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追う者と追われる者

「ちょっとちょっと、いったいどうしたっていうの?」

「GAに似た奴が近くに居るのよ。あんなのが飛び回ってると思うと、研究機関を潰してるどころじゃないわ」


 セリーヌの手を引いて飛び上がり、再度周囲の気配を探る。

 あれだけ強い反応なら簡単に……



「見つけた! こっちね」


 猛スピードで飛行しているらしく、すでに遠ざかりつつあった反応に向けて追跡を開始。

 すると間もなく、スリム化したギアⅢのような青い機体を前方に捉えた。


「な、何なのあれ!? あんな魔物は見たことないよ!」

「以前GAって奴に襲われた話をしたでしょ? 多分そいつと同類よ。ただ前にいる奴はGAよりかは一回り大きいけれど」


 恐らくGAの仲間なんでしょうけど、念のため鑑定スキルをあててみる。


 名前:RU(アールユー) 性別:男

 年齢:1歳未満 種族:ギアヒューマン

 備考:謎の兵器から分離した存在でGAの仲間。母体を復活させるため活動している。


 はいビンゴ。

 敵と判明したところで撃墜してやろう。


「スプラッシュファイヤーボール!」


 ドドドドドドドドッ!


「うおっ!? つつつ……。いきなり撃ってくるとは酷いんじゃないかい?」


 振り向き様に頭部の表面をスライドし、グラサンを掛けたちょいワル系のオッサンが顔を覗かせてきた。


「酷いもなにもアンタはGAの仲間でしょ? だったら私の敵よ――フレイムキャノン!」

「ぬぉっとと――だから危ねぇって! それにな、今は嬢ちゃんの相手してる隙はねぇんだ。悪いが他行って遊んでくれ」

「遊んでるわけじゃない! こっちだってGAに奇襲されたりしてるんだから、アンタに文句を言う資格はないのよ!」

「へぃへぃ。事情は分かったがマジでそれどころじゃねぇんだよ」

「そうやってはぐらかそうと――」

「…………」チョイチョイ


 ん? ジェスチャーで後ろを見ろって言ってる? 後ろに何が――



「ウォォォォォォ、待ちやがれぇぇぇ!」



 背後から飛んでくる紫色のドラゴン。うん、紛れもなくドラゴン。

 ……こんなところにドラゴン? そんな疑問は後回しにし、鑑定スキルをあててみる。


 名前:アンジェリカ 性別:女

 年齢:999歳以上 種族:バハムート

 備考:SSS(トリプル)ランクの魔物。敵対したら最後、死ぬまで追いかけられる可能性あり。とりあえず謝ってみる? もしかしたら半殺しで許してもらえるかも。



 ( ゜д゜)


 (つд⊂)ゴシゴシ


 (;゜д゜)


 (つд⊂)ゴシゴシ

   , .

 (;゜Д゜) …?!


 おかしいなぁ。私の目にはSSS(トリプル)ランクって見えるのよねぇ。

 しかもバハムート? バハムートって言ったらSSS(トリプル)ランクじゃない。




 ――って、バハムートが追っかけてきてるーーーっ!?


「ちょっとアンタ、アイツめちゃくちゃ怒ってるじゃない! いったい何したのよ!?」

「んなもん、GAから聞いてるだろ? 母体の復活が俺たちの使命なんだからさ」

「ああ、そういう事ね」




「――って、バッッッカじゃないのぉ!? いくら使命だからってバハムートを生け贄にしようとか、おバカにも程があるわ!」

「しゃーないだろ? まさかあんなに強ぇとは思わんかったしな」


 冗談じゃない。こんなバカ過ぎる理由で巻き込まれたとか、溜まったもんじゃないわ。

 第一に戦うまで分からなかったって? 兵器ならそんくらい分析しなさいよ!


「マズイよアイリ、後ろ後ろーーーっ!」


 セリーヌに手を引かれて振り向くと、今正にバハムートがブレスを吐こうとしていた!


「やっば――」

「燃えちまいなぁぁぁ!」


 ゴーーーーーーォォォォォォ!


「あっぶな!」

「助けてお婆ちゃーーーん!」

「うわっっっとととぉ!」


 直線に延びたブレスが遥か前方の山を突き抜け、更に先まで延びて行く。

 こんなのを食らったら一溜りもないわ。


「ストップストォォップ! 私はコイツとは無関係だから! ぜんっぜん関係ないから!」

「るせぇぇぇ! あたしは今気が立ってんだ。動いてるもんは全て敵だ!」


 んな無茶苦茶な!


「こうなったのもアンタのせいよ? 責任とって自爆してきなさい!」

「そいつぁ酷ぇや。こうして出会ったのも何かの縁だし、ここは一つ協力すべきじゃないかい?」

「分かった、協力するから今すぐ死んでこい!」

「嬢ちゃん、見た目によらず凶悪なこと言うのな……」


 こうなったら仕方ない。

 アンジェラを召喚して時間を稼ぎをしするしかないわ。


「サモンアンジェ――って、リンクが切れてる!?」


 アンジェラどころか全ての眷族とのリンクが切れてる。

 いったいどういう――


「ああすまん。多分俺がいるせいだわ」

「はぁ?」

「俺やGAには転移や念話を妨害するパッシブスキルがあるのさ。つまり嬢ちゃんの眷族は呼べないってこった」

「ああ、なるほどね」




「――って、結局アンタのせいじゃないの!」

「そ~だそ~だ! オッサンのせいだ~!」

「だからそう言ったろ……」

「「言えばいいってもんじゃない!」」


 マジで大ピンチよ、何とか逃げきる方法を考えなきゃ。


「よっし、エネルギー充填完了。嬢ちゃんのお陰で逃げきれそうだぜ」

「まさかアンタ一人だけ逃げるつもり!?」

「俺が離脱すりゃ眷族を呼べるぜ?」


 そっか! それなら何とか――


「――って、アレを私に押し付ける気!?」

「他に方法がないんでな。アバヨ~!」

「待ちなさぁぁぁい!」


 サムズアップで私を苛つかせつつ、ジェットエンジンのようなものを背中から噴射して急加速したRU。

 ものの数分で姿が見えなくなり、私とセリーヌだけが残されることに。


「どどどどどうするのアイリ!? このままじゃいずれ追い付かれちゃうよ!?」

「大丈夫よ。あのクソオヤジが居なくなったお陰で、召喚もできるし転移もできる」


 そうよ。何もアンジェラを召喚して五分五分の賭けをするより、転移で逃げるべきじゃない。


「海を越えて全然知らない大陸に来ちゃったし、一旦プラーガ帝国の上空に戻るわ」

「オッケ~」


 シュン!



「よっと。持っててよかった座標転移(ハザードワープ)――ってね」

「おおっ凄い凄い、一瞬で戻って来ちゃった。でもさぁ、何でもできるアイリだったら倒せたんじゃない? それこそ未知なアイテムを召喚して」

「グラップに渡した武器のこと?」

「そう、それそれ」


 それはどうだろう。さすがにバハムートの鱗は貫通できない気がする。

 何せ神の領域に片足突っ込んだ強さだと言われてるし、伊達にSSS(トリプル)ランクなわけじゃない。

 けれど……


「アンジェラとリヴァイで戦えばいけるかもしれない」

「アンジェラ? 確かボルディール王国で召喚してたバハムートだっけ。でもリヴァイの方は知らないな~」

「リヴァイアサンのリヴァイよ。二人ともSSS(トリプル)ランクだし、上手くいけば……」


 と言ってもすでに転移で逃げ切ったわけだし、無理に戦う必要もないか。


「フン、命拾いしたわねバハムート。今目の前にいたらフルボッコにしてやるのに――なぁんて言ってみたりして――」

「ほ~~~ぅ。あたしをフルボッコにできるってか?」




「ヒィィィィィィ!?」

「なんでここに居んのよーーーっ!?」


 背後から聴こえてきた威圧的な声。振り向けばあのバハムートが浮いてやがるじゃない!


「あたしにゃ探知波動(エクスプロルウェーブ)って言うスキルがあるんだ。一度見た相手なら個別認識も可能だぜ?」


 そうだった。アンジェラにも同じスキルがあるんだから当然じゃない……。

 しかも何百キロも離れてたのにこんな短時間で……。


「さぁ覚悟はできてんだろうなぁ?」

「できてない! だいたいにして私よりもあの青い機体を追うべきじゃない。そもそもの原因はアイツに――」

「あ~アイツなぁ。なぜか知んねぇけど認識阻害されてて追跡できなかったんだよなぁ」


 あんにゃろ~~~、自分だけ無事に逃げ切りやがったわね!?

 今度会ったらスクラップにしてやる!


「こうなりゃもう最後の手段よ――サモンアンジェラ!」


 シューーーン!


 人化を解除した状態でアンジェラを召喚し、私たちとアンジェリカの間に割り込ませた。

 

「どぅれ、妾の出番かや?」

「ええ。今度の相手は同じバハムートだから、リヴァイと協力して――」

「なんと! よいよい、実に良いぞ! リヴァイは不要、妾だけで相手してやろう」

「いやいや、生きるか死ぬかでそんなこと言ってる場合じゃ――」

「あーーーーーーっ!」

「「「!?」」」


 なぜかアンジェリカって方のバハムートが驚きの声をあげ……


「お、お、お――」

「「「お?」」」



「お袋じゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!」

「「「えええーーーっ!?」」」


 まさかアンジェラの娘!?


「ちょ、ちょっと待つのじゃ。妾は伴侶を持った覚えは――」

「ふざけんなお袋! かわいい娘を忘れたってのか!?」


 凶悪そのものだし、かわいくはないかなぁ。

 そもそも5000年もの開きがあるし、この時のアンジェラは独り身だったのよね多分。


「今こそ長年の恨みを晴らさせてもらうぞ!」

「「「恨み?」」」

「まさか覚えてねぇのか!? あたしの飯を何度も何度もくすねやがったじゃねぇか! アンタそれでも母親か!」

「「…………」」


 うん。食い意地の張ったアンジェラならやりかねない。


 ガシィィィ!


「め~し~の~う~ら~み~~~!」

「ええぃ落ち着け。例え妾が食ったところでまた狩ってくればよいではないか」

「最後に見た時もおんなじこと言いやがったよなぁ? 狩るだけ狩らせて終いに取られちゃ意味ねぇんだよ!」

「だから落ち着けと言うに!」

「うっせぇ! 今日こそ絶対に許さねぇからな!」


 ガツン!


「イタタタタタ、やりおったな小娘ぇ!」


 ゴツン!


「グッフ!? さすがお袋だぜ!」


 掴み合いから殴り合いへと発展した親子喧嘩。

 これを収めるのに一週間以上を費やす羽目になるとは、この時誰も知らなかったという。


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