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誘われしダンジョンマスター・未来紀行  作者: 北のシロクマ
第6章:プラーガ帝国のダンマス
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ダンマスの解放

 時はミラクルとセレンが到着する数時間前まで(さかのぼ)る。

 リップコールの街ではいつもと変わらぬ昼下がりを向かえた――かに見えたが、この日だけは違った。

 その理由はただ一つ。そこらのダンマスとは比べ物にならないほど強いアイリが、すっかりお供と化したセリーヌを連れて現れた事だ。



「おお! まだ若いのにAランクの冒険者なのか!?」


 私のギルドカードを見た門番が驚きの声をあげ、背後に並ぶ入場待ちの人たちまでがザワつき始める。


「そんなに珍しいですか?」

「もちろんだとも! Aランクと言えば、年期が入ったオッサン連中と相場は決まってるんだ。お前を見たところで誰もAランクとは思うまい」


 そりゃオッサン扱いは御免だし、ランクは気にしてほしくはないかな。


「ププ! オッサンの中に一人だけアイリが混ざってるのを想像し――おぅえ!」

「下らない事を想像しないように」

「ぢょ、わがっだがらグビがじまるぅぅぅ」


 ……ったく。セリーヌはロクなこと言わないわねぇ。


「よし、続いてダンマス検査だ。この水晶に触れてくれ」

「……何これ?」

「ダンジョンマスターかどうかを調べるアイテムだ。ダンマスがこいつに触れるとな、激しい光を放つんだと。俺は見たことないから本当かどうかは知らんがな」


 門番が持ち出してきたのは、ボーリング玉サイズの白い水晶。

 これに触れなきゃ通れないらしい。


「そもそも何だってダンジョンマスターを調べてるんです?」

「ん? なんだ、知らんのか。今プラーガ帝国じゃダンマス狩りが流行っててな、生け捕りにしてから使役するってのが貴族のトレンドなのさ。ま、こんなところにダンマスが彷徨(うろつ)いてるとは思わんが」


 ……腹立たしい――実に腹立たしい。

 これじゃまるでダンマスが珍獣扱いじゃない。

 ここは一つダンマス代表して、ガツンと知らしめてやらなきゃ。


「ね、ねぇ、どうするアイリ? 触ったらバレちゃうよ?」

「大丈夫よ。まぁ見てなさい」


 耳元で(ささや)くセリーヌを安心させ、ソッと水晶に――と、その前に……


「あの~、一つ聞きたいんですが、兵士の皆さんもダンマスは使役する対象だと思ってたりします?」

「そりゃそうさ。より優秀なダンマスを手元に置くのが貴族のステータスだからな。最近だと豪商も抱えてやがるし、噂じゃダンマスに戦わせてる傭兵団もいるんだとよ。俺も一人くらい欲しいぜ」


 門番と同意見らしく、後ろに並んでる連中もウンウンと頷く。

 どうやら国ごと腐ってるらしい。


「そうですか。大変参考になりました」


 フィキーーーン!


「え……す、水晶……え?」


 どうやら効果は本物らしく、私が水晶に触れると激しい光りを放ち出した。

 初めて見た門番は口をポカンと開けて間抜け面を晒し、後ろの連中はザワザワと騒ぎ始める。


「良かったわね、初めてお目にかかれて。記念にプレゼントを受け取ってちょうだい――フレイムキャノン!」


 ドゴォォォォォォン!


「うおっ!?」


 挨拶代わりに門の横っちょの防壁を破壊してやった。


「ななな、なんだコイツ! 化け物か!?」

「間違いなく化け物だぁ! ダンジョンマスターが化けて出たぞぉぉぉ!」

「ひぃぃぃ、お助けをーーーっ!」


 あらら。せっかくノーチェックで出入りできるようにしてあげたのに、後ろの連中は散り散りになって逃げちゃったわ。


 グィッ!


「ヒッ!?」

「アンタ、いろいろと知ってそうだから答えなさい。この街に捕えたダンマスはいる?」

「そそそ、それなら領主が一人()()()いるはずだ。見世物小屋で魔物ショーをやらせたりしてるのを見たぜ」


 ダンマスを飼っている――ねぇ。

 しかも見世物小屋とか、これは領主も血祭りにあげる必要がある。


「……で、そのふざけた領主はどこにいるわけ?」

「そ、それなら街の中央に陣取ってるデカい建物が領主の邸だ。けど今は帝都に詰めてるはずだから、代官しか居な――」

「分かった、もういいわ」


 ドゴォ――――ズダン!


「グェ……」


 門番を殴り付けると防壁へとめり込み、白目を向いて気絶した。


「情報提供を考慮して、このくらいで許してあげる。生きてるだけ感謝しなさい」


 但し、目が覚めたら街が変わり果ててるだろうけどね。


「敵はっけ~ん! アイリ、正面の中央通りから兵士が押し寄せてくるよ」

「まとめて焼き払うから、セリーヌはそのまま上空で待機」

「ラジャ~♪」


 じゃあ改めて街の皆さんにご挨拶しときましょ。


「スプラッシュファイヤーボール!」


 ドドドドドドォォォ!


「「ぐわぁぁぁ!」」」

「気を付けろ、魔法士がいやがる!」

「ダメだ、半数が殺られた!」

「それどころじゃねぇ! 建物が倒壊する!」


 兵士に続き、火球を撃ち込んだ建物が次々と倒れていく。

 もはや戦闘どころじゃなくなり、逃げ惑う住民と兵士、加えて倒れた家屋に道を塞がれ、辺りは大パニックとなった。


「うっわ~、相変わらず容赦ないわ……」

「仕方ないじゃない。悪いのはこの国の連中なんだし」

「頑固な人って大抵そう言うよね……」

「頑固で結構。ほら、代官のいる邸に行きましょ」


 ダンマスにも善人悪人はいる。

 けれど全てを奴隷として見世物にされちゃ、私だって黙ってはいられない。


「アレが領主の邸ね」


 上空から邸を見下ろし、アイテムボックスから拡声器を取り出す。


「あーあー、テステス……コホン。邸にいる代官に告ぐ。無駄な抵抗はやめて邸から出てきなさい。10分以内に出てこなければ戦闘の意思があるものと受け取り、東門と同じように邸を吹き飛ばす。巻き添えを食らいたくないものは、今すぐ邸から逃げるように!」


 すでに東門での騒ぎが伝わってるらしく、数分後には兵士と使用人が大慌てで逃げ出していく。

 それを見た兵士長や執事が怒鳴り声をあげ、必死に静めようとしていた。


「しょうがない。ちょっとサービスしちゃおっか――ファイヤーボール!」


 ボボン!


「「グワァ!」」


 これでよし。

 うるさいのが居なくなったし、逃げやすくなったでしょ。


「それって誰に対するサービス?」

「逃げ出したい人に向けたサービスよ」

「響きが世捨て人っぽいんだけど……」

「代官に逆らうんだから間違いでもないでしょ」

「あ、はい……」


 代官の反応次第じゃしばらく領主が不在になるしね。

 あ、もちろん私が面倒を見るなんて御免よ? 領主に従ってる時点で代官も街の連中も同罪だし――って、そういえば代官が出てこないわね?

 どうやら立て籠る――ん? あれは……


「ねぇアイリ、アレってコボルトじゃない?」

「うん、コボルトで間違いないわ。でも何だって邸から――あ、まさか!」


 飼ってるダンマスが居るって門番が言ってたわね? もしかしなくても奴隷のダンマスが命令されてやってるのね。


「邸の中にダンマスが居るっぽい。どうせ奴隷だろうし、ついでだから解放してあげよう」

「え? 奴隷を解放なんて簡単にできるわけじゃ――って、待ってよアイリ~!」


 コボルトの弓矢を回避して邸の屋根をブチ壊し、地下まで貫通して着地した。奴隷なら地下に居るだろうと思ってね。

 そして案の定、驚愕(きょうがく)の表情で私を見る渋いオッサンが目の前に。

 更にオッサンを盾して震えている代官のジジイまでいる。


「腐女子が泣いて喜びそうなシチュよね~」

「誰も泣かないし喜ばないわよ。だいたいフジョシって何?」

「あれ? アイリなら知ってると思ったのに」


 知ったら後悔しそうだし、敢えて調べないからね?


「おおおおおいグラップ、はははは早くその小娘ををををを、始末せんかぁぁぁぁぁぁ」

「…………」


 代官に命じられグラップというダンマスが無言で頷き、10体ほどのコボルトを召喚した。


「面倒ね。セリーヌ、お願い」

「は~い。ちょっとばかし眠っててね~」


 コボルトが動き出す前にセリーヌの睡眠魔法で眠らせた。

 後ろの二人も眠ったところで、グラップの首に付けられた奴隷の首輪にソッと触れる。


 パキーーーン!


「わーお! 奴隷の首輪を壊すとか、アイリってばダイタ~ン♪」

「神の加護がある私じゃないとできない方法だけどね」


 これでグラップは自由の身となった。

 何故助けたかというと、ちょっと良い事を思いついたからよ。


 ペチペチ!


「起きて、グラップ」

「起っきろ~♪」


 さっそく話をするため、頬をペチペチやって起こしてみる。


「…………うぅ……ん? んおっ!?」

「はいはい落ち着いて。貴方が暴れたりしなければ危害は加えないから」

「し、しかし、奴隷の俺には代官の命令に逆らうという選択肢は――」

「貴方はもう奴隷じゃないわよ? 首輪だってほら――」

「え……ええ? く、首輪が壊れた!?」


 壊した首輪を目の前にぶら下げてやると、目を丸くして驚かれた。


「言っとくけど壊れたんじゃなく壊したんだからね? そこんとこ間違えないように」

「そ、そうなのか!? 世の中にはキミのような強者がいるのだな」


 神の加護を持つ存在なんて、世界中を探しても一桁だろうけどね。


「さっそくだけど、グラップには解放軍を指揮してもらいたいのよ」

「……解放軍?」

「そ。今からプラーガ帝国は、劇的な変化を遂げることになるわ」


 帝国にいる連中が度肝を抜くような――ね。


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