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【WEB版】迷い込んだ異世界で妖精(ブラウニー)と誤解されながらマイペースに生きていく  作者: 明太子聖人
第三章  砂漠のオアシス・空中都市サヘール編

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第185話 お祭りの屋台とは?

「なんかおもってたのとちがう……」


 ダンジョン入り口付近にある屋台を見慣れていたので、当然自分の担当する屋台もそういうものだと思っていた。


「あ。リオンさ~ん、こちらですよ~!」


 商人仲間と楽しくセッティングしていたのであろう。シュテルさんが俺を見つけて声をかけてきた。


「どうですこの屋台。立派でしょう?」

「……そうだね」


 シンプルな屋台を想像していたのに、ちょっとした店舗風である。

 どう見ても展示会場にある企業ブースです。ありがとうございます?

 だがその理由も察することが出来た。

 他の屋台に比べて三倍の幅を取っているのは、すき焼き串だけでなく他の商品も同じブースで販売するからのようだ。

 周りを見れば、ここだけでなく他の出店屋台(?)も似た感じになっている。

 おそらくここは企業ブースというか、商業ギルド関係のエリアなのだろう。それとは別に、馴染みのある普通の屋台が並ぶエリアに分かれていた。


「このお祭りに乗じて、チョコ関連のお菓子や新作商品のお披露目をするのが、今回の目的ですからね!」

「時間をかけて準備してきた甲斐がありましたね!」

「富裕層向けの高級品から、庶民向けまで取り揃えましたよ!」


 販売のために用意された品々は、どれも高級品らしくパッケージも凝っている。

 もちろん庶民向けもある。こちらは俺の担当するすき焼き串屋台の隣に設置されているので、貴族側と庶民側でくっきり分かれていた。

 同じブースで販売してはいるけれど、まるで雰囲気が違う。でもちゃんと富裕層と庶民で仕切りがあるので、どちらの客層も足を向けやすそうだ。


「よく考えてんな」

「これなら買いやすいわね」

「でしょう?」

「すごいねー」


 屋台を出さないかと声を掛けられた時は少し悩んだが、シュテルさん含む商業ギルドで全てセッティングをするというので任せたけれど、流石は商売人である。

 ある程度製品化できるところまで漕ぎ付け、後はお任せとばかりに丸投げしたチョコレート関連のお菓子類も、アラバマ殿下が雇ったパティシエが更に進化させた。

 そうしてアラバマカフェをオープンさせる前に、ここでそのお菓子類のお披露目をすることになったのである。


「庶民向けの方は手が出やすい値段設定っすね」

「高級そうなお菓子も、ちょっと頑張れば買えそうだよね~」


 例えるなら一粒五千円のチョコから、一枚百円のクッキーまでって感じかな?

 どちらも頑張れば買えなくはない。ただし美味しいことが大前提だけど。


「ギリギリのラインを狙ってみましたよ!」

「流石商人だな。恐れ入るぜ」

「いやぁ~それほどでもあります!」


 元々このお祭りを目的としてサヘールへ来たシュテルさんだ。

 気合の入り方が違う。

 本来は買い手側だったのに、俺の所為で売る側に回ることになったんだけどね。

 だがこの日のために商業ギルドで、販売方法を練りに練っていたらしい。

 他の屋台も同じだ。参加者は自分のお店の宣伝も兼ねていて、食べ物だけでなく、様々な工芸品などの商品も屋台で売られることになっていた。


 沢山人が集まるからか、この日を目指して職人は準備をする。そうして商人は気に入った商品を見つけて、各々が取引や契約等の交渉をする。いわば展示会などの商業イベントのようなものだ。

 もちろん、俺のように単純にその場限りの屋台として参加する者も多いけれど。

 新たな飛竜の誕生と、竜騎士となった候補生を祝うためでもあるが、参加することに意義があると妙な発明品を発表する人もいるのだ。

 商業ギルドはそこで新たな発明品や魔道具の品定めをして、選定するのも重要な役目だった。

 商業ギルドに持ち込まないで溜め込む職人さんも多いからね。


 魔道具工房の親方たちも、研究所の美容部員さんたちとヘアアイロンやドライヤー等の魔道具の体験コーナーを設けている。

 通路を挟んで向かい側にある店舗がそのブースかな? まるでお洒落なサロン風のデザインだ。力が入ってるな~。こっちも負けてないけど。

 展示されているのは化粧品から魔道具まであって、見るだけでも楽しそうだね。

 しかも実演販売みたいなこともするって言っていたよ。



「ナベリウスの件もあり、今年は例年に比べ観光客が少ないのが残念だと思っておりましたが、解決策が見つかって良かったですねぇ」

「魔動船がなければサヘールには来られませんからな」

「その魔動船を飛ばせない事態に陥った時はどうなる事かと」

「解決に導いて下さった、スプリガンのみなさまには感謝しなければなりません」

「いや……俺たちは別に……」

「そこまで感謝されるとちょっと心苦しいわ……」


 商業ギルドの人たちに感謝されて、少々気まずそうな表情を浮かべるアマンダ姉さんとギガンである。最初はワープ航行を秘密にしようとしてたからね。


 毎年この時期のサヘールは、他国の商人さんや貴族などの富裕層の旅行客で賑わっている。でもナベリウスの討伐に失敗したのもあって、今年は旅行客がいない状態だと思われていた。

 何せ既に孵化する卵を護るためにナベリウスも滅茶苦茶気が立ってるし、サヘール側も飛竜の孵化を待っているので討伐する余裕もなかったからだ。

 討伐部隊を率いるシエラ王女様が復調したとはいえ、タイミングが悪かった。

 とはいえ俺たちが来る前からここに滞在している人もいるから、他国の商人さんや観光に来ている富裕層が全くいない訳でもない。(そういう方は職人さんに直接交渉に来られているので、滞在期間が長くなっているらしい)

 そんな中、長期滞在を余儀なくされているシュテルさんだが。

 脱出用魔道具である『移転鏡(ターンミラー)』の存在を知っている内の一人だからか、情報を公開することになって喜んだ。


 その脱出用アイテム『移転鏡(ターンミラー)』についてだが、スプリガンのメンバーと話し合った結果、アマル様やアラバマ殿下と相談して公表することになったのである。

 現在サヘールに滞在中の旅行客の不安を解消するためでもあるけれど。ワープ航行を隠すことのデメリットより、公表するデメリットの方が少ないという結論に達したのだ。

 ただ大量の魔晶石を消費するため、『移転鏡(ターンミラー)』での渡航をする場合、めちゃくちゃお金持ちでないと魔動船の切符を手に入れることが出来ないというデメリットがある。豪華客船での世界一周旅行ぐらいの費用がかかると言えば判りやすいだろうか?


 『移転鏡(ターンミラー)』のワープ機能を公表することになった理由は、俺が何気なく実験した鏡同士の間で通せば出来る、物質移転のせいだ。

 離れた場所で物のやり取りが出来てしまうというとんでもない性能だったので、船が瞬間移動するぐらい大したことないんじゃね? みたいな感覚に陥ったのは言うまでもない。

 いや、どちらもとんでもないことなのだが。どうせその内誰かが気付くかもしれないし、だったら公表してしまえということになった。

 物質移転機能についてはまだ実験段階なので正式に公表はされていないが、その内アントネストでいくつも『移転鏡(ターンミラー)』がドロップされれば何れ公開することになるだろう。


 シュテルさん含む商業ギルドの人たちも「新たな産業革命ですね!」等と鼻息を荒くしていた。

 使用する上で悪用されないための法の整備とかも色々あるだろうから、そう簡単に進む話じゃないとは思うのだが。密輸だのなんだのの問題は、既にマジックバッグ等という不思議な魔道具があるので今更だしね。

 まぁ、とりあえずはこんなところか。


「快速魔動船の試運転がてら、周辺国の貴族や富裕層などが第一便で到着されていますので、皆張り切っておりますよ」

「良いタイミングで『移転鏡(ターンミラー)』がドロップされて、本当にようございました」

「いや全く。他国のお客様が来られないお祭りになるかもしれませんでしたからな」

「やはり現物を直に見られなければ、良さも判りませんしねぇ」

「今回は特に目玉商品が多ございますしね!」


 シュテルさんの言葉に、うんうんと頷き合う商業ギルドの方たちである。

 実はアマル様が依頼として出していた『移転鏡(ターンミラー)』を、丁度良いタイミングでGGGさんたちがドロップしたのだ。

 それを受け取るためにアントネストに出向く際、冒険者ギルドと商業ギルドで『移転鏡(ターンミラー)』のワープ機能を公表したのもあって、希望者を募ってそのワープによる短期での渡航をしたい者を募集した。

 アマル様はその為一時的にアラバマ殿下から、護衛としてカーバンクルをレンタルしていたのだ。

 今までは一月以上の渡航だったのが、一週間程度に短縮されるとあれば乗船したい富裕層や貴族も多かろう。その分お値段は跳ね上がるけれど、時は金なりだしね。

 ワープで危険な空の魔物からも回避できるとあれば安心できる。よって予想以上の乗船希望者がいたらしいよ。

 鈍行列車の旅からリニアモーターカーぐらいのスピードになれば、それを体験したい人が我も我もと手を挙げるのは想像に難くない。話題性もあるし、社交界で自慢できると貴族などの富裕層が殺到した。(最終的には抽選になったけど)


 より快適な空の旅という新たな謳い文句で、『移転鏡(ターンミラー)』付きの魔動船での移動が可能となった訳だが。

 魔晶石の消費量もあるので、まだまだ庶民には手が届かない夢の旅だろう。

 現在は様々な研究や実験をして、魔晶石の消費量を抑える研究をしているといったところだ。


「ところで。アラバマ殿下の手掛けるリゾートホテルというのも、貴族の方々に大変好評のようですね」

「へぇ」

「いやぁ~、この短期間で素晴らしい施設が出来上がったものです」

「らしいね」

「このままいけば、サヘールが新たな保養地になりそうですよ」

「よかったねー」


 俺的には水面下でなんかやってんな~程度でしかなかったけれど。

 農業以外にもアラバマ殿下は色々やっていたようだ。それにはアマル様も協力していたようだけどね。

 ただの宿泊施設(それでも高級である)を改造してリゾートホテルにリニューアルさせ、様々なサービスを始めたそうだ。特に美容関係のプランが人気なのだとか。 

 おまけに俺が殿下に渡した甚兵衛が、お洒落なホテル用のルームウェアになっていた。

 しかもサヘール風に改造されているので、裾も丈も長くなっていて作務衣と浴衣が合体しているような感じだ。これはアマル様の侍女さんがやらかしたらしい。

 最初はアマル様に似合うデザインにしようと試みていたそうで。途中からエステ体験をさせる時に着る服として仕上がり、結果的に宿泊客に好評のルームウェアになったようだ。


「ギルベルトとランドルにもエステ体験をさせましたが、男前度が上がったような気がしませんか?」

「……玩具にされました」

「……好き放題にされました」

「……うん」


 二人とも見事なサラ艶ヘアーと、つるつる赤ちゃん肌になっちゃってるね。

 キラキラしててとっても眩しいよ。

 美容部員さんも、この二人にはお手入れのし甲斐があったのではないだろうか?


「我々はここに何をしに来たのでしょうかね……?」

「主人の無駄物買いを阻止するためだったのですが……」


 遠い目をしている二人にかける言葉はない。

 だが無駄物買いの阻止ではなく、二人の仕事は護衛じゃなかったっけ?

 アマル様だけでなくギルベルトさんとランドルさんも、体のいい広告塔(実験台)にされたんだろうね。ご愁傷さまです。


 しかしこんなに立派な企業ブースに、俺のすき焼き串を販売してもいいのだろうかと一抹の不安がよぎるのだが。

 全てをシュテルさんと商業ギルドのみなさんに任せたことを後悔するのだった。


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― 新着の感想 ―
楽しく拝読しております 182話目が飛んでいるのをいつか作者様が気づいてくださりますように
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