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解放軍VSプラーガ帝国⑤

「グラップ司令、帝都の南側に帝国兵が密集している。突破するのは難しそうだ」

「うむ、ご苦労だった。奥で休むがいい」

「はい!」


 伝令の報告を受け、腕組みをして考え込むグラップさん。

 帝都周辺はシュノーゼさんのダンジョンと化しているから、帝都から平原を挟んだ先の森にいるってバレてるんだよね。


「やっぱ包囲して攻め込むのが理想じゃね? 西と東からも同時に攻めりゃ――」

「これムトー、無茶を言うでない。相手のテリトリーで包囲しようとしたところで先手を打たれるのは目に見えておる。ここはすでにシュノーゼのダンジョンだという事を忘れてはいかんぞぃ」


 そうなんだよね。

 セベクさんの言う通り、こっちの動きは筒抜けになってるから敵を(あざむ)くのは難しい。


「じゃあ一般人に紛れて侵入するのはどうだ? 内部から破壊してやれば――」

「ダンマス感知器に掛かって捕らわれるだけじゃ。他の街でやっている事を帝都でやらぬわけなかろう。仮に同行者を侵入させても戦えぬのなら無意味じゃな」


 さすがに戦えない人にお願いするのは気が退けるもんね。


「じゃあどうすんだ? いっそのこと魔物の大群でもけしかけるか?」

「それ、正面から攻め込むのと何ら変わらないじゃない。まだ魔物を侵入させる方が現実的よ」

「う~む、積み荷にコボルトを潜り込ませるか。だが少数では大した損害を与えられそうにないが……」


 ……んん? ルナさんの言う魔物を侵入させるのって、セレンさんやグルースさんなら可能なんじゃ?

 それに戦力的にも大損害を与えられるから、グラップさんの言う条件もクリアーできる。


「グラップさん、侵入なら何とかなりそうです!」

「本当か!?」

「はい。あたしの眷属たちなら必ず!」


 そう言って胸を張り、二人の眷属に視線を送った。



★★★★★



「解放軍か来たぞーーっ! 帝都への侵入を許すなーーーーーっ!」

「「「おおっ!」」」


 ミラクルたちが動いた直後、帝都側でもそれを迎え撃とうと士気を高める動きが見られた。

 シュノーゼからの報告により、解放軍全体の動きを察知したためだ。


「ゴリー将軍、解放軍は正面から挑んでくるようです」

「フン、我が帝国軍を前にして真っ正面から当たってくるか」


 並の人間の三倍くらいはある体格の牛獣人――ゴリー将軍が、防壁の上から平原の先を眺めつつ伝令の報告を受ける。

 プラーガ帝国一の猛将と言われており、解放軍が攻めてきたと聞いた時は、それはもう大喜びで自慢の大金槌を担ぎ上げたのだ。

 そして今、平原の彼方に見える魔物の群を発見し……


「来たか! ――者共ぉ、我が帝国に牙を剥く愚か者共に鉄槌を下すのだぁぁぁ!」

「しょ、将軍! まさかこちらから打って出るおつもりで!?」

「当たり前だぁ! ダンマスごときが何するものぞ! シュノーゼに手柄を立てられては我々の面子が丸潰れではないか!」

「し、しかし、ラーズヴォルト様からは連携して対処せよと――」


 そう。此度の戦いは帝都の攻防戦なのだ。

 手を抜いて敗けましたじゃ取り返しがつかなくなる。

 だがゴリーはダンマスを下に見ており、連携という二文字に対して鼻息を荒く反応した。


「バカ者ォォォォォォ!」

「ヒィ!」

「連中ばかりに手柄を取らせてたまるかぁ! 今こそ我々軍人の見せ所ではないか。解放軍を完膚なきまでに叩きのめし、奴らの出番を奪ってやるのだ――突撃ぃぃぃぃぃぃ!」



 命令を無視して平原へと躍り出る帝国軍。

 しかし、そんな彼らを遠目で見ている者が1人。言わずと知れたシュノーゼが、コアルームから眺めていた。

 すでに帝都全域をダンジョン化している彼女にだけ可能なことである。


「フッ、予想通りの単細胞ね。()()()()()()正解だったわ」


 なんと、ゴリー将軍を作戦に担ぎ上げたのはシュノーゼだった。


「以前からダンマス全体を見下しているのは分かっていたわ。何せ度々こちらにケチつけてくるんだもの、ウザいったらありゃしない。そ・こ・で、解放軍に叩いてもらおうって思いついたのよねぇ」


 これまで事あるごとに衝突を繰り返したゴリーとシュノーゼ。

 みるみる出世するシュノーゼを面白くないと見ている代表格がゴリーであり、今後のためにも失脚させるのが狙いだ。

 ちょうどモニターには魔物の群に突撃する姿が映されており、大金槌を振り回しての大暴れップリを見せていた。


「でもギアⅢもなしに突撃かますとは、さすがの私でも予想外だったわ。自殺願望でもあるのかしらね? ま、いずれにせよ軍単独では解放軍の撃破は不可能。せいぜい彼には踊ってもらいましょ。死体になっても構わないけどね。フフフフ……」


 ビー、ビー、ビー、ビー


「何事!?」


 突如発生した警報にシュノーゼの顔が強張る。

 原因となる箇所を発見しモニターに映すと……


「そ、そんな! グラップたちが街中に!?」


 あり得ない――と、シュノーゼは思った。

 何故なら帝都全域にはAランクの魔物すら寄せ付けない強力な結界が施されているのだ。

 それが易々と破られ街中に降り立ったという事は、(シングル)ランク以上の力を持っている事になる。


「クッ!」


 先程までの余裕はなくなり、慌ててコアルームを飛び出す。

 ――が、その直後!


 ドドドドォォォォォ!


「今度は何っ!?」


 地上へ上がろうとしたシュノーゼを瓦礫の山が塞いでしまう。

 砂埃が収まり顔を上げると、原因となる()()が目の前に現れていた。

 セレンを筆頭にミラクルとグラップ。煮え湯を飲まされた相手のグルースに加え、皇女エルマイヤと元宰相という面子だ。


「魔力反応を辿ったら~、ビンゴでした~♪」

「そ……んな……」


 セレンを前にして一歩二歩と後ずさる。

 ダンマスであるがゆえに、セレンが並の魔物ではないと瞬時に理解したのだ。


「降参してくださいシュノーゼさん。貴女に勝ち目はありません」

「……みたいね」


 ミラクルの言葉にガクリと肩を落とし、視線をチラリとグラップに移した。


「まさかアンタを捨てた事が裏目に出るなんてね」

「シュノーゼ……」

「なんでアンタが悲しんでるのよ? 勝ったんだから嬉しそうな顔しなさいな」

「シュノーゼ俺は!」

「アンタの考えは分かってるわ。私を助けたいと思ってるんでしょ? でもね、もう何もかも遅いのよ。多数のダンマスを罠に掛けたのに私だけ助かるなんて選択肢はないわ」


 そう言ってコアルームに戻ると、モニターに帝国城の断面図を映し出す。


「見なさい。城の地下にマギールという男の研究所がある。何度か耳にしたでしょ? 帝国の研究機関の話を。コイツをどうにかしない限り、ギアⅢは量産され続ける。それどころかギア(フォー)の完成も間近だと聞いたわ」

「「「ギアⅣ(ですか)!?」」」


 この話に全員が確信する。現皇帝ラーズヴォルトは侵略戦争を始める気だと。


「逃げるか止めるか、後はアンタたちの好きにしなさい。私はもう――ガフッ!」

「シュノーゼ!?」

「シュノーゼさん!」


 突然口から血を吐き出すシュノーゼ。


「どうやら時間のようね」

「時間だと? ……ま、まさかお前!?」

「ええ。ご想像の通り、研究機関の場所を暴露したから呪いが発動したのよ」

「分かっていながら何故!」

「せめて……もの……罪滅ぼ……し」


 ドサッ!


「シュノーゼ!」


 倒れたシュノーゼをグラップが抱き上げる。


「く、苦しい……。あのクソガキ皇帝……トンでもない苦痛を……」

「もう喋るな! ――ミラクル、早くエリクサーを――」

「無駄……よ。例えエリクサー……でも、呪いは取り除け……ないもの」

「そんな!」


 契約違反の呪いは神の力によるもので、エリクサーごときでは覆すことはできないのだ。


「グフッ! お、お願い……グラップ、とっても……苦しいの。せめて最後は……()()の手で……」

「クッ……シュノーゼェェェェェェ!」




 ターーーン!


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