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解放軍VSプラーガ帝国④

「皆の者、ここはコボルトに任せて先に行くんだ!」


 構成員の間にコボルトたちが割って入り、その隙に同行者たちが退避を始める。

 逃げる人たちに興味がないのか構成員はチラリと顔を向けただけで、グラップさんへと迫ってきた。


 ズダダダダダダダッ!


「ギャッ!」

「ガハッ!」

「チッ、やっかいな武器だな」


 コボルトの乱射により再び距離をとる構成員たち。

 仲間が数名やられたにも拘わらず、頭巾の隙間から覗く目が笑ってるようにも見える。


「正気なのかお前たち? 後ろからは炎と魔物が迫っているのだぞ?」

「察しが悪いな。ただの炎がここまで勢いを増すわけがないだろう」

「只の炎では……ない?」

「そうとも。()()()()()()()()()()ならば造作もない事だ」

「ダンジョントラップだと!? やはりシュノーゼか!」

「本来ならばクライアントは明かさないのだが……フッ、そういう事にしておこう」


 案の定シュノーゼさんだった。

 ――って、それじゃあこの辺り一帯は!


「マズイよグラップさん、ここはすでにシュノーゼさんのダンジョンなんだよ!」

「そういうことか!」


 つまりこの炎をコントロールしてるのもシュノーゼさん!


「ご名答ってやつだが遅かったみたいだぜ? 周りを見てみな」

「あっ!」

「山の方からも魔物が!」


 すでにゴブリンやオークに回り込まれてて、

あたしとグラップさんだけが孤立してる状態に。


「非戦闘員を逃がさなきゃ盾にでもできたのになぁ?」

「そんなことはしない! 俺の目的はダンマスの救出だが、かといって彼らを犠牲にするつもりもない!」

「この状況で綺麗事とはヘドが出る。言っとくが俺たちを買収できるなどと思わないことだ。引き受けた()()はキッチリこなすんでな……いくぜ!」

「クッ……」


 再び構成員が動くとコボルトもそれに反応し、無数のナイフと銃弾が飛び交う。

 更に今度は魔物まで相手にしなきゃならなくて、正面と後方とでコボルトを二分して乱射する羽目に。

 あたしとグラップさんも背中合わせになり、互いの正面に向けてライフルを撃ち込む。


「ミラクル、山の方はどうだ?」

「正確な数は分からない、暗くてよく見えないから。グラップさんの方は?」

「残りは10人程度だが、動きが速くてなかなか捉えられん。コボルトもかなり減ってきた」


 見える範囲では、100体ほどいたコボルトが半数以下にまで減ってるみたい。

 武器が強力でも相手は戦闘のエキスパートだものね。


「だいぶ数が減ってきた。お前たち、グラップに一点集中だ!」


 ザクザクザクッ!


「ぐおっ!?」

「グラップさん!」


 何本かのナイフが肩に刺さり、ライフルを落として膝をついた。

 こ、このままじゃ!


「さぁて、どうやら終いのようだなぁ?」

「クッ…………無念」


 流血が止まらず、グラップさんの意識が朦朧(もうろう)としている。

 そのためコボルトたちは動きを止め、無抵抗状態に。

 早く治療しなきゃ!


「あたしが相手になる!」

「やめときなお嬢ちゃん。俺たちゃ総大将さえ仕留めればそれでいいんだ。それに魔物を放置できないだろう?」

「この……卑怯者!」

「卑怯で結構。それでこそ闇ギルドさ」


 ここまで来て負けるの? そんなのは絶対嫌だ!

 あたしは伝説のダンマス――アイリの子孫。もう後悔はしないって決めたんだ。


「せめてお前だけでも!」チャキ

「フッ、遅いぜ! そんなんじゃ――」



 ターーーン!



「ゴホッ!?」

「え?」


 あ、あたしは発砲してないのに構成員が倒れた!?


 バス――バスバスバスバス!


「ギャッ!?」

「ガハッ!」


 立て続けに聴こえる発砲音により、暗闇のどこかで次々と構成員が倒れていく。

 いったい誰が?



「無茶しすぎだぞマスター」

「その声は――グルースさん!」


 真上から飛び降りてきたのはグルースさんで、降下してる最中にも絶妙な手捌きで魔物と構成員を撃ち抜いていく。


 シュタ!


「構成員は全員負傷させた。あとは魔物を蹴散らせば大丈夫だろう」

「うん、ありがとうグルースさん!」


 ……っと、その前にグラップさんを助けなきゃ。


 パシャ!


 意識がなくなりかけてたから、頭からエリクサーをぶっかけた。

 さすがに効き目は抜群で、即座に意識が戻り傷も塞がっていく。

 念のためにってアイリちゃんが持たせてくれたお陰だよ。


「ふぅ……助かったぞミラクル」

「うん。頼もしい眷属も来てくれたし、形勢逆転だよ!」

「そう言ってもらえると嬉しいが、いざって時は逃げる選択もしてくれ……」


 はい、そこは反省しときます。

 死んだらみんなに会えないもんね。


「クソッ、こんなところでドジ踏んじまうとはな……」

「残念だったね闇ギルドの人」

「こうなりゃ仕方ねぇ。一旦退くが、いずれ総大将の首は――」


「ギャァァァ!」

「「「!?」」」


 断末魔の叫びにより、声の方に視線が集まる。そこには炎に包まれた構成員の姿が!

 それにさっきよりも勢いが増している!?


「チキショウ! シュノーゼのやつ裏切りやがったか!?」


 その後も次々と構成員が焼け落ちていき、魔物すらも黒焦げになってバタバタと倒れる。

 気付けば完全に炎に囲まれていて、残っているのはあたし達3人と構成員1人だけに。


『オーーーッホッホッホッ! ごきげんよう皆々様!』

「「「シュノーゼ(さん)!」」」


 夜空に浮かぶのはシュノーゼさんの顔。

 多分これ、コアルームからこっちを見てる状態だね。


「テメェ、よくも俺の仲間を!」

『あら、失敗したのはそちらでしょう? だったら命の保証はできないわ。せいぜいDPとなって役立ちなさいな』


 ゴォォォォォォ!


「ギャァァァァァァ!」


 火柱が最後の1人を飲み込み、残るはあたし達三人だけに。


『さて待たせたわね。次は貴方……グラップの番よ』

「……シュノーゼ。どうしても戦わなきゃダメか?」

『はぁ? 今さらそんな事を? 元婚約者だから見逃してくれとでも言うつもり? ホント呆れるくらいバカな男ね。見限って正解だったわ』

「違う、そうじゃない。俺はお前を殺したくないんだ」

『…………フッ、状況すら理解できないなんて、とんだお笑い草だわ。目障りだから消えてちょうだい!』


 ゴォォォォォォ!


 再び火柱が動き出す。

 グラップさんがコボルトを送還し終えると、グルースさんによって上空へと引き上げられる。

 火柱は足元を掠め、間一髪脱出に成功した。


「ふぅ……やれやれ。助かったぞグルースとやら」

「例には及ばん。マスターを助けるついでだ」

「でもグルースさんが来てくれなかったら死んでたよ。ホントにありがとう」


 あたし達とは真逆に取り逃したと知ったシュノーゼさんは、袖を噛んで悔しさを表していた。


『チッ、あと少しのところで……。確かミラクルだったわね? やっぱりアンタが居ると調子が狂うわ』

「調子が狂うって……具合でも悪いの?」

『そうやってまたバカにして! いいわ、どうせ帝都に来るんでしょうし、今度こそ決着をつけようじゃない!』


 プツン!


 シュノーゼさんの顔が消えると、地上の火柱も同時に消えた。

 でもやっぱり戦いは避けられないみたい。


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