行軍開始!
「発射よ~い…………撃てーーーっ!」
ドゴーーーン!
「マズイ、門が壊されたぞ!」
「ここはもうダメだ、中に撤退してギアⅢを要請しろ!」
3体のコボルトが組になりロケットランチャーという大砲を放つと、閉じられていた門があっさりと粉砕した。
ライフルだけでも強力なのに、更に強力な武器まで召喚したアイリちゃんは本当に憧れちゃうなぁ。
「進めーーーっ! 一気に蹴散らすんだ!」
グラップさんの怒号を受けライフルで武装したコボルトたちが街中に突入すると、私たちもそれに続く。
身を伏せている民間人へは威嚇射撃で屋内に押し込み、斬り掛かってくる兵士たちへはそのまま当てる。
あっという間に辺から人気が消え、汗を拭ったグラップさんが近くの石段に腰を下ろした。
「ふぅ……これでよし。後はコボルトに任せておけば大丈夫だろう」
すでに銃声は遠くへ移動していて、後は吉報を待つだけって感じに。
「でも油断はダメですよ? 武器は強いけどグラップさんは弱いままなんですから」
「ミラクル、キミもアイリと同じく毒舌なのだな……」
「ええっ!?」
そ、そんな自覚はなかったんだけど、これってやっぱり遺伝だよね?
もぅ……後でアイリちゃんに抗議しないと。
「そんなことより二人とも~、早く奴隷を解放しに行きましょ~」
「おっと、そうだった。この街に捕らわれているダンマスを解放しなくては」
セレンさんに急かされ、奴隷商を探して回る。
この街はリップコールの街から一番近く、捕らわれのダンマスが複数いるらしいという理由から侵攻してきたんだ。
「おい、そこの3人。お前らあのコボルトと一緒にいた連中だろう?」
「素直に降参すりゃ命だけは助けてやるぜ?」
見るからに冒険者な5人が行く手を阻んできた。きっと逃げた兵士が緊急依頼を出したんだ。
身構えたグラップさんが拳銃を取り出そうとしたところ、セレンさんが手で制する。
「不殺なら~、任せてください~♪ ふ~~~ぅ♪」
「ふぁ? なんだか急に眠気が……」
「子守唄だ! お前ら、耳を塞……げ……」
「zzz……」
背後に回ったセレンさんが子守唄で眠らせた。
そうだよ、セレンさんに勝てる冒険者なんて早々いないんだし、殺したくない人は任せちゃえばいんだよね。
「いたぞ、あの3人だ!」
「一気に畳んじまえ!」
また別の冒険者が出てきた。
「しつこい男は~、嫌われますよ~♪ るるるる~♪」
「「「zzz……」」」
新手も眠らせて、辺りは熟睡中の冒険者ばかりに。
この人たちはひとまず置いとくとして……
「どうしよう。いちいち冒険者を相手にするのは面倒だよ?」
「ではでは~、冒険者ギルドで~、話をつけてきましょ~」
「うむ。ギルマスにこちらの要求をのませるのだな」
「で、でも話を聞いてくれるかな?」
「その時は~」
「力ずくで首を縦に振らせるのよ……フッ」
「「!?」」
セ、セレンさんの顔がすご~く怖かったような……。
そういえばホークさんが「あの万年ババアが眷族の中で一番怖いわ」って言ってたっけ。
うん、絶対に怒らせないようにしよう。
バタン!
「たのも~~~♪」
「「「!?」」」
さっそく冒険者ギルドに着くと、セレンさんが勢いよく扉を開いた。
中にいた人達が一斉に振り向くと、その一部があたし達の正体に気付く。
「こ、コイツだ! コイツらが門を破壊したコボルトと一緒にいた連中だ!」
「へっ、ノコノコと現れるたぁいい度胸だ」
「コイツらにゃ賞金がかかってんだ。一気にやっちまうよ!」
武器を手にして一斉に襲い掛かってきた。
そういえば初めて冒険者ギルドに訪れると因縁をつけられるって、アイリちゃんが言ってたっけ。
ホント、セレンさんが居てくれて助かったよ。
「はい終了~♪」
気付けば受付嬢以外の全員が青ざめた顔をして踞っていた。
「セ、セレン殿、いったい何を……」
「大したことはしてません~。少しだけ血の流れを~、止めているだけです~♪」
ふ~ん? よく分かんないけど、血の流れを止めると顔が青ざめるんだね~。
「ちなみに~、あと少しで死者が出ます~♪」
「早く戻してあげて!」
やっぱりセレンさんもおっかないなぁ。もぅ、絶対アイリちゃんの影響だよ。
「さてさて~、ここのギルマスを~、呼んできてください~♪」
「しょ、少々お待ちください!」
セレンさんの力を見せつけられた受付嬢が二階へと駆け上がって行き、即座にギルマスらしきゴツイ体格の男の人と戻ってきた。
「俺がここのギルマスだが……お前たち、自分が何をしているのか分かっているのか? 街を襲撃するとは奴隷落ちは免れん。今すぐ投降するなら――」
「その前に~、あちらをどうぞ~♪」
「あちら……だと?」
降参するよう迫ってきたギルマスに、セレンさんが現実を突きつける。
あたし達を遠巻きに見ている冒険者たちがガクガクと震えてるんだもの、それだけでも異常だと分かるよね。
「お、お前ら、いったいどうし――」
「マスター、そいつらはマジでヤベェ!」
「絶対に怒らすんじゃないよ! 怒らせたら最後、あたしら全員皆殺しにされちまうよ!」
「天変地異の前触れだっぺぇ!」
「……どういうことだ?」
ギルマスが受付嬢へと視線を移す。
「こ、この場にいる冒険者全員が、一瞬でねじ伏せられたんです。とても敵う相手ではありません」
「そ、それほどか……」
どうやら冗談ではないって理解してくれたっぽい。
「……で、何が目的だ? 言っておくが戦争には加担しないぞ?」
「無論そのような事は言わない。我々は不当に捕らわれたダンマスを解放するのが目的であり、侵略するのが目的ではないのだ」
「!? ま、まさかお前ら、ダンジョンマスターか!」
「その通り。貴殿らも知っているだろう? 捕らわれたダンマスが奴隷とされ、貴族たちにより玩具のような扱いを受けていることを」
「…………」
グラップさんが問い掛けると苦し気な表情で黙っちゃった。
「沈黙は肯定とみなす。我々はその現実を変えるため行動を起こしたのだ。もしも冒険者ギルドが帝国と組むのなら容赦はしない。……さぁどうする? 何もせず中立をつくか、それとも今ここで血を流すか。さぁ答えてもらおうか」
低い声で威圧すグラップさん。
凄く様になってるんだけど、カンペをチラチラと見ながらはどうなのかな……。
相手のギルマスが気付いてなさそうなのが幸いだよ。
「……分かった。この街の冒険者ギルドはお前たちに危害を加えない。衛兵から依頼された討伐依頼も取り下げよう。だが他の街は知らんぞ? 俺の権限が及ぶのはこの街だけだ」
「フッ、それで構わない。ギルマスの英断を歓迎しよう」
これでこの街の冒険者ギルドは敵対してこないらしい。
但し、逆にチャンスと捉えて襲いかかる冒険者も居るらしく、そこまでは制御できないんだって。
それなら襲ってきた人たちには悪いけど、殺しちゃうしかないよね。
「む? どうやら領主の邸を落としたようだ。捕らわれていたダンマスが1人いたらしい」
コボルトの視点で見たグラップさんからの朗報だ。
「ならあたし達も奴隷商を回って解放しなきゃだね!」
「うむ」
「ちなみに~、奴隷商はどちらに~?」
「…………」ヒラ
ギルマスに尋ねると、街の地図を寄越してきた。
「赤い丸で囲ってるのが奴隷商だ。この街の奴隷商はすべて闇ギルドと繋がってると聞く。できることなら潰してくれると助かるんだが」
「お安い御用だ。奴らに付きまとわれても困るし、徹底的に潰すとしよう。但し……」
「闇ギルドの構成員は~、死んでしまうかもしれません~♪」
「「「どうぞどうぞ!」」」
そんな流れで捕らわれのダンマスを助けるため、闇ギルドを潰すことになったよ。




