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人魚姫の“姉”に転生したので、妹の悲劇を防ぐため王子を殺すはずが執着されました  作者: 目々ノミーコ
2章

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4話 人魚姫の恋

 レオナルドは気を使いアンリエッタの部屋を私の部屋の隣にしてくれた。

 トレントは、男なこともあって別の場所に案内された。彼も悪い男ではないのだが、どうもお調子者なのが玉にキズだ。


 自室でふうっと息をつくと、コンコンッとノックされる。

 続け様になんの用かしら?


「入っていいわよ」


「あら、アンリエッタ――」


 扉を開いた先にはアンリエッタがいた。

 モジモジとしながら緊張している様子だ。


「久しぶりに会えたので、水入らずで話したいとお願いしたんです!」

「お姉様が疲れてたら、その…別日でもいいんですけど」


「何言ってるのいっぱい話しましょう」


 ぱああっと笑顔を浮かべる妹は何よりも愛おしい。

 この子の笑顔を結末を守る為にここに来たのだ、――


 ベッドに座り車椅子の妹と対面する形で話す、マリー達が気を聞かせ、お茶とお菓子を用意してくれた。

 妹は宝石のように偏られた、陸の食べ物に目をキラキラさせていた。


「食べてみたら?」


「いいんですか!?」


「私達の為に用意されたものだもの」


 クスクスと笑うと、アンリエッタは必死になってクッキーを選ぶ。

 最終的に赤いジャムが乗ったものに決めたようだ、口に頬張ると必死にモゴモゴとしている。


「甘いです!!けど…何だかパサパサしてます」


「お茶を飲んでみたら?」


 妹は私の勧めでお茶を飲む。

 

「あっち!」


「こちらの食べ物は温かいことが多いから気をつけて」


 そうだ…人魚の世界はすべて海中の中で、温かい食べ物という概念が乏しい。

 言ってあげるべきだったわね。

 けれど目を輝かせて楽しむのを邪魔するようで、言いたくないのよね〜


 フーフーとして一口飲むと、コロコロと表情を変える。


「美味しいですお姉様!!、甘さがちょうど良く感じます」


「それは良かったわね」


 私の妹はなんでこんなに可愛いのかしら…、小動物的な守ってあげたくなるそんな感じがする。

 可愛げのない、私とは大違いね――こんな事考えてはダメね。

 

 アンリエッタは急に暗い表情を浮かべる。 


「…お姉様はすごいですね」


「どうしたの?」


「一つしか年が変わらないのに、私とはぜーんぜん違うんですもの」

「慣れない陸なのにもう歩けているし、今日のお話も私から出来なくて…」


 彼女なりに気にしているのだろう…しかし成人も間もない妹が上手くできなくても仕方がない。

 比べて落ち込む、私と同じね…

 

 父も悪いがアンリエッタに期待して、送り出した訳ではないだろう…

 自分でもそれに気がついてか、更に彼女の心を痛めているのだろう。


「私の方が慣れているだけよ、貴方もすぐ素敵なレディになれるわ」


「ほんとですか〜」


「本当よ」


 今回の外交で成長を願いたいのが姉としてだが、しかしレオナルドをどうしたものか…

 最悪の場合暗殺計画を再始動しなければならない。


「お姉様、あの…」


「どうしたの?」


「聞きづらんですけど…その」


 モジモジとし恥ずかしそうにアンリエッタは、言葉を発する。

 焦れったいその姿に、こちらから答えが気になってしまう。


「何でもいいわよ」


「レオナルド様ってどんな女性が好きなんでしょう」


 頬を赤らめ、思い吹けるように聞いてくる。

 出会ってしまうだけで、こうも運命は回ってしまうのだろうか?

 予想はしてたとはいえ、衝撃は思ったよりもすごかった…


「ど、どうして気になるの」


「いえその、すっ素敵な殿方だと思って」


「それにとても優しいですし…初めて海から来た私の為にお洋服も車椅子も用意してくださいました」


 彼女は思い出に浸るように夢見心地で語り出す、私の心臓は発言を聞くたびに冷え切っていった。


「それに…実は海から見て気になっていたんです…、花火を見とれていてその後は見ることは無かったんですけど」

「人魚の兵隊さんたちにも見つかってしまって…お城に帰りました」

「どうしても、もう一度会いたくって…でも会って諦めがつかなくなりました」


 思考は纏まらない、けれどその先の言葉を聞かずとしても分かってしまった――


「私、あの人が好きです!!」


 私の努力は無駄だったのかしら…

 レオナルドを殺さないと…

 でも、今の私に出来るの?

 一度手放した殺意をどうしたら、いや手放した訳じゃない…私が彼に惹かれたのがいけない。


「そうなのね…応援するわ」


 なんとかその言葉を絞り出す。

 姉として贈れる言葉がこれしか思いつかなかった…何とか笑顔を保つ。


「本当ですか!!」


「いつか一緒に歩けるようになったらいいなぁ」


 想像を膨らませている妹とは違い、私はこれからどうするかで悩んでいた。

 妹の前で考えるのは無理だわ、私もかなり動揺している――

 行動を間違えばまた妹は泡になってしまうかもしれない…


「アンリエッタ、そろそろお茶も空になった事だし一度部屋に帰りなさい」

「まだ休んでないのでしょう?」


「えー!!もっとお話したいです〜」


 今の彼女は恋する乙女、それこそ何をしでかすか分からない。

 私の一言でそれこそ結婚だなんて言い出してもおかしくない…寧ろそのつもりで人魚姫は身一つで賭けに出たのだ、しないなんて思えるはずもない。

  

「だーめ、浮力のない世界で無理してはだめよ」

「私だって初日は転んだりで大変だったんだから」


「お姉様が!?」

「今は普通に歩いてらっしゃるからてっきり…難なく出来たのかと……」


「そんな事ないわよ、ほら分かったでしょ」


「分かりました実はすごく体が重くて…」


 はしゃいでいたがやはり疲労が蓄積していたのだろう…どうかその疲労と共に、恋心が消えてくれないかと願ってしまう。


「姉にはお見通しなのよ」


 ベルを鳴らすと、ポニーテールのメイドハンナがやってくる。

 彼女は軽く挨拶すると、アンリエッタの車椅子を掴む。


「それでは帰りましょうアンリエッタ様、お話はハンナが引き継ぎますよ〜」


「はわっ、よっよろしくお願いします!」


「いち使用人に、そんなにお気遣しないでくださいませ〜ではミネルヴァ様失礼致します」


 ハンナはテキパキと車椅子を動かし去っていく、名残惜しそうに妹は私の事を見ていた。

 二人が去ると私はベッドに横たわる――


 レオナルドの言葉が忘れられない、

 「ミネルヴァ――俺は君が好きだ」

 その言葉がずっと頭を占拠していた。


「外の風に当たりましょう」


 私は気分を変えるために一人で部屋から出た――。

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