1話 太陽の祝福
とある王国、太陽が愛する国アルカディア。
海に囲まれ資源に富んだ美しい海辺の国、交易の場所として重要視され豊かに繁栄している。
アルカディアにはとある神が住むという、遠い昔で誰もが御伽噺と思っていた――そんな中で、アルカディアの王はある日神託を受けた。
――この国で最も華やかな王子が産まれる、彼は次代の王として様々な栄華を築くだろう。
異国の姫が来たなら受け入れさない――
夢で美しい青年からそう語られた、伝説を知る国王はそれが神だと気づき大層驚いたそうだ。
最初は都合のいい夢の様に考えていたが、異国の姫がアルカディアにやってきたのだ――その美しさに王は一目で恋に落ちた。
彼女も同じ夢を見たと言う、正に運命――二人はすぐ様に結ばれたのだ。
嫁いでから間もなく一人の男児を授かった。
燃えるような鮮やかな赤毛、甘い容姿の男子が産まれた――太陽の神は美しいものを大層好んでいた。
その色を、容姿を愛し――祝福として自分の一欠片を授けた。
それは輝ける瞳として彼の顔をより照らした。
王子には大層こだわった名前を付けられた。
太陽の象徴とされる猛獣の王者、その意味を持つその名は――レオナルド。
レオナルドとミネルヴァは、食事を同じ部屋で取っていた。ミネルヴァに気を使ってなのか、海に面した国にも関わらず魚料理は一切並んでいなかった。
二人は殆どが食べ終え談笑をしていた。
「ねーなんで、ダメなの?そんなに悪い男かなぁ」
「はぁ……」
あの日からレオナルドの猛アプローチが止まらないのだ、私はそれに呆れていた。
確かに魅力的な男性なのは認めよう…断じて私の気持ちでは無いけど!!
客観的に見て彼が魅力ある人物なのは事実だ、――それにあんなに守られちゃね…否定できないわ。
ミネルヴァは今までの出来事を振り返る、ハッと我に――返り気持ちを振り払う。
けれど私は、元々彼を殺そうと暗躍でここに来た…恋など考えられるはずも無い。
それに…それ以外にも問題がありすぎる……
「そもそも婚約の話も出てない男女!しかも王族同士!!」
「ダメに決まってるでしょうがぁ!!!」
思わず品もなく叫んでしまう。
王族は国を映す存在だ、そんなふしだらな事があれば国の品位に関わる。
そもそも王族が贅沢をするのに疑問を持つものがいるが、転生という形で私も王族になりある程度理解した。
王族の知識や装い生活レベルは、そのまま国の豊かさを測る基準となる。
民に無理を敷き贅沢を極めるのは悪いことだが、王が豊かでなくては舐められるのは国なのだ――そんな事もする余裕がないと思われる。
他国に下に見られれば…最悪の場合、――戦争にまで発展する。
正確な数字の分からない世界では、ある程度の見栄や虚勢はより価値がつくのだ。
故に――弱い所は見せてはならない。
「――なら、正式に認められればいいのかい?」
「それは…」
「言ったからね!俺諦めないよ」
私が言葉を言い切る前に輝かんばかりに満面の笑みをレオナルドは浮かべる。
その顔にぐぐっと力を入れ困った顔をミネルヴァはした、彼の丸め込まれてしまうと必死に頭を回す。
(しまった…言質になってしまったわね、いやでも正式な場ではないし……)
恋愛なんて全然慣れてなさすぎる…分からないわ――知ってるものは童話ばかりだ。
だいたい童話って結ばれるべくして結ばれる話が多し…、恋愛のどっちにするの!?、的なものはあまりないし……
というかこんな事考えてどうするのよ。
二人の話を聞く三人のメイドたちは、見目麗しい王族達の恋愛劇に心躍らせていた。
彼女達はひそひそと話し出す。
レオナルド様積極的〜、ミネルヴァ様も素直になればいいのに〜、案外違う想い人が居たりして〜等と女子さながら他人の恋愛事情にニヤニヤ見ていた。
「あっそうだミネルヴァ君を食事に誘った本題なんだけど」
「今までの会話が本題じゃないならむしろ安心するわ…」
「それは本気ってやつさ!」
「そう…まぁいいわ」
レオナルドの話を私が流すと彼は少し寂しそうな顔をする、そんな顔されると悪い事した気分になるじゃない…
流されないわよ!!
「海から新たな使者が来るらしいんだ、手紙が届いたんだ」
「それは誰なの?」
「それが君にサプライズしたいそうで秘密だそうだ、きっと君が会いたい人だよ」
誰かしら…流石に王である父かしら?
でもお父様が海の外に出るとは思えない…人魚達は別にそこまで母数が多いわけでもない。
王の不在はかなり響くはずだ、それに…私達は六人姉妹。
王子がいないのだ――現国王である父の存在意義はその事実だけで跳ね上がる。
お姉様方は、私よりずっと才女だ居なくても何とか成りそうな気もするが…
でもそういえば――一つの疑問が浮かび私は口を開く。
「あなた達って海とどうやって連絡取っているの?」
「沈めるタイプの魚の仕掛け罠に、時刻を示す暗号を入れて、外交の人魚に麻袋で包んだ石の石板を届けてもらっている。勿論空けたか分かるように縫ってね」
「結構大変ね…」
「まぁ古代では壁や石碑に書くのが当たり前だったんだ、古いけど悪いやり方ではないさ」
成る程、真似を使用にも使われていない暗号なら偽物って分かる訳ね…石の形や色も拘れば真似は容易ではないだろう。
しかし紙に書くわけではない以上、職人の苦労が知れる。
海の世界と比べたら陸の文明社会ぷりは素晴らしいものだ、しかしなんの文化を持ち帰ったものか…一番いいのは政治を参考にする事だろうが、まだまだそこに介入するのは難しいだろう。
「そろそろ食事も終わったし失礼させて頂くわ」
「そうだね、また話そう!」
「はいはい、皆部屋に帰りましょう」
「「「はいミネルヴァ様」」」
レオナルドの言葉を軽く流すと私は立ち上がる。
手には、レオナルドがくれた杖を持つ。
何だかんだ歩けるようにはなったが、支えがある方が楽だ。
公的な場所以外では使い負担を減らしている。
レオナルドはミネルヴァに手を振りその背中を見送った、二人の細やかな食事を終える。
新たな問題が訪れる嵐の前のように、王宮は平和そのものだった――




