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解放軍VSプラーガ帝国③

「グラップ司令、遠くに帝都が見えるぜ。ついにここまで来たんだな!」

「ああ。もうすぐ……もうすぐ帝国は変わるのだ……」


 山頂から帝都を見下ろしている二人――グラップさんとムトーさんが瞳をうるうるとさせている。

 エルマイヤさんと宰相さんを救出してみんなの元に戻ると、すぐに山越えを始めたんだ。

 あとは山を下れば帝都は目と鼻の先だよ。


「思えば永い日々だった……」


 たった10日くらいだよね?


「幾多の困難を乗り越え……」


 ライフルの武装とセレンさんがいて困難も何もないような……


「時には挫折を味わい……」


 フラれた婚約者の事だね。御愁傷様。


「幾度となくピンチを脱し……」


 同行者が多いから、軽く食糧難になりかけたもんね。


「そして我々は帰ってきた」


 そういえば拠点にしたリップコールの街は落とされたらしいんだよね。

 多分戻ることはないからいいんだけれど。


「感傷に浸るのは構わんが、ここからが本番じゃぞ? 何せいまだに帝国軍と遭遇してないのだからのぅ」

「それは分かるが我々の電撃戦についてこれなかったという見方もできないか? 落とした街は軍によって取り戻されてるだろうとセベクも言っていたではないか」

「街一つが丸々落ちれば軍を動かすしかあるまい。周囲への見せしめもあるしの。じゃが気になるのはワシらの動きを抑えようという試みが感じられんところじゃ。深く考えすぎかもしれぬが、泳がされてる気がしてならぬ……」


 どうなんだろ? シュノーゼさんなら何か画策しててもおかしくはないかな。

 帝都に来いって言ってたし、そこで待ち構えてるんじゃないかと思う。


「ふむ……一応は警戒しておこう。それよりも今日は(ふもと)の森で一夜を明かすぞ。明日の帝都攻めに備えてな」


 油断はできない――けれど勝利は目前。そんな浮わついた気持ちが有ったんだと思う。

 結果あたし達は、悪夢のような夜を迎えることとなった。




「起きてミラクルちゃん!」


 深夜になり妙に騒いでる人がいるなと感じていたあたしは、いつもの口調と違うセレンさんによって叩き起こされた。


「セレン……さん? 何か騒がし――」

「寝ぼけてる場合じゃないわ、早く脱出しないと焼け死ぬわよ!」

「や、焼け死ぬって――ひぃ!?」


 手を引かれて天幕から出たあたしは、驚きのあまり飛び上がる。

 だってそこらじゅうから火の手が上がってるんだもの!


「火が燃え広がってんぞ! さっさと消せぇぇぇ!」

「ダメだ、魔物が目の前にいてそれどころじゃない!」

「もうムリ! こうなったら突撃しましょ!」

「バカよせ! 無駄に死ぬだけだぞ!?」


 同行者たちもパニック状態で、炎と魔物によりジワジワと追い詰められていく。


「起きたかミラクル、早く山へ向かうんだ!」

「え……や、山?」

「移動しながら話す。皆もついて来い!」


 セレンさんと共にグラップさんの背中を追い、走りながら状況を聞いた。


「グラップさん、いったい何が?」

「突然あちこちの地面から火柱が立ち上がったのだ。その直後に魔物まで現れてしまい、防戦しつつ後退するところだ」


 帝国兵じゃなくて魔物? しかも火柱が?


「撤退先の山はセベクたちが確保しているはずだ。エルマイヤ達もそこに居るし、ひとまずは合流しよう」


 まるであたし達の動きを把握してるかのような動きだよ。

 誘い込んで騙すようなやり方――やっぱりシュノーゼさんなの……。


「周囲を警戒していた数名のダンマスも戻って来ないし、恐らくは討ち死にだろう」

「で、でも武装したコボルトなら――」

「いや、暗闇では思うように命中しない。しかもあの炎だ。どういう訳か消化しずらく、やむ無く撤退することにした」


 後ろを振り返ると全く衰える様子のない炎があたし達を飲み込もうと迫り、共に避難していた数名が炎に包まれる。

 目の当たりにしたグラップさんは険しい表情で唇を噛み、再び正面を見据えた。


「連携している魔物ごと焼き尽くす――か。まるでシュノーゼのようなやり方だな」

「シュノーゼさんを知ってるんですか?」

「知っているもなにも、あいつこそが俺の元婚約――」

「おお~い! 大変だグラップ司令~!」


 駆け下りてきた男の人により話は強制的に打ち切られた。


「何があった?」

「セベクたちが確保している山頂にギアⅢが現れやがった! 何とか魔物を盾にして凌いでるが長くはもたねぇ。早く来てくれぇ!」


 マズイよ、山頂にはエルマイヤさん達もいるんだから、早く助けてあげなきゃ!


「クッ……山頂までおよそ30分。急ぐしかあるまい!」


 言いたくはないけど、とても間に合いそうにはない。

 ここは思いきって!


「セレンさん、山頂をお願い!」

「よいのですか~? 私が離れると危険ですよ~?」

「構わないよ。だってこれ以上犠牲者を出したくないもの」

「……分かりました~」


 やや迷った表情を見せるも最終的には頷き、山頂へと飛んで行く。


「よし、我々も急ごう」

「はい!」


 けれどこの時、あたしは重大な選択ミスをしてしまった。

 盾とも言えるセレンさんを遠ざけてしまう――つまり、あたしとグラップさんに危機が訪れると対処できない可能性もあったんだ。



 シャシャシャシャ!


「「ギャウン!?」」

「何っ!?」


 いきなり飛来してきたナイフによって、数体のコボルトが仕留められた。

 周囲を警戒する中、黒装束に身を包んだ怪しい人たちが暗闇から姿を現す。


「貴様が解放軍のグラップだな?」

「お、お前たちは……」

「密かに帝都で暗躍している極鮮血(きわめせんけつ)という名の闇ギルドさ」

「闇ギルドだと!?」


 背後でチラつく炎に照らせれ、手にしたナイフがギラリと光る。

 もしかしなくても殺す気……だよね?


「これでも現体制の元でそれなりに稼がせてもらってるんでな、国家転覆は困るのさ」

「ならば我々とは相成れないな」

「そういう事だ……やれ!」


 こんなところで負けられない。

 何とか撃退しなきゃ!


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