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【WEB版】迷い込んだ異世界で妖精(ブラウニー)と誤解されながらマイペースに生きていく  作者: 明太子聖人
第三章  砂漠のオアシス・空中都市サヘール編

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第190話 風向きの怪しい人たち

「しっかしハゲになる呪いって、キッツイよなぁ」


 ハルクさんが自分の頭髪に触れながらぼやいた。


「オレたちゃ全剃りして誤魔化せば済むが、この国の場合はそうもいかねぇもんな」

「なんたって罪人に与えられる最初の罰なんだろ?」

「頭髪の短さは刑期の長さや重さと比例するんだっけ?」

「長期間太陽に照らされ続けると、毛根が死滅して生えなくなるって話だ」


 次いでハンターさんとグラスさんが、深刻そうな表情で唸る。

 三人ともスキンヘッドが似合いそうだよね。頭の形も良さそうだし。


「この国独特の文化ってヤツだからな。お陰で犯罪者も少ねぇそうだぜ?」

「そうなの?」


 犯罪者や罪人が全くいない訳でもないとギガンは付け足す。それでも他国に比べると犯罪の発生率はかなり低いらしい。それというのも。


「罪の大小に拘らず、問答無用で頭髪を剃られるそうだ」

「頭を隠す布すら被らせてもらえず、服役することになるって話だぜ」

「丸坊主での炎天下での労働は、考えただけでも辛そうっすね……」

「そうだね……」


 そう言われると、スリやひったくりなどの軽犯罪者にも出会ったことがなかったなと気付く。

 わざとぶつかってきたり、すれ違いざまに言い掛かりを付けてくる輩というのはどこにでもいるものだけれど。アントネストでは難なくかわせていたスリ等にも、この国では出会っていなかった。


 他国、ましてや異世界で日本のような治安を求めてはいなかったのだが。

 シルバやノワルの護衛付きとはいえ、子供()が一人で出歩いても問題がなかったのはそのせいか。治安が良いのは丸坊主の刑が怖かったからなんだな。

 まぁ、俺の国も男性受刑者は、収監される際に丸坊主にされるから珍しい話じゃないのだが。流石に女性は丸刈りにされないけど、この国では女性も丸坊主にされる。

 髪が命であるこの国の人にとっては、とても残酷な罰なのだろう。


「貴族連中は罰金を払えば罪を逃れられっけどな」

「庶民はそうもいかねぇらしいぜ」

「ズルイよなぁ」


 呆れたように言うハルクさんたち。

 確かに貴族はお金があれば罪から逃れられるというのは納得いかない。

 でも世の中ってそんなもんだよね。俺の世界でも権力者はお金の力で罪から逃れたり事件そのものを握り潰していたし。

 いつの世も法律は権力者に有利に出来ているってことか。


「だが呪いともなると、流石に逃れる術はねぇよな?」

「妖精サマサマって感じだな」

「今回は特に、私利私欲で権力を振りかざしていた上流階級の連中に降りかかった呪いだしよ」

「呪いじゃ、お金があっても解決しないっすもんね。相手が妖精じゃ、お金でどうこうできるわけもないっすし」


 テオの言う通り、妖精がお金で買収されたら苦労はしない。

 彼らは自由気侭であり、人知の及ばない存在で何者にも縛られていないからこそ脅威なのである。


「しかも真っ当な人間には呪いがかからないってのは、公平でいいじゃねぇか」

「現状、呪われていなければ発毛剤で解決するしな」

「そこはお金で解決できるっすね!」


 それはそうだけど。

 呪われてなくても薄毛で悩んでいる人たちもいるだろうに。遺伝的な問題もあるので、流石に呪われてハゲたなんてことにされたらたまったもんじゃない。

 これじゃぁ、おちおちストレスを抱えることも出来ないじゃないか。あ、でもこの国の人ってやけに休息日をこまめに取ってたっけ。

 単に仕事をしたくない怠け者ではなく、ゆったりと余裕を持った働き方だった。

 アレはストレスから頭髪を守るためでもあったのだろう。

 フェスバトルで敵対していた冒険者たちも、勝負事には真剣だけど終わればすっぱりと割り切って後腐れがなかったし。

 これら全ては頭髪を守るためと考えれば納得できる国民性である。


「だが妖精の悪戯も、無差別って訳じゃねぇのが救いだよなぁ」

「施しも無差別じゃないがな」

「あ。それは常日頃から実感してるっす」


 テオが何を実感しているか知らんが、俺はパーティに貢献すべく働いているだけだからね?

 本物の妖精のように、悪戯に呪って誰かの頭髪を不毛地帯にする能力はないぞ。

 なんかみんな俺を妖精みたいに禁忌扱いしてるけど、たまたま王様の受信した精霊のお告げとタイミングが合っただけだってことを忘れてない?


 ほっかむり星人軍団の頭髪は、トリモチが原因で抜けてお告げと偶然重なっただけだと思うのだが。その後妖精に呪われたのも、元より素行の悪い連中だったし当然の報いである。

 まさか本当に俺がお告げの『禁忌』だと勘違いしたままなんじゃないよね!?

 いやでも、ハゲの呪いにかかったほっかむり星人軍団からは、俺が『禁忌』の存在という認識のまま別れたので、誤解を解いてなかったような……。その方が都合が良かったから、あえて否定しなかっただけなんだけど。


 ちょっと待って。

 アレ? もしかして、みんなその前提で話してる?


「つーかよ。もしオレらが禁忌に触れても、この国の人間じゃなきゃ風向きが変わんねぇのかね?」

「その風向きってやつが良くなるのか悪くなるか判んねぇのが怖ぇって」

「良い意味で変わる可能性もなくはねぇ」

「一か八か賭けてみるか?」


 ワキワキと指を蠢かせ、俺に迫る三バカ―――グロリアストリオ。

 君らねぇ。物理的な意味での『触れる』じゃないことぐらい判るでしょうが。

 ただでさえ俺は人に触られるのが嫌なのに。

 それといい加減俺を『禁忌』扱いするな。冗談のつもりだろうけど、洒落になってないからな!

 こうなったら――――シルバさん、ノワルさん。やっておしまいなさい!


「ウォン!」

「ジャーキーッ!」


 俺の念波によって二匹が三人に飛び掛かった。


「うわあああっ!」

「ごめんて!」

「冗談だよ、冗談っ!!」


 シルバにお尻を噛まれ、ノワルに足の爪で頭を鷲摑みにされ、三バカはワーワーと逃げ惑う。

 迫る三バカを投げ飛ばしても良いけど、今俺のお腹には子供がいるのだ。いや誤解を招く言い方だった。

 ちょびっこを抱っこ袋に入れて抱えているので、振動を与えたくないだけだ。


「サンドクーガーのガキ、この騒ぎの中でもよく寝てんなぁ」

「大物っすねぇ~」

「ぐずることのない良い子だな」

「そうだねー」


 寝る子は育つというけれど、この子は本当によく寝るね。

 ご飯もよく食べるし、言う事もよく聞く賢い子だ。

 これなら里子に出しても大丈夫なような気がしてきたぞ。


「でもあれっすよね。リオリオの言う事はよく聞くっすけど、他の人の言う事は全く聞かなそうじゃないっすか?」

「それな」

「そうだな」

「そんなことはない……よ?」


 ちょっと人見知りなだけだよ。慣れればそうでもない――――よね?

 波長が合う相手じゃないと反応しないみたいで、今のところ誰を見ても無関心なんだよなぁこの子。困ったね。

 どうかこの子が気に入る下僕が見つかりますように。

 何てことを思っていると、漸くシルバ&ノワルのお仕置きから解放された三バカ基グロリアストリオが戻って来た。


「今オレたちはきっと悪い意味での風向きになったにちげぇねぇ」

「……わざわざ厄介を求めるとこういうことになんだな」

「禁忌に触れた所為で、ひどい目に遭ったぜ……」


 シルバとノワルに散々突つきまわされ、グロリアストリオは地面へ倒れ込んだ。

 人を厄介(禁忌)扱いした罰だ。

 それと人通りのある場所で道を塞ぐんじゃありません。

 はいどいたどいた。


「あっ、いてっ! 坊主が酷い!」

「ああんっ、蹴られた!」

「まるでゴミを見るような目で見てるぅっ!!」


 ほんとにもう煩いなぁ~。

 屋台のお手伝いをしてくれたり、貴重な情報を聞かせてくれたことに感謝してるっていうのに。ふざけすぎると地味に嫌な呪いを掛けちゃうぞ!

 例えば自動ドアが反応しなくてぶつかるとか、エスカレーターでタイミングよく降りれなくなってつんのめるとか―――って。この世界に自動ドアやエスカレーターはなかったか。残念。


「―――あ。今なんか凄い寒気がした」

「オレも……」

「取りあえず謝っとこうぜ」

「「「すまんかった!」」」

「ほんとにそうおもってる?」

「「「思ってますっ!」」」


 何だか怪しいなぁ。

 じろりと三人を睨む。


「だから紹介を取り消さないでくれ!」

「坊主の嫌がることはしねぇから!」

「頼むっ!」

「う~ん」


 どうしよっかなぁ。

 彼ら三人には、屋台を手伝ってくれたお礼に、仲良くなったドワーフの鍛冶職人さんを紹介してあげることにしているのだが。俺の紹介なので、金額も安く作成期間も短縮してくれることになっている。

 フェスバトルでかなり稼いだのもあって懐が温まったそうで。ジボールで待っている軍団のお土産に、彼らの武器の作成を頼まなきゃいけないって悩んでいたから紹介したんだよね。(丁度職人さんたちが屋台に買い食いに来てたので)


「お願いします、コロポックル様~っ!」


 コロポックル言うな。

 周りの人もなんだなんだと俺を見るな。

 どこぞで購入した商品のラベルと俺を見比べている人もいる。

 もはや俺の肖像権はこの国では無きに等しいようだ。

 穴があったら埋めてやりたい。


「あ。リオっちたち発見っ!」

「アンタたち、こんなところで何騒いでんのよ」


 俺に縋り付くグロリアストリオをシッシと払い除けていると、アマンダ姉さんたちがやって来た。

 だがちょっと待ってほしい。

 二人の後ろに何だかどこかで見たような人たちが付いてきている。


「ああ、やはりそうですわ。お兄様、あの方ですのよ!」

「おお、やはり君だったのか!」

「げ」


 人の顔を覚えない俺でも流石にまだ記憶している。

 アマンダ姉さんたちの背後に居た人物は、先日出遭ったばかりのほっかむり星人さんだった。

 既にほっかむり星人ではなく、ドリル縦ロールお嬢様に変化しているけれど。

 被った布がふわりと風に浮かび、首元から肩にかけて整えられた縦ロールの髪がさらりと靡いた。

 今や全身を包み込んでいた布はなく、堂々とゴージャスな縦ロールをチラ見せさせているようだ。

 その笑顔は眩しく、縦ロールと一緒にキラキラと輝いていた。


 ところでその後ろにいる爽やかメガネ男子君は誰ですかね?

 ほっかむり星人さんのお兄さんですか? 微笑ましそうに縦ロールお嬢様を見て、俺にも爽やかな笑顔を向けてくるのだけれども。知らない人ですよね?


 ただし。どこかで見たことのあるような、ないような。

 覚えがあるとすればそのメガネぐらいなんですが……。


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― 新着の感想 ―
ぽよん様 >えー(*^^*)そーなんだw 生活の知恵だねぇ♪
日本は治安が良い国ではあるんだけど北海道では秋になると刑務所で越冬しようとして食い逃げが増えるという噂がチラホラ。
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