第23章:これは遥か昔の物語だが、私たちは決して忘れない
僕たちは歩き続け、やがて巨大な建物の影が僕たちを包み込んだ。
目の前に、エヴァ教会の大聖堂が威風堂々とそびえ立っていた。
その建物は、象牙色のゴシック建築の傑作だった。双子の鐘楼が高くそびえ立ち、まるで雲を突き刺さんばかりだった。巨大なバラ窓のステンドグラスが太陽の光を反射し、僕たちの立つ石畳の広場に踊る虹色のスペクトルを描き出していた。高さ五メートルの黒い鉄木で作られた正門には、目の前の闇の怪物に立ち向かう五人の姿を描いた緻密な浮き彫りが刻まれていた。
「すごく大きいな……」
僕は思わず呟いた。
大きく開け放たれた巨大な木門をくぐり、中へと足を踏み入れた。
僕の教会のイメージといえば、静かで、厳かで、静寂に満ちたものだった。
しかしここは対照的に、活気に満ちていた。
高い身廊の天井に何百人もの話し声のざわめきが反響し、ツンとする蜜蝋の香りと甘い香煙の匂いが混ざり合っていた。
視線を忙しなく巡らせ、周囲を見渡した。白い長ローブを着た男たちが書類の山を抱えて足早に行き交っている。黒い修道女服に黒のヴェールをかぶったシスターたちが、囁き合いながら並んで歩いていた。その間を一般の市民や冒険者たちが行き交い、長椅子で跪いて祈りを捧げる者もいれば、側面の窓口に列を作っている者も見られた。
ここにいる人々に共通していたのは、抽象的な太陽を模したペンダントのネックレスを首にかけていることだった。大半は銀色だったが、首元に輝く金色を身につけている者も一人二人見受けられた。
「ああ、ガレンとディナですね? トムのお見舞いに来たのですか?」
穏やかでありながら奇妙な余韻を持つ声に、僕たちの足が止まった。
声の主へと視線を向けた。
脇の祭壇の方から、一人の青年が歩み寄ってきた。
彼の身なりは異質だった。他の者たちのような白いローブではなく、裾まで綺麗に届く古典的な黒いキャソックを身に纏い、その仕立ては体にぴったりと合っていて、詰襟のスタンドカラーと前面に並ぶ小ぶりなボタンが特徴的だった。腰には質素な茶色の帯が巻かれている。手には、表紙に金色の抽象的な太陽の紋章が刻まれた、黒革装丁の分厚い本を抱えていた。
普段は気さくで粗野なガレンが、不意に背筋を硬く伸ばした。彼は頭を下げた。冒険者ギルドの受付嬢にすら見せたことのない、これまでに見たこともないほどの敬意を込めた仕草だった。
「はい、神父様」
ガレンは低く丁寧な声で答えた。市場のゴロツキのような口調は跡形も消えていた。
「仲間の様子を見に伺いました」
隣のディナも、小さく優雅にカーテシーをした。
黒衣の青年の顔を観察した。髪は漆黒で、短く整えられている。瞳は温かみのある茶色だったが、そこには言葉では言い表せない深みがあった――まるで僕の服や肌を透かして見通しているかのようだった。
まだひどく若かった。二十代前半くらいだろうか? 日焼けした冒険者たちの荒れた肌とは違い、肌は滑らかだった。だが、彼から放たれる雰囲気は……心を落ち着かせるものだった。
その茶色の瞳が僕へと向けられた。
彼は微笑んだ。穏やかな笑みだった。
「今日は興味深い小さなお客様をお連れのようですね」
彼が言った。
興味深い? どういう意味だ?
「お名前を伺ってもいいですか、坊や?」
彼が尋ねた。
頭をフル回転させた。
慌てるな。礼儀正しく振る舞え。流れに合わせろ。
僕は右手を左胸、心臓の真上に当て、軽く上体を前傾させた――深くも浅くもない、およそ三十度ほど。中世ヨーロッパ貴族風の礼儀作法で、王国もののアニメでよく見かけた仕草だ。
「リアムと申します。リアム・アシュフォードです、神父様」
声を落ち着かせ、敬意を保つよう意識しながら答えた。
青年の眉がわずかに上がった。
「実に美しい所作ですね」
彼は静かに褒めた。
「道に迷われた貴族のお子様ですか?」
「えっ、いえ。ただの平民です」
僕は首を横に振りながら慌てて否定した。
「そうですか。なら、ご両親の教育がよほど行き届いていたのでしょう」
彼は歩み寄り、僕たちとの距離を縮めた。お香と古書の匂いが彼から漂ってきた。
彼は黒衣のポケットに手を入れ、何かを取り出した。抽象的な太陽のペンダントがついたシンプルな銀のネックレスだった。それを僕に差し出してくる。
「これをあなたに」
僕はためらいながらその品を見つめた。
「これは……?」
「初対面の贈り物ですよ」
子供に飴玉でもあげるかのように、彼は軽やかに言った。
「あなたは興味深い子ですね、リアム」
その声は穏やかだったが、教会の柱の間に静かに響き渡った。
彼は一息つき、沈黙を漂わせた。その静かな茶色の瞳はもはや僕の目を見てはおらず、まるで目に見えない何か、彼にしか見えない何かを見ているかのように、僕の肩や頭の周りの空間をゆっくりとなぞっていた。
彼の口元が上がり、真意の掴めない謎めいた笑みを浮かべた。
「どうやら……このあたりの精霊たちに好かれているようですね……」
精霊。
僕は横の何もない空間へと目をやった。
そこには何もない。
木漏れ日の光の筋の中で埃の粒子が舞っているだけだ。だが、彼のあの言い方は……。
この人には、僕に見えない何かが見えているのだろうか?
「ヴェニンブルクの街に来たのは、これが初めてですね?」
彼が再び尋ねた。
「は、はい、そうです」
僕は答えた。
「どうして神父様にはわかるのですか?」
彼は首を少し傾げ、その謎めいた笑みを唇に浮かべたままだった。
「直感ですよ」
彼は答えた。
「それに……数週間前にも、あなたとまったく同じ『戸惑い』の表情を浮かべた一団を見かけましたから」
数週間前?
さっき通りで見かけたアジア系の顔立ちをした少年少女たちの姿が、脳裏をよぎった。
「彼らもまた、初めてこの世界を目にしたかのような顔をしていました」
彼は僕にしか聞こえないほどの囁き声にトーンを落として続けた。
「この街を楽しんでくださることを願っていますよ、リアム・アシュフォード。あなたの歩みに神の御加護があらんことを」
彼は背筋を伸ばし、ガレンとディナに短く会釈すると、踵を返した。
「失礼。朝のミサの準備がありますので」
彼は黒い服を微かに揺らしながら歩き去り、大理石の柱の陰へと姿を消した。冷たい銀のネックレスを握りしめたまま呆然と立ち尽くす僕を残して。
「行くぞ、リアム」
ガレンの声に現実に引き戻された。僕は深く息を吐き出した。
僕たちはより静かな脇の通路へと向かった。
「ガレン」
「ん?」
「あの人……一体何者なの?」
ガレンはすぐには答えなかった。歩き続けたが、あの青年が去ったことで、その肩の力が少し抜けたのが見て取れた。
「あの方はアリョーシャ・ノアだ」
ガレンは答えた。その声には依然として敬意と恐縮の色がはっきりと滲んでいた。
「この教会の神父様だ。人格者でな、話しているとなぜだか心が落ち着くんだよ。街の人々の間でもかなり慕われている」
僕は視線を落とし、手のひらに乗った銀のネックレスを見つめた。金属は冷たくて重みがあった。抽象的な太陽のペンダントは非常に繊細に彫り込まれており、その表面は教会の薄明かりを捉えて柔らかな輝きを放っていた。
「これ、どうすればいい?」
僕は尋ねた。
「持っておけばいいじゃない」
ディナはごく当たり前のことであるかのようにあっさり返した。
「贈り物よ。突き返すなんて失礼でしょう?」
「そうは言っても、僕、別に……」
舌がもつれた。言葉が宙に浮いたまま止まり、あやうく口から零れ落ちるところだった。
僕はエヴァ教の信者じゃない。
危ない。クソッ。異端とみなされかねない言葉を口にするところだった。
「別に何?」
ディナが振り向き、澄んだ緑の瞳で純粋な好奇心を向けてきた。
「あ、見て! トムだ!」
僕はこれ以上の追及を逃れるため、わざとらしい興奮気味に廊下の突き当たりを指差し、小走りに近い早足で歩き出した。
「こら、坊や! 廊下を走ってはいけません!」
横から厳格でしゃがれた修道女の声が飛んできた。彼女は背筋をぴんと伸ばし、前で両手を重ね、鷹のように鋭い眼光を向けていた。
「あ、すみません、シスター」
僕はすぐに足を緩め、謝罪の意を込めて軽く一礼してから、もっとおとなしく歩き直した。
僕たちは廊下の突き当たりにある広い部屋に到着した。広さは昔の大学のバスケットボールコート一面分ほどあった。室内の空気は清潔に保たれており、かすかに甘い薬草の匂いとハーブ系消毒薬の香りが漂っていた。純白のシーツが敷かれたベッドが整然と並び、それぞれに患者が横たわっていた。小さく呻く者もいれば、深く眠り込んでいる者もいる。青白い人間の顔ぶれの中に、呼吸を荒くしてぐったりと横たわる猫耳の幼い少女の姿も見えた。
ステンドグラスの窓の近く、トムの横たわるベッドへと歩み寄った。ディナとガレンが僕の後ろについてくる。
「ああ、来てくれたのか」
僕たちの姿を認めると、トムは弱々しく微笑んだ。顔色はまだ悪かったが、昨日よりはずっと良さそうだった。
「当たり前でしょう。具合はどう?」
ディナは家から持ってきたパンの籠を、ベッド脇の小さな木製テーブルの上に置いた。
トムは分厚い白包帯で巻かれた自分の足を軽く叩いた。
「治癒魔術のおかげで、だいぶ良くなったよ。シスターが言うには、昨日リアムの応急手当がなかったら、出血多量で死んでいたかもしれないそうだ。助かったとしても、一生歩けなくなっていたかもしれないってな。そこまで悪化していたら、治癒魔術でも治せなかったそうだ」
彼は僕を見つめた。普段は理知的なその瞳が、今は心からの感謝で満たされていた。
「リアム、本当に命を救われたよ」
「無事で本当によかった」
僕も心からの安堵を覚えながら頷いた。
「で、また歩けるようになるまで、いつまで寝たきりでいなきゃならんのだ?」
太い腕を胸の前で組みながら、ガレンが尋ねた。
「シスターに聞いてみたが、一ヶ月くらいだそうだ」
トムはため息をついて答えた。
「治癒魔術のおかげでダイアウルフの噛み傷自体は完全に塞がったんだが、普通に歩けるようになるには、骨と筋肉が完全に回復するまでの時間が必要なんだと」
「そうか」
僕は脇にあった空きの木製椅子を引き寄せ、トムの近くに腰を下ろした。
「そうそう、これだ」
ガレンがポケットを探った。
「お前の冒険者カードと、リアムからのダイアウルフの毛皮の分け前だ」
トムはそのカードを受け取った。その上に押された新しい黄色のスタンプを見て、手がわずかに震えていた。
「じゃあ……これがCランクの冒険者カードか?」
彼は喜びと申し訳なさが入り混じった複雑な表情で僕たち三人を見つめた。
「ゴブリンロードやダイアウルフ、それにあの魔物との戦いでも、俺は何も役に立たなかったっていうのに。俺なんかが受け取っていいのか?」
あの魔物? どの魔物のことだ?
「もちろんいいに決まってるじゃない」
ディナが素早く返した。
「私たち、一つのパーティーでしょう?」
「それに、この金も……」
トムはガレンから手渡された金袋を見つめた。
「毛皮の売り上げは全額リアムに渡すって約束だったはずだろ?」
「それ……僕が渡したんだ」
少し気まずさを覚えながら、僕は説明した。
「全部一人で受け取るのは気が引けたから」
「そうか……ありがとう、リアム」
トムは微笑んだ。
「私からもこれを持ってきたわよ」
ディナは持参した小さな籠を開け、数切れのパンと新鮮な果物を取り出してテーブルの上に置いた。
「ありがとう、ディナ」
温かい笑みを浮かべてトムが言った。
しかし数秒後、ガレンへと視線を移した彼の口元に悪戯っぽい笑みが浮かんだ。
「ところでガレン……お前は何か持ってきてくれなかったのか?」
からかうような口調で彼が尋ねた。
「え……いや、その……」
ガレンはあからさまに顔を背けた。耳元まで少し赤らんでいるのが見えた。
その反応を見て、トムはくすくすと笑った。
「まあいいさ、慣れっこだからな」
彼はベッドに気楽にもたれかかった。
「昔からお前は、病人に差し入れなんて滅多にしてこなかったしな」
「す、すまん……」
ガレンは気まずそうに頬を掻いた。
「次に来るときは絶対に何か持ってくる」
散々からかわれて明らかに照れくさそうに、ガレンは長いため息をついた。
僕たちはそこでかなりの時間を過ごした。トムが見逃した戦いの詳細や、彼らの今後の計画について語り合い、教会の食事がひどく味気ないというトムの愚痴に耳を傾けた。時の経つのも忘れ、やがて夕方の黄金色の陽光がステンドグラスを通り抜け、石の床を美しい光のモザイクで染め上げた。
「それじゃあ、私たちはもう行くわね、トム。早く良くなってね」
やがてディナが席を立ちながら言った。
「早く治せよ、本の虫。また一緒に冒険するのを待ってるぞ」
トムの肩をポンと軽く叩き、ガレンが付け加えた。
「待ってるからね、トム。Cランク冒険者として最初のクエストを一緒に受けるのが待ちきれないわ!」
ディナは明るく手を振り、それから振り返った。
僕はただ彼に微笑み、頷いて見せた。
僕たちは大聖堂を出て、賑やかなヴェニンブルクの通りへと戻った。雲の切れ間から差し込む夕方の黄金色の光が赤レンガの歩道を蜂蜜色に染め、行き交う人々の長い影を落としていた。空気は先ほどよりも温もりを帯び、街の活気あるざわめきに満ちていた。
「それで、お前はどうするつもりなんだ?」
ガレンの太い声が僕の思考を遮った。彼は僕の隣を歩いていた。
「これからのことだ」
僕は足を少し止めた。
周囲の景色を見つめた。
僕に何ができるだろう?
「商人になりたいかな」
「商人、か」
ガレンが呟いた。
「ふむ、お前には合っているかもしれんな。惜しいが。一時的にでもパーティーに引き入れたいと本気で思っていたんだがな」
「ごめんね」
彼の表情を見て少し気まずく、申し訳なく思いながら答えた。彼の言葉が本心であることは分かっていた。だが冒険者の道……泥と、血と、不確実性にまみれた道は……僕の進むべき道ではない。一度経験しただけでもう一生分だ。
「そういえば、リアム」
ガレンが足を止め、何か大事なことを思い出したかのように改まった目で僕を見つめた。
「お前、エルフなんだろう。自分に魔術の才能があるかどうか、確かめてみたくはないのか?」
「魔術の才能なんて確かめるまでもないわよ」
ディナが熱心に目を輝かせながら素早く口を挟んだ。彼女は勢いよく僕の肩を叩いた。
「リアムには絶対に才能があるわ。エルフなんだもの!」
彼女は少し身を乗り出し、その笑顔は朝日のように眩しかった。
「家に帰ったら、簡単な基礎魔術を教えてあげるわ。一番簡単なやつからね!」
魔術。
その言葉が頭の中で反響した。僕は開いた自分の手のひらを見つめた。僕にできるだろうか? この体に本当にそんな素質が備わっているのだろうか?
剣と魔法の世界にやって来た人間として、魔術を使えるようになりたいと願うのは当然だ。だが……。
森で過ごした初日の記憶が蘇った。
川岸に立ち、アニメのように「スキル、出ろ!」「魔術、出ろ!」と滑稽な叫び声を上げていた。何も起きなかった。何一つとして。森の静寂が僕の愚かさをあざ笑っているかのようだった。
やり方を間違えていたのだろうか? この世界の魔術は、単なる本能や感情だけで発動できるようなものではないのだろうか? それは……体系的に学ぶべき学問なのだろうか?
「でも」
僕の一番の障害を口にしながら、ディナを見つめた。
「僕、文字が読めないんだ」
「問題ないわ」
ディナは少しのためらいもなく答えた。その笑顔は揺るがない。
「教えるのは一番初歩の魔術よ。使えるようになるのに文字が読める必要なんてないわ。それに最初の講義は、呪文をいきなり学ぶことじゃなくて、魔術師としての基礎技術を身につけることなんだから。後でちゃんと見せてあげるわね」
胸の中に小さな希望が芽生え始めた。もしかしたら……もしかしたら本当に魔術が使えるようになるかもしれない!
「よし」
ガレンが僕の背中をバシッと叩き、物思いから引き戻した。
「俺たちとはここで解散だ。まず妻のところへ顔を出してこなきゃならんからな」
彼は踵を返し、それから立ち止まってもう一度僕を見た。その笑顔にはかすかな寂しさが混ざっていた。
「達者でな、リアム。もし冒険者になる気になったら、どこへ来ればいいか分かってるだろう」
僕はただ頷き、その広い背中が人混みの中へと次第に消えていくのを見送りながら手を振った。
僕とディナは再び歩き出した。夕方になっていたが、ヴェニンブルクの大通りは依然として賑わっていた。露天商たちが荷車にランタンを灯し始め、炒った豆や燻製肉の香りを漂わせている。大人たちの足元を子供たちが駆け回り、その笑い声が甲高く響いていた。
夕方の黄金色の陽光に照らされたこの街は、息を呑むほど美しかった。石造りの建物から長い影が伸び、街の景観に奥行きと陰影を与えている。その光はガラス窓や赤い瓦屋根、そして家路につく冒険者たちの鎧に反射していた。
街の広場を通りかかったとき、僕の足が止まった。
馬車の車輪の音や商人の掛け声の喧騒のただ中に、時の流れの中で永遠に凍りつき、周囲で動き続ける世界から切り離された五つの像が立っていた。
その像は青銅でできていた。歳月と風雨がその表面を独特の緑青色に染め上げていた。しかし時代を経てもなお、威風堂々と立ち続けていた。誰かが大切に手入れをしているに違いなく、その輪郭に苔は生えておらず、鳥の糞がその栄誉を汚すこともなかった。
僕は顔を上げ、その五つの像を一つずつ見つめた。
最前列には、自信に満ちた穏やかな笑みを青銅の顔に刻んだ一人の青年が立っていた。両手で地面に突き刺した剣の柄を握り、騎士の休息の仕草をとっている。背中のマントは、止むことのない風に吹かれてはためいているかのように彫り込まれていた。その顔立ちは……静かで優しい指導者の風格を漂わせていた。
その後ろでは、堅固な戦闘陣形が彼を守るように配置されていた。
背が低くがっしりとした、綺麗に編み込まれた豊かな髭を蓄えた男――ドワーフだ。隆起した腕の筋肉で長槍を固く握りしめ、山のようにどっしりと構えている。その隣には、神聖で穏やかな表情を浮かべた女性が、表紙に抽象的な太陽の紋章が刻まれた分厚い聖典を抱えていた。
そして、長い耳を持つ女性――エルフだ。彼女は緻密な彫刻の施された魔術師の杖を握っていた。長い髪はなぜだか見覚えのあるツインテールの髪型に整えられている……。その体格は、僕の思い描くエルフよりも小柄に見えた。そして最後に、少し脇に立ち、鋭い眼光と油断のない体勢で両手に一対の短剣を構える青年がいた。
「ソードマン、タンク、ヒーラー、メイジ、そして……アサシン?」
RPGゲームの古典的な役職を一つずつ挙げながら、僕は呟いた。
あまりにも……テンプレ通りのパーティー構成だ。
「ヒーラーやソードマンじゃないわよ、リアム。聖女と勇者よ」
柔らかな声が僕の言葉を訂正した。
僕は振り向いた。ディナは僕を見ていなかった。その目は目の前の青年の像に釘付けになっていた。緑の瞳には、今まで見たことのない光が宿っていた――憧れと、敬意と、深い崇敬の念が入り混じった光だった。
勇者? その言葉が頭の中で反響した。僕は再び青年の像を見つめた。どんな勇者なのだろう? 王国の戦争に勝利して名を馳せた英雄? それとも……おとぎ話に出てくるような、真の意味での勇者なのだろうか?
ディナはようやく僕の方を向き、眉を高く上げた。その唇に面白がるような笑みが浮かぶ。
「まさか……彼らのことを知らないの?」
幼子をからかうような口調で彼女が尋ねた。
「一番辺境の村の子供だって、彼らの名前くらい知っているわよ」
「ディナ……」
からかわれて少し拗ねながら、僕は無表情で見つめた。
「僕の事情は知ってるだろ」
「ごめんごめん、冗談よ」
彼女は手を振りながらくすくす笑った。
緑青色の像を再び見上げると、彼女の顔つきは真剣なものに戻った。夕風が吹き抜け、束ねた髪から零れたピンクの数筋が彼女の頬を撫でた。
「あの方たちは、勇者レオン様と仲間たちよ」
聖典の神聖な物語を語り聞かせるかのように、彼女の声は厳かになった。
「千年前、魔王の大侵攻からこの世界を救った方々よ」
魔王? そんな存在が本当にいたのか? アニメの中だけの話かと思っていた。
「これは大昔の物語で、この世界の誰もが知っていることよ」
ディナは続けた。
「けれど私たちは、決して忘れることはないわ」
彼女は一瞬息を呑んだ。
「遥か昔、アタナシア大陸の西端、私たちが魔大陸と呼ぶ場所に、途方もなく強大な魔族が生まれたの。腕力や魔術の力だけでなく、知略にも長け、圧倒的なカリスマ性を持っていた。何千年もの間争い続けていた魔族の部族たちを、その者がまとめ上げたのよ」
ディナは少し言葉を切った。
「部族を統一した後、魔王は史上初となる魔族帝国を建国したわ」
夕風が広場を静かに吹き抜けていったが、ディナの声ははっきりと僕の耳に届いていた。
「魔族帝国は瞬く間に周囲の小国を征服していった。自らの大陸で征服すべき土地が尽きると、その矛先は東へと向けられた……人間、エルフ、ドワーフ、亜人たちが暮らす土地へとね」
ディナの声の調子が次第に重くなった。
「そして大戦が勃発したの。アタナシア大陸全土を焼き尽くす炎のような大戦が」
僕は黙って耳を傾けた。
「魔族の軍事力は圧倒的だった。肉体的な強さや魔術の才能に秀でていただけじゃなく、当時の人間やエルフの知識や技術までも模倣して、軍事拡張に利用したのよ」
「その結果、人間や他の種族の国々は次々と侵略されていった。奴らは支配下に置いた国々を虐殺し、喰らい尽くし、焼き払っていったわ」
思わず、当時の世界の惨状を想像してみた。
「そしてついに、当時の二大勢力であった第二エルフ帝国と、人類のロマナ帝国までもが崩壊したの。領土は魔王によって奪い去られたわ」
ディナは俯いた。
「その頃には、大陸のほぼ全土が奴らの手に落ちていた。残されたのは、最東端の沿岸地域だけだったわ」
彼女は小さく拳を握りしめた。
「その絶望の中で、私たちの先祖は大移動を余儀なくされたの。世界中から数千万もの人々が海を渡り、大陸の辺境の島々へと逃げ延びた……その一つが、このアヴァロン島よ」
そうだったのか……。
ようやく理解できた。
ずっと引っかかっていた疑問の答えがこれだったのだ。なぜヨーロッパ風の顔立ちをした人々が、このような熱帯の島で暮らしているのかという理由が。
「転換点は、アタナシア大陸で最後まで持ちこたえていた沿岸地域の一つ、ミリスの地で勇者レオン様がお生まれになったことよ」
ディナの目は再び青銅の像へと向けられた。
「その時すでに、戦争は百年以上も続いていたわ」
「レオン様は元々、ただの平凡な少年にすぎなかった。けれど歴史書や聖典によれば、戦火で荒廃した教会で神から聖剣を授けられたの。さらに、極めて強力な加護も宿していたわ」
彼女の声のトーンは徐々に称賛の熱を帯びていった。
「その剣と加護を手に、レオン様は旅に出られた。仲間を一人また一人と集め、都市を次々と解放し、エヴァ教会と人類および諸種族の残存勢力の支援を受けて抵抗軍を結成したの」
僕は最前列に立つ青年の像に目を向けた。
そのすべてが、たった一人の人間から始まったとは信じがたいことだった。
「十年の歳月をかけて、勇者レオン様は魔王軍を魔大陸へと押し戻すことに成功したわ」
ディナの声は一段と静かになった。
「戦争の終盤には、連合軍は奴らの領土全域を制圧するにまで至ったの」
「そしてレオン様は魔族帝国の中心部へと最後の進撃を率い……そこで魔王を討ち取られたのよ」
広場が不意に静まり返ったように感じられた。
「魔王の死によって魔族帝国は崩壊し、内乱によって分裂した。百年以上続いた大戦は、こうして終わりを迎えたの」
ディナは黄昏の空を見上げた。
「世界は……救われたのよ」
「魔族の領土はどうなったの?」
僕は尋ねた。
「連合軍がその土地を併合するべきだったんじゃないの?」
彼女はその像をしばし見つめてから口を開いた。
「いいえ、勇者レオン様がそれを禁じたの。『奴らの故郷で奴らを虐殺し支配したなら、俺たちと奴らで何の違いがあるというのか。それは新たな憎しみを生み、将来新たな魔王を生み出すだけだ』と仰ったわ」
僕は息を呑んだ。
「だから連合軍は撤退し、その領土を魔族へと返還したの」
それを聞いて、僕は心底感嘆した。
勇者レオン……まさに真の勇者と呼ぶにふさわしい人物だ。
ディナは複雑な表情で青銅の像を見つめた。
「でも私の目にはね」
彼女は静かに続けた。
「それこそが、あの方の過ちの一つに見えるの」
僕は顔を向けた。
「どうして?」
「だって今になってね」
ディナは僕を見つめた。その緑の瞳は真剣そのものだった。
「かつての魔族帝国の残骸を再統一しようとする、強大な魔族の王国が現れ始めているのよ」
僕が口を挟む前に、彼女は続けた。
「それに、魔王が討たれてからも、アタナシア大陸での国境紛争は一度たりとも完全に終わったことなんてないわ」
「魔族は今でも、人間や他の種族の領土へ頻繁に侵入してくるの」
「戦争のために?」
ディナは首を横に振った。
「時には食料として人間をさらうためだけに。時には理由もなく、本当に何の意味もなく小さな村や街を虐殺するためだけにね」
「そして何より不気味なのは……奴らはそれを楽しんでいるようには見えないことよ」
僕は眉をひそめた。
「どういうこと?」
「怒っているようにも、喜んでいるようにも見えないし、被害者を憎んでいるようにさえ見えないの」
ディナは広場の喧騒を虚ろな目で見つめた。
「ただ当たり前のようにそれをこなしているだけ。まるでそれが奴らにとって自然なことであるかのように」
「まるで……」
「本能、みたいな?」
思わず口にしていた。
ディナはすぐに頷いた。
「そう。野獣と同じよ……知恵を持っているという点を除いてはね」
「生き延びるために人間や他種族を食べる必要があるの?」
ディナは首を横に振った。
「いいえ、それこそが一番恐ろしいところなの」
「奴らは私たちと同じ普通の食べ物を食べられるわ。私たちを食べたからといって強くなるわけでもないのに……」
彼女は静かに息を吐いた。
「ゴブリンのような他の魔物と比べても、魔族が一体何のための生物なのか、本当に理解できないわ」
僕はそれらの像を後にし、広場の喧騒の音が再び耳を満たすままに歩き出した。
その通りだ。ゴブリンが人間を捕らえるのには理由がある。どれほどおぞましい理由であれ、その残虐性の裏には理屈が存在する。
だが魔族には、ディナの言葉を信じるなら、そうした行動をとる理由が見当たらない。
それはまるで……
自らの意思を持った自然災害のようだった。




