11話 魅惑の恋
「俺には、生まれつき太陽神の力の一部が宿っている」
「大変麗しい青年の神だったそうだ…俺にはその魅力が宿っているらしい…」
「歯切れが悪いわね」
成る程……どうりでモテるわけだ。
私達人魚の祖先は美しい声を気に入られ海流の神の祝福を受けたらしい。
きっと彼にもその類いの神からの寵愛の力を持つのだろう。
「君達の国は知らないけどね、もう魔法は地上から殆ど消えたんだ知る余地がない」
「俺の力で唯一分かったことは――輝ける者、この瞳の光に焼かれた者は魅了される」
「それがこの国の神の逸話と同じだった…それだけだ」
どうにも彼の顔は浮かない、私を思い通りにしたい男にしてはとても違和感がある。
「それを私にかけて、どうしたかったの」
「魔法の事が知りたかったんだ」
「成る程ね…知りようがないものね。でも普通に聞けばいいじゃない」
「聞いたら教えてくれた?」
「……教えないわね」
魔法はむやみやたらに話すものではない、そもそも人魚の世界でさえ殆ど失われている。
私の力も水を操作して泳ぎを補助する程度の物だ。
「でも君には効かなかった」
「だいたい効いたのって誰よ、案外効かないんじゃないの?」
そもそも確かに私に何かしらの効果はあったのかもしれないが、もしそうなら彼への殺意が消えていないとおかしい。
「そんな事ないよ、最初は母だそして――、エーデルだよ」
その名前に唖然とする。
ならば彼女の奇行や執着は――
「エーデルには元々好きな子がいたらしい」
「けどね力の制御ができない俺と、誤って目が合ってしまってね…彼女は僕の虜になった」
「――好きだった人の事なんて、もうどうでも良くなっていたよ」
その声は何処か震えていて、彼は本当に後悔してるだろう事が伝わった――
「俺は申し訳なさから彼女と婚約したんだ、――俺が彼女を狂わせたんだ」
「だからよほどのことがない限りは添い遂げるつもりだったんだ」
「そうだったの…」
彼は自責の念に駆られたのだろう…その事が容易に想像できる。
魅了の力…人に好かれてもこうやって殺されかけるんだから、大変ね。
もしかして人魚姫も魅了に当てられた可能性はあるのかしら。
「とわいえ今回の殺人未遂が無くても、振っていたとは思うけどね」
「えっ?」
レオナルドは私の手を取ると熱を持った瞳でこちらを見つめる。
「余程のことがなければと言っただろう?」
「ミネルヴァ――俺は君が好きだ」
こいつは今なんと言った
今私を好きだって――それってもしかして……悲劇の回避?
いや私は人魚姫の姉ですけど!!?
そうか――王子が誰かを好きになる条件。
こんな当たり前の事を考えていなかった…それはつまり助けられる事!!
気が付かない内に私はそれを達成してしまったのね――
「初めてだったあんなに胸が高鳴ったのは」
「能力が効かないのも初めてで…俺は嬉しかった!!」
とても無邪気に彼は私に言い寄ると、はしゃぐように子供みたいに私に言葉を投げかける。
「私の何が良いの?能力が効かないだけなら――」
そういうと彼は私の頬に触れる。
彼の熱が私に伝わってくる――
「国を背負える度量と器、
俺に媚びないのも良い、
思い通りにならない所も好きだ、
何より――俺のことが好きにならない君が欲しい」
いつもヘラヘラと笑う彼からは想像もできない、
「本当はね、君の人魚の姿を誰にも見せたくなかったんだ――」
「本当はずっと前から、君を独り占めしたいとずっと考えていた」
そうギラついた眼差しを向ける、明らかな執着と好意が入り混じったものだ。
浮かべる顔は、優しい王子の顔ではない、獲物を見据える狩人の瞳だ。
彼は間違いなく私に恋をしていると――確信せざるおえない。
その言動にドクンっと私の胸は少し鼓動を速めていた。
けれどこれはいったいどうすれば……
人魚姫が結ばれてゴールインならまだしも…私が王子の心を射止めてしまうなんて――
「と言うことで、俺のものになってくれないかミネルヴァ」
ニコニコとしながら彼は、私の手をつかみ包み込む。それを思わず振り払う――
「絶対いやよ!!」
「なんでだい、家柄良し、顔良し、気立てがいいの三拍子だよ!!」
「自分で言わないで頂戴」
レオナルドの図々しい態度に私は少し苛立つと同時に少し高揚を覚えた。
身分からか軽口を叩くなんてできない、ずっと妹の悲劇ばかり気にして暮らしてきた…
そんな人生に一つ区切りがついたようで私は晴れやかだった――何より彼との会話は心が弾んだ。
「私は気高い人魚の姫君よ!誰が貴方を好きになるもんですか!!」
「好きになるより殺す方がまだありえますわ」
そう私はこの人を殺そうとしていた…そんな事しようとしたのがバレたら、エーデルと同じく失望されるに決まっている。
私がもし彼を好きになったとしても――
(好きになったらなんてなんで私考えているのかしらろ…)
「君の救った命だ、その時は君に捧げるよ」
その返答に私は思わず目を丸くする、その言葉になぜだか胸が締め付けられた。
彼になぜだか許された、そんな気がしてしまった。
顔が熱い――レオナルドといるのが気まずい、そう思った私は思わず声を張る。
「不吉なこと言わないで頂戴!!」
「君が言い出したんだろ?」
「もう自室に帰らせて頂きますので」
「待っておくれよ!!」
その声を背に私は歩幅を広げ、歩みを速める。
顔の高揚を見られたくない、今きっと私はひどい顔をしている。
――でもきっとすぐに追いつかれる、なぜだか彼は何処までもついてくる…そんな気がした。
追いついた彼は、赤面する私の顔を見て嬉しそうに微笑んだ。
絶対に好きになってやるもんですか!!
――なのに胸はどうしてうるさいのかしら、きっと気のせいよ気の所為の筈なのよ。
だって私は人魚姫の“姉”何だから!!
彼女はミネルヴァ・アクアリア、艶めく黒髪と深海を映した緑の瞳を持つ、人魚の五番目のお姫様――つまりは人魚姫である。
新たな人魚姫の恋物語が紡がれるのはこの後のお話。
⚠これ以降のスクロールに表紙絵が載ります。
苦手な方はブラウザバックお願いします。
これにて第一章完結となります!!
ここまで読んでくれて方々ありがとうございます、面白かったら良かったら評価お願いします。
次回から第2章となります。




