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人魚姫の“姉”に転生したので、妹の悲劇を防ぐため王子を殺すはずが執着されました  作者: 目々ノミーコ
2章

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3話 前途多難な海模様

「こんな所で立ち止まっては何だ、陛下がお待ちだ」


「しかしアンリエッタはこの状態だ、階段なんて登れないぞ」


 トレントは長い階段を指差し、困ったような顔を浮かべる。

 本当は私が運ぶわ!!って言いたいところだけど、自分の足もおぼつかないのにムリね…


「車椅子は、使用人に運ばせてアンリエッタ殿はどちらかが運ぶことにしよう」


「そりゃいい!」


 待って――この流れ。

 私は嫌な予感がした、いま一番避けたいのは妹がこの王子にレオナルドに恋をする事だ。


「客人に雑務を頼むのは気が引ける、ここは俺がしよう」


 こいつ〜!!

 そうよね貴方はやるわよね!!!

 でもそうはさせないわ――


「妹はまだ成人したばかりです、今日出会ったばかりの男に触らせるなんて私は許さないわよ」


 今まで子供だったのだ、通らない訳でもない筈だ。

 しかも彼は婚約破棄をしたばかりだ、女性関係は今とてもデリケートな筈だ。


「わっ私は、大丈夫ですよお姉様」


「私が許しません!!」


 妹が気にするかが問題ではない、体裁的にも私の私情でも何方としても都合が悪い。

 レオナルドは少し考え込む。


「確かに…それは良くないね」

 

 と言葉を零した。

 状況を理解したのだろう。

 彼も馬鹿では無い、寧ろ優しげな顔で頭は回る方だろう。

 でなければエーデルを公開処刑なんてしない。

 

 失敗すれば王室の格が下がるというものだ…

 エーデルの失態を含む事実や、婚約破棄をするしか無いことを、公の場で言う事で有力貴族達への説明義務や王への説得を省いたのだ。

 あの場にいれば“終わった事です”といえば済んでしまう。

 

 こう言う所は食えないのよね…私も後から気がついたのだけれど。

 

「なら自分が運びます、昔馴染みなんでね」

「アンリエッタそれでいいか?」


「…はっはい!それで大丈夫です」


 トレントがそう言うと笑顔で応対するアンリエッタだが、何処か残念そうに見えた。

 いや気の所為であって欲しい――そんな願望が私に渦巻いていた。


「よしっこれで大丈夫だな!」


 使用人が用意した車椅子にアンリエッタを座らせると、トレントは自慢げにした。


「ありがとうトレント」


 私がそう言うとトレントは、ウインクしてこちらにアピールする。


「惚れていいぞ〜」


「はいはい」 


 こう言うお調子者の所が変わってなくて安心する、だけど皇子って感じはしないのよね。

 相手してくれよ〜と彼は泣きつくようにいうが、ミネルヴァは軽くあしらう。

 

 その様子を見ていたレオナルドは、表情を変えないもののイラッとしていた。


(なんだあいつ)


 そう心の中でレオナルドは言葉を吐き捨てた。

 

「さて皆一応だけどこの先、陛下がお待ちだ私語は慎むように」


「分かってるって!」


 扉を空けて私達は王に向かいれられた。

 今日は大勢はおらず、国王と王子そして近衛兵だけだった。

 あの時は例外的なセレモニーだった、しかし何故妹が歩けない状態で…私の時とは何が違うのかしら?


 レオナルドは、王の横にいく。

 私達は挨拶をする、妹は立てないためかペコっと頭を下げた。 


「海の使者たちよよく来た」

「貴殿たちの事を教えてはくれないか」


「わっ、私はァっ、アンリエッタ・アクアリア六番目の姫です。お姉様に再会する場を与えてくださり誠に光栄でございます」


 緊張したのかアンリエッタは噛みながら挨拶をする、赤面しながらも言葉をいい終える。

 初々しい所作からか、国王はニコニコとその話を聞いていた。


「自分は、トレント・ドリアイナと申します。ミネルヴァとアンリエッタとは異なる国――スニオン帝国の第二皇子です」

「同盟国アクアリアが、人の国と外交するにあたり皇帝陛下に命じられ使者として参った次第です」


 成る程ね、一応は皇帝の命を受けてやってきたのね…

 確かに…父は大丈夫だったかしら、あちらのお方はとても信心深く頭が硬い。

 きっと色々難航したのだろう…もしくは難航しているはずだ。


「して…スニオンという国は、アクアリアから見てどのような国なのだ?客観的な意見が知りたい」


 国王は疑問を投げかける、アンリエッタはえっとと言葉を詰まられ答えられそうに無い。

 仕方ないわね…妹の仕事を奪うようで申し訳ないが、滞るのは印象が良くないだろう。


「スニオン帝国は、我が王国アクアリアよりも国土が広くより発展しております。

 同じ神を崇め同じ宗派の同盟国にございます。異なる種族の特性上、暮らしが異なったため違う国として歩んできました」


 スニオン帝国は魚人達が住む世界だ、人魚達より数が多く文明もより発展している。

 彼らは私達より人に近い体を持っているが、皮膚やその他は彼らのほうが魚に近い。

 

「種族の違い?君達は違う種族なのかい?」


 レオナルドがそう疑問をもつ、人魚と魚人の違いが人間に伝わってるとは思えない。

 分からないのも無理はないだろう。


「違いますね、自分らは魚人で人間同様二股に分かれた足を持ちます。陸でも元の姿である程度活動できますよ」

「しっかしまぁ出来るだけで、海からでたことない奴が殆どですよ」


 トレントはそうははっと、笑いながら話す。


「トレント殿では、そちらの皇帝は我々と同盟を望んでいると思っても宜しいのだろうか?」


「――“いいえ”」

 その言葉に場が静まり返る、誰もが予想していなかった言葉だ。

 トレントは相変わらずの様子でマイペースさを貫いていた。


「皇帝陛下の考えは、同盟の価値があるかどうかの視察、人魚族の繁栄に貢献しているかを目に見てこいと――」


「我が国が、不足と言いたいのですか」


 レオナルドはそう王の代わりに発言する。

 まるで試し行為だ、舐められていると勘違いしても仕方のない対応だ。

  

「知っていますか、人魚が…魚人が人々にどのような差別を受けてきたか」


「魚人は、迫害のみで済んでいますが…人魚は違うですよ。我が国の皇帝が気が使うのもそのためです」


「美しさから価値があると言いふらされ鱗を剥がれ、東では不老不死の妙薬として人魚の肉は取引されている、人魚狩りなんてものすらあったんだ」


 その事実は一部私も知っている、アルカディアがそのような事をした記録は無いが…周辺諸国でない話でもない。

 アンリエッタはその話に体を震わせている、私は大丈夫よと彼女の体を抱いた。


「我々がそのような事をするとでも言いたいのか」


 レオナルドは押さえていたが、その声は怒気を孕んでいた。彼がどれだけ私を考えてくれたかは、私も知っている。

 いまここで庇うのは、得策じゃないはアクアリアが肩入れしすぎても心象が悪いわ…


「よい、レオナルド抑えなさい…我らが人魚と魚人の違いが分からないように…彼らも人の違いなど知る由もないのだ……」


 流石は国王…

 トレントの発言の揚げ足を取ったわね、これじゃトレントもこれ以上は詰めれないでしょうね。

 

「その事はアクアリアの国王、マールズ殿から聞いておるトレント殿…歩み寄るには時間と理解が必要な事を分かって頂きたい」


 国王の余裕に年の功を感じる、レオナルドもまだ父親に比べたらまだ子供なのだろう。

 気立てがいいと言っても限度はある。

 よくよく考えれば…彼もまだ十代だものね、年相応の部分があって然るべきだろう。

 その方が親しみがあってよいけれど…

 チラリッとトレントを見ると彼は以前と態度を変えていない…


「もっちろんですよ〜!!」

「自分は喧嘩しに来たわけじゃありません!勿論、我々に有益だと思ったなら皇帝陛下に進言致します」 

「自分としてもよい関係を気づける事を願ってますよ陛下」


 そう彼は言い終えると余裕の笑みを浮かべている。

 …子供の頃はあんまり考えて無かったけど、彼のこの大胆さは、目を見張る物があるわね。

 流石は皇子というべきかしら、大国の皇子は違うわね。


「レオナルド使者様たちを案内してあげなさい」


「…はい、陛下」


 私達は、王の間を後にする。

 アンリエッタは疲れたのか疲労を顔に滲ませている、私も疲れた…

 (まつりごと)にこうも関わるのは初めてだ、あの威圧感が常に巻き起こる事を考えると殿方の苦労が知れるものだ。


 (この部屋でどっと疲れるのは2回目ね…)

 (もっと平和では居られないのかしら)


「先にミネルヴァ達から送るよ、アンリエッタ殿が疲れているからね」


「それは助かるわ…」


 アンリエッタの方に手を置くと力が入っているのがわかる、無理もない同盟国同士に挟まれてこんな話…

 後でトレントに文句を言わないと…


「おー悪いなぁアンリエッタ」


「ちょっと私にも謝りなさいよトレント」


「一人で外交に赴く女に何の気を使えって?」


「何よ!!国の発展を思っての事よ」


「ははは〜わりぃわりぃ」


 反省の色が見えないトレントに腹を立てる。

 こいつ!!このお調子者め!!

 確かに大胆な事をしたかもしれないけど、私だって――


 私だって何かしら…

 女らしく無いとは言わないけれど、…この時代の良き女は貞淑でか弱い女性だろう。

 私には、当てはまらない――


 彼女の様子を見てレオナルドはミネルヴァの肩を抱く、ミネルヴァは思わずレオナルドを見あげた。


「ミネルヴァは芯は強いけど意外と繊細だ、昔馴染みなのはわかるが」

「一人の女性をそんな風に扱うのはよくないよ――」


 レオナルドは真っ直ぐそういうとトレントを見た、やらかしたと思ったのかトレントは顔をそらす。

 あー……とぼやく。


「そっそうですよ!!お姉様は素敵な女性です!!!」


「悪かったよ〜軽口のつもりだったんだ、気をつける」


 アンリエッタのむくれた顔にトレントは申し訳ないのか何度も謝る。


 しかし私の思考は別にあった―― 

 一人の女性、その言葉が耳から離れなかった…

 人魚としてでも、姫でもなく見てくれている。

 そう思って、そう勘違いしてしまう…言い訳ばかりが脳裏に連なっていく。

 

 収まってくれ鼓動よ、違うといってほしい。

 

 きっと私いま呪い(こい)に掛けられている気がするの――

 

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