第9章:ゴブリンの巣
「どうしたの?」
空気が重く、冷たく感じられた。僕はグロック17を構えた。その黒い銃身は森の暗闇に溶け込んでいた。汗ばんだ手の中で、金属が冷ややかに感じられる。
僕の前を歩いていたガレンは答えなかった。ただ片手を上げ、手のひらを開いて見せた。彼はゆっくりと身をかがめ、その大きな体は濡れたシダの茂みの陰へと隠れた。
僕は無言で頷き、戸惑っているディナを引き寄せて一緒に身を低くした。
『こんな暗闇の中で、どうやって何かを見つけられたんだ?』
この森はひどく暗かった。頭上の二つの銀の月がおぼろげに放つ光は、生い茂る葉をほとんど通り抜けられない。僕に見えるのはかすかな木の幹の輪郭だけで、聞こえるのは自分の息遣いだけだった。
ガレンが指で合図を送った。冷たく湿った地面に膝をつきながら、僕たちは前へと這い進んだ。僕たちの下で濡れた葉が擦れ合うカサカサという音は、この静寂の中では叫び声のように大きく響いて聞こえた。
小さな斜面の端にたどり着いた。ガレンが巨大なシダの葉を一枚押し分ける。そしてその下、小さな谷間に、僕はそれを見た。
集落だ。
一つや二つの粗末な小屋ではない。何十軒もあった。粗雑に建てられた何十もの木造小屋が並び、その屋根は藁やつぎはぎの獣の皮で作られていた。木の杭に灯された松明が揺らめくオレンジ色の光を放ち、その光はその場所を取り囲む粗末な木製の柵の上で揺れて、まるで亡霊のように動く長い影を作り出していた。
「集落? こんな場所に?」
「ただの集落じゃない」
ガレンの背中からトムが囁いた。
「ゴブリンの巣だ。見ろ」
彼は顎で指し示した。目を細めて凝視する。その通りだった。くすんだ緑色の小さな影たちが、門の前を見回っていた。
「どうするの、ガレン?」
ディナが震える声で尋ねた。彼女は僕の隣に身を寄せ、土の匂いとわずかな恐怖の気配を漂わせていた。
「戻るべきだ」
トムが促した。
「今すぐ本道へ引き返すんだ」
僕は彼らを見つめた。遠くの松明の光を浴びたディナの顔は青ざめていた。トムはさらに具合が悪そうだった。ガレンは……その顔は石のように険しく、目はその集落に釘付けになっていた。
「どうしたの? どうしてそんなに怯えてるの? たかがゴブリンじゃないか」
僕は言った。
「一匹や五匹のゴブリンなら問題ない、リアム」
ようやくガレンが口を開いた。その声は唸るように低かった。
「だがこれほど大きな巣となると……数は数百匹にもなり得る。俺たちは昨日の狼の襲撃から完全に回復したわけじゃない」
僕は黙り込んだ。彼の言う通りだった。僕たち四人の中で、完全に万全なのは僕だけだ。トムは重傷を負っている。ガレンの盾は砕けている。そしてディナは……杖を握る手がかすかに震えているのが見えた。彼女はそれを隠そうとしていたが、僕には見えていた。
「ガレン、逃げましょう」
ディナはガレンの鎧の端を引っ張った。
ガレンが剣の柄を握る手に一層力がこもった。
「駄目だ」
彼は静かに首を横に振って言った。
「逃げるわけにはいかない」
「どういうことよ?!」
ディナは声を尖らせて詰め寄った。
「正気なの、ガレン? 私たち全員をここで殺す気? あの集落を見なさいよ!」
「あの集落があるからこそ、逃げられないんだ!」
ガレンは言い返し、今度は僕たちの方へと振り返った。その瞳が暗闇の中で鋭く光っていた。
「引き返しても無駄だ。これほどの巣は一週間や二週間で作られたものじゃない。数ヶ月はかかっている。つまり……奴らの縄張りはすでに広がっているということだ。この辺りの道は奴らの見回りと罠でいっぱいのはずだ。退却すれば、巡回部隊に挟み撃ちにされて追い詰められるだけだ。不意打ちの利がある今のうちに攻め込む方がまだいい」
彼は言葉を切り、息を荒くした。
「それに、もし成功すれば……黒い森の境界にあるこれほどの大規模なゴブリンの巣を殲滅したということで、ギルドは大金を払ってくれるはずだ。大儲けできるぞ」
「ゴブリンがこんな集落を作るのって、奇妙なことなの?」
僕は尋ねた。
「奇妙ではない」
ガレンが答えた。
「だがその規模と、場所だ。ゴブリンは普段、日の当たらない洞窟や隠れた場所に巣を作る。こんな開けた場所に、木造の家まで揃えて巣を作るはずがないんだ。つまり……奴らを率いる何かがいる。より賢く、より強い何かが」
「まさか……ゴブリンキングか?」
トムの声に怯えが混じっていた。
「おそらくはな」
ガレンが答えた。
「ガレン、もしゴブリンキングがいるなら、私たちに勝ち目なんてないわ!」
ディナが抗議した。
「Bランクの魔物なのよ!」
「正面から戦う必要はない」
ガレンはきっぱりと言った。
「作戦はこうだ。もしキングがいれば、混乱を引き起こして強行突破し、逃げる。いなければ……この場所を一掃する」
トムは乾いた、絶望に満ちた笑い声を小さく漏らした。
「あんたのその自信がどこから湧いてくるのか、さっぱりわからないよ、ガレン」
ガレンは答えなかった。その目が僕へと向けられた。強烈で、射すような眼差しだった。
「何?」
その重苦しい視線に少し居心地の悪さを感じながら、僕は尋ねた。
「リアム、そのお前の武器だが、ゴブリンを殺せるか?」
「殺せるよ」
昨日仕留めた三匹のゴブリンを思い出した。あっけなく死んだ。
「上等だ」
ガレンの唇に獰猛でかすかな笑みが浮かんだ。
「なら、俺の自信はお前から来ている」
「え? ちょっと待ってよ!」
僕は慌てた。
「どうして急にそうなるの?」
「その代物だ」
彼は顎で僕の手の中の拳銃を指差して言った。
「それが何なのかは知らん。機械仕掛けのボウガンか? それとも魔導具か? 何であれ、音を立てず、凄まじい威力を持っている。お前のその武器を使うんだ」
「作戦は単純だ。隠密に行動する。目についたゴブリンを皆殺しにし、見つからないように死体を隠す。巣の中のゴブリンが全滅するまで、その攻撃パターンを繰り返すんだ」
僕は絶句した。彼の言葉の重みがずしりと圧し掛かる。僕はまだこの武器を完全に使いこなせているわけではない。これまではただ運が良かっただけなのだ。
それに、今の僕の弾薬は残り少ない。これほど大きな巣なら、何十匹、あるいは何百匹ものゴブリンがいるに決まっている!
『どうやって伝えればいいんだ?』
『この戦いのためだけに、全ポイントを使い果たすわけにもいかないだろ?』
不意に、ひとつの声が僕たちの緊張を破った。
「ああぁ……」
その声はかすかで、集落の方角から風に乗って届いた。弱々しい。だが、明らかに人間の声だった。
ディナが息を呑んだ。
「中に誰かいるわ」
ガレンは振り返り、遠くの松明の光を再び見据えた。先ほどまでの打算的な表情は消え去り、冷ややかな怒りに満ちていた。
「俺にも聞こえた」
彼が言った。
「見ろ」
「あそこだ」
小屋と小屋の間を、揺らめく松明の列が進んでいた。その動きは鈍く、乱れていた。奴らは中央に何かを囲い込んで連行していた。
「人間だ」
ガレンが低く唸った。
ここからでは、まだ距離が遠すぎた。暗闇と月を覆う雨雲のせいで、すべてがおぼろげな影に見えた。しかし僕には見えた。小柄でずんぐりしたゴブリンたちの間で、うつむいて歩く、背が高くほっそりとした人影たちが。
「どうして人間を捕まえるの?」
僕は尋ねた。
「ゴブリンは普通、男の捕虜は取らない」
ガレンの背中からトムが口を挟んだ。その声は疲労と痛みで重々しかった。
「男は……大抵喰われるだけだ」
冷たい沈黙が一瞬、僕たちを包んだ。
「じゃあ……女の人は?」
僕はためらいがちに尋ねた。今まで読んできた何十ものファンタジー作品の知識から、嫌な予感としての答えはすでに頭の中に浮かんでいた。
だが、確かめたかった。
三人が僕を振り返った。その眼差しは奇妙だった。同情と、わずかな……怪訝さが混ざり合っており、まるで水がなぜ濡れているのかを尋ねられたかのような顔だった。
「何?」
「なんでもないわ」
ディナは早口で、あまりにも素早く答えた。彼女は視線を逸らした。
「ゴブリン族には……メスがいないの。繁殖するために、奴らは……他の種族を必要とするのよ」
胃がむかついた。やはり本当だったのだ。
「つまり人間を捕まえるのは……繁殖の道具にするためってこと?」
「そうだ」
ガレンが短く答えた。その語気は刃の先端のように鋭かった。
僕は再び松明の列を見つめた。その光景は今や、遥かに恐ろしいものに見えた。
「助けなきゃ」
僕は言った。
彼らの視線が僕に注がれるのを感じた。
気になどしていられなかった。
セーフティを解除すると、ごく微かなカチッという音が響いた。深く息を吸い込み、湿った夜の空気が肺を満たすのを感じる。ジャケットのフードを深く引き下げ、顔を影の中に隠した。
ガレンとディナはしばし顔を見合わせた。やがて、ガレンが短く頷くのが見えた。ディナは木の杖を握り直す。背後からは、トムの観念したようなため息だけが聞こえた。
立ち上がろうと体に力を入れた。
ヒュッ!
視界が不意に反転した。何かが恐ろしい力で横から激突し、僕を濡れた地面へと突き飛ばした。顔が腐った落ち葉に突っ込み、土の匂いが鼻腔を満たした。
「くそっ、何するんだガレン!」
突き飛ばした大男に怒鳴りつけてやろうと身を起こしかけた。
だが、そのとき目に入った。
ドスッ!
つい先ほどまで僕の頭があったまさにその場所に、一本の矢が突き刺さっていた。粗雑な矢柄が震え、矢羽は夜露で湿っていた。鋭い鉄の破片で作られた矢尻が、僕たちの背後の木の幹に深く食い込んでいた。
「矢……?」
僕は恐怖に青ざめて呟いた。
矢が飛んできた方角へと、とっさに視線を向けた。上だ。
折れた木の枝にとまり、一体のゴブリンが再び小さな弓を引き絞っていた。暗闇の中で黄色い瞳を光らせ、まっすぐに僕たちを見据えている。
「嘘でしょ、見つかったわ」
ディナが息を呑んだ。
ガレンはすでに立ち上がり、剣を抜き放っていた。そのくすんだ刀身が遠くの松明の光を反射している。
「見られた!」
ガレンは切迫した声で素早く言った。
「巣へ戻すな!」
言葉が終わる前に、弓兵のゴブリンは枝から飛び降り、茂みを掻き分けて巣の方角へと駆け出した。
考える間もなく、僕はすぐさま追撃に飛び出した。ガレンが僕の隣を疾走し、その重い足音が大地を揺らす。ディナが杖を固く握りしめて後ろから追ってくる。トムを一人元の場所に残すことになったが、背に腹は代えられない賭けだった。
周囲の森が流れるようにかすんでいく。僕の目的はただ一つ。前方をよろめきながら逃げる、あの小さな緑色の影だ。
絶対に巣まで逃がしてはならない。
肺が焼けるように痛んだ。小枝が顔や剥き出しの腕を引っかき、ヒリヒリとする傷跡を残した。だが気にしてはいられない。隣ではガレンが猛り狂うサイのように突き進み、その巨体で速度を落とすことなく藪を薙ぎ払っていた。
ゴブリンはすばしっこかった。突き出た木の根を飛び越え、低い枝の下を潜り抜けていく。奴はこの森を知り尽くしている。僕たちはそうではない。
「速すぎるわ!」
息を切らしながらディナが背後から叫んだ。
ゴブリンが一瞬振り返った。その醜い顔に勝ち誇った笑みが浮かぶのが見えた。奴は僕たちが潜んでいた森の外縁部にまであと少しのところまで迫っている。あと数メートルで、あの巣の見張り塔から見える開けた場所に出てしまう。
逃がすものか!
立ち止まって正確に狙いを定める時間などない。走り続けながら拳銃を持ち上げ、両手で固く構え、焦る足取りから生じるブレを必死に抑え込もうとした。頭は狙わない。
より大きく、より動きの遅い標的を狙う――足だ。
意識を極限まで集中させた。一瞬、すべてが静まり返ったように感じられた。自らの荒い呼吸も、ガレンの足音も、ディナの叫び声も――すべてが遠のいていく。残ったのは僕と、手の中の拳銃と、動く標的だけだ。周囲で流れる木々の枝と、動き続ける一対の痩せこけた緑色の足。
僕の瞳が冷徹に光った。
引き金を引いた。
プシュッ!
見えた。奴の身軽な動きが不意に崩れた。右足があらぬ方向に折れ曲がり、泥だらけの地面に顔から激しく倒れ込んだ。甲高い悲鳴を上げながら、両手を使って前へ這い進もうとする。
だが、もう遅い。
僕は足を止めなかった。木の根を飛び越え、奴の真横に着地した。奴が見上げ、僕の黒い銃口が真っ直ぐ顔に向けられているのを見て、黄色い瞳を恐怖に見開いた。
躊躇などしなかった。
プシュッ!
プシュッ!
プシュッ!
撃った。何度も何度も。手首に伝わるわずかな反動を感じていた。脆い頭蓋骨に黒い穴が穿たれていくのが見えた。奴の体は一瞬痙攣し、汚れた指先で地面を引っかいた後、動かなくなった。
再び静寂が降り立ち、僕の重い息遣いだけが残された。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
足元の死体を見下ろした。脳漿と赤い血が泥と混ざり合っていた。まだ温かい銃口から、細い煙が立ち上っていた。
「くたばったか」
掠れた声で呟いた。
「よくやった、リアム」
大きくて重い手が僕の肩を叩いた。ガレンだ。彼も息を切らして隣に立っていたが、その瞳には賞賛の色が宿っていた。
「お前がいなきゃ、確実に逃げられていたところだ」
ようやくディナが追いつき、膝に手を当てて前屈みになりながら呼吸を整えようとした。彼女はゴブリンの死体を一瞥し、その顔に唾を吐き捨てた。
「ペッ、胸糞悪い生き物ね」
彼女は吐き捨てるように言った。
「この死体を隠さなきゃならん」
ガレンは真剣な口調に戻って言った。
「別の見回りに見つかる可能性がある」
僕たちは頷いた。ガレンは死体を最も生い茂った藪の中へと引きずっていき、木の枝を引き寄せて覆い隠した。
僕とディナは急ぎ足でトムのいる場所へと戻った。彼はまだそこにいて、倒木の陰に身を隠し、表情を強張らせていた。
「みんな無事か?」
僕たちの姿を見るなり、彼が尋ねた。
「大丈夫だよ」
激しい動悸を落ち着かせようとしながら、僕は答えた。
「一人にして悪かったわね、トム」
ディナは申し訳なさそうに言った。
「気にするな」
トムが遮った。
「早く動くぞ。日が昇る前にな」
その視線は鋭かった。
ガレンが戻ってきて、汚れた手をズボンで拭った。
「片付けたぞ」
彼はしゃがみ込み、慎重にトムを再び背負い上げた。
「行くぞ」
彼が言い、僕たちは再びゴブリンの巣に向かって移動を始めた。今度は先ほどよりも遥かにゆっくりと、警戒を強めた足取りだった。




