表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/118

ダンジョンマスターの戦闘

「敵はこちらに向かってきてる兵達よ。なるべく殺さないように注意して」

「「「ウォン!」」」


 召喚したグレーウルフが丘を下って突撃していく。

 ドドドドという足音に連中が気付いたものの、時すでに遅し。

 闇に紛れたウルフたちが紅い両目を不気味に光らせ、連中へと襲いかかった。


「な、なんだコイツら! どこから湧いてきやがった!?」

「クソが! 索敵してた連中め、手を抜きやがったな!?」

「バカヤロウ! 文句言ってねぇでさっさと応戦しや――ぐわぁ!」


 見通せる昼間で正面からという条件なら、連中にも勝機はあったかもしれない。

 けれど現実はそんなに甘くなく、次々と負傷者を出し続けていく。

 私兵100人に対してグレーウルフも100体。この比率がウルフへと傾いていった。


「ワンちゃんと同じくらいの数だった私兵がどんどん倒れていくわ」

「体勢を整える前に仕掛けましたから。あの中心にいるコルザレスは、さぞ慌ててる事でしょうね」


 ワンちゃんと呼ばれたグレーウルフの心境は不明ながらも、惜しみ無く力を発揮していく。

 特にウルフと夜襲の組み合わせは最適で、相手が視認し難いのに対し、臭いで居場所を特定するウルフは絶対的有利と言えるのよ。


「よし、そろそろかな」

「そろそろ?」

「はい。ちょっと面白い事を思い付いたので。――サモンアンデッド!」


 シューーーン!


 召喚したのは1体のスカルソルジャー。

 中級以上の冒険者がアンデッド化した姿で、Dランクという少々手強いスケルトンよ。


「骨なんか召喚してどうするの?」

「いやいや骨って、確かに骨だけども……コホン。コイツにはちょっとした役割を与えようと思ったんです」


 続いて小型のスピーカーを召喚するとスカルソルジャーの懐に忍ばせ、ホークの背に乗せた状態でコルザレスへと接近させる。

 さらにインカムも召喚してスピーカーとリンクさせれば、私の声がスカルソルジャーから発せられてるように見えるわ。


「この魔物を操っているのは貴様か!? ワシはプレイモアの領主であるぞ、この無礼者めが!」


 狙いどおりスカルソルジャーを指揮官と誤認した。

 後はヘリウムガスを召喚して――っと。

 これを使えば私とは別人と認識されるわ。


「愚かな領主よ、貴様は()()()()()()様の怒りに触れた。覚悟はできておろうな?」

「アマノテウスだと? そんなヤツは知らんぞ!」

「知らぬと申すか。ならばその薄らハゲ頭にしかと記憶しておけ。いずれゴールドキャニオンはアマノテウス様により滅ぼされるであろう――とな」


 ドスッ!


「ヒィィィィィィ!」


 スカルソルジャーの放った剣がコルザレスの足元へと突き刺さり、尻餅をついて後ずさる。


「分かったらプレイモアへと戻り、公爵に伝えるがよいわ」

「おおおお、覚えてろぉ!」


 逃走中なのを忘れてしまったのか、私兵と共にプレイモアへと引き返していく。

 せいぜいアマノテウスという名を広めてちょうだい。私は困らないから。


「プレイモアにはお父様が向かってるし、これでコルザレスは終わりね」

「ええ。自業自得です」


 できれば被害者であるルトに断罪させたかったけどね。今回は残り物で我慢してほしい。


「ところで一つ気になったのだけど、その石板のようものは何? マジックアイテム?」

「ちょっとレアなスマホというマジックアイテムです。これがあるからダンジョンの外でも召喚できるんですよ」 

「あ、そっか。本来ダンマスって、ダンジョン内部でしか召喚できないものね」


 マリーベルって随分と博識ね~。

 過去に(さかのぼ)っても、ここまで魔物やダンマスに詳しい一般人はいなかったわ。

 自ずと会話が弾むというか、これもスキルの影響なんだろうか? いや、むしろ加護の方かも。

 どっちにしろ、余計な事まで言わないように注意しとこう。


「それじゃあコルザレスの件も終わったことだし、アイリちゃんのマイホームに行きましょ」

「やっぱり行くんですね……」

「もっちろん! お友達と泊まり掛けで遊んだりお喋りしたりしたかったんだもの、この機を逃しちゃ勿体無いわ」


 ――というアクティブなお嬢様のお言葉。諦めてアイリーンに連れて行こう。



★★★★★



「はい到着~」

「凄いわ、一瞬で違う場所に移動できるなんて!」


 マイスキルの座標転移(ハザードワープ)でアイリーンのコアルームと戻ってきた。

 一度見た場所なら瞬時に移動できるのが魅力よ――って、やってる場合じゃないわ。今は改築中で見た目が雑だから、おもてなしするスペースと客室を作らなきゃ。


 ガチャ!


「取り敢えずこちらにどうぞ。少々散らかってるんで、直ぐにキレイにしますから」

「そんなの気にしないわよ? わたくしの部屋だって似たような――」



「「「お帰りなさいませ、ご主人様♪」」」

「「!?」」


 い、いったい何事? エレインやミラクルのみならず、レミットまでが猫耳とか尻尾をつけた、妙な格好してる……。


「ちょっとマリオーネ。サボってないで貴女もおやりなさい」

「レミット様の言う通りです。マリオーネ様はもっと真剣に取り組むべきでしょう」


「……お帰りご主人」

「やる気が感じられませんわ! リハーサル通りにやるのです!」

「え"~~~?」

「え"~~~じゃありません。わたくしたちの今後を左右するのですよ? スイーツが食べれなくなったらどうするのです!?」

「…………寝る?」

「「寝るな!」」


 どうやら私の帰りに合わせて画策したらしい。……失敗してるっぽいけど。


「ミラクル、何かあったの?」

「う、うん。その……凄く言いにくいんだけど、気の向くままにダンジョンを拡張したら、DPが底をついちゃって……」

「…………」

「そ、それでアイリちゃんに恵んで欲しいな~~~なんて――」



 ゴツン!


「痛いです……」


 ……ったくこの子はもぅ。

 あれほどDPは節約して使うようにって言ったのに……。


「あげないなんて言わないけれど、今度からは計画的に使うのよ。共同で生活してるんだから、みんなで相談して決めるの。いい?」

「はい……」


 ミラクルの眉間にギュッと指を突き付けながら言い聞かせた。

 私が居るうちはいい。だけど不意に元の年代に戻ったりする可能性もあるんだから、自分たちで管理維持できるようになってもらわないと。


「ところでアイリちゃん。後ろの人は誰?」

「おや、また新たな眷族でしょうか?」


 おっと、マリーベルのことを忘れてたわ。


「こちらはマリーベル様。ゴールドキャニオンの代表者であるバルドス公爵のご息女よ。コルザレスを捕らえるのに協力してもらったの」

「す、凄い、権力者の娘さんなんだ! アイリちゃんってコネとかエグい罠とか作るの上手いよね!」


 また微妙な誉め方を……。


「おやおや、一般のかたでしたか。アイリ様のことですから、てっきり眷族を自慢するつもりで連れてきたのかと」


 そんな悪徳令嬢みたいな思考はない!


「そんな事より皆さま、手筈通りに()()を行いますわよ!」


 レミットのかけ声で4人が整列する。

 いったい何を――ってまさか!?


「一番エレイン、パピヨンやります、キャンキャン♪」


 他との違いが分からない!

 けれど可愛く見えるのが悔しい!


「二番ミラクル、トイプードルやります、キ、キャンキャン♪」


 前よりも自信に満ちた表情。それでいて噛んでしまったところがまた可愛い!


「三番レミット、マルチーズをご覧ください、キャゥ~ンキャウン♪」


 微妙にオリジナリティを加えてきたところは評価する。今後に期待しよう。


「……四番マリオーネ、そのへんの犬やります、……zzz」


 なんだろう。昼寝している犬だと思えば、間違ってはいない気もする。


「いかがでしたかアイリ様? マリオーネ様はまだまだ経験不足ゆえ至らぬ点も御座いましょうが、これからもスイーツを提供していただくために全力で犬になって差し上げましょう!」

「うん、これからも――」


 って、ダメダメ。このままだと癖になって、変な趣味に目覚めそう。

 ここはキチンと言い聞かせて――



「か、か、か……」

「ん? マリーベル様?」


 振り向けば、なぜか全身を震わせてるマリーベル様が。

 それに顔もふやけてるような……



「か~わいーーーーーーっ!」


 ムギュ!


「え? な、なに?」

「何なのこの子たち! 何なのこの現象! こんなに可愛い子たちは見たことないわ!」


 一番近くにいたミラクルがマリーベルの熱い抱擁(ほうよう)を受けた。

 どうやらエレインの作戦は、特定人物にクリティカルヒットしたらしい。


「ああ、こっちの子も可愛い! 金髪ロングなお嬢さんが進んで犬になるなんて、シチュエーションも相まって可愛さ倍増よ!」

「さすがはお目が高い。素人はその辺を理解しませんからね」


 マリーベルもそうだけど、エレインもいったい何を言ってるやら……。


「こっちもいいわ! クールな銀髪セミロングの少女がプライドを隠さず、逆にそれをアピールしている点は高ポイントよ!」

「あら、分かってらっしゃいますわね。何が起ころうと、プライドだけは捨てないと決めておりますの」


 ――などと、髪をファサっと掻き上げつつレミットが言う。

 犬になってもプライドは生きてるらしい。


「こっちのダルそうにしてる子もまた別の可愛さがあるわ! それこそ部屋に置いといて、寝るまで眺めてたいくらい!」スリスリ

「zzz」


 締めは緑の髪をツインテールにしてるマリオーネ。

 滅多に動かないから、置物としては最適かもしれない。


「もう決めたわ! わたくしもここに住むと宣言致しましょう!」

「そこは致しちゃダメなところですって!」


 その後すったもんだの末に、一泊して帰る事で了承してもらった。

 可愛いは時として凶器になると、初めて思い知らされたわ……。


ホーク「あれ? アイリはん、ワイの事を忘れてんか?」

スカルソルジャー「カカカカカ!」

ホーク「笑うなや!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ