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誘われしダンジョンマスター・未来紀行  作者: 北のシロクマ
第6章:プラーガ帝国のダンマス
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Sランクの戦い

「エレイン、GA(ジーエー)の様子は?」

「依然として真っ暗な主通路を直進中。障害壁を破壊しながらではありますがスピードは変わらず。間もなくボス部屋に到達すると思われます」


 やっぱり速いや。

 障害壁での消耗が期待できないなら、別の方法でいくしかない。


「エレイン、沿岸エリアで有効そうな罠を教えて」

「こちらをどうぞ。すでにピックアップ済みです」


 ボス部屋に入り2階層への扉を探しているGAの下に、罠の一覧が表示された。

 上から順に目を通していくと……


「落とし穴、砂塵(さじん)、カニバサミ、触手昆布、渦潮(うずしお)、う~んいまいちパッとしない。強いて言えば渦潮だけど……」


 この渦潮という罠は水中に巨大な渦巻きを発生させて、奥深くに引きずりこむアリ地獄のような罠なんだ。

 並の冒険者なら脱出できずにそのまま海底に――って感じになるんだけれど、多分GAなら……


「力業で脱出しそうですね」

「うん」


 かといってブラッシュさんが正面から挑めば勝率は半々。結果負けましたじゃ意味がない。

 やっぱり罠と連動させないと……


「あ~、ちょいとミラクルさんや」

「ムムちゃん?」

「少し気負いすぎなんじゃない? 何でもかんでも一人で抱え込んじゃってさ、もう少し他人を頼ってもいいと思うなぁ」


 そうかな? でもここは()()()()()()()()()だし、あたしが――――あ!


「フフーン、思い当たるフシがあったんだよね? ま、そういう事さ。ここは()()()()()()()()()なんだから、もっとムムたちを頼ること! ――だよね、みんな?」

「賛成ですわ。わたくしにできる事なら何でも言いなさいな」

「俺だって賛成だぜ!」

「僕の階層は突破されそうだが、やれる事はやるつもりだ」

「……zzz」


 そうだった。もう一人じゃないんだから、もっと頼っても良かったんだ。


「ありがとうみんな。あたし一人で暴走するところだったよ」

「うんうん、分かれば宜しい。ほら、人生の大先輩であるムムちゃんに何でも言いなさい。可能な限り叶えてしんぜよう」

「じゃあレミットさんとマリオーネさんも一緒に犬の真似して。久々に見たくなったから」

「うんうん、お安い御用――え?」


 よし、なんだかヤル気が出てきたぞ~。


「な、なぁミラクル。犬の真似ってのはいったい……」

「それはムムちゃんたちを見てたら分かるよ。後でやってくれると思うから」

「お、おぅ……」


 後は渦潮の罠を設置して……




 ドドドォォォン!


「「「!?」」」


 な、なに? モニターから凄い爆音が!


「マスター、GAです! GAがボス部屋全体を炎上させました!」

「ええっ!?」

「隠れているクロコゲ虫が全て燃え尽きたので、すぐにでも2階層に現れるかと」


 しびれを切らした感じかな? いずれにしろ、ブラッシュさんを筆頭に張り切ってもらわなきゃならない。

 あたしは眷属を頼ることにしたからね。



★★★★★



 ボス部屋を突破したGAが、岩陰にある階段から2階層の沿岸エリアに足を踏み入れる。

 蛇行して続く砂浜の左は森、右には海が広がっており、その上空では人化を解いたブラッシュが燦々(さんさん)と降り注ぐ疑似太陽の光を浴びてGAを静かに見下ろしていた。


「来ましたね、アイリーンに牙を剥く不届き者め。ミラクルたんの眷属にしてブラストドラゴン――ブラッシュが相手を致しましょう」

「ブラストドラゴン――」


 値踏みするようにブラッシュを見上げるGAが、瞳を紅く光らせる。

 やがて分析を終え、ブラッシュの情報をボソボソと話し始めた。


「ワールドネーム、ブラストドラゴン。ファミリーネーム、ブラッシュ。Sランクである事を確認」

「ほぉ、よく分かりましたね。ではその情報を冥土の土産に差し上げましょう!」


 ゴォォォォォォ!


 あらゆる生命体を破壊すると言われているブラストブレスをGAに向けて放つ。

 並の存在なら触れただけで消し飛ぶほどであり、例えGAでも無事ではすまない。


 ヒョイ!


「ブレスレベルは脅威的。触れるのは危険と判断した」


 しかし並の存在でないのはGAも同じ。

 素早く飛び上がると、ブラッシュに向けて急接近する。


「糧に相応しいと判断し、捕獲作戦に入る」

「おや、捕獲ですか。僕を生け捕りにしようなど随分と舐めてくれますねぇ!」


 ゴッ――――グ……ググ……ググググ……


 GAの突き出した腕を両手で受け止め、徐々に下へと押し戻す。


「グゥ……脅威レベルの上昇を確認」

「小柄な身にしては中々のようですが、所詮はここまで。このまま海の藻屑にしてあげますよ!」


 更に力を込め、海に叩き落とすか――と思われたその時!


 ドシュウ!


「グハッ!」


 GAがもう片方の手を向け、一直線に延びた黄色い光でブラッシュの胴を貫いた。

 これには堪らず手を引っ込め、血を滴らせながら距離をとる。


「……驚きました。僕の鱗を貫通させたのは、貴女で三人目です」

「致命傷には及ばずながら、少なからずのダメージを確認。作戦を続行する」


 ブラッシュの台詞を無視するように、再び掌を向けるGA。


 ドシュドシュドシュドシュ!


「なんの――と」


 先ほどと同じ黄色の光線を連発してくるが、二の舞は御免とばかりにブラッシュは大きく上昇することで回避した。


「せっかくお誉めしたのにスルーですか。これだから木偶(でく)は嫌なんですよ。なんらかの反応があれば可愛げがあるものを」

「……では誉めて差し上げます。貴方は類を見ない()()。とても感心させられる()()です。この世界でも三本の指に入るくらいの()()だと言わせていただきます」

「ほぅ、そうきましたか……」


 アイリと戦った際に強い生命体=アホという認識を持ったため、ブラッシュに対してもアホと言い放った。

 もちろんGAは素直に誉めたつもりなのだが、そうは受け取るはずもなく……


「貴女に誉める気がないのはよ~~~く分かりました。僕を挑発したことを後悔させましょう――フッ!」


 ボゥ!


 吐き出したブレスが無数の粒となり、GAの周りを取り囲む。


「……ブレス?」

「ただのブレスではありません。どんなものかは身を持ってご体感を」


 ブラッシュがニヤリと笑うと、囲んでいた粒が一気にGAへと殺到する!


 ガガガガガガガッ!


「グ――ガハッ――ゴフッ!」

「どうです? 僕のブレスは直線に延びるだけではありませんからねぇ」


 途中から爆炎で見えなくなり、注意深く様子を(うかが)う。

 ブレスをまともに食らったも同然であるため、かなりのダメージになっているはず。

 そう考えてるうちに爆炎が晴れると、思わず目を見開くことに!


「ヤツが――いない!?」


 居たはずのGAが見当たらず、咄嗟(とっさ)に気配を探りだす。


(深傷を負って逃げた? ――に、してはミラクルたんからの念話は聴こえない。もしも離脱したのなら伝えてくるはず。ならば、近くにいるのは確実!)


 尚も注意深く探るブラッシュ。

 すると巨大なエネルギー反応を頭上に感じ取り……


「ん? 上から――しまった!」



 シュ――――ドゴォォォォォォン!


「ぐおぉぉぉぉぉぉ!?」


 黄色の巨大な球体がブラッシュに命中し、半径10数メートルに渡たり爆発炎上する。

 ブラッシュも火ダルマとなり、堪らず海へと飛び込む。


 ドボーーーン!


「アッツツツツツ! ここまで大火傷を負ったのは久々です。間違ってバハムートの巣に入り込んでしまった時以来ですよ」

「まだ生きているのに驚いた。これは大変貴重なアホ。是が非でも捕獲したい」

「またアホと罵りましたね!? ここを貴女の墓場にしてあげましょう!」


 上空に姿を現したGAにブラッシュが突撃していく。


 ガシィィィ!


「さぁ、捕まえましたよ? 今度こそ覚悟してもらいます」

「否、両手を使って組み合っているだけであり、拘束とはほど遠いと言えます」

「フフ、そう思いますか? 残念ながら、貴女の動きを止めるのが目的なのですよ」

「? それはどういう――」

「こういう事じゃい!」


 どういう意味かと問いかけた途中で、上からワグマが降ってきた。

 グルースが密かに真上へと運んだのである。


「ゆくぞぉ――パワーストライクじゃい!」


 ドゴォ!


「グフッ!」


 ハンマーナックルをモロに受け、そのまま海中へと消えていく。

 ワグマはAランクでありながらも、力だけならSランクに匹敵するのだ。


 ドボーーーン!


 先ほどとは真逆にブラッシュが見下ろす形となった。

 背中にはワグマが乗っており、スクワットを始めつつ同じく海を見下ろしている。


 ズオォォォォォォ!


「む? これは……」

「おお、見事な渦潮じゃい! マスターが罠を発動させたのじゃろう」


 ワグマの言う通り、これはミラクルが発動させたものであり、巨大な渦潮がGAを海底へと沈める。

 さすがにこれだと戻っては来れない――だが脅威はすでに発生していた!


 ズオォォォォォォ…………ドシュゥゥゥゥゥゥ!


「何!?」

「なんぞこれは!?」


 渦潮が急速に逆回転を始めたのだ。

 異常な光景に目を奪われていると、沈んだはずのGAが海中から飛び上がり、逆回転を始めた渦潮を背景にしつつ掌に光を集め……

 

「これ以上の消耗は危険と判断。フルパワーで一気に仕留める」


 ドッッッシュゥゥゥゥゥゥ!


「マズイ!」


 ブラッシュと同等のサイズにまで膨れ上がった球体が勢いよく迫る。

 放たれた球体はこれまでよりも強力で、思わずブラッシュも退避行動に。

 しかし球体は追尾し続け、二人を飲み込もうと覆い被さる!


 ドドドォォォォォォ!


「クゥゥッ!」

「ヌォォォォォォ!」


 このままでは焼け死ぬのは確実。

 GAも勝利を確信してゆっくりと接近を始める――が、ここで思いもよらない現象が!



 ピシッ!


 まるで全ての生命体が停止したかのように音が遮断され、炎上中の炎までもが動きを止める。

 ブラッシュもワグマもGAも、何事かと周囲を見渡し、直後に聞き慣れない音声が聴こえてきた。


『ダンジョンバトルの申請を受理。只今よりダンジョンマスターに認められない者は、フィールドへの強制転移を行います』


「グ、身体が――」


 プチュン!


 間一髪でGAを外へと放り出した。

 放ってきたスキルも一緒のため、辛うじて二人は難を逃れることに。


『みんな大丈夫!? ケガはない!?』

『おお、ミラクルたん! 今回は助けられましたよ』

『うむ。危ないところだったのぅ』

『我々は無事だ。これもマスターによる采配のお陰だな』


 実はいつでもダンジョンバトルを始めれるよにスタンバイしていたのだ。

 ダンジョンバトルが始まってしまえば、GAは強制的に外へと放り出されるのだから。


『どうやら無事みたいだね。ピンチを切り抜けられてよかったよ』


 危機は去った。

 しかしGAという兵器に苦戦したのは事実であり、今後の課題となりそうだ。


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