閑話:その頃の5000年前
「ひゃっほーーーぅ♪ やっぱジェットコースターは最高だぜ!」
「ちょっと千手、そんなに身を乗り出したら危ないよ?」
「大丈夫だって! レミエマは心配性だなぁ」
貸し切りのジェットコースターを二人のダンマスが堪能する。
これだけじゃなく、今日の遊園地はプライベートで付き合いのある人たちしか呼んでない。
それというのも、普段は多くの一般人でごった返してるアイリーンパークをもっと落ち着いて楽しませてくれという要望があったためよ。
「フン、アイツは相変わらずガキだな。もっと落ち着いて楽しめないものか」
「……アンタがソレを言う?」
「何か問題でもあるのか?」
「何でもないわ。忘れてちょうだい」
さっきからコーヒーカップを必死こいて
回している邪王が何か言ってる。
一緒に乗ってるマリオンが呆れている通り、クールな顔して実はハマってるって感じよねぇ。
というかこのダンマス二人、何気にカップルっぽい雰囲気を感じるのは気のせい?
「……アイリ、一緒にアレをやる」
「いや、アレはちょっと……」
コーヒーカップの二人に触発されたのか、勇者の末裔であるムーシェが指したのは、カップル専用オバケ屋敷。
何が専用なのかというと、出てくるオバケが女性の方を集中的に狙い、それを男性が助けるって感じのシチュエーションを作ってくれるのよ。
「……迫りくるオバケを私が倒す。アイリが私に惚れる。良いこと尽くめ」
「オバケくらい自分で倒すわよ」
「……さすがアイリ。やっぱり婿に欲しい」
「だから婿にはならないっての!」
ったくもう、事あるごとに婿にしようとするんだから。
いい加減ムーシェも諦めてほしい。
「あ、いたいたアイリちゃ~ん!」
「バニラじゃない。久しぶりね」
「うん! 貸し切りで遊べるよってメールで言ってたでしょ? だからホークさんに頼んで連れてきてもらったの」
ラフな格好をしてるけど、バニラことバーミレニラはアレクシス王国の第4王女よ。
とある事件がきっかけで、彼女とはお友達になったのよねぇ。
「……む? アイリ、まさか浮気?」
「こらそこ! 人聞きの悪いこと言わない!」
「え? アイリちゃんって恋人いるの!?」
「いや違うから! ムーシェが勝手に言ってるだけ! そもそもムーシェは女で――」
「このエルフさんが恋人? 初めまして、お友達のバーミレニラです。バニラって呼んでね」
「……初めまして。アイリの嫁でムーシェと言います。ムンムンパラダイスと呼んで」
「……え? ムンムン――」
「はいストップ。ムーシェとは友達だから、勝手に勘違いしないように! 積る話は後にして、二人で遊んでてちょうだい。ほら、あの5人組がライブをやるらしいから」
強引にに打ち切ると、二人をステージの方へと押しやる。
ステージにいるのは、魔法少女を自称する元日本人の転生者にしてダンマスの5人組よ。
語尾にですが多いメイプルに、ボクっ子のシーラ。生意気ツインテールのリゼットに、元ヤンのヒカリ。最後にピンク髪のユーリね。
「皆さ~ん! 元気ですか~!?」
シ~~~ン
「あのねユーリ。観客が10人程度しかいないのに張り切ったってしょうがないでしょ?」
「何を言うのリゼットちゃん。あたし達が客を引き寄せるんだよ? それこそマジカルパワーでチョイョイっと! そんでもってドカーンってね!」
「いや、チョイョイにドカーンって……」
リハーサルをやりたいって言うからステージを貸してあげてるのよ。
まぁ貸し切りじゃなかったら、誰も見向きはしないわね。
「ボク、ユーリの言ってることがよく分からないんだけど……」
「放っておくですシーラ。アレはもう手遅れなのです」
「お、良いこと言うじゃねぇかメイプル。だいたいユーリは考えが古いんだよなぁ」
このまとまりの無さもいつも通りで、ユーリがシラケさせちゃうのがお約束よ。
「いきますよ――マジカルシャワ~~~!」
シラケさせる女――ユーリが一発芸を披露する。
さぁみんなの反応は……
「何よそれ、ただのシャボン玉じゃない」
「リゼット、それ言ったらダメなやつじゃない? ボクもそう思うけどさぁ」
「そういうシーラも声が大きいです」
「引っ込め淫乱ピンク」
「ちょ、誰ですか淫乱ピンクって言ったの! 訂正してください!」
うんうん、いつも通りの光景でなにより。
「お姉様、こちらにいらっしゃいましたか」
右手にソフトクリーム、左手にクレープという二刀流で現れたのは、スイーツ大好きなダンジョンコアにして自動人形を遠隔操作しているアイカ。
これも見慣れた光景ね。
「どうされました? たまり浮かない表情に見えますが」
「ちょっと考え事をしてただけよ」
「なるほど、それなら心配無用です。今日のおやつにいただくスイーツはすでに決まっておりますので、迷う必要はありません」
そんな心配はしてない……。
「スイーツは置いとくとして、こうして周りを見てみるとね。もう1人の私が転移したところは、関わった人物も似通っているな~って」
「ふむ……。言われてみればその通りかもしれません」
レミエマは魔族のダンマスで、どことなくレミットに似てるように見える。
人間のダンマスである千手にしてもそう。種族こそ違えど、赤毛で活発な雰囲気は聖徳に通じるものがあるわ。
「さしづめ邪王は幻王で、マリオンはマリオーネですね」
「その通り」
邪王はダンジョンコアと融合した元ダンマスという特殊な存在だけど、吸血鬼のマリオンはまんまマリオーネよ。
腕組みしてステージを眺めている熊獣人のダンマス――豪血は、どことなくグレイの面影を感じる。
「でしたらお姉様。ステージにいる売れない歌手グループの5人組は、レジェンダ喫茶のウェイトレスにピッタリ当てはまりますね」
「それね」
リゼットとリーゼは髪型も性格もそっくりだし、シーラとシェーラも同じボクっ娘。
メイプルとシュガーはどっちもですです煩いし、ヒカリとレイは言葉遣いが乱暴。
最後にユーリとユーリアは……うん、どっちもオチ要員だわ。
「そうなるとムーシェとムムはエルフ繋がりで、バニラさんはミルクさんは共に王女というのが接点で?」
「うん、ピッタリね」
特にバニラとミルクは両方とも私が直接助けてるからね。
けれどムムは…………ムーシェのようにならない事を祈ろう。
「すまんなボス。他の連中も含めて楽しませてもらってるぞ」
背後から現れた黒装束の男は、元闇ギルドの首領にして私の傘下で働いている構成員。
日頃の労いを込め、彼らも招待してあげたってわけ。
「気にしなくていいわよ。それよりボルチェ、気配を消して近付かないでってば。急に現れたらビックリするじゃない」
「その割には驚いたようには見えないが?」
「慣れたからよ!」
「それは失礼した」
風のように去っていくボルチェも、よく見ればカゲマルに似ているわね。
「これだけ似通っているとあらば、偶然だと片付けるのは早計かもしれませんね」
「ええ。偶然なんてものじゃない。むしろ必然なのかもね。こうやってこっちの世界とあっちの世界に分かれたのも――ね」
「? よく分かりませんが、次に向かうのはプラーガ帝国だと仰ってましたね。なんでもダンジョンマスターを無理矢理使役しているらしいではありませんか」
「らしいわね」
まったく、勇者の次はダンマスとか、あの国らしいと言えば納得せざるを得ないか。
「ま、もう1人の私なら上手くやるでしょ」




