表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エテルネル ~光あれ  作者: 夜星
第八章 不死の王
108/110

封印された歴史

 それは、今より二百年も昔ことであった。


 大国ルスタリアに仕え、預言者として民を導いてきた偉大なる精霊ラクレシア──彼女の魂は天に返った後も、その(けい)()途絶(とだ)えることなく受け継がれ、王家の血脈と共にあった。


 だが、その血脈の(かたわ)らには、ひとつの分家が秘かに存在していた。


 ラムド伯爵家──それが、その一族の名称である。


 かつて彼らは、崩御(ほうぎょ)した王族や英霊たちを(てい)(ちょう)(まつ)る、由緒正しき祖霊信仰の一族であった。その霊力は神がかりとさえ呼ばれ、死者の魂を現世へと召喚し、霊たちの声を人々に聞かせ、(あま)()の奇跡をもたらしたと言う。


 だが、数世代に渡って守られてきた門外不出の奥義は、長き時を経て恐るべき暗黒魔術に変遷(へんせん)した。


 あくなき力を求めた彼らはその果てに、生きる者の命を()(もつ)として、死者の魂を自在に操る禁術──神に背く魔法をも手中に収めたのであった。


 かくして、()えある祖霊の守り人たちは、忌まわしき死霊使いの一門と化し、以後百年にわたり影の(うち)に力を蓄え続けてきたのである。


 やがて、ラムド家が最盛の時を迎えたある日、一族が待ち望んだ〝最強の後継者〟が誕生する。


 その者は底しれぬ魔力を持ち、レミナレス王家をとりこむほどのカリスマ性と(こう)()に長けた。


 この世のあらゆる魔道に精通し、闇の魔女王にすら認められし者。大国ルスタリアの裏世界に君臨する死者の王ラムド・リッチⅣ──すなわち後の世に〝不死王リッチ〟の名で知られることとなる、(むくろ)の王である。


 彼にまつわる数々の(いつ)()は、すでに人外の者とすら思わせるが、当時、人々の間ではまだ「生身の人間」として知られていた。


 しかし実際には、彼の肉体は〝不死〟の領域へと踏み入れており、すでに〝人〟の枠を超えていたのだ。


 それでも、彼の飽くなき野望は終わらなかった。


 さらなる力を求め、自らを真の超越者たらしめることでレミナレス王家を打倒する。その上でルスタリアの玉座を奪い、最終的には国家という剣を手に、世界全土を戦火に染め上げること──それこそが、彼の真なる目的であったのだ。


 だが、その陰謀は、彼を警戒していたレミナレス王の耳にも届く。忠義なる者の(しら)せにより、王は即座に動いた。


 ルスタリア正規軍より二万の兵が動員され、国家転覆の兆しを見せていたラムド家に急襲をしかけた。

 黒き城に火が放たれ、百五十年にわたって続いた伯爵家の栄華は、一夜にして灰燼(かいじん)と化した。

 死霊使い(ネクロマンサー)の一族は残らず滅ぼされ、その名も記録も王国の歴史から抹消された。


 ただひとつ、見つからなかったものがある。

 それは、リッチの亡骸である。


 焼け落ちた城のどこを探しても、王を名乗った男の(しかばね)は発見されなかったのだ。誰もがその存在を消えたものと信じ、あるいは……恐れて忘れようとした。


 だが、百年の歳月を経て──〝不死王リッチ〟の名は、再びルスタリアの地に甦ろうとしている。


 すでに彼は、過去の亡霊などではない。

 闇の覇者である魔女王配下〝六魔導〟のひとりとして、確実に現世に帰還したのであった。 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ