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【WEB版】迷い込んだ異世界で妖精(ブラウニー)と誤解されながらマイペースに生きていく  作者: 明太子聖人
第三章  砂漠のオアシス・空中都市サヘール編

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第206話 だからこうなった

 ダンジョンコアを放り込んだ瞬間。

 水晶玉から放たれた、まばゆい七色の光が俺の目を潰す。


「ふぁ――っ!?」


 前が見えなぁ~いっ! 前が見えなぁ~いっ!

 くっそ。たまに魔道具作成時に起こる不思議現象めっ!

 魔法少女やヒーローが変身する時のエフェクトのように激しいっ!

 変身時に敵が攻撃できなくなる理由がなんとなく判ったかも――――じゃない!


「うぁ~、めがしぱしぱする……」


 床を這いまわり、激しい閃光に驚いて落してしまった水晶玉を探す。

 ダンジョンコアを入れた結果はどうなったのだろうか?

 徐々に視界が戻り、俺は慌てて拾い上げた水晶玉を覗き込んだ。


「げ」


 なんじゃこりゃ?


『――――入れる前に、もう少し考えるべきでしたね、マスター……』


 呆れたようにSiryiに窘められるが時既に遅し。

 復元途中の魔動船がおかしなことになっていた。






『好奇心は猫をも殺すと言います』


 だが『しかし、満足は猫を連れ戻した』という続きがあるのを知っているかいSiryiさんや。


『好奇心を満たした時の喜びは、危険を冒す価値があるという考え方ですね。全て繋げると「好奇心と満足のバランスが取れている」という意味になります。ただしマスターの場合は、危険の方が満足を上回っているような気が致します』

「……」

『満足以前に「やっちまった感」の方が上回ってませんか?』

「……」


 少し考えれば判りそうなものでしょうと、Siryiから説教を食らう。ほんとコイツ、益々アレクサに似てきたな。良くない傾向である。

 とはいえ、いつもの『直感に従ってやってみた』という、悪いクセが出たせいもあるので反省しなきゃいけない。その結果がこの有様であるからして……。

 作業をするから誰も見ないでねと言って、一人で実験をしてて良かった。

 バレたら絶対に怒られる案件だ。


『隠すより、正直に報告をして怒られた方がスッキリすると思われますが?』

「うぐっ……」

『ですが見た目的には太古の魔動船を模した外観ですし、大型クルーザーほどの大きさに納まっております。幸いでしたね』


 そうなんだよ。見た目は良いのだ。この魔改造された魔動船は。

 外装を復元していくと、宇宙船ぽく見えたのは『ミステリー・エアシップ』みたいな飛行船だったからだ。


『問題は内部構造ですね。パーツの「合成」に使用した素材の大部分が、ダンジョンコアによって変質しております。つまり復元しつつあったパーツの多くが、「合成」ではなくコアに「吸収」され、新たに創り替えられたものと推測します』


 やっぱそうか。

 水晶玉に映し出された内部がおかしなことになってるなと思ってたけど、全然違う構造になっちゃったのか……。

 採算度外視でひたすらに復元だけを考えて、水晶型格納庫クリスタル・ストレージに表示される足りないパーツに持てる材料をどんどん放り込んだのに。

 その全てがパーになってしまったということか……。あ、涙出そう。


『エネルギー源となる「コア」の要求表示で、ダンジョンコアを思い出したのがよくなかったのでしょうね』

「ぐぬぬ……」


 不用品扱いですっかり忘れてたのに、何故思い出したし。

 しかもこのタイミングで!

 いや本当は最後までSiryiの説明を聞かなかった俺が悪いのは判っている。

 魔晶石の替わりにダンジョンコアが使えるかも~なんて思ってしまった俺の完全なるミスだ。


『説明の途中で、しかも私が止める間もなく放り込みましたからね』

「……」


 魔晶石よりも高エネルギーだっていうから。

 イイじゃんイイじゃんスゲーじゃんってなるじゃん?

 気持ちが先走って時を越える謎の列車に乗っちゃったんだよ。


『マスターは謎の乗車券を拾う、とてつもなく運の悪い青年ではないでしょうに』


 逆に運は良い方だと思いますと、珍しく適切なツッコミをSiryiがした。

 どうしたちゃったんだ? なんか凄い進化してない?


『とにかくですね。あくまでも可能性の話であって、推奨はしませんでしたよ。続けてリスクについて説明をしようとしたじゃありませんか』

「……そうだね」


 人の話は最後まで聞きましょうねとSiryiに説教を受ける。

 そしてノリと勢いでやらかしてしまった結果。

 ダンジョンコアを『合成』素材にしたことにより、見た目は魔動船で中身は全くの別物になってしまった。

 それだけでなく、魔動船がダンジョン特有の構造をしている。

 簡単に説明すると、内部が異空間になってしまったのだ。


 だが落ち込んでもいられない。

 実験にはこういう失敗はつきものである。

 それに『分解』すれば済む話だよね!

 よし、なかったことにしよう!

 トライ&エラー! 俺は何度だって挑戦する男だ!

 分解指示をすると《《一からやり直しのペナルティ》》があるけど仕方ないよね!

 ここは気を取り直して、最初から作り直すべく水晶玉の操作画面をタップした。


「――――あれ?」


 分解できないぞ?


『そのようですね』

「なんで?」


 ペシペシと『分解』の項目を押すが、うんともすんとも反応しない。

 まさか壊れた? 七色の光の眩しさに驚いて落っことした所為?

 でもバホメールの絨毯の上に落っことしたから、衝撃はさほどなかったはず!


『結論から言います。その理由は、水晶型格納庫クリスタル・ストレージがSRアイテムで、ダンジョンコアがSLアイテムだからです』


 えーっと、SRはスーパーレアで、SLってスーパーレジェンドだっけ?


「ということは?」

『ダンジョンコアの方がアイテムのランクが高いので『分解』できないのです。SRでしかない水晶型格納庫クリスタル・ストレージが、SLのダンジョンコアに力負けしていると言えば判りやすいでしょうか?』


 だからSRアイテムの指示を、SLアイテムが拒否しているのだそうだ。


「う……うそだ……どんどこどーん……」


 思わず膝からガクリと崩れ落ちる。


『これにより判明したことがあります。SL等ランクの高いアイテムは、不用意に素材として使用してはいけないということです。「分解」できないだけでなく、「合成」により破損、または消失する可能性があるということですね。ですので、水晶型格納庫クリスタル・ストレージが消失しなかったのは本当に運が良かったと言えます』


 人は失敗から学ぶ。だが反省して終わるのではなく『原因や結果を分析し、改善策を立てて同じ失敗を繰り返さないようにしましょうね』と、追い打ちをかけるようにSiryiが正論パンチで俺を打ちのめした。






『ダンジョンは本来、創造した者の影響を色濃く受けるものと考えられます』


 この世界は沢山のダンジョンが出現していて、夫々に特色があるからね。創造主の趣味や趣向で様々な罠やドロップ品があるって感じかな?

 まぁ俺はダンジョンの謎に迫る研究をしてないからよく知らないけど。

 ただこの世界に来て最初に聞いた『ダンジョンは妖精が悪戯目的で創った』説が何となく正しいような気がする。寧ろその説が濃厚というか、核心に迫っているような気がした。今回の一件で!


『これは推察にすぎませんが、《《ダンジョンを創る》》という目的での使用ではないことから、異空間を構築しながら居住空間としての構造になったのではないかと考えられます』


 だから見た目は中型の魔動船だけど、中身が快適居住空間に変化しちゃったのかぁ~。あはははは! ――――って、笑ってる場合か!

 返して戻して俺の素材! ダンジョンコアは壊れても良いからぁ!


『失ったモノは戻りませんので諦めて下さい。ただ幸いにも水晶型格納庫クリスタル・ストレージがコアに吸収されなかった理由として考えられるのが、指定先が魔動船だったからでしょう。ダンジョンコアを放り込む際に、他に考えていたことはございますか?』

「……あるかも」


 魔動船が復元できたらこれで色んな所に行けるのだろうか? という他に。

 浴室とトイレが独立したところに住みたいとかはちょっと考えた。

 この世界って、宿泊施設は全てユニット式なんだもん。俺自身排泄しないから良いけど、トイレがすぐそばにあるバスタブが物凄く嫌なのだ。

 それと二人部屋や男女で組み分けた部屋になることも多いから、宿泊施設では個室に別れて泊まりたいなんてことも思った。

 だいぶ慣れたとはいえ、他人と一緒の部屋で寝るのはしんどい。

 勿論そんな贅沢を言うことはなかったけど、気を遣うのもあるし、好きなように散らかせないから不自由だなとは思っていた。

 サヘールでは秘密基地(アラバマ研究所)に個室があるけどね。


『私の説明を聞き流しながら、そのようなことを考えていたのですね?』

「……うん」


 俺は素直に頷いた。

 よくよく考えてみれば、どうしてこうなった。ではなく。

 だからこうなった。のである。


『ダンジョンコアは、この世界に現存するアイテムの中でも最強の部類なのです。安易に使用すると大変危険なアイテムであることは勿論、そもそも魔物を発生させたり人の手で作り出せないアイテムを生み出すのがダンジョンですからね。その元となるコアですので、取り扱いは十分に気を付けるべきでしょう』


 災害級のレヴィアタンからドロップしたアイテムだからな。そりゃそうだ。

 俺にとっては価値以前に特に使いどころのないアイテムだから、リュックの中にないないしてたけど。


『そして幸いなことに、マスターの脳内が比較的平和な想像をしていたので、大事に至らなかったのだと思われます』


 比較的平和ってなんだよ。もしかして遠回しにバカにしてる?


『邪悪で危険な思想や思考をしている人間や妖精がこれを手にし、ダンジョンを創造したと考えてみてください』

「あー…………」


 だから悪意の塊みたく魔物がうじゃうじゃ発生するのか。

 アントネストは捻くれ者だけど、心が乙男なおっさんが創ったみたいなダンジョンだったしなー。人によってはすんごい嫌な魔昆虫からアイテムがドロップするし。

 サヘールの遺跡ダンジョンには捻くれ要素はなく、魔物を斃して鉱石類等のアイテムをドロップするスタンダードな完全脳筋仕様だ。

 そして脱出ゲームみたいに謎を解き明かすタイプのダンジョンだと、創り手の知識や知能との戦いになるってことだろうか? 

 ホラーアドベンチャータイプの、コー〇スや〇鬼みたいなダンジョンがあると考えたら怖いね。洋館型ダンジョンとか絶対に入らないでおこう。


『マスターの場合は、ダンジョンコアを魔晶石替わりになるモノと考えておりましたので、動力エネルギーに変換されたのでしょう。勿論ダンジョンコアですので、創造主の思考を元にした内装で異空間を創り出してはおりますが』


 確かにそのせいで部屋がいくつもあるんだよね。

 どう考えても見た目と中身が一致しない。

 正に異空間(ダンジョン)がそこにはあった。


『今のところ危険性はなさそうですが、念のため調べてみましょう』

「うん」


 修復モードでの表示にすれば、魔動船の船内が不動産で見るような間取り図になっていて、スケルトン図で内部構造を詳しく確認できる。

 そして破損個所や足りないパーツがあれば、必要な素材を表示してくれるのでそれに従って放り込めば修復してくれるという寸法だ。

 しかも各部屋をタップすると室内画像が確認できる優れもので、ボトルシップモードであれば指定した物体の全体の外観が見れた。


『やはり魔動船ではなく、クルーザーのように内部が改造されてますね』

「そだね……」


 改めて内部を見れば、どこぞのセレブが乗り回す大型クルーザーみたいだった。

 上部には広々としたデッキがあって、海釣りが楽しめそうな外観だ。

 恐らくこれは俺が海釣りがしたいと内心思っていた所為だろう。砂漠ばかりで海鮮類が手に入らないことへの不満が、クルーザー仕様になった原因であると思われ。 

 アントネストの海域エリアの魚介類は、ダンジョン外に持ち出しできなかったからなぁ~。はぁ……美味しいお魚が食べたい……。

 船内はクルーザー仕様だが、外観は魔動船と潜水艦を足したような見た目だから、水に浮かべても潜っても大丈夫そうだ。実際に潜れるかどうかは知らんけど。


『魔動船としての機能もありますので、内部さえ見られなければ誤魔化せますね』

「たしかにそうなんだけど」


 デッキから内部に入ると操縦室と船員室があり、その他にはリビング・ダイニング・キッチン・ベッドルーム等があった。

 ここまでは魔動船の大きさと中身が釣り合っている部分だ。元々の魔動船の内部構造とは全然違うので、復元に失敗したと思った理由だけれど。

 他の魔動船はここまでコンパクトでスッキリとした操縦室になっていないが、まだ誤魔化しがきくギリギリのデザインだと思われる。 

 殆どの中型魔動船は、屋形船みたいな造りだからね。

 クルーザータイプの操縦室は珍しかろう。


「ただねぇー」


 表側は良いんだよ、表側はね。

 水晶玉に映し出された異空間(ダンジョン)部分を確認すると、ドールハウスみたいなスケルトン図が確認できた。

 パーティメンバー全員分の部屋は当然として、シルバたち従魔の個室だって与えられる居住空間が出来ている。

 ペンション型シェアハウスみたいだね。

 表層部とはまた異なった様式の広々としたキッチンやダイニング、各部屋ごとに浴室と個室トイレも完備されているし、トレーニングルームもあった。

 わーい、なんて素敵な夢のお家なんだろうと、能天気に喜ぶほど愚かではない。

 見られたらかなりヤバイ部分であることが、流石の俺でも理解できた。


 ただ地下室みたいな構造の異空間だけど、窓から外が眺められるようになっているのはどういうことだろうか?

 閉塞感がなくて良いっちゃ良いけど。どうなってんだこれ?

 もしかしなくても、これって空飛ぶお家かな?

 だがそんな異空間居住部分とは別に、更に下方へ続く謎の空間が広がっていた。


『まだ未完成のようなのが、不安要素ではありますね』

「それなー」


 Siryiの指摘する通り、問題の謎空間にある各部屋の内装の確認ができず、真っ黒く塗り潰されてブラックボックスみたいになっていた。

 タップしても室内画像が表示されないんだよなー。

 まだ何か創っている途中なのだろうか?

 それとも開かずの間かなんかかな?

 どこでも扉みたいに、好きな場所に出入りできる空間だったらいいのにな~。


『マスター。余計なことは考えない方がよろしいかと』

「はうっ!」


 おっとアブナイアブナイ。

 これ以上の謎空間を作られたら大変だ。

 俺は慌てて水晶型格納庫クリスタル・ストレージをつつくのを止める。

 どうやら異空間部屋を増築するには素材が足りないらしく、現段階ではここでストップしているようだ。


『マスター、ここで一旦復元作業は停止しましょう。最早修復ではなく増築と化しております。ダンジョンコアのランクが高いのもあり、私でも正確な鑑定が出来ませんので大変危険です』

「う、うん」


 俺の予感も止めとけと言っている。

 ダンジョンコアを放り込んだ時はテンションがおかしくなっていたけど。

 今度はしっかりSiryiのアドバイスを聞いて、魔動船の復元をすることを止めた。

 これ以上手を加えると、迷路みたく増築し続ける空飛ぶウィンチェスター・ミステリー・ハウスダンジョンになりかねないしね。

 幽霊の替わりに魔物が出現する空飛ぶダンジョンになるとか冗談じゃないや。



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― 新着の感想 ―
この話の展開なら、アレクサとつながるんじゃないかな、と思いました。
電○かっ!(笑) そういえば、ブラウニー生活の始まりは突然のジャンプ(転移)でクライマックス(ほぼ遭難)でしたね……(遠い目) ふざけて魔改造してると、アレ○サさんが『私、参上!』って、ゴ○カイジャ…
このやらかしは期待大。 喋る相棒は足りてるからコアちゃんは喋らないミステリアスタイプかな?
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