アレクシス王国再び
「――以上により、わたくしはアレクシス王国の建国を宣言いたします!」
「「「アレクシス王国バンザーイ! ミュールレイク様バンザーイ!」」」
城の修復が進められている最中、ミルクによるアレクシス王国の建国が宣言された。
ようやく内乱が収まるため、貴族平民問わず大歓声が送られる。
長きに渡り辛酸を舐めてきたアレクシス家が、今日という日をもって日向へと躍り出たのよ。
「どうしたの? 辛気臭い顔しちゃって」
「ん……ちょっとね。アレクシス王国はこの世界に転移した当初に関わった国だからね。その国が復活するのは嬉しいって言えるかな?」
「ふ~ん」
「――おぅえ!」
「セリーヌが振ってきたんだから、もっとまともな反応しなさいよ」
「だがらぐびがじまるぅ!」
変にたそがれた私が恥ずかしいじゃない。
「おお、なんと凛々しいお姿。天国にいるお二人にも見せて差し上げたい」
ホールの物陰から見上げるセバスティンが、涙ぐみながらもミルクの姿を目に焼き付けている。
多分これからが大変なんじゃないかな。主に教育面でね……。
「おう、どうよ王女様の姿はよぉ?」
「ハイ。ミュールレイク様ハ大変素晴ラシイ御方デス」
セバスティンの横ではモフモフに小突かれたディーケンス公爵が、緊張した面持ちで答えている。
よく分からないけれど、素直に従うなら問題ないわ。
「ど、どなたかお恵みを……」
そしていつの間にかいた浮浪者みたいな爺さん。
堂々とホールで物乞いするも、誰からも相手にされてないという。
「あの小汚ない爺さんは誰?」
「……部外者。摘まみ出してくる」
よく分からないままペサデロに連行されていく。
城は修復中だし、不審者が入らないように注意させなきゃダメね。
「あ~いいなぁ。女王になったら国中のイケメンを選り取り見取りじゃん? あたしにも1人くらい分けてくれないかな~」
「やめときなさい。これから世界中を回るんだから、現地妻ならぬ現地夫を作ってもしょうがないでしょ」
「世界中? マジ!? 世界旅行にいっちゃう!?」
旅行なんて楽しいものじゃない。
なぜこの世界が衰退しているのか、それを突き止める必要があるのよ。
それこそがあの金髪仮面少女の企みにも繋がるはず。
更に言うと、私がここに召喚されたのにも何か理由が……。
「ねぇねぇねぇねぇ、旅行行くならさ、やっぱ最初は派手に楽しむべきだと思うのよ」
あ~セリーヌに言われると、真剣に考えるのがバカらしくなってくるわね。
ほどほどに楽しむのも有りかな。
「……で、その心は?」
「行き先は、ダンノーラ・レジャーアイランド。これっきゃないって!」
「確か前にも言ってたわね」
ミリオネックの宝物庫で見た資料を脳裏で開き、ダンノーラの情報を引き出していく。
それによると、ここイグリーシアではもっとも進んだ技術大国と言われ、世界中からの観光客で溢れ返るほどらしい。
「旅行だけならダンノーラでいいかもね」
「え? だって旅行でしょ?」
「それだけじゃないって。5000年という空白の時間を埋めるっていう目的があるんだから、他にも回るに決まってるじゃない」
ダンノーラに向かうなら、魔女の森の東側にある国も調べる必要がある。
5000年前はプラーガ帝国という大きな国があったはずだけど……あ、あったあった。今も健在みたい。
まずはプラーガ帝国に行って情報収集してみよう。
「アイリさ~ん!」
あ、ミルクが手を振りながら走ってきた。
いつの間にか演説が終わってたらしい。
「アイリさん。此度のお力添え、まことにありがとう御座います」
「それがしも感謝しておりますぞ、アイリ殿」
「前にも言いましたけど、私の都合だったから気にしないで下さい」
「フフ、前にも言いましたが、それでもです。もしもアイリさんとの出会いがなければ、あのまま隠遁生活を送っていたことでしょう」
どうかしらね? 何か因果みたいなのを感じたし、ひょっとしたら運命だったのかも。
ん? だとすると、金髪仮面少女が暗躍するのも運命――あ~ダメダメ。げんなりするから考えないようにしよう。
「ところでプラーガ帝国がどうとか聞きましたが、そちらに向かわれるのですか?」
「ええ。ちょうど通り道なので」
「ではくれぐれもお気をつけ下さい。かの国はダンジョンマスターを生け捕りにし、無理矢理使役していると聞きます」
ダンマスを生け捕り?
さっそく脳裏で調べてみると、近年では皇帝主導の下ダンマス狩りというふざけた催しが行われていて、隠れ住んでいるダンマスを見つけては捕えるという行為を繰り返しているんだとか。
「遥か昔は異世界から勇者を召喚するという文化があったそうですが、近年ではダンマスに変わったと言ってよいのかもしれませぬ」
セバスティンの言ってる内容は5000年前の事よ。
私にとってはつい最近の事で、皇帝が代わってからは勇者召喚を行わないと言っていた。
何というかまぁ、歴史は繰り返す――って感じなのかな。
「アイリさんの正体に気付いたら、嬉々として襲ってくるに違いありません。私としては近付いてほしくない国なのですが……」
「襲ってきたら返り討ちにするまでです。寧ろ正面から挑んでくれた方が、対処しやすいかな~くらいにして」
「フフ、アイリさんらしい台詞です」
もうね、襲ってきたら冗談抜きで滅ぼすかもしれない。
寧ろ私が嬉々として。
「よし、行き先も決まったし、今から出発しましょ。ミルク様もセバスティンも元気でね」
「はい。アイリさんもお気をつけて」
「無事目的を果たせるよう祈っておりますぞ」
「二人ともじゃあね~~って置いてかないでよアイリ~~~!」
★★★★★
ミルクとセバスティンに別れを告げ、セリーヌと共に東門を出る。
召喚した眷族も元の時代に送還すると、誰も居ないのを確認してから飛行を開始っと。
「あっという間だったね~。入国してから1ヶ月も経たずに内乱を収めた人なんて、歴史上には存在しないんじゃない?」
「でしょうね」
その歴史がスッポリ抜け落ちてるのも事実であって、これから解明していかなきゃならないっていうね。
「歴史の穴埋めか……」
「またその話? ぶっちゃけ思うけど、そんなの埋めたところで何も変わらなくない? それどころか、知りたくなかった真実にブチ当たったりして、ウガーッ! ってなったりとか」
「…………」
知りたくなかった真実……か。無いとは言えない。
謎の兵器に謎の金髪仮面少女。これらの真実を知った時、冷静でいられるかどうか。
「でも隠された真実なら知りたくもなるわよね」
「隠された真実……」
なるほど、抜け落ちてる歴史は覆い隠されている――と。
「可能性はある――ん?」
ちょうど我がダンジョンであるアイリーンを通過したところで、魔物の群が行進しているのを感じ取った。
「どったのアイリ?」
「魔物が集団行動しているのが気になったのよ。まるで誰かが統率しているみたいに」
「あ、噂をすればってヤツじゃない? プラーガ帝国のダンマスがアイリーンを狙ってるとか」
「なるほど。なら――」
それなら確かめてやろうとしたところで思いとどまる。
アイリーンには強力なミラクルの眷属がいる。わたしがしゃしゃり出なくても撃退するのは容易いし、過保護すぎるのも良くないなと。
「このまま進みましょ」
「いいの? いつもみたいにドゴーンてやるものだとばかり」
「いつも暴力を振るっているかのような誤解はやめなさい」
何かあったらギンから知らされるし、それまでは任せておこう。
これにて第5章は終わります。




