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人魚姫の“姉”に転生したので、妹の悲劇を防ぐため王子を殺すはずが執着されました  作者: 目々ノミーコ
2章

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13話 それぞれの恋を胸に

 最後の踊りにレオナルドは私を誘った。

 

 王や王妃すらその光景にざわめく――トレントは何事だと前にやってくる。


「でも…私でいいの?」


「何言ってるんだい――君が良いんだよ」


 その言葉が嬉しくて、そして同時に悩んだ…手を伸ばすもその手を掴む前に止まってしまう。

 妹の顔が浮かんだからだ、私は貴方のお姫様じゃない――


 彼は私の様子をみてか優しげな表情を浮かべる。


「俺の事が嫌いなら取らなくっていい…立場は気にしなくていい」


「私は…貴方に見合う様な容姿でも、可憐な人でもないわよ」


「何言ってるんだい、他の誰が何を言っても」

()()君が良いんだ」


 その言葉に涙が浮かぶ、随分と涙腺が脆くなったものだ――


「お手を取って頂けますか」

 

「はい――喜んで」


 私は涙を片手で拭うと、その手を掴み握りしめた――


 ざわめく歓声にどよめく人々、私達は気にせず演奏を待った――次第に音が奏でられた。

 

 ダンスが始まると二人は、練習したかのように息ぴったりで踊り出した。

 

 ミネルヴァは最初に手に取り合った、芝生での光景を思い出す。

 

 あの時も手を引かれていたわね――

 今はあの時と違い、正面で向かい合っているけれど。


「ねぇ、どうして好きになったの」


「ん?そうだなぁ、きっかけは――」

「君が歩けた事をあんまりにも無邪気に喜んだ時かなぁ」


「なにそれ」


 そうクスクスと私は笑った。

 そんな様子にレオナルドも優しく微笑んだ。


「俺は――もうずっと、君しか見ていないよ」


 そう笑う彼は、誰よりも輝いていて見えた。

 ちゃんと今わかる、私はこの人に恋をしている――

 

 王宮はスキャンダルでいっぱいだ、王子の本命が異国の人外だと――様々な噂と憶測が飛び交う。

 しかしそんな噂やお喋りは、美しい演奏でかき消されていく。

 残るのはざわざわとした、擬音だけだ。

 

 呆然とアンリエッタはその光景を眺める――


 自分とは真逆の姉、天真爛漫で可愛らしい自分とは違う――しっかり者で悪く言えば可愛げのない、鋭く凛とした美しい姉。

 そんな姉が少女のように、微笑んでいた。


 キラキラと輝くシャンデリア、照らされた二人の王子と姫。

 誰よりも幸せそうに二人は踊っていた――周囲の目なんて気にする事なくまるで二人の世界だ。

 それは、アンリエッタがレオナルドと得たかった姿そのものだった――


「やっぱりお姉様……彼の事、好きだったのね」


「何だよ気がついてたのか?」


 そうトレントは短く問いかける。


「だって私以外の事で取り乱すなんて、見たことなかったもの……」


「へー、案外あざといとこあるんだなお前」


 ムスッとアンリエッタは頬を膨らませると、ジトっとトレントを睨みあげた。


「……トレント貴方は上手くいかなかったの?」


「いやぁ~一本取られたね、最初譲ったのこういう事かよぉ」


 頭の上で腕を組むと彼は、残念そうに声を漏らした。

 何か思案する様に目を上に向けると、アンリエッタへと視線を移した。

 

「…というかお前、最初っから自分とミネルヴァをくっつけるつもりだったろ」

「海でお姉様には婚約者いない〜男の気配がないとか言って焚き付けられたしな」


 すると彼女は暗い顔で、言葉を吐いた。


「――そうよ結婚が決まれば、外交代わってもらえると思ったの」


「別にミネルヴァが選ばれたのは、婚約者が居ないからじゃね〜と思うぜ〜〜」


「それは、ここに来て実感したわ」


 王の前で何もできなかった自分に、すぐ様対応した姉…到底自分が、あんな風に胸を張って発言できるとは思えなかった。


「ま〜それは自分も似たようなもんだよ」


 そうトレントはアンリエッタと重ねる様に、レオナルドとの会話を思い出す。


 (結局アンリエッタも自分も、相手の技量を測り損ねた未熟者だな)

 そう踊る二人を見た――


 (選ばれることばっかり考えて、並び立つって考えは俺達には無かった)

 (その時点で勝敗は決まってるわな…)

 

「お前も自分も上手くいかないな」


 そう幸せそうに舞う二人を眺めていた――自分達のことなんて目に入っていないのだろう。

 その事実に泣きそうになったアンリエッタは、後ろを向く。


「外の風に当たってくる――」


 そう廊下へと走り去る。

 アンリエッタは悔しさと惨めさでいっぱいだった――

 “出会ったのが最初なら”

 “助けたのが私だったら”

 あったかも知れない未来ばかり考えてしまう。


「なんで…何でお姉様なの!?」


「私の方が、ずっとずっと!!」


 ――好きだった……、そう思うのは身勝手だろうか?

 そう倒れるように壁に寄りかかる。

 始めてみた海の外、船縁(ふなべり)に立つ麗しい貴方、花が咲くように照らされた空。

 何もかもが特別だった。

 私の運命の人はこの人だ――そう思った。


 浜辺で再びまみえた時思った、あぁなんて素敵な人…なんて優しいの!!

 いつだって私は話題の中心だった、だから…きっと私を好きになってくれるって信じていた。

 

 けれど何をしても、いつも彼の目の先はお姉様を捉えていた。

 私は…好きな人の妹に過ぎなかった――


 行き場のない感情を胸に、よろよろと前に進む。 

 前を見てないアンリエッタは、ドンっと誰かにぶつかった――


「キャッ――ごめんなさっ」


「っ!!?」


 アンリエッタは衛兵の一人に布で口を押さえられる、暴れるも彼女の力では刃が立たない。

 バタバタと暴れるものの声も出せない。

 コツコツと近寄る影があった――


「命令通り捕まえました」


「ええ良くやったわ」


 それはジェルメーヌだった――アンリエッタは、目を見開き何もできない。

 張り付いた笑顔を浮かべた彼女は、口元を扇子を広げ此方に向かう。


「全く……、人の姿を得たからって誘惑するなんて」

「いいご身分よね」


 ゆっくりと目線を下に向け、アンリエッタのネックレスを物色する。

 それは人魚が人の姿になる為のミネルヴァと同じ魔法のネックレスだ。


「確か魔法のネックレスでしたっけ?人の姿を保つためのとーても素敵な物だとか…」

「陛下にお聞きしましたわ」


 そういうと何かを考えたのか少し、彼女は扇子を口元に当てる。 


「こんなものあるから夢を見るのよね」


 パチンっと扇子を畳むと、ネックレスを扇子で無理に引っ張る。

 ギチギチと紐が音を立てる――バチッと音と共に紐がちぎれネックレスが床に飛散した。


 みるみるとアンリエッタの脚は魚になっていく――その様子にジェルメーヌは冷たい視線を送った。

 アンリエッタは故意的な悪意に晒され、ガタガタと震える。


 理解のできない敵意に震え泣くことしか出来なかった。


「さぁて貴女のお姉様を特別な晩餐に招待しないと」


「私のお部屋にお連れして」

 ニンマリと彼女は不気味な笑みを浮かべるだった――

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