第38章:謎の爆発
「あなたに教えた初級の水魔術……理論上、あんな凄まじい破壊力を生み出せるはずがないわ。一体、さっき何をしたの?」
ディナは呟いた。その声は草原の風のざわめきに掻き消されそうだった。その視線は向かいの木に空いた貫通穴に釘付けになったままで、今目にしたばかりの光景が未だに信じられないようだった。
三角帽子を被った少女は、朝露にまだ濡れている草を踏みしめながらゆっくりと歩み寄り、先ほどまで魔導具として機能していた木片の成れの果ての傍らに跪いた。黒く変色してしまった木の表面を、指先でそっと撫でる。
「この魔導具が……こんな風に黒焦げになるなんて」
指先を汚す黒い煤を確かめながら、ディナはため息をついた。
「先生……?」
僕はおずおずと呼びかけた。
ディナが僕の方へと顔を向けた。そのエメラルドグリーンの瞳が、筋の通った合理的な説明を求めるように鋭く僕を射抜く。
「あの呪文にどんな改変を加えたら、あんな桁外れの破壊力が出るの?」
あれ? ちょっと待てよ。僕、何かまずいことでもやらかしたのか? どうして急にこんな張り詰めた空気になってるんだ?
痒くもない後頭部を掻きながら、僕は精一杯ぎこちない笑みを浮かべた。
「想像力を使って少し手直ししただけだよ、先生。体積を小さくして、限界まで圧力を圧縮して、撃ち出す前に渦潮みたいに回転させたんだ。うん……僕がやったのは本当にそれだけだよ」
ディナはゆっくりと立ち上がった。指先には黒い木の灰がついている。その首は、明らかな疑念を込めて小さく横に振られた。
「いいえ、リアム。絶対に筋が通らないわ。いくら並外れた想像力で手を加えたとしても、初級魔術の根本的な性質をあそこまで激変させるなんて不可能なの。仮に理論上可能だったとしても、高位の魔力操作技術を完全に習得していなきゃ無理よ」
ディナは歩み寄って僕との距離を詰め、その三角帽子の影が僕の顔を覆った。
「正直に言って」
ディナは目を細めて問い詰めた。
「さっき、本当は何をしたの?」
その真剣な顔を見つめていると、目の前に立つディナが、普段いつも優しく微笑みかけてくれる親しみやすい少女とはまるで別人のように思えた。プロの魔術師としての威圧的なオーラに、僕の肝は完全に冷えていた。
一筋の冷や汗がこめかみを伝い落ち、強張った頬を濡らした。この息の詰まるような視線から逃れるため、僕はすぐに顔を背けて足元の青草を見つめた。
くそっ、まずい! 地球の現代物理法則とウォータージェットカッターの仕組みを利用して呪文を改変しただけだなんて、正直に話せるわけがないじゃないか! 理解してもらうどころか、この中世世界の人間にH2O分子や静水圧、流体圧縮の概念なんて説明したところで、狂人扱いされるのがオチだ。そんなことをすれば、ますます怪しまれるだけだ!
僕の沈黙に気づき、ディナは深く息を吐き出した。その肩の強張りがゆっくりと解け、諦めのため息へと取って代わられた。
「まあいいわ、話す気がないなら無理強いはしない」
ディナはロングスカートについた薄い埃を手で払いながら言った。
「その奇妙なやり方を他人に教えないという約束を守ってくれるなら、この規格外の出来事には目をつぶってあげるわ。それに、そんな技術があなた以外の誰かに再現できるとも思えないし……それとも、これがエルフ族特有の生まれ持った才能なのかしら?」
「生まれ持った才能……?」
ディナはふと自分の言葉の途中で口を噤み、それから僕をまっすぐに見つめた。
「リアム、あなたの体の中にある魔術神経って、本当は何本あるの?」
真剣な表情で彼女が唐突に尋ねてきた。
「え?」
長い思考の沼から引き戻され、僕は間抜けな声を漏らした。
「聞いてるのよ」
ディナは胸の前で両腕を組み、根気よく繰り返した。
「魔術を使ったとき、活動している魔術神経の経路は何本あったの?」
「え、その……確か、百本くらいだったかな?」
さっき魔導紙に魔力を流し込んだときのあの奇妙な感覚を思い出しながら、僕は首を右に傾げておずおずと答えた。
僕が口にした数字を聞いた瞬間、ディナのエメラルドグリーンの瞳が見開かれた。口をわずかに開けたまま、驚愕のあまり数秒間凍りつき、やがて乱れかけた自らの表情を取り繕うように深呼吸をした。
「そういうこと……なるほどね。私の推測は外れていなかったわけだわ」
頭の中で難解なパズルを組み立てるかのように、ディナはゆっくりと頷きながら小さく呟いた。
「想像力には魔術の形状を変化させる力があるけれど、あそこまで飛躍することなんてあり得ない。つまり、それがあなたの持っている未知数だったのね――異常なまでの魔術神経の本数が」
「よし、それじゃあ特訓は一旦切り上げて少し休憩しましょう、リアム。もうすぐお昼だしね」
ディナはそう促すと、僕の脇を通り抜けて大木の木陰にあるシートの中央へと向かい、そこへ優雅に腰を下ろした。
僕は彼女の後をついて歩き、先ほどの魔術の実演でエネルギーを消耗したのか、少し脱力して見えるその背中を見つめた。
未知数?
さっき僕がやったことって、この世界の魔術師にとってはそこまで規格外のことだったのか?
これって、異世界転移者としての僕のチート能力なんだろうか?
いや……。
僕は小さく首を横に振った。
僕にはすでにオンライン通販システムというチート能力がある。二つも同時にチートを持っているなんて、いくらなんでも虫が良すぎる。
なら、やっぱり僕の魔術神経の本数と関係している可能性が高い。
それが魔術神経のもう一つの機能だったのか……?
今まで魔術神経なんて、体内の魔力を魔術回路へと送り、再び体外へ放出するためのただの通り道にすぎないと思っていた。だが実際には、魔力操作のような複雑な技術の習得を劇的に容易にしてくれる役割も持っていたのだ。
確かに、さっきから自分の魔力を思い通りに動かせる感覚があった。初めて試したときでさえ、その感覚は変わらなかった。
魔術神経の本数が桁外れに多いおかげなのだろうか?
それによって、魔力操作の習得が遥かに簡単になっているのだろうか?
わからない。
自分の推測が正しいかどうかを確かめる術はない。
だが、理由がどうであれ、この新たな才能と通販システムがあれば、この世界で何かを成し遂げられるという確信が湧いてきた。
これからの未来に待ち受ける道筋が平坦でないことくらい分かっている。
しかしこの二つの力があれば、僕の生存率は確実に跳ね上がるはずだ。
僕は先生が干瓢のような形をした独特な魔導具から、軽食の弁当や飲み物の容器を取り出すのを手伝った。これは物品を収納できる魔導具の一種で――概念としては僕のアイテムボックス機能にひどく似ていた。ただ、先生のこの瓢箪型の収納容量はずっと限られており、収納できる物品のサイズにも厳格な上限があった。物品のサイズに一切の制限がない僕のアイテムボックスとは、まさに雲泥の差だった。
「先生、この魔導具って先生ご自身が作ったものなの?」
その干瓢を好奇心からくるくると回しながら尋ねた。
「まさか、私が作ったわけないじゃない」
僕の仕草を見てディナはくすくす笑いながら首を横に振った。
「私には空間魔術の才能なんてこれっぽっちもないもの。空間を操作する魔術なんて、時間魔術の一段下に位置づけられる、世界で最も難解な魔術系統の一つよ」
時間魔術? そんな魔術が本当にこの世界に実在するのか?
アニメに出てくるあの伝説の時間停止能力のように、世界の時間の流れを止めることができる呪文が、この世界では単なる創作ではないというのか?
うなじを冷や汗が伝った。その現実に鳥肌が立った。この異世界の奥深さと神秘は、僕がこれまで想像していたよりも遥かに深淵で底知れなかった。
「じゃあ先生、この瓢箪のアイテムボックスにも、中に時間魔術の効果がかかっていたりするの?」
探るように尋ねた。
「アイテムボックス?」
聞き慣れない単語に、ディナは眉をひそめて怪訝な顔をした。
「あ、うん、僕の故郷じゃこういう異次元収納の容器をそう呼ぶんだよ」
設定が崩れないよう、僕は慌てて取り繕った。
「どうしてそんなことまで考えたの?」
ディナは不思議そうに僕を見つめて尋ねた。
「だって普通、こういう魔法の収納容器って内部の時間を停止させたり遅延させたりする機能がついているものだから」
瓢箪の口を指差しながら説明した。
「もちろん目的は、食べ物や傷みやすい品物が腐ったり冷めたりしないように保存するためだよ」
「お値段の張る高級な収納魔導具なら、あなたの言う通り時間停止の機能がついているわね。でも、この安物の瓢箪にはそんな機能は一切ないわ」
大木の幹にゆったりと背をもたせかけながら、ディナが説明してくれた。
本当に時間停止の魔術が存在するのか?!
さっき先生が時間魔術の話を出したから半分冗談のつもりで触れてみただけだったのに。まさか本当にそんな魔術が存在するとは思ってもみなかった。
「これはね、昔魔術学園にいた頃に、友人と一緒に試作したただの実験的な収納魔導具よ」
彼女は過去を懐かしむように薄く微笑んだ。
「私が干瓢の形の容器が好きだったから、外見をデザインしたの。子供の頃におとぎ話でよく読んだ魔導具を思い出させてくれるからね。術式構成を描いて術式を組み込む担当は、その友人だったわ」
先生は……本当にすごい人だな。
学園時代の彼女と同じくらいの年齢だった頃、僕は何をしていただろう? 何もない。ただ毎日を無為にサボって過ごし、貴重な青春の時間をあてもなく浪費していただけだ。
先生は学生時代を全力で真面目に生きていたに違いない。熱心に学び知識を深め、自分だけの革新的な製品を創り出せるまでに至ったのだ。手伝ってくれる仲間もいた。もしかすると、学年でもトップクラスの優秀な魔術師として卒業したのかもしれない。
父親が亡くなった後は、一家の大黒柱としての重責を毅然と背負い、自らの稼ぎで母と妹を養っている。
僕とはまるで大違いだ……。
「リアム、リアム!」
呆然としている僕の顔の前で、ディナが優しい手を振った。
「あ……ごめん、先生」
物思いからハッと我に返って言った。
「あなたって、本当にふとした瞬間にぼーっと考え込むのが好きね」
ディナはパンをひとかけら差し出しながらからかった。
「ほら、早く食べなさい」
シートの上の簡素な食事を見つめ、その整った顔に少し申し訳なさそうな色が差した。
「ごめんね、こんなパンとミルクのお弁当くらいしか用意できなくて」
「全然平気だよ、先生。本当にこれで十分嬉しいから」
心からそう答え、そのパンを受け取ってすぐに一口かじった。
まあ、現代人の舌にとっては極めて味気ないものであることには変わりないけれど。
それでも、食べ物は食べ物だ。無駄にしていいはずがない。世の中には僕よりも遥かに過酷な暮らしを強いられ、食事にすら事欠いている人々がごまんといるのだから。
「リアム、本当は普段通りに『ディナ』って呼んでくれていいのよ。そんなに改まってかしこまらなくてもいいのに」
ディナは少し気まずそうな眼差しで僕を見つめて言った。
「ダメだよ」
僕はきっぱりと首を横に振った。
「自分の師匠を以前みたいに呼び捨てにするなんて無礼な真似、できるわけないじゃないか。これほど貴重な魔術の基礎を心から教えてくれた後ならなおさらだよ」
真剣な表情で彼女の目を見つめた。
「自分を導いてくれた人を師として敬うのは、弟子としての当然の道理じゃないのかい?」
「僕の故郷にはね、こういう言葉があるんだ」
静かに続けた。
「師は弟子にとっての第二の親である、ってね」
「それは確かにそうなんだけど、でもやっぱり……」
ディナは反論の言葉を見つけあぐねて言葉を濁した。
「先生、その呼び方が嫌なの?」
首を傾げて尋ねた。
「嫌ってわけじゃないけれど……ああもう、好きに呼びなさい!」
ついにディナは叫び、恥ずかしさで真っ赤になった顔を背けた。
その純粋な反応に小さく笑った。
「それじゃあ、ディナ先生。今日からご指導よろしくお願いします」
僕たちは頭上の大木の葉の隙間から差し込む温かい木漏れ日に身を委ねながら、素朴な麦パンとミルクで昼食を終えた。平和で心地よい空気がゆっくりとまぶたを重くさせ、眠気へと誘ってくるようだった。
「ところで先生、いつも持っているその杖の本来の役割って何なの?」
先生の膝の近くに立てかけられた杖へと視線を向けながら尋ねた。
その外見の細部をしげしげと観察した。
造形も意匠も実に美しかった。森やゴブリンの巣で戦っていたときはじっくり見る余裕などなかったが、こうして間近で見ると……息を呑むほど見事で格好良かった。まさにファンタジーの工芸品そのものだ。
杖の柄は純白の大理石のような硬質な木で作られていた。木製だと知らなければ、鉄の棒だと思い込んでいたかもしれない。その身には、しなやかにうねる黒い唐草模様の彫刻が優雅にあしらわれている。先端部分は、鈍い銀色の三日月を思わせる流麗な曲線を描くように木が削り出されていた。その三日月の曲線の中心には、心を落ち着かせる微かな魔力の輝きを放つ、大きな球形の海色のクリスタルが嵌め込まれていた。
「ああ、これ?」
ディナは魔導杖を持ち上げ、手慣れた所作で空中でゆっくりと回して見せた。
「杖の助けを借りることで、魔術師は呪文の破壊力を劇的に底上げできるのよ。それに、魔術を行使する際の魔力消費を抑える役目も果たしてくれるわ」
ディナは先端の青いクリスタルを軽く叩いた。
「この杖の魔導クリスタルは、詠唱中に魔力を集約して呪文を増幅させる媒体として機能するからよ。クリスタルと木の柄が魔力の漏洩を最小限に防いでくれるから、エネルギーの消費がより経済的になり、魔術の制御力も格段に高まるの」
ディナは静かに杖を持ち上げた。
「こういう補助具があれば、素手だけで放つよりも弾道の誘導や魔術の操作が遥かに簡単になるわ」
その唇に誇らしげな笑みが浮かんだ。
「そしてもちろん、この杖は本職の魔術師であることの正統な身分の証でもあるわ」
「魔導クリスタルと木材の質が良ければ良いほど、必要とされる魔力の効率も高まるの。生み出される呪文もより強大になるし、魔術の負荷に耐える杖自体の耐久性も上がるのよ」
なるほど。この美しい道具は、決して単なる飾りや見栄を張るための道具なんかじゃなかったのだ。
昨日の狭い路地でチンピラに襲われた際、なぜディナの風魔術の精度があそこまで狂っていたのかという以前からの疑問も、この事実によって氷解した。杖の助けなしに、生身で呪文を放つことを強いられていたからなのだ。
僕はその青いクリスタルの輝きをじっと見つめ、その戦術的な利点のすべてを頭の中に刻み込んだ。
「先生、少しだけ触らせてもらってもいい?」
期待に目を輝かせながら、その白い魔導杖を見つめて尋ねた。
ディナは一瞬動きを止め、低く唸った。
「うーん……」
その声は僕の耳には少し曖昧に聞こえた。
「だ、ダメかな……?」
気後れして尋ね、伸ばしかけた手をゆっくりと引っ込めようとした。
「もちろんいいわよ、触ってみなさい。すごく気になってたんでしょう?」
僕のためらいを見て、ディナは面白そうに微笑んだ。
「あなたくらいの年の子は、触ったことのない珍しい物に対する好奇心が旺盛なものだものね」
「へへ、ごめん」
照れ隠しに小さく笑いながら、僕は気まずそうにうなじを掻いた。
手にした魔導杖を、抑えきれない歓喜と高揚感で見つめた。
ついに……ファンタジーの象徴とも言えるこのアイテムを、自分の両手で直接握ることができたのだ! 夢じゃない!
手のひらがその表面に触れた瞬間、僕は息を呑んだ。思っていたよりも遥かに軽く、木製バット一本分ほどの重さしかなかった。表面の質感は極めて滑らかで冷たく、粗い木のささくれなど一つもなかった。一度触れただけで、これが間違いなく目の飛び出るような値の張る高級品であると直感が告げていた。
「丁寧に扱いなさいよ。いい、さっきみたいな無茶な魔術を試したりしちゃダメだからね。私の大事な杖があなたのせいで壊れたりヒビが入ったりしたら敵わないんだから」
半分冗談、半分脅しの表情で人差し指を突きつけてディナが釘を刺した。
「チッ、先生ってばケチだなあ」
からかうように不満げな顔を作ってそっぽを向いた。
ドォォォォンッ!
突如として、遥か遠方から凄まじい爆発音が轟き、草原の静寂を切り裂いて足元の大地を揺るがした。
「な、何だ今の?!」
その轟音の出所を探ろうと目を見開いて叫んだ。
「ぼ、僕じゃないからね!」
突如の爆発の主犯格だと疑われたくなくて、まるで杖が真っ赤な熾火にでも変わったかのように慌ててシートの上に置き戻した。
その爆発音を耳にした瞬間、ディナの顔からおどけた余裕が一瞬で消え去った。緑の瞳が警戒の色を帯びて強張る。極めて素早い反射動作でシートの上の魔導杖を拾い上げると、僕たちの現在地からそう遠くない場所から空高く立ち上り始めた濃密な黒煙をまっすぐに見据えた。
草原の周囲にいた草食動物たちが一斉にパニックを起こし、遮蔽を求めて森の茂みの中へと我先にと逃げ込んだ。野生の鳥の群れも四方八方へと飛び立ち、騒々しい羽ばたきで朝の空を埋め尽くした。
「リアム、ここに残っていなさい。私一人であちらの様子を見てくるわ」
杖の柄を握り締め、妥協を許さない毅然とした口調でディナが命じた。
「嫌だ、僕も行く! 今の僕だって、もう魔術師なんだから、先生!」
わけもわからず一人取り残されることを拒み、僕は叫んだ。背筋を伸ばし、強い決意の籠もった目で彼女を見つめ返す。
ディナは心配と躊躇いが入り混じった複雑な眼差しで、僕をじっと見つめた。やがて、観念したような吐息が彼女の唇から漏れた。
「わかったわ」
僕の頑固さに折れてディナは言った。
「でも、絶対に軽率な真似をしないこと、私の指示なしに勝手に行動しないって約束しなさい。あの黒煙の向こうにどんな危険が待ち受けているか、見当もつかないんだから。もし危険すぎると判断したら、すぐに逃げるわよ。いい?」
「わかった」
拳を握り締め、頷いて力強く答えた。
「よろしい。なら、私の側へ寄りなさい」
僕は彼女の側へ素早く駆け寄り、その術式の効果範囲の内側へと入った。時間を惜しむようにディナが起動呪文を唱えると、僕たちは飛行魔術の力によって宙へと飛び上がり、遥か遠くで立ち上り続ける濃密な黒煙めがけて一直線に空を切り裂いて飛翔した。




