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【WEB版】迷い込んだ異世界で妖精(ブラウニー)と誤解されながらマイペースに生きていく  作者: 明太子聖人
第三章  砂漠のオアシス・空中都市サヘール編

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第184話 子育ては大変だ

 サンドクーガーの赤ちゃんのご飯は、主にバホメールのミルクである。

 原液だと濃すぎるので、そこに砂糖水などを混ぜて薄めてやるのだ。そのままあげるとお腹を壊しちゃうことがあるんだって。

 サンドクーガーを従魔にしているテイマーさんにお世話の仕方を聞いて、乳飲み子用の哺乳瓶を貰い受けた。

 その際、子育ての大変さを夫々のテイマーさんたちが語ってくれたけど、内容の殆どが自分の従魔自慢だったことは不問にしておこう。役には立ったからね。

 召喚士と違って、テイマーは従魔を幼い頃から育てる。だからか、みんな子育てについて詳しかった。

 

 Siryiの鑑定によると赤ちゃんは生後三週間ほどであり、怪我や病気はないと判明したのでとりあえずは安心だ。

 魔獣の赤ちゃんだから、離乳食も食べさせていい頃合だってさ。


「かわいいねー」


 必死に生きようとミルクを飲む姿は健気である。


「これから世話が大変だな」

「そうだねー」

「早く主人が見つかればいいが……」

「うん」


 命を預かるというのは、その気になれば命を奪うことにも繋がるからね。

 これは寝ずの番かな?


「シルバとノワルもおねがいねー」

「ワカッタ! ジャーキークレ!」


 こくりと静かに頷くシルバと、ご褒美を強請るちゃっかり者のノワルである。気付けばブランカは吞みについて行っていた。(最早アマンダ姉さんの従魔である)

 この子のご主人様という名の下僕が見つかるまでは、俺たちが下僕となって世話をしなければならない。

 にゃんこは可愛いけど、飼うのは大変だって聞くし。

 仕事に行きたくないとぐずったり、猫に貢ぐためにそれでも無理して働いたり、猫カフェに行って浮気バレして怒られたり。ほんと大変だよねぇ。

 猫に狂わされる人間のなんと多いことか。それでも癒され救われるそうだけれど。


 そういえば俺が子供の頃から帰宅途中よく遭遇していた、妖怪すねこすりのようなにゃんこも可愛かった。

 足元にじゃれついて帰宅を邪魔するから妖怪すねこすりと名付けただけだが。

 天気に関係なく現れるので、正しくは妖怪すねこすりではない。

 どこかで飼われているのだろう、妖怪送り犬としょっちゅう喧嘩してたっけ。

 こちらも俺が無事に(寄り道せずに)家に帰れるまで送り届けてくれるので、妖怪送り犬と名付けただけだ。(妖怪ブームだったし)

 別に襲われることもなく、すねこすりに纏わりつかれていると現れていた。

 なのですねこすり用のちゅるるんと、送り犬用にジャーキーを爺さんに持たされてたんだけどね。もしやそれが目当てで俺に纏わりついていたのだろうか?

 多分爺さんの知り合いの犬と猫だと思うんだが、爺さんに聞いても「どうだろうな?」といつもはぐらかされていた。

 あの二匹は今も元気だろうか?(老いる様子がなくて不思議だけど)



 赤ちゃんはミルクを飲んで満足したのか、へそ天&バンザイ寝をしている。

 無防備過ぎる堂々たる姿だが、安心しきっているのかもしれないね。

 将来大物になりそう。


「寂しがる様子もないし、まぁ、大丈夫だろう」

「そうだねー」


 でも赤ちゃんが寂しがらないよう、ゲーセンでゲットしていた魚型マンボウのクッションを横に並べて寝かせておく。ディエゴが変な顔をしたが気にしない。

 にゃんこと言えば魚だからね。通販で買った巨大伊勢エビクッションや、リアル魚(錦鯉)クッションもあるので、ついでに出しておこうかな?

 だがそれらクッションのデザインを見たディエゴに、リアルなクッションは止めろと言われた。余計な悲鳴を聞きたくはないとのこと。どういう意味だろうか?


 これから数時間おきにミルクとトイレの世話をしなければならないが、みんなで交代で見守ることにしよう。

 取りあえず俺は先に寝かせて貰って、明日の屋台のために英気を養うことにした。

 他のメンバーも日付が変わる前までには戻ってくるだろうが、それまでディエゴとシルバ&ノワルにお任せだ。

 ネコ科も俺も活動時間帯が明け方だから、その時に交代することにして。

 冒険者のみなさんは今日までが仕事だけど、俺は明日からが本番だからね。早く寝て明日に備えよう。みんな今日の稼ぎを握り締めて屋台に来てくれると良いな~。



 なんて思って起きた翌朝。

 俺たちは子猫の世話を舐めていたことを知った。

 魔獣でもあるが、子猫は小さな怪獣である。


「ものすごい勢いでクッションが破壊されてるわね……」

「これって最初はどんなデザインだったの?」

「昨日は大人しかったのに、猫を被ってたんすかね? 猫だけに」

「環境の変化に慣れるのが早くねぇか?」


 カカカカッと、マンボウが蹴りまくられて中の綿がはみ出し散乱している。

 小さいとはいえ小型犬ぐらいはあるサンドクーガーの赤ちゃんだから、蹴る力が強いんだよな。

 鎧トカゲに襲われて、母親を失った可哀想なサンドクーガーの赤ちゃんであるが。

 俺たちに保護されてお腹いっぱいご飯を食べて、安全な場所にいると理解したのであろう。昨日の委縮した状態とは打って変わり、元気いっぱいに遊んでいた。


「逞しいな」

「そうだな」


 やんのかステップを踏んでギガンやテオに挑んでみたり(途中で転ぶ)、抱っこしようと手を伸ばすチェリッシュにはフンとそっぽを向いてスルーしたりしている。

 アマンダ姉さんやディエゴには警戒しているのか、ビクついて逃げていた。

 澄まし顔なのに構いたがりのオーラを出しまくるアマンダ姉さんと、だるそうに相手をしているのが丸判りのディエゴに懐かないのも何となく判るけどね。

 ディエゴに子育ては向いていない。幼獣ですらそれが判っているようだ。賢い。

 この子の中では既にある程度の順位付けがなされているのではないかと、アマンダ姉さんは訝しんでいる。

 真夜中のお世話係はディエゴだったのだが、その時の様子を聞いてみると。


「ミルクの哺乳瓶をひったくって、自分で飲んでいた」

「……へぇ」


 生後三週間程度なのに独立心旺盛で立派だね。

 でも俺が飲ませると甘えてくるんだが?


「たしか猫って、構われ過ぎると逆に逃げるのよね」

「だからって興味なさそうな態度をしてても、チラチラ見てりゃ警戒されるって」

「だぁってぇ~、すっごく可愛いんだもの! 構いたいに決まってるじゃない!」


 そのオーラを隠しきれないから警戒されているのだ。


「ああ~ん! また逃げられちゃったぁ~!」

「チェリッシュはチェリッシュで構い過ぎだ」

「リオリオに構いすぎて、最初の頃は逃げられてたのを忘れてるんすか?」

「それを言わないでぇ~!」


 しつこくおいでおいでされて嫌気がさしたのか、ちょびっこはチェリッシュから逃げて俺の方へとやってきた。

 まだちょっとヨチヨチした歩き方なので、危ないから抱っこ袋に入っててね~。

 この手足の出るタイプのにゃんこポケットエプロンみたいなのも、テイマーの多いサヘールでは従魔用のお世話グッズとして存在していた。

 それらお世話用品を寄せ集めて俺に渡してくれたのだ。有難いよね。

 みんな小さな赤ちゃんの世話を羨ましがっていたが、自分の従魔が嫉妬するからと程ほどの距離を保っていたけれど。


 テイマーの場合、余程のことでもなければ多頭飼いはできないそうだ。自分の従魔が産んだ子供の場合とか、自らの従魔が拾ってきた場合でないと無理なんだって。

 アラバマ殿下がカーバンクルを拒否していた時に聞いた。でもボスは主人のためになると思い許可してくれたので、現在のカーバンクル部隊が出来たのである。


「やぁ~ん、あの抱っこ袋に入った姿が可愛い~!」

「ウキャキャキャキャ!」

「あらなぁに? ブランカちゃんも当然可愛いわよ~」

「うんうん。ブランカちゃんは白くて小さくて可愛いよ~」


 アマンダ姉さんの肩に乗って、ブランカが何やら抗議している。それを宥めるようにちょいちょいと二人に撫でて貰い、満足気に鼻をむふんと鳴らした。

 なるほど。俺たちはブランカを可愛いとほめそやしたりしない。だって調子に乗りそうだったからだ。

 でもアマンダ姉さんたちは、良い子だ可愛いとブランカを褒めてあげていた。

 もしかしてブランカは、褒めて伸ばすタイプだったのだろうか?


「新しいアイドルの出現に、いっちょ前に嫉妬してんのかね?」

「赤ちゃん返り現象ってやつっすかねぇ?」

「シルバやノワルは大人だから、そういうことはねぇっぽいが」

「……そうでないと困る」


 既に育児放棄気味のディエゴである。だがブランカも良い大人なので、育児放棄とはちょっと違うか。

 頼りにはなれどマイペースで世話係としては役に立たない主人なので、躾教室に通わせていると言ったところだ。

 深夜の子育ても、ちょびっこが独立心旺盛で自分でミルクを飲んでいたから助かったと言っていた。


 面倒事(ブランカ)を押し付けられている筈の女性陣の方なのだが。

 アマンダ姉さんとチェリッシュに可愛がられて、ブランカはすっかりお姫様気分になっている。お姫様はお姫様でも気位が高い方の意味ではなく、お淑やかになったのでこういうお姫様なら大歓迎だ。

 可愛いリボンを付けてもらったり、スカートを履かせてもらって喜んでるし。

 ブランカに必要だったのは恋愛対象(ディエゴ)ではなく、同性のお友達だったようだ。

 二人に感化されたのか、お洒落に目覚めてフリフリの洋服を着てうっとりしているんだよね。元山賊の親分だったのに。

 キングなコングになる時に、あの洋服を一々脱いでるから面倒そうだ。


「下手に構わねぇし威圧感がねぇから、リオンにべったり懐いてやがるな」

「一番安全な相手だと理解しているのだろう」

「ある意味賢いわ。将来有望ね」


 まぁ、俺も保護の対象だからね。安全圏に居るのは間違いない。

 構われるのが嫌なタイプ同士、適度な距離感で仲良くしておこう。


 さて。そんな朝早くからの大騒ぎも落ち着いたので。お出かけの準備をしよう。

 赤ちゃん用の離乳食として、なんちゃってちゅるるんを作ってみた。原材料はササミの代わりにカエル肉等の爬虫類系のお肉や、カリウムやビタミンを多く含む野菜をペースト状にした物だ。(ネギ類は入れてないよ)

 作っている時にちょびっこがわちゃわちゃ手を出して大変だったけど、味見をさせたら喜んでいたのでうまくできたと思われ。

 だが安心して欲しい。ハチミツやローヤルゼリーは混入していないからね。流石の俺もそこまでバカではないのだ。

 人肌に温めたミルクを入れた哺乳瓶と、おしっこを拭く布を沢山リュックに詰め込んでおく。抱っこ袋はシルバの首にかけておけばおっけー。


「じゃぁ、いこっか!」


 これから商業ギルドに行って、用意してもらっている屋台へ向かうのだ。

 竜騎士と飛竜の訓練場が一部開放されていて、今日と明日は特別に一般人も入れるようになっているらしい。そこがメインお祭り会場である。

 昨日からアラバマ殿下もラクシュさんも儀式の準備のため、そちらに行っていた。

 なんかいろんなイベントをするという話なので、今から楽しみだね!



追伸:

 頼んでいたサンドクーガーの赤ちゃんの里親探しは、案の定忘れられていた。

 飲み会は大変盛り上がったようだけれど。

 なのでお仕置きとして四人(+一匹)には、実験として作った健康青汁を酔い覚ましに飲ませておいた。

「クッソ不味い!」「もういらない!」「でも後味スッキリ!」「酔いも目も覚めた!」「グギュウッ!」と大好評だったので、次からもお仕置きに飲ませようと思う。


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― 新着の感想 ―
リングさん、ありがとうございます! 「サンドクーガーの赤ちゃんどこで拾った⁉︎」と、この前数話何度も読み返してしまいましたが、182話が飛んでるですね。 早く読みたいものの、スッキリしました!
182話が飛んでませんか?
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