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【WEB版】迷い込んだ異世界で妖精(ブラウニー)と誤解されながらマイペースに生きていく  作者: 明太子聖人
第三章  砂漠のオアシス・空中都市サヘール編

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第153話 合金を作ろう

「伸縮自在の金属ですか~? やはりヒヒイロカネですかねぇ~」

「ヒヒイロカネは魔力を流すと硬くなる性質ではありますが、微量であれば柔らかくなり加工がし易くなるという程度ですね」

「ではそこに、魔力を通しやすいミスリルを混ぜればどうだろうか?」

「合金ですか~。作れないこともありませんが、比率が難しゅうございますし、そもそも需要がないのでやったことはございませんね~」

「魔法金属の合金を作るには、量がなければなりませんから……」

「その点については大丈夫だ」


 魔王に挑む勇者のように送り出された昨日から、一日で戻ってきてしまった俺たちに驚いたドワーフの職人さんたちだが、快く迎え入れてくれた。

 今は伸び縮み可能な合金について、ディエゴと相談中である。


「ブランカなにたべる?」

「ウキュ?」

「ノワルとシルバはおにくだよね~」

「ジャーキークレ」

「はいはい」


 俺はと言えば魔法金属についてはよく判らないので、食事の用意をしていた。

 それとブランカの食べられる物についての調査である。

 見た目が子ザルだからトロピカルフルーツのような気もするけど、カーバンクルだからね。

 普段は小動物に変化して生活していたようだし、主食が昆虫類とかだとちょっと困るんだよな。この世界ではペット用のミルワームやコオロギとか売ってないし。

 人間の食べ物は口にしたことがないみたいなので、サンドイッチや揚げ物類を見て小首をかしげていた。


「いろいろあるからえらんでねー」


 まずは生の野菜や新鮮なフルーツを取り出す。それを並べてブランカに選んでもらうことにした。

 選ばれた食べ物を、持ちやすいようにカットする。


「ウキュッ!」


 おいしい! と嬉しそうなので、フルーツや野菜類は大丈夫そうだね。

 しかし沢山のフルーツや野菜に囲まれて、寝転びながら食べている姿は南国の女王様のようである。


「キッキッキャ~!」


 カットフルーツをお手玉にして遊び始めるし、投げたフルーツをあ~んと口を開けて受け止めたりしている。お行儀が悪いぞブランカ。

 これも芸の一種として見るなら器用で済ませられるんだけど……。 

 可愛いもの好きなアマンダ姉さんも、この姿はちょっと受け入れ難そうだ。なんせぐうたらな汚っさんのようなのである。

 脇腹をぼりぼり搔いたり、ゲップしてるしな。可愛さとだらしなさが混在している姿は、流石の俺も見逃すことはできなかった。


 従魔の品性は飼い主の品性にも関わってくる。

 例えるならば、アラバマ殿下の従魔であるボスなどは、誇り高く王者の風格があるので、流石は殿下の従魔だなと思わせてくれる。

 シルバは控えめながら堂々として気品があるし、ノワルはちゃっかり者だが仕事を与えられればクールにこなすプロフェショナルだ。

 俺は――――まぁ、自由にさせてもらってるけど、お行儀に関しては爺さんに躾けられているので食事のマナーは守っている。

 寝転がって食べたり、汚っさんのように人前でゲップはしないからね!


「みためはだいじ」

「ダイジ! ダイジ!」

「……ワフゥ」


 シルバもノワルも俺に同意するように頷いた。

 お姫様ではなく、蛮族の女王様(ボス)みたいだもんな。


「リオン、ブランカのアクセサリーについてだが」

「うん?」


 ブランカが突然起き上がり、行儀よくカットフルーツを手に持って小さく齧った。

 どうした急に?


「ブランカの食べ物は、フルーツで良かったのか?」

「あーうん。ソウミタイ」

「良かったなブランカ」

「ンキュ~」


 頭を優しく撫でられて、嬉しそうにブランカは目を細めた。

 ……コイツ。サルのクセに一瞬で猫を被ったな?

 躾をしなければならないと思っていたところだが、やればできるじゃないか。

 ただしディエゴの前限定のおしとやかさである。


「それで伸縮自在の金属だが、ヒヒイロカネとミスリルの合金になりそうだ」

「そうなんだ」

「大量に魔力を流す必要はあるが、ブランカであれば可能だろう」

「キキッ!」


 任せて! と胸を叩くブランカ。

 幻獣だから魔力量は大丈夫のようだ。


「まぁ問題は合金の配合のようなのだがな……」

「ふむ?」


 ミスリルとヒヒイロカネの合金にして、魔力を大量に流せば伸び縮み可能ということは、如意棒も作れるのではなかろうか?

 問題はどの程度の魔力量かと言うことだが。これは実験が必要かな?

 ちょっとお兄ちゃん、相談があるんですけどー。

 ブランカの躾は一先ず置いといて、思い付いたことから先にやろうとディエゴに声をかけた。




「ニョイボーとは、何でしょう?」

「伸縮自在の武器――――だったな?」

「うん」


 発音が微妙だけどまぁいいや。

 単なる遊び心と好奇心による実験がしたいので、『緊箍児(きんこじ)』を作る前にどこまで加工が可能か調べたいだけだ。

 今は小さなブランカだけど、キングなコングになってしまうと額の『緊箍児(きんこじ)』が物理的に頭を締め付けてしまう。弾け飛ぶのならまだいいけれど、伸びると言ってもどの程度なのかが判らないと危なくて着けられない。

 ドワーフの職人さんには、ブランカがカーバンクルで変化可能であるとは教えてないのだ。(説明が面倒)

 新たに仲間に加わった、お洒落で乙女なおサルさんとして紹介しただけだった。


「我々は魔道具作り専門ですから、鍛冶師のように武器を作ったことはないんですがね~」

「こちらでは魔法金属の加工の際に、微量の魔力を流すことで変形させるのだな?」

「彫金師も似たような加工の仕方ですよ」

「合金の加工も鋳溶かすのではなく、魔力で捏ね合わせますからな」


 熱した鉄を叩いて精錬するのではなく、魔道具師や彫金師は魔力を魔法金属に流して変形させる加工の仕方だそうだ。

 そういやこの工房には大掛かりな『火床』がないなとは思っていた。

 希少金属で部品を作るだけなので、鍛冶場は必要ないのだろう。


「それなら俺にも加工は可能なのだろうか?」

「ディエゴさんでしたら、魔力量は十分でしょうな~」

「大量に流し込むと変質しますので、気を付けなければなりませんぞ」

「新人がよくやらかすんですわ。魔法金属は繊細でしてな。一度変質してしまうと、元には戻りませんので。合金作りは失敗する確率が高くてあまりやらないのです」


 ディエゴは繊細な魔力操作が得意だから、その点は大丈夫だと思うよ。ただ不器用だから、そこから先が問題ではある。

 本人にアクセサリーを作らせなきゃいいだけだけどね。


「合金の加工は腕の良い職人でも中々に難しいのです」

「ドワーフの鍛冶師は力任せに魔力を放出しますからね。ミスリルやオリハルコンの武器が多いのもそのせいですわ」

「特にヒヒイロカネを武器に加工するのが難しいのは、繊細な魔力操作が必要ですからな~。大昔に失われた加工技術とかなんとか言われとりますな~」

「ですので、我々のような魔道具師や、彫金師でなければ繊細なヒヒイロカネを加工できないのです」


 でも合金を棒状に加工するぐらいなら出来そうじゃないかな?

 如意棒は伸び縮みさせる武器だし。加工も単純そうなのだが。

 俺は持ち帰ったヒヒイロカネとミスリルの塊を手にしながら、丁度いい配合にするにはどうしたら良いのだろうかと考えた。


 ヒヒイロカネは魔力を流すとオリハルコンのように硬くなる。微量であれば柔らかくなり、ミスリルとの合金だと伸びる性質があるってことは、余計な魔力をミスリルが吸収または放出するってことかな?

 熱伝導率がよく――――というか、良すぎて鍛冶向きではないので、武器に加工するには失われた技術が必要。とはいえ熱を加えなきゃいいってことだから、普通に魔力で捏ねればいいんじゃなかろうか?

 まぁ、その魔力操作が難しいのだろう。技術が失われたのではなく、加工できる人がいないだけのような気がするんだよ。

 でも繊細な魔力操作の得意な人物がいれば可能。そう、ディエゴならね!


「ん? これに微量の魔力を流すのか?」

「うん」


 俺のイメージ通りに捏ねてみて欲しいとディエゴに頼む。

 ディエゴに魔力操作を頼んで合金を作り出し、それを魔道具師のドワーフさんたちに加工してもらい、仕上げに俺が願いを込めれば作り出せる気がする。

 多分コレ、一人じゃ作れない武器だろうけれど、みんなで力を合わせれば作り出せると思われ。

 一発勝負ではなく、何度もチャレンジできるほどにミスリルもヒヒイロカネもあるしね。だから安心して失敗してもいいよと言えば、職人さんたちも喜んで協力してくれることになった。

 滅多にない機会なだけに、みんなウキウキして楽しそうだ。


 後にアラバマ殿下から「希少金属で遊ぶな!」と怒られることになるのだが、この場に居ないので誰も止める者はいなかったのである。

 これぞツッコミ不在の恐怖ってやつだね!


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