第8章:食事とトラブル
僕は洞窟の外に広がる暗い森の景色を見つめた。
二つの双子月は分厚い雲の向こうに隠れ、世界をほぼ完全な闇の中に置き去りにしていた。唯一の明かりといえば、淡く赤く光る焚き火の熾火だけで、そのオレンジ色の光は僕の周囲の影を照らすことすらままならなかった。
「本当に真っ暗だな」
僕は独り言を呟いた。
「明かりが一つもない」
その思いつきから、別の考えが浮かんだ。
懐中電灯を買うべきだろうか?
「買っちゃおう」
僕は決めた。
「でも高いのはなしだ。実用的なやつにしよう」
この世界にはおそらくまだ電気が存在しない。だから使い捨ての乾電池やコンセント充電に頼る懐中電灯を買うわけにはいかなかった。電池が切れれば、ただのゴミくずになってしまうからだ。
「それに、お腹も空いたな」
僕の考えに賛同するかのように、お腹が小さく鳴った。さっきのカップ麺は小腹を満たす程度にしかならず、一日中歩いて戦った後のエネルギーを補給するには足りなかった。
「ついでにご飯も買おう」
「システム」
僕は呼びかけた。
青いホログラム画面が再び現れ、その柔らかな光が僕の顔を照らした。検索キーワードを思い浮かべる。【ソーラー充電式懐中電灯】。
リストが表示された。価格の安い順に絞り込む。
【登山用懐中電灯】
説明:本体にソーラーパネルを内蔵したコンパクトなLED懐中電灯。緊急充電用の手回しハンドルを装備。防水、耐衝撃仕様で、3つの点灯モード(強、弱、点滅)を搭載。太陽光に6時間当てるだけで、最大8時間の連続使用が可能。
価格:20ポイント
「二十ポイント? 結構高いな」
愚痴をこぼした。
「でも……これはすごく役に立つ」
買い物かごに入れた。次は、まともな調理器具が必要だ。あのへこんだゴブリンの鍋にはもううんざりだった。
【ステンレス製小型片手鍋――オクソン製】
説明:直径15センチの万能鍋。インスタント麺の調理、湯沸かし、一人用の簡単な料理に最適。
価格:15ポイント
「鍋だけでどうして十五ポイントもするんだ?」
文句を言いながらも、買い物かごに入れた。さらに緑色のプラスチック製の椀を一つ、折りたたみ式の先割れスプーンを一つ、ステンレス製の水筒を一つ追加した。
最後に、一番大事なもの。食料だ。食品カテゴリーを開くと、唾液がじわりと溢れ出てくるような一つのメニューにすぐさま目が留まった。
【ジャンボ子持ちバクソ+白ご飯】
カスタマイズ機能を使った。
「サンバルソース多め、ケチャップマニス少なめ、野菜抜き」
価格:8ポイント
【ミネラルウォーター 600mlボトル】:1ポイント
合計:44ポイント。残高:758ポイント。
僕は【購入】ボタンを押した。
ブウゥゥン……
物音一つ立てずに茶色い段ボール箱が膝の上に現れた。音を立てないように慎重に開封する。必要なものだけを取り出した。椀、先割れスプーン、水筒、そして湯気で水滴のついた、バクソが入った透明なビニール袋だ。
「うわ、まだ温かい」
出汁スープの香ばしい匂いが、サンバルの辛味と揚げエシャロットのわずかな香りと混ざり合い、一気に漂い出て小さな洞窟を満たした。あまりにも強く、あまりにも懐かしく、そして……たまらなく食欲をそそる匂いだった。
この匂いで彼らが目を覚まさないといいのだが。
熟睡している三人の冒険者をちらりと見た。呼吸は規則正しい。大丈夫だ。
できる限り静かな動作で、ビニール袋の中身を新しい緑の椀に注ぎ入れた。まだ熱くほんのり油の浮いた出汁スープが揺れ、中央で割れたジャンボバクソが姿を現した。その中には小さな肉団子とうずらの卵が詰まっている。周囲には春雨と黄色い麺が浮かび、香ばしい揚げエシャロットが散らされていた。
ご飯の包み紙を開いた。ふっくらとして、まだ湯気が立ち上る白ご飯だ。スプーンでご飯を少量すくって椀に入れ、スープに浸した。
最初の一口をすくい上げる。スープ、麺、春雨、そして小さなバクソの欠片。
温かいスープが舌に触れた瞬間、僕は思わず目を閉じた。
最高だ。
牛骨出汁の旨みが濃厚で奥深い。香ばしく、ほどよい塩気があり、生姜と胡椒のかすかな温かみがある。サンバルソースはちょうどいいピリッとした刺激をもたらし、辛すぎず、だが額にうっすらと汗をかかせるには十分だった。スープを吸ったご飯は柔らかくなり、すべての旨みを閉じ込めていた。
大きなバクソを一口かじった。弾力がありながらも柔らかい食感だ。小麦粉ばかりではなく、しっかりとした肉の味がする。そして中から溢れ出す小さな肉団子と卵の濃厚な旨みが、全体を完璧に仕上げていた。
「あぁ……うまい」
その美味しさに、思わず呻くように囁いた。
こんなに美味しいご飯を食べたのはいつ以来だったか、思い出せないほどだった。
森の中で一日中カップ麺だけで生き延びてきた後では、この素朴な食事がまるで女神の手料理のように思えた。
がつがつと、しかし一口一口をじっくり味わいながら食べた。すべての食感を。すべての味を。スープをすする自分の音が、耳に大きく響いた。
『この力を手に入れられて本当によかった』
咀嚼しながら、僕は考えた。
『少なくとも、この過酷な中世世界にあっても、美味しい食事にありつくことができる』
もう一度ガレン、ディナ、トムの方を見た。彼らはまだぐっすり眠っており、隣のバクソの匂いにも邪魔されていないようだった。
よかった。
最後の一滴まで椀を空にすると、僕は洞窟の壁に背をもたせかけた。お腹が満たされ、ぽかぽかと温かかった。
「あぁ……満腹だ」
満足のため息をついた。
「バクソもすごく美味しかったし、ご飯も柔らかかった。こんな料理を食べたのは何世紀ぶりかって気分だよ」
満腹になった腹と疲弊した体のせいで、重い眠気が襲ってきた。
食事の後片付けをし、残ったミネラルウォーターで椀とスプーンを洗い、バックパックにしまい直した。ゴミはすべて後で捨てるためにビニール袋にまとめた。痕跡を残すわけにはいかない。
洞窟の入り口にある見張り番の位置に戻り、冷たい壁に背を預けた。ジャケットのポケットに隠したグロック拳銃のグリップから、手は決して離さなかった。
外の暗闇を見つめながら、必死に目を開け続けようとした。しかし、お腹の温もり、一日中溜まった疲労、そしてこの洞窟の見せかけの安全が、僕の意識を奪おうと結託していた。
頭が胸元へとがくりと垂れた。
そして僕は眠りに落ちた。
……
「おい、リアム」
声がした。優しく、しかし切迫していた。
「リアム」
半分眠っている耳には、その名前が見慣れないものに感じられた。
「リアム、起きろ」
「昨日のバクソ……すごく美味しかったな……」
温かく風味豊かな夢の中を彷徨いながら、僕は呟いた。
「リアム、起きなさい!」
バシャッ!
突然冷たく濡れた感触が顔に浴びせられ、僕は驚いて飛び起きた。
「うわあっ!」
跳ね起き、目を大きく見開いた。
「ここ……どこだ?」
慌てて周囲を見回した。湿った洞窟。黒い灰となった焚き火の燃え残り。そして洞窟の入り口の外は、まだ一面の闇に包まれていた。
夜明け前の薄暗い光の中に、三つの人影がおぼろげに立っていた。彼らはすでに荷物をまとめ、出発の準備を整えていた。
そして思い出した。
「そうだ。僕は今、異世界にいるんだった」
僕は自分自身に呟いた。
「やっぱり全部夢じゃなかったのか」
大きくため息をついた。
「何を言っているの、リアム?」
僕を起こすために使ったばかりの水筒を手にしたまま、ディナが尋ねた。
「何でもないよ、ディナ。起こしてくれてありがとう」
顔に残った水を拭った。
「それから……ごめん。昨夜は寝落ちしちゃったんだ。すごく眠くて」
両手を合わせて、謝罪のポーズをとった。
「いいのよ」
ディナが答えた。
「それに、あなたが眠ってすぐ後にガレンが見張りの交代で起きてくれたの。あなたがぐっすり眠っているのを見たそうよ」
「よかった……」
僕はほっとして呟いた。
「リアム」
その安堵を遮るように、ガレンの低い声が響いた。
「見張りが無理そうなら、ディナか俺を起こすべきだった。自分の行動がどれほど危険だったかわかっていないな。この森は魔物でいっぱいだと教えたはずだぞ。寝ている間に命を落とす冒険者だって珍しくないんだ」
僕はうつむいて頷くことしかできなかった。彼の言う通りだ。僕が悪かった。状況を甘く見すぎていた。
「もういいだろ、ガレン。早く出発した方がいい。昼に近づくほど、活動する魔物も増えるんだからな」
トムが口を挟んで僕をかばってくれた。
「ああ、そうだな。だが肝に銘じておけよ、リアム」
ガレンは背を向け、トムが立ち上がるのを手伝って肩を貸しながら言った。
「忠告ありがとう、ガレン」
僕は素直に答えた。
「気に病まないでね、リアム」
ディナが微笑みかけてくれた。
「ガレンはあなたのためを思って言っているのよ。あなたのことが嫌いなわけじゃないんだから」
「わかってるよ」
僕は返した。
立ち上がり、荷物をまとめ始めた。ジャケットの内側に隠したグロック拳銃を確認し、マガジンが満弾でセーフティがかかっているのを確かめる。食べた後のプラスチックゴミはすべて昨夜の袋にまとめ、洞窟の奥に置いておいた。
洞窟の入り口へと歩いた。厚手のジャケットを着ているにもかかわらず、刺すような朝の冷気が顔を打ちつける。東の地平線の空は、ようやく淡い藍色の光を帯び始めたところだった。
手元の時計に目をやった。04:25。
「まだ随分と早いな」
「何を見ているの、リアム?」
木の杖をしっかりと握りしめ、ディナが近づいてきた。その緑色の瞳は、隠しきれない好奇心で僕の腕時計を見つめていた。
僕はすぐにジャケットの袖を引き下げて隠した。
「何でもないよ」
「ディナ、どうしてこんな朝早くに出発するの?」
トムに肩を貸すガレンの後ろをついて歩きながら、話を逸らすように尋ねた。
「多くの魔物は夜になると活動が鈍るからよ。寝ているの。夜行性の魔物は大抵小型で、それほど危険じゃないものが多いしね」
「そうなんだ」
「ディナ」
「なあに?」
「時計について……何か知っている?」
僕は慎重に尋ねた。
「もちろん知っているわよ。冒険者ギルドの建物の中や街の広場で、時計っていうものならよく見かけるわ」
彼女は怪訝そうに僕を見た。
「どうしてそんなことを聞くの?」
「今が何時なのか知りたかっただけだよ」
「それなら、街に着いてからじゃないとわからないわね」
彼女は微笑みながら答えた。
「ねえ、リアム」
彼女は少し口ごもりながら、再び口を開いた。
「私のこと……『お姉ちゃん』って呼んでくれない?」
「え?」
僕は当惑して彼女を振り返った。並んで歩く僕たちの足元で、濡れた落ち葉が微かに音を立てていた。
「つまりね」
薄暗い光の中で、彼女は少し顔を赤らめながら言葉を区切った。
「あなたまだ小さいのに、ずっと私のことを呼び捨てにするじゃない。それって……少し不作法だと思うのよ」
僕は押し黙り、その要求を吟味した。前方から、ガレンとトムが笑いを堪える声が聞こえてきた。
僕より年下である可能性が高い女性を、『お姉ちゃん』と呼べと?
もう一度彼女の容姿を観察した。長いピンクの髪、白い肌、緑色の瞳……西欧風の顔立ち。確かに美人だ。だが、それでも……。
『うーん……』
どう角を立てずに断るべきか、僕は考えを巡らせた。
「そいつの言うことなんて聞かなくていいぞ、リアム!」
もはや笑いを堪えきれなくなったガレンが前方から声を張り上げた。
「ディナはいつもそうなんだ。子供が大好きでな。子供を見かけるたびに、わざわざ可愛い顔を作って『ディナお姉ちゃん』って呼ばせようとするのさ」
それを聞いて、僕は反射的に一歩後ずさりし、ディナから距離を取った。
『ショタコンか?』
そんな考えがふと頭をよぎり、背筋がゾッとした。
「ガレンのバカ! なんてこと言うのよ! リアムに変な誤解されちゃったじゃない!」
ディナは顔をトマトのように真っ赤にして怒鳴った。
「聞いて、リアム! あなたが思っているようなのとは違うの! その……あのね……」
恥ずかしさとパニックで声を上ずらせながら、彼女は必死に弁解しようとした。
僕はさらに距離を取り、安全なガレンの側へと寄った。
「リアム、聞いてってば! 違うの!」
「シッ! 静かにしろ!」
ガレンの声が不意に鋭くなった。彼は後ろへ手を伸ばし、ディナと僕を制止した。
僕の全身が一瞬で強張った。グロックを引き抜き、両手で固く構えた。銃口の先がわずかに震える。
ディナを盗み見た。ふざけた表情は消え去り、冷ややかな真剣さに取って代わられていた。彼女は木の杖を両手で握り、警戒の姿勢をとっている。
ガレンの背後でゆっくりと身構えながら、僕は前方の暗い森へと視線を走らせた。




