閑話:ブラッシュのターン
日頃のご愛顧、ありがとう御座います。毎度おなじみブラッシュですよ~。
おや、別に贔屓した覚えはない? またまたご冗談を。
そんなシャイな皆様のために、今日は僕の活躍した姿をお見せしましょう。
「空はいい。特にこのバジュラ山周辺は空気が澄んでいる」
――等と言いつつ、バジュラ山を見下ろし巨大な翼を広げている一体のブラストドラゴン。
高級感を感じさせる白銀の身体は、Sランクという脅威をこれでもかとアピールしています。
うん、我ながら素晴らしい完成度です。画像にしてお見せできないのが残念で仕方ありません。
あ、説明が遅れましたがこのドラゴン、ミラクルたんの眷属になる前の僕なんですが、すかした野郎だとお思いでしょう? ええ、僕もそう思います。
何せ当時は他の魔物など虫ケラ同然だと思ってましたからね。負け知らずだと傲慢になってしまうものなのですよ。
だがしかし、この直後に運命の出会いが訪れようとは、まだ誰も知らないのです。
当然僕も知らなくて、まさか死にかけてしまうなんて夢にも思わなかったですよ。
「むん? アレは……ワイルドホーク?」
この辺りでは生息していないBランクの魔物です。
背中に人が乗っているようですし、テイムでもされたのでしょう。
そんな雑魚に遅れをとる――なぁんてことはなく……
「Gyaaaaaa!!」
「ヒィッ!?」
咆哮を浴びせればこの通り、身を縮こませて後退していきます。
Bランク程度では僕の相手になりませんので、当然と言えば当然です。
ところが……
ドゴォォォォォォン!
「Gyaoooooo!?」
何かが僕の身体を貫きました。
いったい何がと激痛の最中に視線で追うと、幼女にしか見えない二人が明後日の方向に飛んでいくではありませんか。
薄れ行く意識の中で思いました。
あのような幼女ごときに足元を掬われるとは僕も耄碌したものだと。
そして二度と目覚めることのない永遠の眠りにつくのだと……。
……が、しかし!
「……ん……んん? 生きてる!?」
この時は驚きましたね~。てっきり死んだものだと思っていたのにピンピンしてるんですから。
「よかったぁ、目を覚ましたね!」
「んむ? キミは――」
「あ、あたしはミラクル。今日から貴方は眷属になったの。もちろんあたしのね」
「……え?」
傍らで話しかけてきたのは金髪ショートカットの大変可愛らしい女の子でした。
ピンと延びたアホ毛がチャームポイントで、ハキハキとした元気のいい――おっと、話が逸れてしまいましたね。
結論から言うと、このミラクルという少女によって僕の命は救われました。
本来なら連れて来られたダンジョンでDPにされるとこでしたので、ミラクルたんが反対しなければ天に召されていたでしょう。あ~怖い怖い。
もうね、ミラクルたんは女神ですよ。それこそキュートな女神にオンリーラヴです。
「勿体ない。せっかく大量のDPが入ったのに」
ミラクルたんが女神なら、僕をぬっ殺そうとしたアイリたんは邪神ですね。
その証拠が今の台詞に凝縮されてるのが分かります。
でも僕は彼女を許しましょう。なぜなら、アイリたんもミラクルたんに負けず劣らずキュートなので。
ええ、可愛いは正義です。ハッキリ分かりますね。
そんなこんなで数日が経ちました。
同じ境遇だったデザートイーグルのグルースと、シャドウムーンベアのワグマとも打ち解けたところで、違法奴隷として売られていたエルフの女の子たちを保護したのです。
「ブラッシュさん、エルフの子たちが故郷に帰れるまで訓練してあげて」
「イェスマム――ですよ~」
ミラクルたんの命令には逆らえません。逆らうつもりもありませんがね。
何せ……
「お、お願いします……」
「よろしくーーっ!」
「…………」
「ふ~ん、アンタが私たちの教官? ま、悪くないかな」
奥手な子、元気な子、無口な子にクールな子。もう選り取り見取りなこの状況に不満を持つ野郎はいません。ええ、断言してやりましょう!
その日から僕の生活はバラ色へと昇華しました。ええ、沢山の幼女に触れられてとても幸せだったと言えるでしょう。
今にして思えば、僕を瀕死に追いやった幼女二人組――ルーたんとミリーたんなのですが、彼女たちを見た時、すでに僕はときめいていたんですね~。
「相変わらず変わったヤツだ。俺には理解できん」
「まったくだのぅ――ソィ! そんなことより――セャ! 肉体美を――フン! 磨き上げた方が――ハァ! よっぽど――トゥ! 健全だわぃ――チェストォ!」
これだから愚民は困りますね。
幼女の愛らしさが理解できないのは、人生の大半を無駄にしているようなものです。
強面のグルースは論外、ワグマによる暑苦しい筋トレを眺めているよりも、幼女の温もりに包まれる方が遥かに幸せでしょう。
ええ、まさに――
「可愛い幼女バンザ~~~イ! って感じです」
で……
「言いたい事はそれだけですか、この変態」
僕の目の前で仁王立ちするのは、金髪ロングのエレイン殿。
バスタオル一枚という姿は大変そそられるものがありますが、残念なことに僕のストライクゾーンはもう少し下の年齢なんですね~。いやぁ残念残念。
「ブラッシュが覗いたの?」
「……そうみたい」
「うっわ、最っ低~」
「…………」ジト~~~
おぉう、幼女エルフたんの凍てつく視線が刺激的ぃぃぃ。
「……で、どうなのブラッシュ? 女湯を覗いたのは事実なの?」
おっといけません。僕は今、女湯を覗いた容疑を掛けられているのでした。
幼女たちに続いてアイリたんまでもが凍てつく視線を向けてきます。
「ブラッシュさん……」
「まったく、最低な雄竜ですわね。わたくしの身体は安くありませんわよ」
「…………」ブンブンブンブン
ミラクルたんは呆れ顔、レミット殿は何故かボディラインを強調し、マリオーネ殿はブンブンと腕を振っています。
はい、無表情で威圧してくるマリオーネ殿が一番怖いです。
「申し開きがないのなら、女湯を覗いた罪により奴隷へと格下げを――」
「お待ちくださいエレイン殿。覗いただなんてとんでもない!」
「では釈明をどうぞ」
「僕はただ……」
「……ただ?」
「キュートなエルフたちとお風呂に入りたかっただけで――」
ゴツン!
「判決を言い渡します。被告ブラッシュは、今後エルフたちと接触できないものとします」
「そんな!?」
「但し執行猶予を与えますので、キチンと反省していると判断した場合は、これまで通りの生活を認めましょう」
むぅ……どうやらしばしの間、エルフっ子たちとの交流はできそうにありません。
ならば!
「ミラクルたんやアイリたんならOK?」
「……執行猶予も無しにしましょうか?」
「ごめんなさい……」
そんな訳で皆々様、しばらくは僕の活躍が見れませんのでご了承を。




