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第42章:異世界から来た者たち

数日前のこと。


「さっきのコボルド狩りのクエストから無事に戻れてよかったよ」

 その中の一人が長いため息をつきながら言った。


「この世界に来てからもう一ヶ月近くになるんだ。コボルドの一匹くらい倒せて当然だろ」

 仲間の一人が額の汗を拭いながら返した。

「それすら失敗してたら、さすがに目も当てられないぜ」


 木製の弓を体の脇で固く握りしめた黒髪の少女が、隣にいる黒い天然パーマの少年に冷ややかな視線を投げた。


「あんた、さっきそのコボルドに飛びかかられて死にかけたばかりじゃない」

 ヤナミという名の少女が鋭く皮肉を飛ばし、口元を歪めて嘲笑の笑みを浮かべた。

「ヒロが素早く助けてくれなかったら、今頃あんたの名前は過去形になってたわよ」


「ぐっ! そ、それは……」

 健太は恥ずかしさで顔を真っ赤にして口ごもった。手荒に後頭部を掻く。

「油断して侮りすぎてただけだ! だいたい、あのクソコボルドがあんなに素早く動けるなんて知るわけないだろ?!」


「言い訳ばっかり。コボルドを狩り始めてもう一週間近く経つのに、あんたはいまだにあのスピードに慣れてないじゃない」

 ヤナミは鼻で笑い、無関心そうに肩をすくめた。


「まあまあ、ヤナミ。健太をそう追い詰めるなよ」

 ヒロが一歩前に進み出て、両手を軽く挙げながら二人の間に割って入り、場を和ませようと苦笑いを浮かべた。


「追い詰めてなんてないわよ。ただ事実を言っただけ」

 ヤナミは木弓を握る手に力を込め、引き下がろうとしない勝ち気な姿勢で顎を上げた。


「ああそうさ、お前の言う通りだよ、ヤナミ! 確かに俺はまだコボルドの速度に慣れてないさ。どうしようもないだろ? 俺はお前みたいに、魔物のスピードに対抗するために未来の弾道を予測できる加護なんて持ってないんだからな!」

 健太は苛立たしげに舌打ちし、石畳の小石を蹴飛ばして遠くへ転がした。

「それに、さっきヒロには直接ちゃんと謝ったじゃないか!」


「まあまあ、二人とも」


 今度は、少年らしさを残しながらも穏やかさを湛えた声が仲裁に入った。声の主は石川ハル――くすんだ鎧を身に纏い、広い背中に大剣を堂々と背負った長身で大柄な少年だった。


「石川、お前だってさっき大剣を振り回したときミスしただろ!」

 健太は話を逸らすため、あからさまにわざとらしい怒りを装って胸を張り、大柄な少年の顔を指差した。

「さっき俺の体を真っ二つに両断しそうになったじゃないか!」


 石川は気まずそうに首筋をさすり、申し訳なさそうな苦笑いを浮かべた。

「その件は悪かったよ、健太。まだこの大剣の重さを制御しきれてなくてさ。知ってるだろ? 地球にいた頃は、剣道なんて基礎すらやったことなかったんだから」


「だったら扱えないくせに、なんでロングソードやショートソードを使わないんだよ?!」

 健太は胸の前で腕を組み、眉をひそめて友人を睨んだ。


「大剣の方が圧倒的に格好いいからさ。理由はそれだけ」

 石川が答えた。


「チッ、くだらない理由だな」

 健太は呆れて目をぐるりと回した。


「健太、さっきから不平不満ばかり言って怒鳴り散らして。一体何が言いたいの?」


 冷ややかな問いかけが、星名雪乃の唇から紡ぎ出された。美しく流れる黒髪の長い少女は類稀な美貌の持ち主だったが、氷のように冷徹なオーラを放っていた。すらりと伸びた手足の長身で、細い腰に差した刀の柄に右手を何気なく乗せている。


「そ、それは……」

 雪乃の鋭い双眸にまっすぐ見据えられ、健太は一瞬で言葉を失い、縮み上がった。


 小さな一団は揃って足を止めた。七人の少年少女は石畳の小道の真ん中で立ち尽くし、突如言葉に詰まった健太の次の言葉を待つように振り返った。


 健太は生唾を無理やり飲み込み、言葉を絞り出した。

「それは……すごく不安だからだよ。俺たち、本当にこんな惨めな暮らしをいつまでも続けなきゃいけないのか?」


 体の脇で拳が固く握りしめられ、今まで抑え込んできた鬱屈した感情が滲み出ていた。


「この世界に来てもう一ヶ月近くになるんだぞ! なのに、俺たちが成し遂げたことって何だよ?! やってることといえば、下らない雑用クエストばかりじゃないか! 悪臭の漂う下水道のドブネズミ退治や、森の外れでのコボルド狩り……しかも、あんな最下級のザコ魔物一匹を倒すためだけに、命を削って死に物狂いにならなきゃいけないんだぞ!」


「食事して寝るためだけに、馬小屋同然のみすぼらしい安宿に泊まるしかない! ああ、安いのは分かってるよ、俺たちが金のない貧乏人だから仕方なくそこに泊まってることくらい! だけど……」

 健太の声が震え始めた。

「地球にいた頃、こんな惨めな目に遭ったことなんて一度もなかったんだ!」


 彼は絶望に染まった目で、仲間たちの顔を一人ひとり見つめた。

「なあ、お前ら考えたことないのかよ? なんで俺たち七人だけが、急にこんなわけのわからない世界に放り出されたんだ?」


「あの日の放課後、俺たちは授業が終わって普通に他の生徒たちと一緒に校門をくぐっただけだった。それなのに、なんで俺たち七人だけがここに来ちまったんだよ!?」


「今でも鮮明に覚えてるぞ! あの校門を抜けたとき、周りには何十人もの他の生徒がいたんだ! なんであいつらは巻き込まれなかったんだよ?!」


「もしかしたら……あいつらもランダムに飛ばされて、この世界のあちこちに散り散りになったんじゃないか? 俺たちみたいに同じ場所に固まって現れなかっただけで」


 その推測を口にしたのは夏木涼だった。健太はすぐに、黒髪にスクエア型の眼鏡をかけた少年に顔を向けた。涼は標準的な冒険者の革鎧を身につけ、右手には鉄の槍を固く握りしめていた。


「ああ……お前の言う通りかもしれないよ、涼」

 健太は荒く息を吐き、両手で顔を覆った。

「だけど、やっぱり納得がいかないんだ」


「俺たちは強力な魔術もチート能力も授けられないまま喚ばれたんだぞ! 持ってるものといえば、現地の奴らが加護と呼ぶあの能力だけ……言葉を通じさせるための自動翻訳機能くらいしか役に立たない! ヤナミやミユキ、雪乃には別の加護があるけれど、残りの俺たちはマーシャルアーツの基礎知識と理解力をかじった程度だ……」


「クソッタレ!」

 健太は苛立ちを露わにして虚空を蹴り上げた。

「俺が読んできた異世界のテンプレ通りならさ……俺たち、無敵の最強の勇者になるはずじゃないのかよ?!」


「それが今のお前らや俺を見てみろよ! 七人がかりで連携して、コボルド一匹倒すだけで死にかけなんだぞ! それだって雪乃とミユキとヤナミの加護の助けがあって、一週間丸々かかってようやく一匹だ。何の冗談だよ?!」


「この世界の難易度……ふざけすぎなんだよ、クソが!」


 その痛烈な悲痛の叫びを前に、反論できる者は誰一人いなかった。残る六人の少年少女は揃って顔を背け、冷たい石畳へと視線を落とした。過酷な現実が、彼らのプライドを打ち砕いていた。


「健太……」

 息の詰まる沈黙を破り、ヒロが静かに歩み寄った。整った顔立ちの少年は健太の肩に手を置き、励ますように軽く叩いた。

「気持ちは痛いほどよく分かるよ。でも忘れないでくれ……俺たち全員、同じ苦しみを抱えてるんだ。ここで絶望を感じているのはお前一人じゃない」


「解決策なら一緒に考えよう。どんなに厳しい壁だって、乗り越える道は絶対にあるはずだ」

 仲間の士気を保つため、ヒロは無理に前向きな笑顔を作って続けた。


「ヒロの言う通りよ、健太。そんな暗いこと考えて苦しんでるのが自分一人だけだとでも思ってんの? 私たちだって毎晩同じことを考えてるわよ!」

 ミユキが辛辣に言い放った。二振りの短剣を器用に扱う少女は胸の前で腕を組み、軽蔑の色を込めて健太を見下ろした。

「違いといえば、私たちのメンタルはあんたほどヤワじゃないし、あんたみたいに喚き散らしたりしないってことだけよ!」


 健太のこめかみに青筋が浮かんだ。蔑むような眼差しを受け、胸の中で煮え滾っていた怒りがついに爆発した。顎を強張らせ、健太は少女の顔面を殴り倒そうと拳を高く振り上げた。


「言葉を慎め、ミユキ……!」

 激昂に歯をガチガチと鳴らしながら健太が唸った。


「やめなさい!」


 ヒュッ!


 氷のように冷徹な気迫が石畳の通りを一瞬で吹き抜け、一触即発の空気を凍りつかせた。星名雪乃が一歩踏み出し、争う二人の真ん中に割って入った。その深い青色の瞳は鋭く研ぎ澄まされ、剣の刃先のように誰であろうと切り裂かんばかりだった。


「みっともなく子供みたいに喧嘩するのはやめてくれない?!」

 一切の反論を許さない雪乃の凛とした声が響き渡り、健太の拳は空中でぴたりと静止した後、ゆっくりと下ろされた。


「こんな風にいがみ合ってばかりいたって、何も解決しないわ」

 雪乃は仲間たちの顔を一人ひとり見渡した。夕風が長い黒髪を揺らし、その佇まいに毅然とした威厳を添えていた。


「私たちはあんたが読んでいるような異世界物語の勇者なんかじゃないわよ、健太。でも、下水道のネズミを狩り、下級魔物に殺されかけながらも、今日まで生き延びてきたという事実そのものが、私たちが必死に足掻いている何よりの証拠じゃない」


 雪乃は刀の柄から手を離し、体の脇へと自然に下ろした。


「私だって自分の家に帰りたいわよ。帰省したいし、家族にも会いたいし、まともなご飯だって食べたい。でも、道の真ん中で運命を嘆いて仲間割れしたところで、何一つ変わりはしないわ」


 健太は赤くなった顔を背け、小さく鼻を鳴らした。拳の力は緩んだものの、口元は固く結ばれたままだ。


「雪乃の言う通りだ」

 涼は人差し指で眼鏡の位置を直した。薄いレンズが夕日の光を反射する。

「今日のコボルド討伐は骨が折れたけれど、銀貨一枚を手に入れることができたじゃないか。昨日の石みたいに硬いパンをかじるより、これからの一週間にまともな飯を食うには十分すぎる金額だよ」


「俺たちの命の値段が、たったの銀貨一枚かよ」

 健太は地面に唾を吐き、皮肉交じりに呟いた。

「搾取もいいところだ」


「しかもその銀貨一枚を七人で山分けしなきゃならないんだぞ、ふざけやがって」


「路上で野垂れ死ぬよりは、銀貨一枚でも手に入る方がずっとマシよ」

 ミユキが素早く言い返したが、今度の口調にはさっきほどの棘はなかった。太ももの革鞘へと短剣を納め直す。


 ずっと仲裁役に回っていたヒロが、ようやく長いため息をついた。


「ひとまず冒険者ギルドへ戻って、クエストの達成報告をしよう」

 パーティーの意識を本来の目的へと戻すよう、ヒロが提案した。

「報酬を受け取ったら、飯屋を探そう。ささやかなお祝いとして、みんなに焼き肉をご馳走するよ」


「焼き肉?!」

 石川の目が一瞬で輝いた。

「本気か、ヒロ? 本当に肉が食えるのか?!」


「もちろんさ」

 ヒロは満面の笑みを浮かべ、石川の鎧の腕を叩いた。

「俺の奢りだ。だから、さっさと用件を済ませに行こう」


 『肉』という言葉を耳にした瞬間、彼らの間の張り詰めた空気は少しずつ和らいでいった。健太はまだ浮かない顔をしていたが、それ以上反論はしなかった。ずっと警戒を崩さなかったヤナミですら、肩の力をわずかに抜いた。


「ヒロ、その金はどこから手に入れたんだ?」


「ああ、それか……昨日の夜、通りで困っていた人をたまたま手助けしたら、少しばかり小遣いをくれたんだよ、涼」

 ヒロはぎこちない笑みを浮かべて答えた。


「ふーん」


 彼らは再び歩き出し、活気を取り戻し始めた街の石畳の通りを進んだ。


 しかし、ヒロの頭の中では、健太と同じ不安の渦が激しく渦巻き続けていた。


 健太の言うことは間違っていない……。


 ヒロは視線を落とし、自らの手のひらを見つめた。


 ミユキは風の加護によって俊敏に動ける能力しかなく、雪乃は剣術の習得速度が速く剣技の威力をわずかに強化できるだけ。そしてヤナミは遠見の視覚と、最大十秒先までの未来の弾道を予測できる能力を持つにすぎない。理論上は生き延びるための力を与えられているとはいえ、この程度の力で将来の安全が本当に保証されるのだろうか?


 この世界の難易度は、僕たちの想像を遥かに超えて過酷だ。今日だってコボルド一匹に死にかけたというのに……もしDランクや、ましてやCランクの魔物に遭遇したらどうなってしまうんだ?


 ヒロの足取りはいっそう重くなった。


 みんなの前で弱気な姿を見せるわけにはいかない。いつの間にかこのグループのリーダーに祭り上げられた者として、自分は強くあり続けなければならないのだ。誰一人として死なせないようにしなければ。


「ヒロ、前を見てみろよ」

 涼の声がヒロの長い物思いを打ち消した。


 ヒロは顔を上げた。赤レンガの通りの突き当たりに、ヴェニンブルクの冒険者ギルドの巨大な建造物がそびえ立っていた。白大理石の円柱が夕暮れの光を反射し、広場には働きアリのように何百人もの冒険者が行き交っていた。


「入ろうぜ。報告を早く済ませれば、それだけ早く飯にありつける」

 石川が促し、その足取りはずっと軽やかになっていた。


 受付窓口で、彼らはクエストの達成証明となるコボルドの右耳と、その魔物が身につけていた鉄の首輪のプレートを提出した。この二つの品が、パーティーが任務を完遂したことを証明する条件だった。


「こちら、銀貨一枚です」


 受付嬢は愛想の良い笑みを浮かべていたが、その眼差しには明らかな見下しの色が宿っていた。鉄格子の隙間から、人差し指の爪先で木製トレイに乗った硬貨を押し出してきた。


 その硬貨を受け取ると、彼らは足早に冒険者ギルドの建物を後にした。


「クソッ、あの女の小馬鹿にしたような目が本当に気に入らないわ」

 ヤナミは吐き捨てるように舌打ちし、通り抜けたばかりの巨大な木製扉を睨みつけた。


「仕方ないさ。七人も揃って森へコボルド狩りに出て、一日中かかってたったの一匹しか仕留められなかったんだ。俺たちのパーティーが見下されたって無理はないよ」

 ヒロは宥めるような声で言った。


「そうだけど、でも……」


「行こうぜ、ヒロ。もう腹ペコなんだ」

 石川が鎧に包まれた腹をさすった。


「それなら、一番安い店を選ぼう」


 不意に、雪乃の足がピタリと止まった。隣を歩いていたヒロも、反射的に足を止めた。


「おい、どうしたんだ? なんで二人とも急に立ち止まるんだよ?」

 ヒロの背中に誤ってぶつかり、少し赤くなった鼻の先をさすりながら健太が言った。


 ミユキと涼が首を伸ばし、二人が足を止めた視線の先を追おうとした。


 その先にあるものを目にした瞬間、健太の目が丸くなった。


 通りの向かい側に、この世界においては異様なほど目立ち、場違いな服を着た一人の少年が立っていた。あまりにも現代的な服装だった。頭には白いニット帽をかぶり、標準的な麻のチュニックを着た茶髪の大人の男と、自分たちと同年代に見える長いピンク髪の若い女性の後ろをついて歩いていた。


 ドクン!


 ニット帽の少年の足が止まった。その両目は見開かれ、こちらを見つめた瞬間、途方もない驚愕の色が走った。だがほんの数秒のうちに、彼は視線を逸らし、帽子を深くかぶり直して足早に立ち去っていった。


「なあ……あの子の服、変じゃないか?」

 健太は困惑を込めて小さく呟いた。


「あんたバカなの? ただの変な服なわけないでしょ。ジャケットからズボンに至るまで、明らかに現代の服よ……あれ、完全にジーンズじゃない」

 ヤナミは目を細め、遠ざかっていく少年の背中を見つめた。


「ってことは……?」

 健太の目が丸くなった。


「あの子、俺たちと同じ地球の人間だ」

 涼が短く答えた。


「でも見た目や顔立ちからして、俺たちの高校の生徒じゃないのは確実だぞ」

 健太は仲間たちを交互に見回した。


「それはつまり、私たちをこの世界へ呼び寄せた現象が……私たちだけに起きたわけじゃないってことね」

 雪乃は冷静に状況を分析し、指先を再び刀の柄に乗せた。


「これからどうするの、雪乃ちゃん?」

 ミユキは両手の人差し指を不安そうに合わせ、声を小さくした。


「さっきの態度を見る限り、あの子は明らかに私たちと関わりたがっていないわ。今は軽率に接触しない方がいい。それに、あの子が私たちに対して悪意を持っているかどうかすら分からないんだから」


「でもあの子、まだ子供だよ、雪乃ちゃん……子供相手にそこまで警戒するのは大げさな気がするけど」

 ミユキは視線を伏せた。


「甘いわよ、ミユキ。ここは中世の世界なの。地球みたいに厳格な法制度なんてないわ。生き延びるためならどんな無茶だってしかねない世界なのよ。同じ地球出身者だからこそ、あの子だって私たちに対して同じくらい強い警戒心を抱いているに決まっているわ」

 雪乃は落ち着いた口調で返した。


「まあまあ。その話は後回しにしよう。今はまず腹を満たして、温かい風呂に入って、それからあの子のことについて話し合う方がいいんじゃないか? どうだ?」

 ヒロが提案した。


「そうだな、ヒロリーダーの言う通り、まずは飯を食ってからその話をしよう」

 石川が温かく笑った。


「石川、何度も言ってるだろ、俺はお前たちのリーダーなんかじゃないって」

 ヒロは照れくさそうに返した。


「いいじゃないか、ヒロ。このパーティーの全員がお前をそう認めてるんだからさ。そうだろ、みんな?」

 石川は振り返り、仲間たちを一人ひとり見つめた。


 涼、ミユキ、ヤナミ、そして健太が迷うことなく一斉に頷いた。


 そして数秒後、雪乃もゆっくりと小さく頷いて見せた。


「ほらな?」

 石川は豪快に笑い、手のひらでヒロの肩をポンポンと叩いた。


「みんな、ありがとう」

 ヒロは彼らの眼差しに応え、その唇にようやく心からの笑みがこぼれた。

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