗せられ、ビチビチと跳ね回ろうと動いているがそれは叶わなかった。
何故なら、杭で打ち付けられていたからだ――魚はパクパクと呼吸をしていた。
その人は、1枚鱗をピンセットで摘むとベリッとはいだ。
1枚ずつ丁寧に、
べりっと
べりべりっと
その行動を繰り返す。
その人物が満足下にした頃には鱗は一枚もなく、鱗が周囲に散らばっていた。
魚は息が絶えていた――
「ねぇ、これ料理してくださる?」
それはとても綺麗に笑うジェルメーヌだった――
歓声の中踊り終えると、私達は集まる目線に気がつく。
目立ってしまったわ…まぁレオナルドと踊る時点で目立ってしまうのは、確定事項のようなものだけど。
あら?アンリエッタがいないわね、何処に――
「ミネルヴァ」
「何?」
レオナルドは私を抱き寄せた、ドキドキと胸が高鳴る。
「踊ってくれてありがとう――本当に嬉しい」
レオナルドはミネルヴァを抱きしめた、その様子に周りは口を開き王子の大胆な行動に驚いていた。
おつきのメイド達は、キャーキャーと黄色い声援をあげている。
「やっぱり二人ってー!!」
「えーやだいっちゃだめよぉ」
「おめでとうレオナルド様!!」
そんな声を背にトレントは顔をしかめ、ズカズカ二人に歩み寄った――
「ちょっとご両人、公の場でやりすぎなんじゃないかね!!」
トレントは二人を引き剥がす。
「とっトレント、これはレオナルドがかってに…」
「それにしては顔が赤いけどなミネルヴァ」
プイッと私は顔を反らし――顔の紅潮を確かめる。
確かに顔が熱いわ…どうしたら冷めるのかしら…踊ったのもあって体温がさらに高いわ。
「トレント皇子、随分と不機嫌そうですがどうなさいました?」
眩い王子様スマイルをレオナルドは浮かべる、キラキラという効果音がぴったりな顔をしている。
「キラキラすんじゃねぇ、わざとらしいぞコラッ」
「言っとくけどな自分は諦めないからな!!隙を見せたら掻っ攫ってやる」
「大丈夫そんな事ないから!!」
(コイツ〜腹立つーー!!)
トレントは心の中で不満を叫ぶ、何処までも気に入らない男だ――。
そんな二人のいがみ合う様子をみてミネルヴァはクスクスと笑った。
2人の様子が何処か楽しげで、年相応の少年達に見えたからだ。
「何がそんなに楽しいんだいミネルヴァ」
「だって貴方達最初と違って、とても仲良さそうだなって」
「そんな事ないよ!!」
「そんなわけないだろ!!」
同時に言うものだから余計に息がぴったりだ、不満そうに睨み合う2人にますます可笑しく思ってしまう。
「ふふっ、ダンスで仲良くなったんじゃない?」
と笑い声が漏れてしまう。
彼らは小言を言い合っている、その姿が何処か微笑ましかった。
何だかんだ息が合うのかしらね…私なんかよりずっとトレント外交相手として良かったりして。
そんな風に考えると、少しこれからの生活が楽しそうに思えた。
「そういえば、アンリエッタを知らない?姿をみないけれど…」
「あぁ、そういえば戻って無いのか?一人になりてぇって言ってたけど」
「会場に居たりしないのかい?」
「ハンナ――居ないのかい」
「はいここにおります」
「アンリエッタ殿はどちらに?」
そうレオナルドが質問すると、ハンナは困った顔を浮かべ口を開いた。
「えっお見かけしておりませんが……てっきり、レオナルド様方の周辺にいるのかと……」
ハンナのその言葉に一同が青くなる、人魚姫が誰の目にも触れず消えたのだ。
何か集めたのかと、私は手を口元にやる。
「ダンスの時に確か出てったはずだ、入り口周辺の奴らに聞けば何かわかるかも」
「私も聞き回るわ!!」
妹が居ないなんて――杞憂で終れば良いけれど。
私は…不安を群れに人混みをキョロキョロと見渡す。
「俺も――」
二人に続きレオナルドも後を追おうとするが――
「レオナルド、少し話をいいかな」
「お父様!?、今アンリエッタ殿が――」
「来なさい王太子――レオナルド」
父親…否、国王のその気迫に、レオナルドは言葉を詰まらせた。
さすがの彼にも頭が上がらないようだ。
「……はい」
「悪いね後で合流するよ」
「わかった――」
私とトレントは、人の波に乗り出した。
一体何処なのアンリエッタ――何事もありませんように!!
そう願い、走るように人々に聞き回る。
「すいません!!妹をみてませんか…金髪でピンクのドレスを着てるんです!!」
「いや?」
聞けども、見ていない…居たような等曖昧な言葉ばかりが返ってくる。
舞踏会という事もあって、無数の人混みから見つけ出すのは至難の業だ…
「すいません――金髪の女の子をみてませんか」
「金髪の娘なんてうようよ居るからのぅ」
「そうだわ…私と同じネックレスをつけていたの、これよ――!!」
そう胸のネックレスを見せつける、片眼鏡でじっと初老の男性は見るとあぁと声を漏らした。
「そのネックレスをつけたお嬢さんなら、会場から出ていきましたよ…」
「帰って来たかは分からんがね…」
「情報ありがとうございます!!」
やっぱり此処には居ない可能性が高いわ…せめて部屋に居てくれたら良いけれど。
ダンスばかりで…私が見ていなかったからっ――
「ミネルヴァどうだ!?」
「やっぱり会場の外に行ったみたい…」
「マジかよ…!!こんな城内が手薄そうな時に…」
トレントの言う事は正にその通りだ、今城の重要な人物はこの会場に集中している…
城の外はともかく、内側の警護はこの会場に集まっていると言ってもいい。
だから人も少なく、何かあるならもっと危険だ。
「私、会場外を探してくるわ」
「なら自分も――」
「いえトレントは此処で聞き取りしていて、万が一いるかも知れないわ」
「私の方が城での暮らしは長いし…」
「うーんそれはそうだなぁ、でも半刻経って見つからんかったら自分も城外探すからな!!」
「ええ」
私達は再び別れると私は真っ直ぐ廊下を向かった。
暗がりに歩いたとは思えない…なるべく明るく照らされた廊下を選んで歩く。
探せど飾られた肖像画や、壺に入った花々ぐらいしかないわね…
自室をみたけれどもぬけの殻だったし。
「一体何処に行ってしまったの……」
そう違う道から会場へと帰路についていた。
「ん?」
しゃがみ込んで私は、キラリと輝く金具を拾い上げる。間違いなく、私の胸につけたペンダントと同じアクセサリーだ。
「一体なんでこんな所に――?」
(これが無いって事は…、今妹は――人魚の姿って事よね!?)
急いで周囲を見渡す、しかし水や妹が張ったような後は見当たらない。
一体何処にいるの…?
探したいのは山々だけど――このまま無暗に探しても見つかるとは思えないわね……
一旦戻るべきね、レオナルドに言って衛兵を呼んでもらうのが一番だわ…
私だけじゃたかが知れてる、大掛かりで探してもらうべきだわ。
もしかして密猟者かも知れない、事がデカくなってきた――
「あらこんな所にいらしたのミネルヴァさん」
「……ジェルメーヌ王妃様」
「あの、!!」
思わず、妹の事を聞こうと声を張り上げる。
「貴女を特別な晩餐に招待したいの、さぁいらして」
「その…お気持ちはありがたいのですが――妹が」
そんな事をしている場合ではない、早くこの事を共有して探して貰わないと!!
妹の身が危ないかもしれないのだ――
「あら…あなたの探し物があるかもしれないわよ?」
「それって――」
その言葉に私は、耳を疑う。
なぜ、私が探していることをなぜ知っている?
なぜ、このタイミングで二人きり?
なぜ、彼女は此処に居る――
彼女は白地に美しい金の刺繍が施されたドレスに金の王冠をかぶっていた。
正に太陽の国に相応しい、金に彩られた王妃だ――赤い口元がニッコリとレオナルドとよく似た笑顔を浮かべる。
夢での言葉がよぎる――“金には気をつけなさい銀を好むといい”
「分かりました…招待光栄ですわ」
私は背を向けた彼女についていく、この先に何があったとしても行かなければ妹に何があるか分からない。
誰かが気付いてくれることを願って、私は自分のパールのピアスをそっと地面に落とした。




