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ライバル

「いやはや、手厚く手当てしていただき感謝しますぞ」

「いえ、こちらこそすみません! ……ほらリーゼも謝って」グィ

「す、すみませんでした(ちょ、頭を押さえつけるなっての)!」


 顔面にナックルパンチを受けた御老人が目を覚ました。

 一時的に気絶しただけで、ハイポーションをかけたらすぐに回復したわ。


「ホッホッホッ、なんのなんの。お嬢さん方のような可愛い娘さんに介抱してもらったし、むしろ得した気分じゃわい」

「そ、そうですか?」


 怒ってなくてよかった。

 相手が悪いとふっかけられる可能性も有るし、これからは注意しないと。


「ところでお客様、当店は閉店の時間を迎えており――」

「待ってエレイン。せっかく来てくれたんだし話を聞いてみましょ」

「むん? よいのかの? また出直しても構わんが」

「いえ、気にしないでください。怪我させた上に閉め出すのは気が引けますので」


 それに閉店後の方が落ち着いて話せるっていうのもあったりする。

 昼間の忙がしい中じゃちょっと……ね?


「ホッホッホッ。ではお言葉に甘えて……コホン。ワシは錬金術師のキートン。プラチナキャリアーの片田舎にて好奇心を満たそうとする毎日を送っておる」

「好奇心……ですか?」

「なぁに、早い話が研究馬鹿だよ。色んな物を作ってはゴミだと言われて処分する。進歩がないと言われればそれまでだが、ワシにとっては充実した毎日だがな」


 話を聞いてると、錬金術師と言うよりも発明家に近い感じがしてくる。

 これまでに作った失敗作は1000を超え、いつも決まった場所に捨ててるんだとか。


「あの~、それって特定の場所がゴミの山になってたりとか……」

「それがそうでもないのだよ。誰かは知らぬがゴミ拾いをしてくれた者が居たらしくてな、ある日突然消えよったわぃ。今からちょうど1年くらい前になるかな」


 ビクッ!


「ん? どうしたのリーゼ、ドキッとした顔して?」

「え……い、いや、何でもない何でもない。そそそそ、それでお爺様、頼みたい事があったんでしょう?」

「おお! そうだそうだ、話が逸れてしまったわぃ」


 むしろ露骨に戻したのがリーゼなんだけどね。

 でも今ので分かった。どうやってリーゼが怪しげなアイテムを入手したのかを。

 この件はあとで追及するとして、今はお爺さんの話を聞こう。


「実は今どうしても入手したいアイテムが有りましてな、神秘の欠片――という名前なのですが、ご存知ですかな?」


 神秘の欠片か。確かDPで召喚可能で20万ポイントくらいだったかな? つまり超が付くほどレアなアイテムよ。

 でも召喚するのは最後の手段ね。


「かなりのレアアイテムですね。それを探してほしいと?」

「うむ。本来ならツァールズ伯爵から譲り受ける予定だったのだが、国家反逆の疑いで拘束されてしまいましてな。当然ながら約束もうやむやとなり、困っておったのですよ」


 それは気の毒ね。

 国に内緒で闇ギルドを束ねてたんだし、拘束されるのは当たり前よ。

 密告したのは私たちだけどね。


「情報を集めたところ、ゴールドキャニオンとシルバートレンドの間にある山奥で見たとの噂が御座います」

「また随分と遠い場所ですね」

「その通り。ワシのような老体に長旅は骨身に染みますでな、是非とも代わりに行ってもらいたいのですわぃ。もちろんタダでとは言いませんぞ? 見事入手した暁には、白金貨10枚で買い取らせていただこう」

「「「白金貨!?」」」


 白金貨1枚は金貨100枚と同じ価値がある。つまり金貨が1000枚も手に入るってことよ。

 こんな破格の契約は中々ないし、速攻で首を縦に振り契約成立。楽しみにしていると言い残し、キートンさんは店を出ていった。


 ――に、しても。


「遠いよね? 馬車を使うにしても、1週間じゃ足りないと思う」

「マスター、それどころか往復で3週間はかかるかと。見つけるのに手間取れば、それ以上の可能性も……」

「ですが白金貨10枚ですわよ? これを逃す手はありませんわ」


 う~ん、引き受けておきながらアレだけど長期間留守にはできないし、こっそりひとっ飛びして探してこようかな?

 その場合、アリバイ工作が必要になるからかなり面倒だけども。


「あ、そういえばさ、神秘の欠片って言えばプラチナキャリアーにも噂されてる場所があるわよ?」

「え、ホントに?」

「うん。ここからだと絶対そっちの方が近いし、向かうならそこしかないわ」


 詳しい場所を知っているらしく、さっそく次の日の朝からリーゼに案内してもらうことに。

 人員も最低限にする必要があるんで、向かうのは私とリーゼの二人だけ。今は馬車に揺られてプラチナキャリアーに入ったところよ。


「――って、なんで私が案内しなきゃならないのよ!」

「いい加減に諦めたら? アンタがキートンさんの失敗作を回収して売り歩いてたのは分かってんのよ」

「うぐ……」


 捨てられたアイテムをどうこうしても罪にはならないけれど、金に代えるとなれば罪悪感は出てくるものよ。

 そこでキートンさんには黙っておく代わりにうちの商会で働かせることにした。


「別にいいじゃない。タダ働きさせるわけじゃないんだから」

「もぅ分かったわよ……。それにしてもおかしな話よね」

「何が?」

「あの爺さんが教えてくれた場所よ。遥か遠くの噂話を知ってるのに、なんだって自分とこの噂を知らないんだか」


 言われてみればおかしい気もする。

 情報を集めてたなら、まずは手近なところから手をつけるものよね? それとも偶然耳に入らなかっただけなんだろうか?


「あ、そろそろ見えてきたわね。今日はあの村で1泊しましょ」


 プラチナキャリアーに入ってしばらく。

 中継地点とも言える小さな村で宿を借りることにした。

 ――と、ここで思わぬ問題が発生する。


「「空き部屋がない?」」

「そうなんです。少し前に団体客がお見えになられまして……」


 聞けばそれでも足りず、村の外で野宿をしてる人たちも居るんだとか。

 やむ無く私たちも同じように野宿したわ。文句言っても仕方ないしね。


 ところが次の日。

 リーゼの案内で山を登り始めたら、なぜか団体客まで一緒になって登山を始めたのよ。


「キミたち、この先は魔物が出るから危険だ。山菜採りなら他に行くといい」


 団体客の1人が忠告してきた。


「いえ、魔物の対処なら大丈夫です。こう見えても強いんで」

「そ、そうなのかい? まぁそう言うなら止めはしないが……」


 よく見たら冒険者っぽい人たちが10人以上もいて、商人とおぼしき中年男性を護りつつ進んでいるみたい。

 まさか目的が同じだったりとかじゃないでしょうね?

 そう思い商人らしき男性を見ると偶然にも目が合い、ニコリと微笑んで話しかけてきた。


「お嬢さん方、キミたちも上を目指すなら一緒に行かないか? 二人だけよりも安全だと思うよ」


 護衛の人たちも頷き、その方がいいと口々に言う。

 ついでだし、目的を聞いてみよう。


「あの~、皆さんの目的地はどこですか?」

「場所かい? 山に囲まれた泉だよ。一旦は山頂まで登り、そこから北に下っていくと神秘の泉へとたどり着くんだ。その周辺に神秘の欠片が有るらしく、それを入手するのが我々の目的さ」


 うっわ、おもいっきり被ってるじゃない。

 これだと早い者勝ちになっちゃうわね。


「ふ~ん、奇遇ね。私たちもソレが目的なのよ」

「ちょ、リーゼ!」


 この胆略的娘! そんなこと話したら――


「そ、そうなのかい!? それは困った。キミたちとはライバルという事になるのかな? まさか競争相手と同時に来てしまうとはねぇ」


 あれ? 台詞とは裏腹に困ってる感じがしないわね。

 下手すれば襲われるかと思ったけれど、そんな様子もない。


「そうね。ライバルでもいいって言うんなら一緒に行ってあげてもいいわ」

「リーゼ、いくらなんでもそれは――」

「ハッハッハッ! ならば共に行こうじゃありませんか、お嬢様方」


 あ、あれ? 不機嫌になるどころか笑い飛ばされてしまった。


「あ、あの~、本当にいいんですか? 早い者勝ちなのは嬉しい事ですけど……」

「フフ、いいんですよ。こう見えても商人の端くれです。金を掴まず心を掴め――死んだ親父が口癖のように言ってました。信用なくして商人は勤まりません」


 何気にいい父親ね。


「――というわけで、わたくしプレイモアの街で商会を営んでおりますテンノウジと申します。プレイモアにお越しの際は、是非とも我がキャメロン商会をご利用ください!」


 これは1本取られた。

 評価を上げつつ自分の商会を宣伝してくるとは。


 ともあれ、このキャメロン商会の人たちと一緒に、目的地へと向かうことにした。


幻王「幻王だ。今回出てきた白金貨に絡んで通貨の解説する事になったらしい。らしいというのは作者がテキトーに選んだのが僕だったのだとか。はた迷惑だが勤めねばなるまい」


 銅貨<銀貨<金貨<白金貨


幻王「上記のように単純な価値としては、銅貨がもっとも低く白金貨がもっとも高くなる。この辺は予想の範囲内だと思うので、得に疑問に思うところはないだろう」


 銅貨100枚=銀貨1枚

 銀貨100枚=金貨1枚

 金貨100枚=白金貨1枚


幻王「――とまぁ金銭価値はこのようになるな。雑貨屋で売られている日用品の殆どは銅貨で買えるし、食料品も然りだ。つまり、一般人が金貨を手にする機会は殆どなく、売買の多くは銀貨までが主流となっている。逆に貴族の場合は銀貨と銅貨は持たないという連中が多く、買い物の際に銀貨や銅貨を出してしまうのは恥とされていて、自らを貧乏人だと主張してるに等しいのだとか。恐らくは「おい、アイツ銀貨なんか持ってるぜ? ププ、恥ずかしいやつww」とか陰で言われるのだろう。まぁ、中々面倒なものだな、貴族社会というのも」


幻王「では一例をお見せしよう。こちらが一般人の買い物だ」


リーゼ「オジサン、串焼きちょうだい。……え、1本銅貨10枚? 相場より高いじゃん、3本買うから半額にしなさいよ。…………3本で20枚? う~ん、もう一声! …………18枚か、まぁいいわ。じゃあそれで――ってちょっと、今ツバが飛んだわよ!? 3本とも1枚ずつ負けて15枚ね、はい決まり~もう決まり~、じゃあまた来るわ~♪」


幻王「…………、おっと失礼。あまりにも見苦しかったので硬直してしまったが、まぁ少々意地汚い一般人の例と言えば納得していただけるだろうか。では気を取り直して富豪の一例をお見せしよう」


アイリ「あ、シェーラさんのご両親ですか? 私、シェーラさんが勤めている商会の経理担当をしておりますアイリという者です。…………あ、話しは聞いている? ありがとう御座います。さっそくですが、お二人様が経営なさっている雑貨屋を買い取りたいと思いまして。…………ええ、そうです。…………いえいえ、ボロ雑貨なんてとんでもない。ざっと計算して金貨300枚が妥当かなと思い…………え、そんな大金は受け取れない? 何を仰いますかお二方。これまで苦労なさったのですから、少しくらいの贅沢は…………え、少しどころじゃない? ご安心を。大金を家に置くと危ないとお考えなら、当商会が責任を持ってお預かり致します。…………ええ、そうです。今後ともレジェンダ商会を宜しくお願い申し上げます」


幻王「……は? ……ああいや、こっちの事です。……コホン。しかし随分と極端な例を。金貨300枚って、100枚でも使い切るのは難しいような……。いや、高級酒を飲みまくればいけるのかも……うん、そういう事にしよう」


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