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仮面の少女再び

「街はっけ~ん! どうするアイリ?」


 グラップと別れてから帝都に向けて飛び立って数分。早くもセリーヌが別の街を発見した。

 

「もちろん潰すわ」

「ちょ! まだギアⅢや研究機関があるとは決まってないのに物騒すぎ!」

「物騒も何も帝国に対して喧嘩売ってるんだから今さらよ――フレイムキャノン!」


 ドゴォォォン!


 セリーヌの言葉を聞き流し、上空から家屋に目掛けて撃ち込でやった。

 のどかな真っ昼間に突然の爆音を受け、住民らは右往左往し始める。


「あ~らら。犠牲者とか出てなきゃいいけどねぇ」

「それは大丈夫。無人の家屋を狙ったから。それよりほら、ギアⅢのお出ましよ」


 近くに配備されてたのか、さっそく一体のギアⅢがガシンガシンと接近してきた。


「敵影なし。すでに現場から逃走し――」

「こっちよポンコツ!」


 ドガッッッシャーーーン!


「ヒィィィィィィ!?」

「あ、あのギアⅢが壊された!?」

「コ、コイツはやべぇ、やべぇよコイツゥゥゥ!」


 着地と同時に剣を振り下ろし、頭部から叩き潰した。

 目撃した人たちは顔を青ざめさせ、散り散りになって逃走していく。


「さ、他のギアⅢを壊しに行きましょ」

「壊すのはいいけど~、そのうち冒険者ギルドに依頼されるんじゃない? 金に目が眩んだ冒険者がドド~っと押し寄せたりして」


 あ~、それもあり得るか。


「ま、その時はその時よ。死なない程度に撃退してやればいいわ。例え世界中を敵に回してでもダンマス舐めんな運動は続けるから」

「運動って言うよりゲリラ活動よね……」


 それだけ許されざる事をしてるのよ。今のプラーガ帝国はね。いや、昔からって言った方がいいのかな?


「あ、ギアⅢはっけ~ん! 北から3体来るよ~」

「どれどれ……あ、上手い具合に3体固まってるじゃない。いっけぇ――フレイムボム!」


 ドォォォン!


 これで4体撃破っと。

 他は……



 フィキーーーーーーン!


「グッ……この感じ!」


 あの忌々(いまいま)しい金髪仮面少女が時間を止めたのよ!

 現にセリーヌは大破したギアⅢを指して固まってるし、スズメの集団も静止したまま。


「…………」


 間違いなく近くに居る……そう思い神経を研ぎ澄ますも、気配がまったく感じられない。


 ガシンガシンガシン……


「この音……」


 何処からか聴こえる機械音。まさかギアⅢが動いてる!? これはいったい――



 ドガァッ――――ズズゥゥゥン!


 崩れた家屋を突き破り、地上へと出てきたギアⅢ。コイツ、地下に潜んでたのね。

 動ける理由は知らないけど、コイツを破壊してから仮面少女を――



「敵を捕捉。直ちに掃討にかかる」

「え!?」


 ドシュゥゥゥゥゥゥ!


「あっっっぶな!」


 頭部から放たれた光線を辛うじて避ける。

 さっきのやつは上空にいた私に気付かなかったのに、まさか仮面少女の影響?


「ま、壊してしまえばどうでもいいわね――フレイムキャノン!」


 ドォォォン!


 これでよし。早く仮面少女を捜さな――



「シールド展開中。機体の損傷2%。掃討作戦への影響なし」

「なっ!?」


 あの魔法を食らって平然としている!? 他のギアⅢとは別物じゃない!

 コイツの周囲を覆っている白いガラスのようなシールドが強力なのね。


「長期戦は危険と判断。早期決着のためドローフィールドを展開する」


 ザ……ザーザー……ザザザザ……


「くっ!?」


 ギアⅢを中心に白黒に変化した空間が広がり、それに触れた瞬間妙なノイズが頭を駆け巡る!


「な、何なのよこれ? 徐々に身体が重くなってくじゃない。ミルドの加護はステータス異常を防ぐはずなのに……」


 ギアⅢから距離を取り、自身のステータスを確認する。


 名前:アイリ 状態:正常

 備考:滞在しているドローフィールドは、あらゆる生命体から魔力を吸収する。早期離脱しなければ危険。


「嘘! 魔力を吸収してるって!?」


 大半の生き物は魔力を失うと気絶してしまう。

 ダルさは魔力喪失によるもの! なら迷ってる隙はない!


「くたばれポンコツ――ロイヤルヒートブラストォォォ!」


 ドズゥゥゥゥゥゥ!


 掌から放った細く赤い光がシールドを突き破り、黒塗りの胴体を貫いた。

 ダメージにより空間維持ができなくなったのか、白黒の背景が元に戻っていく。

 さっすが一点集中型の熱光線ね。またスキルを使われないうちに一気に決めよう。


「これでトドメよ――イグニスノヴァ!」


 ドッッッゴォォォォォォン!


 半径十数メートルにある建物を巻き込んでギアⅢを炎上させた。


「機体炎上、制御不能! 制御不能! 制御……不能……セイギョォ……フノォォ……」


 炎上が収まると、赤く光っていた両目が消灯し完全に動かなくなる。


「フン、ザマァみなさい!」


 ポンコツが私に勝とうなんて5000年早いわ――――っと、そんな事より仮面少女よ。


「居るのはわかってるのよ。出てきなさい、自称神の仮面少女!」



「あ~やっぱりバレてたか」


 いつから居たのか、ギアⅢの残骸の上に例の仮面少女が立っていた。

 バレたという割には悔しそうな口調とはかけ離れているし、相変わらず何を考えてるのか分からない。


「いったいどういうつもり? 時間を止めた上にギアⅢにまで工作して」

「どう――って言われてもねぇ。前にも言った通り、この世界へのテコ入れってやつ? 衰退から脱却させるために強化してみたのよ」

「ふ~~~ん……」



「嘘ね」

「……なぜそう思う?」

「そんなの決まってるわ。どう見たって私を邪魔してるようにしか見えないもの。それに衰退から脱却させるなら、野心家の皇帝がいる帝国より周辺諸国に助力すべきよ」


 ギアⅢはCランクの魔物と同等の強さと言われてて、その矛先が他国に向かないとは限らない。

 まぁ言い換えると帝国を救済する必要は無いってことね。


「さぁどうなの? そろそろ敵か味方かハッキリして欲しいんだけど」

「その二択なら敵になっちゃうわ」

「よし分かった――フレイムキャノン!」

「ちょ!?」


 ドゴォォォン!


「――ッぶな! いきなり何すんのよ!」

「敵相手にいきなりもクソもあるか! 潔くくたばりなさい!」


 ガキィィィン!


「ア、アンタねぇ、仮にも何度か協力してあげてんのに首狙って剣振ってくる!?」

「それはそれ、これはこれよ。だいたい何だって敵の私に協力したわけ? この世界へのテコ入れだけなら私とかかわる必要なんてこれっぽっちもなかったじゃない」

「そ、それは……」


 返答に困ったってことは、テコ入れそのものが嘘って可能性が高いわね。


「どうなのよ自称神? こうして剣を交えてると実力は大して変わらないようだし、何だったら私が神を名乗っても――」

「それはダメッ!」


 ググググ…………キィン!


 クッ! いきなり激昂して力任せに弾いてきた。


「神は私、アンタじゃない! いい? 絶対に神なんか名乗ってはダメ!」

「何でアンタに指図されなきゃ――」

「何でもいいのよ! アンタは一般人であって神なんかじゃないの。神は私! 選ばれたのは私なんだから!」


 これまでと違い、ここまで凄い剣幕で捲し立ててきたのは初めてね。


「で、誰に選ばれたって?」

「…………」


 これも言えない――と。

 でも……


「深い事情がありそうね。でも教えてくれないなら忠告を聞くわけには――」

「……ミラよ」

「え?」

「私の名前」


 ああ、そういえば聞いてなかったっけ。


「理由は言えない。名前だけは教えてあげる」

「いや、名前だけ教えられても……」

「いずれ必ず話すわ。だけど今はこれが限界。じゃあね」


 シュン!


「あ、ちょっと!」


 また転移で逃げられたか……。


(神は私、選ばれたのは私)


 分からない中でも、あのミラって子が神に拘ってるのが分かるわね。

 神っていうのがキーワードか。



「あれ? いつの間にかもう一体倒しちゃったんだ。さっすがアイリね~!」


 ミラが居なくなったことでセリーヌが動き出し、手こずったギアⅢを指して叫ぶ。


「手強い相手だったけどね」

「え~?」


 ま、セリーヌはミラを知らないから仕方ないか。

 うん。ミラの件は後回しにして、街にある研究機関を潰して――


「! この感じ!」

「え、なになに!?」


 GA(ジーエー)に似たパターンの反応が付近の上空から感じる!

 方向は……


「こっちね!」

「ちょ、ちょっとアイリ、ここの研究機関はどうす――おぅえ!」

「いいから行くわよ!」


 ったく、次から次へと忙しい。

 今は感知したGAっぽい反応を追うため、セリーヌの首をひっ掴んで飛び立った。

 研究機関は後回しよ。


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