GA急襲
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「え、また警報?」
「そのようですね」
エレインと顔を見合せると、すぐにモニターを操作する。
映像として現れたのは、小型で白い人形兵器のようなものが黒塗りの物体の上で浮遊している姿だった。
「な、なんですのアレは? 黒色の物体がオジャンになってますわ」
「潰れているのは、ギアⅢという帝国の戦闘兵器だ。噂ではCランクの魔物と同等の強さらしいが、実際に見るのは初めてだな」
プラーガ帝国に詳しい幻王さんによると、そのギアⅢという兵器を使ってダンジョンを攻略してるんじゃないか――だって。
「いや、ギアⅢよりも浮いてる兵器の方が問題だろ。Cランクを遥かに凌ぐってことになるんだぜ?」
「うん、聖徳の言う通りだよ。あの白っぽいのが何なのか突き止めなきゃ」
「でもムムちゃん。突き止めるってどうやって?」
「う~ん、アイリがいればチャッチャと鑑定して――あ、そう言えばつい最近アイリから注意喚起されなかった? ギンちゃん経由で」
そう言えばとみんなで一斉に首を捻る。
妙に強い兵器に襲われたとかで、もしもダンジョンに現れたら全力で撃退するようにって内容だったはず。
兵器の特徴は……
「白が基調で……」
「所々が黄色くもなってる――だったよな?」
「小型の人間サイズという話でもあったぞ」
「空を飛べるのでしたわ」
「声が女の子だって聞いたよ」
なんか凄~~~く特徴が一致するような気が……。
あ、でも性別までは分からな――
『これよりダンジョンの探索に移行する』
「「「女の子の声だ!」」」
ヤバイよ! めっちゃヤバイよ!
アイリちゃんが強いって言うくらいなんだから、この前のグレムリンなんかの比じゃないくらい強いに決まってる!
『ブラッシュさん、侵入した白い兵器を足止めして! グルースさんは後退してワグマさんと一緒にブラッシュさんの援護を!』
あたしの切羽詰まった声に只事ではないと感じ、眷属の三人が素早く行動に移す。
「お気をつけください。あの兵器がアイリ様の言っていた輩であれば、Sランクに相当する強さになります」
「「「Sランク!?」」」
つまり、ブラッシュさんと互角……。
「大丈夫なのか? 下手するとブラッシュがやられて……」
「聖徳、滅多なことを言うもんじゃありませんわ!」
「いや、分かっちゃいるが……」
この場にいる全員がモニターを注視する。
そこではブラッシュさんと例の兵器――GAが睨みあいを続けてて、その様子を他の二人が真顔で見守っていた。
「マスター、今のうちに罠を仕掛けるのです。そしてブラッシュたちに誘導させましょう」
「そっか!」
あたしだってダンジョンマスターだもの、テリトリーに侵入した敵は罠を使って撃退しなきゃ!
「エレインは有効な罠をピックアップして!」
「了解です」
罠を選別させてる傍らで、マップをくまなく見渡す。
今の1階層は幻王さんの遺跡タイプのダンジョン。足場は割と良くて、中央の主通路を直進するとあっという間にボス部屋に到達されちゃう。
走り難くするためにスライムで足を取らせる? いや、足場が悪くても飛行できるなら一緒。
なら途中での足止めは諦めて、ボス部屋で迎え撃つ? これもダメ。それだと外で戦うのと変わらないし、地の利を生かせてない。
だったらいっそ、1階層を棄てて2階層で反撃する。
でもその前に……
「幻王さん、なんとかしてGAの気を脇道に向けられない?」
「ふむ……ゴブリンを召喚して挑発させてみるか」
「それでお願い。あ、それから障害壁を主通路に設置して時間を稼いで」
「なるほど。それなら有効そうだ」
障害壁とは、通過しようとした侵入者の前に出現する壁のことで、腕力が低かったり魔法が使えなかったりすると、突破するのはとても難しい。
但し……
「GAなら強行突破してくるだろうけど、少しでも消耗させれば儲けものだよ」
「ああ。さっそくやってみよう」
まずはゴブリンからという事で、脇道の先に召喚してGAに接近させた。
「ギャーギャー!」
「グギャギャギャ!」
「……?」
よし、ゴブリンの方を向いた!
今のうちに……
『眷属のみんな、一旦2階層に転移させるから、指示があるまで待機してて』
『おや、てっきりこのまま開戦かと思ったのですが』
『無理しちゃダメ。ソイツはブラッシュさんと同等の強さだよ? 下手したら殺されちゃうんだから!』
『おぅふ! ミラクルたんの愛情――しかと受け取りました! このブラッシュ、誠心誠意ミラクルたんのため――』
シュン!
何か言ってたけど気にせず転移させた。
後はボス部屋のボスをクロコゲ虫に変更して、部屋のあちこちに隠れてもらう。
このクロコゲ虫というのはGランクの魔物で、小型ですばしっこいのが特徴なんだ。
ボス設定の魔物を倒さないと先には進めないから、これで時間が稼げるはず。
「ミラクル、残念だがゴブリンは瞬殺された。今は障害壁を無理やり壊しながら進んでいるぞ」
幻王さんに言われて視線を戻すと、スライドしてきた壁に対して頭から突っ込んでいくGAの姿が。
思った通り、大した障害とはならないみたい。
「幻王さん、灯りを落として妨害してみて」
「やってみよう」
1階層が暗闇に包まれ一寸先すら見えない状態になった。
GAは光源となる物を身につけてないし、これなら……
『光度が0.12%に変化。直ちに影響はないものとし、探索を続行する』
GAの余裕っぷりに、周りからはため息が漏れる。
目が紅く光ってるし、暗闇を見通せるスキルがあるんだと思う。
「マズイぜミラクル、こうなりゃアイリを呼び戻すしか――」
「それはダメ!」
聖徳さんの案を全力で否定すると、今度はあたしに注目が集まる。
「言ったよね? アイリちゃんに頼ってばかりじゃダメだって。ここはあたし達のダンジョンなんだから、あたし達で守らなきゃ」
「そ、そりゃ分かるけどよ……。でも相手はSランクだぞ? 国一つが――いや、複数の国が滅んだっておかしくないんだ」
「そうですわミラクル。なにも危険を犯してまでバカ正直に挑まなくとも……」
「大丈夫。今回は100%負けないよ?」
「「「えっ!?」」」
驚かれるほどおかしな事は言ってはいないんだけど……。
「マスター、なぜそう言い切れるのですか? かの兵器を前にして、お試し気分で挑でいる余裕は――」
「じゃあエレインだけには教えてあげる。実はね――」
他のみんなには聴こえないように、エレインの耳元でコソコソと囁く。
やがてエレインの顔に理解の色が浮かび、なるほどと感心して掌をポンと叩いた。
「なるほどなるほど、これは盲点でした。マスターらしからぬ発案でしたので、わたくし少々動揺しております」
「ね? 大丈夫でしょ? これなら絶対負けないんだから。ところでどうして動揺するの?」
「い、いえ、なんでもありません! ……コホン。皆様、ご安心ください。我がマスターの言う通り、我々に負けはありません」
エレインが言うと、それならばと任せてくれることに。
なんであたしとエレインで違うんだろ? まぁいいや。
「そこまで言うならミラクルに任せますが、いったいどのような方法で撃退しますの?」
「2階層はあたしの沿岸エリアだから、そこで決着をつけるよ。まぁ見てて」
前のダンジョンバトルではアイリちゃんの武器に頼っちゃったからね。
今度は実力での勝利を目指すよ!




