第207話 小型魔動船の復元
中型の魔動船の復元に失敗したのを誤魔化すべく。手元にある残りの素材で、小型の魔動船の復元をすることにした。
手持ちで足りない素材は、同じ小型魔動船の部品で補う。
とにかくまともな成果を出さなきゃいけない。
別に復元を頼まれたわけではないけど、一つぐらいはちゃんと返さなければいけない気がしたからだ。
「――――できた!」
今回は指定通りにエネルギーコアに魔晶石を使ったことで、おかしなことにはならず完璧に復元できたぞ!
最初からそうしておけば良かったというツッコミは受け付けない。実験に失敗はつきものだからだ。そのお陰で小型魔動船の復元は失敗せず(余計なこともせず)に完成したので、結果オーライである。
『例えるなら料理と同じですね。レシピ通りに手順を飛ばさず正しく材料を調理すれば美味しく仕上がるようなものでしょう。ただマスターの場合は、失敗したとして運と勘でどうにかなっていますから、アップルパイがタルトタタンになったようなモノではないでしょうか? そのせいで勘に頼る悪いクセが治らないのでは?』
うるさいだまれですわよ!
確かに料理も実験感覚で作ることはあるけど!
不味い物は作ってないからいいじゃん!
だからダンジョンコアを使ったことは反省したし、今後は教訓として心に刻むから許してってば!
取りあえずそんな事よりも。
「う~ん?」
それにしてもコレ、何かに似てるんだよな~。
軽自動車よりは小さいし、スワンボートみたいっていうか、江戸時代に海岸へ漂着した『うつろ船』に似てるんだよね。
『スペックを見る限り、ドローンのような機体ですね』
「あ~それそれ」
無人ではなく、有人ドローンの方だ。
俺の世界では『空飛ぶ車』みたいな呼び方をされている。
ただヘリコプターやドローンとは違って船の形により近い。だから『うつろ船』やスワンボートが頭に浮かんだんだけどね。
『最低安全高度は100メートルから200メートル、最高時速も二十キロ~四十キロ程ですので、救命艇や脱出用かと思われます』
しかも風が強いとかなり煽られる機体のようで、大型は雲の上まで飛ばせても、小型だから低空飛行レベルでしかない。
動力エネルギーに使用する魔晶石は日本円で一個三十万程かかるし、その飛行時間は二~三時間程度とのことだった。
そう考えると結構値段が張る乗り物である。
手持ちの素材がギリギリだったために、複数の小型の魔動船から使える部品を回収して合体させて作ったし。(全部は使ってないよ!)復元された小型魔動船をモデルに新しく作り出すとしたら幾らぐらいになるんだろうね?
『少なくとも、日本円に換算して数千万から数億円ではないでしょうか?』
「やっぱそれぐらいにはなるよね~」
『構造がかなり複雑ですからね。全て手作業で作り上げるとしたら、技術的にも高度な熟練の技を持つ職人でなければ難しいでしょう』
やはり貴族や大金持ちにしか手が出せない乗り物になりそうだ。
もしサヘールで小型の魔動船を作れたとしても、スピードや高度を考慮するとまだまだ飛竜は現役で活躍できそうだね。機動力も飛竜の方が上だし。
なんだかんだ言って、飛竜たちには頑張ってもらいたいのだ。
人間の手によって都合よく品種改良された魔物みたいだしな。
できれば末永く共存して欲しいものである。
さて。何とか小型魔動船も復元できたので、早速お披露目と行くか。
中型の魔動船に関してはディエゴお兄ちゃんに相談だ。
ディエゴ判定は作れるか作れないかが基準だけど。
何とか上手く誤魔化してくれますように!
◆
「こ、これが……魔動船の、完成形ですか……?」
「うん」
小型で見た目が玩具みたいだからか、アマル様の反応が微妙だ。
まぁ、動力付きスワンボートだしな。白鳥の頭は付いてないけど。
「貴様はまた、とんでもない物を創りおったな」
「ふくげんしただけだよ」
創作物みたいに言わないでほしい。
こっちはちゃんと原型のまま復元した。
とんでもないことになったのは中型魔動船の方である。
「して、これは本当に飛べるのか?」
「とべるよ」
取りあえずディエゴと実験して確認済みである。
テオも乗って遊んだし。(他の人は怖がって乗らなかった)
二時間程で三十万がぶっ飛んだので、かなりお金のかかる遊びをしたもんだ。
そう考えると、ダンジョンコアを動力とした異次元飛行物体と化した中型魔動船は、実質無料で飛べるから懐に優しいのかな?
「す、凄いですぞこれは!」
「かなり精密な構造でございますな!」
「古代の技術とは素晴らしいものですなぁ~」
魔道具大好きおじさんたちが、スワンボートを見てキャッキャしている。
そして早くも乗り込み、あちこち弄っていた。
「ふぉ――――っ!?」
「あ」
操縦自体は原付レベルだからか、あっさり空へと舞い上がる。
大型魔動船が豪華客船規模で、中型魔動船がクルーザーサイズなら、小型魔動船はモーターボートみたいなものだ。
「うひょ~~っ! これは楽しい乗り物ですぞ~~っ!」
「親方ぁ~! 次はワシですっ! ワシにも乗らせてくだされ~!」
「おい、お前らっ! 何を勝手に遊んでおるっ!」
「ほ、本当に……飛ぶのですね……」
唖然とするアマル様と、叱り飛ばすアラバマ殿下。
時速二十キロから四十キロまでしかスピードが出ないのが幸いだ。
障害物検知装置が付いているので、滅多なことでは事故は起こさないと思うけど気を付けてね~。
「俺様にも乗せろっ! お前らばかり楽しむでないっ!」
「もし生産できるようであれば、一隻あたり幾らになるのか……。移動手段として魔動車は魔塔が開発したことでこちらは一歩遅れてしまったが、小型の魔動船を普及させることが出来れば――――」
アラバマ殿下は乗りたがり、アマル様は販売方面へ思考が飛んでいる。
まぁ、喜んでいるようだから良かった。
なんにしても交通ルールを決めないと危険な乗り物だろう。
当分はサヘール観光のアクティビティ的なポジションで、徐々に認知させて普及すると良いと思うよ。
遊覧飛行や体験操縦みたいな感じでね!
そうして二時間ほどみんなで乗り回し、漸く落ち着いて来た頃。
「本当にコレを、返還するのか?」
「うん」
「元々はこちらの遺跡から発掘されたものだからな。リオンは復元したことで満足したそうだし、返還するとのことだ」
体裁を取り繕うために、復元した小型魔動船を返還することにした。
ジャンク品扱いだったとはいえ、幾つかの魔動船を犠牲にしてしまったからね。
置き土産としてせめて一隻だけでも返さなければ。
「しかしリオン様に差し上げたモノですし。復元までして頂いて、それを取り上げるようなことは出来ません」
「そうだぞ。設計技術だけでも相当であろうが」
「問題ないそうだ。まだ遺物はあるし、復元素材を集めればいいとのことだ」
「ですが……」
「本当に、欲のない奴だな、貴様は」
「返せない恩ばかりが増えてますね」
「そんなことないよ」
残りの小型魔動船がまだあるし、材料さえあれば復元は可能だから大丈夫。
それに現在、足りない部品の素材は、俺とディエゴ(シルバ&ノワル)を除くみんなでダンジョンで手に入れて貰っている最中である。
特にテオがノリノリで素材集めに乗り出していた。
解るよ解る。テオもバイクとかに興味を持つお年頃だもんねぇ。ギガンも本当は乗りたかったくせに、時間切れで乗れなかったしな。(魔晶石が勿体ないとアマンダ姉さんのストップがかかった)
あの二人にはもう少し改良した小型魔動船を作ってやろう。
どうやら改良(魔改造)することもできるみたいだし。魔晶石の消費量を抑えて、もう少しスピードをアップさせて、高度も上げられるようにしないとだね。
と、いうのも。
なんと水晶型格納庫があれば残りの魔動船も復元できる上に、魔改造も可能なのが判明した。
Siryiが鑑定したところ、俺がいじくり回した結果、水晶型格納庫のランクが上がったとのことだった。
そのせいかファンタジーでよく見る、魔女の錬金窯みたいになっている。
石ころを放り込んでも金にはならないけど、素材を組み合わせてアイテムを作り出す機能とでもいうべきか。正しいレシピや条件が判らないとアイテムはできないし、失敗すると消失してしまったり、シュテルさんの大好きなガラクタが出来上がる。
錬金術って本当にお金のかかる趣味だよねぇ。
「他の魔動船も復元でき次第、返還するとリオンが言っている」
「……それは止めておけ。手に負えぬことになりそうだ」
「もう十分ですよ……」
疲れたような顔でアラバマ殿下が遠慮して、アマル様はやれやれといった表情で残りの魔動船の返還を辞退した。
既に手に負えないことになった、中型魔動船クルーザー号があるんだけど。
流石にそっちは返還どころか見せられない代物になってるからな。
小型魔動船の方は復元に成功したから返還しただけである。
だからそんなに申し訳ない顔をしないでほしい。
申し訳ないのはこちらの方なのだから。
だが取り合えず、移動型ダンジョンを誤魔化す伏線は張れた。
小型が復元できたのだから、中型も復元できたよって感じで。
異次元空間の部分だけ内緒にしておけば、多少斬新なデザインになっていたところで誤魔化せるだろう――――って、ディエゴお兄ちゃんが言ってたよ。




