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誘われしダンジョンマスター・未来紀行  作者: 北のシロクマ
第6章:プラーガ帝国のダンマス
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再戦、舌先のシュノーゼ

『オーーーッホッホッホッホッ! 逃げずによく現れましたわね? その勇気だけは認めて差し上げますわ』


 物凄くデジャブを感じる高笑いをモニター越しに晒しているのは、ご存知の通りシュノーゼさん。

 やるなら早い方がいいし、GAを撃退した直後にバトルを行う流れになったんだよ。


『ですがその勇気も無駄になることでしょう。なぜなら、貴女は敗北するのですから!』


 今回のバトルは眷属同士の1体1で行う事となり、指定ランクはBランク以下。

 当然あたしはデザートイーグルのグルースさんを出すよ。


『そもそもの話、わたくしが貴女ごときに敗れるのが何かの間違いであり――って、聞いておりますの?』


 おっといけない。またまたシュノーゼさんを放置したままだった。


『え~と……好きな動物の話だっけ? あたしは犬が好きかな~』

『そうなんですの? わたくしはハリネズミですわね。あのハリが足のツボを刺激して――ってどうしてバトルと無関係な話をしておりますの! さてはわたくしを混乱させようとしてますわね!?』

『え? 動物の話をすると混乱するの!? それとも犬アレルギーだった!?』

『ムッキィィィ! そうやってまたバカにして! いいでしょう。今度こそケチョンケチョンにしてあげますわ!』


 そう言って出してきたのは例のごとくCランクのデンジャーグレムリン。

 あたしが出す眷属はすでに決まっている。

 出すのはもちろん――


「グルースさんお願い」

「フッ、任せろ」


 お気に入りの拳銃を腰に掛けると、意気揚々とコアルームを後にした。

 多分負けはしないと思うんだけど……。



★★★★★



『ムッキィィィィィィ! Bランクの魔物を眷属にしてるなんて卑怯ですわ! それではわたくしに勝ち目がないではありませんか!』


 ……とまぁ猛烈に悔しがるシュノーゼさんを見て分かるように、結果はグルースさんの圧勝だった。

 だって破壊光線(デストレイザー)を食らう前に銃撃しちゃったからね。


『さてシュノーゼ殿。分かっていると思いますが、こちらの質問に答えてもらいますよ?』

『クッ……仕方ありません。約束通り、スリーサイズ以外ならお答えしましょう』


 あ、そういえば質問する内容を考えてなっかったよ。


「誰かシュノーゼさんに聞きたい事とかある?」

「ねぇよ。そんなオバサンに興味なんかねぇし」

「ちょ、聖徳(しょうとく)さん、そんな事言ったら――」

『聴こえてんぞクソガキャア! 誰がオバサンで三十路オーバーキルだゴルァ!』


 シュノーゼさんって30越えてたんだ……。

 そういえば化粧が濃いような……いや、これ以上はやめとこう。


「マスター。俺でよければ質問させてもらえないだろうか」

「グルースさんが?」

「ああ。ダラスの眷属がどこに居るかを知りたいんだ」


 ダラスと言えば、プラーガ帝国の貴族によって、奴隷として扱われていたダンジョンマスターだよ。

 やむ無くダンジョンで殺しちゃったから、せめて遺言くらいは叶えてあげたい。


『シュノーゼさん。この前攻め込んできたダラスっていうダンジョンマスターなんだけど、眷属にクインっていう犬獣人の女の子が居たはずなんだ。今どこに居るか知ってる? 生きているなら救出したいんだ』

『……眷属を?』


 眷属を救出すると言った途端、シュノーゼさんは表情を曇らせる。

 それは徐々に苦痛に満ちた顔へと変化していき、ついには恐る恐ると言った感じの視線を向けてくると……


『…………まさか貴女たち、本気で帝国と戦う気なんですの?』

『へ? そりゃ戦うことになるとは思――』

『ダンジョンマスターの多くは己の眷属や眷族を人質にされてますの。それを突き止められて困るのはプラーガ帝国です。もしそうなれば貴女たちは永久にプラーガ帝国の敵となり、死ぬまで狙われ続ける事になりますよ?』


 現状はすでに帝国に狙われるんだし、時既に遅し――だよねぇ。


『攻めてくるなら撃退するよ。だから居場所を教えて』

『……やむを得ません。約束ですし、お教えしましょう。わたくしのように使役しているダンマスの眷属は、一律で帝都の研究機関に預けられてますの』


 研究機関……その響きだけでも嫌な感じがしてくる。


『ギア(スリー)をご存知でしょう? あの兵器も研究機関が挙げた成果であり、尚も研究は進んでいる。捕えた眷属は、兵器開発の実験台にされているという噂もありますわ』

『ありますわ――ってオバサンよぉ、アンタの眷属も実験台にされてるって事じゃねぇか。いいのかよそれ?』

『誰がオバサ――コホン。もちろん良くはありませんわ。けれど逆らったところでどうにもなりません。我々が奪われたのは眷属だけではないのですから』


 そう言って(えり)を広げ、首に付けられている奴隷の眷属を見せてきた。

 

『見ての通り自由すら奪われた我々は、帝国の手駒として生きるしかありません。それでも考えを改めないのなら、多くのダンマスが敵となります。当然多くの血も流れるでしょう。それでも生きる自信があるのなら――』

 

 わざとしく一呼吸置くと、まっすぐあたしに視線を合わせ……


『帝国の全戦力が相手になりましょう』


 プチュン!


 その言葉を残して通信が切られる。

 最後に見たシュノーゼさんの表情。あの顔は全てを悟った悲しい顔をしていた。

 丸で自分が死ぬ未来を予知したかのように。


「みんな、聞いて!」


 あたしはみんなへと振り向き、思った事を口に出す。


「あたし、プラーガ帝国に行ってくる!」



★★★★★



 それからは早かった。

 善は急げじゃないけれど、その日の夜にはセレンさんを伴ってダンジョンを飛び出してたんだもの。


「夜風が気持ちいいね~」

「あ、あの~セレンさん。できればもう少しスピードを落としてくれるとありがたいんだけれど……」

「そ~お? これでもだいぶ落としてるんだけど」

「左様で御座いますか……」


 人化を解いたセレンさんの背中に乗り、プラーガ帝国へと向かうあたし。

 落ちないように必死にしがみつき、遥か先に見えてくるであろう帝国領を睨む。

 目的はもちろん、クインという女の子――及び他のダンマスの眷属たちを解放するため。


「それにしても、みんなよく反対しなったね~」

「うん。セレンさんを護衛にするって言ったら、一発でOKだったよ」


 SS(ダブル)ランクのセレンさんを負かす相手なんて早々いないし、仮にGA(ジーエー)RU(アールユー)と遭遇しても返り討ちにする自信はある。

 ――って、セレンさんが言ってた。

 うん、戦うのはあたしじゃないし、自信があるかと聞かれたら凄く不安ですとしか言いようがない。


「ところでセレンさん。口調がいつもより普通に感じるんですけど?」

「あら、いつもの私は普通じゃないって?」

「い、いえ、そういう意味では――」

「フフ、怒らないから大丈夫よ。ただね、5000年も経てば口調も変わるのよ。毎回あんなかったるい喋り方なんかしてられないし。あ、これアイリちゃんには内緒よ?」


 サラッと爆弾発言を!?

 

「でもなんであたしの前では普通に? アイリちゃんにバレても特に何もないような……」

「まぁいろいろあるのよ。沈黙の(サイレント)美女(アフロディア)にもね」


 う~ん、よく分かんないから聞かなかった事にしよっと。


「ミラクルちゃん、そろそろリップコールの街に着くわ」

「速っ! まだ10分程度しか経ってないのに!?」

「フフ、その辺の鳥頭と一緒にされちゃ困るわ」


 何故だろう。鳥頭と聞くと、不思議と()()()を連想しちゃうのは……。


~~~~~


「へっきしょい!」

「む? ホークよ、風邪でも引いたで御座るか?」

「いや、至って健康や。多分やが、誰かがカッコいいワイの噂をしとるんやろなぁ」


~~~~~


 ――なぁんて思ってたりして。


「あら? リップコールってば、しばらく見ないうちに随分とボロっちくなったわね」


 見えてきたリップコールの街は既に半壊状態にあった。

 防壁の一部には大穴が開いていて、そこから中心部にかけて幾つもの家屋が燃え上がっているのが見える。

 遠目からだと灯りに見えたのが、実は炎上した建物だったなんて……。


「何があったんでしょうね……」

「あ~誰かが戦ったのね。ほら、見覚えのある兵器が転がってるでしょう?」

「あっ!」


 よく見れば戦闘兵器のギアⅢがあちこちに転がっていて、少なくともCランクの魔物を圧倒する誰かがやったんだと分かる。


「ま、まさかGAやRUがこの街に……」

「いや、それは考え難いわ。あの連中は雑魚に興味を示さないんだもの。むしろ身近な存在がやったとは思わない?」

「……身近な?」

「よく燃えたみたいだし、火魔法が得意な誰かさんじゃないかな~♪」


 火魔法が得意な……あっ!


「そっか、アイリちゃん!」


 ともかく、コレをやったのがアイリちゃんならまだ街にいるかもしれない。

 そう考えたあたし達は、無人になっている防壁を越えて街の中へと降り立った。


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